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サクジョウ学園美術部の作品展覧会に、ある異色な作品が出展した……

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~~以下はSSです~~

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原案:成崎直

SS作者:成崎直、まに

 私はここ数年、サクジョウ学園美術部の展覧会に行っている。

 理由は、私が住む街に娯楽施設が少なく、いわゆるプロではない学生作品でも貴重な娯楽になり得ること、そしてもう一つは、単純に会場が自宅にほど近く、足を運びやすいためだ。

 サクジョウ学園は、主にスポーツ系の部活動が盛んな高校として知られている。特に武道の成績は国内でもトップクラス、常に賞レースの上位に名を連ねているほどだ。

 だがしかしその一方で、文化系の部活動に関してはあまり噂を聞くことがない。

 というのも、スポーツ系の部活動は学校の威信を賭けた、勝つことを前提とした指導が行われるようだが、文化系の部活動に関しては成績よりも、それぞれの個性を尊重することを重視しているようなのだ。勿論、文化部の学生がコンペに臨む場合は学校として十分なサポートはするし、参加した場合はそれなりの成績を収めているのだが、それ以上に表現の自由性に旨を置いている。

 その為、サクジョウ学園美術部作品展覧会も、コンペで好成績を収めた作品というよりは、各部員の個性の発表といった趣が強い。

 展示されるものは、絵画、彫刻、書、映像、現代アートを名乗るよくわからないものまで幅広く、一言で言えば「なんでもあり」。年によっては絵画のみだったり、あるいは絵画がまったくない場合もある。

 が、例外として、毎年それらとは別に、必ず肉畜を使った大型の作品が展示されることになっている。

 芸術に疎い私は、絵画や彫刻などを見てもさっぱり理解できないので、その肉畜の展示を楽しみにしているのである。

   *   *   *


 今年の肉畜展示のスペースは、西洋館の書斎を模したセットが組み立てられ、その真ん中に肘掛けのついた重厚な椅子が置かれていた。

 椅子には、全裸の女性が腰掛けている。

 その肌は白く、肢体は重量感を持ってまったく生気がない。

 既に屠畜されているものと思われる。

 異様なのは、女性が西洋甲冑の兜を被っているところだ。

 顔全体を覆っており、表情がまったく伺い知れない。

 一糸纏わぬ裸体と重厚な兜の取り合わせは女体の淫靡を引き立てており、目を引かれた私は足早に作品へと惹き寄せられた。

 ふと、手前にある看板に掲げられたタイトルが目に入る。

『想像力のオブジェ』。

 作者は「富田日向子(とんだ・ひなこ)」。美術部員の1年生とある。

 壁を見ると、西洋の雰囲気に不釣り合いな大きなディスプレイが取り付けてあり、映像がループ再生されている。

 長い黒髪の制服姿の少女が、教室のようなところからこちらに話しかけてくる。


「はじめまして。

 サクジョウ学園1年N組、富田日向子と申します」

 少女は、作者の富田日向子本人のようだ。

「今回、『想像力のオブジェ』という作品を展示しました。

 肉畜を使ったオブジェです。

 サクジョウ学園ではよく学内屠畜が行われているのですが、私はたびたびその屠畜の光景を見学していました。

 その中で、稀に顔を隠した生徒が殺害されることがありました。

 お面を被ったり、目隠しをしたり、隠す度合いは様々です。ですが一様に、『想像力』を掻きたてることに私は気付いたのです。

 たとえば、お面ならばこの人はどんな表情で死を迎えるのだろう? とか、目隠しならば、この人は目の前の風景が見えないぶん、どんな風景を想像して果てたのだろう? とか、いろいろ想像の余地があります。

 その想像力の可能性に興味を持ち、私はこの作品を作成しました。

 あるいは、例えば私がこの人に笑って死を迎えてほしいと願っていたとしましょう。実際には苦しんで死んでいるかもしれませんが、顔が見えないのであれば、そこは想像でいかようにも補えるわけです」

 緊張した様子だったが、ここで少し表情が和らぎ始めた。

「会場に置いてあるのは、既に屠畜が完了した肉畜です。一言で言えば死体です。

 しかし、屠畜の様子をご覧になりたいという皆さんのために、屠畜の様子を録画したビデオを用意しました。この映像の後に流れますので、ぜひご覧ください。

 最後になりますが、私の作品でなにか皆さんの心に残せるものがあれば、嬉しく思います」

 富田日向子は一礼し、映像がプツンと途切れた。

 それからしばらくして、『想像力のオブジェ メイキング』と題された映像が流れだした。

   *   *   *

 映像には、会場に建てられた洋館セットと、そこに置かれた椅子が映し出されている。

 画面右側から、全裸の女性が歩いてくる。

 顔を見ると、女性は日向子だった。

 日向子が椅子に腰掛けると、今度は別の女生徒がやってきて、日向子に西洋甲冑の兜を手渡した。

 日向子は慣れた様子で兜を被る。

 私はそこでようやく、『想像力のオブジェ』に使われた肉畜が日向子本人であることに気がついた。

 思わず、『想像力のオブジェ』を見直す。

 全裸に、兜のみを被って座った少女のオブジェ。

 ついさっきまで作品として捉えていたそれが、映像の少女の成れの果てであることを意識すると、途端に色欲が刺激されるような感覚を覚える。

 思わず生唾を飲んだその時、日向子の声がして私はビデオに視線を直した。

 兜の奥から日向子の声が響く。

「皆さん、私は今から屠畜されます。この兜の下、私はいったいどんな表情で死を迎えるのか……ぜひ想像を楽しんでください。私も、屠畜の時間を楽しみたいと思います」

 日向子の声色は明らかに高揚して震えている。

 兜の無機質とは真逆に、もじつく女体は発情に火照っており、正しく彼女の思惑通りに表情の想像を掻き立てる光景だった。年頃の肉体がいやらしさを強調された全裸兜、その内側は如何なる表情に染まっているのか――なるほど、ただ実物を見せ付けられる以上に感覚が刺激される。

 日向子は震えるその声で、徒然と告白する。

「……私、富田日向子は大人しい性格の学生だと自負しています。普段は一歩引いた控えめな態度をとっている、奥手な女子です。

 しかし、今回の展覧会では意を決して立候補させていただきました。

 丁度、展覧会の日付が私の誕生日と重なったのです。『想像力』に対する興味を抱き始めていたこともあり、かねてより憧れていた展覧会の肉畜作品の製作に挑戦するのは今しかないと思いました。

 この兜は、甲冑を集める趣味を持つ父から借りたものです」

 日向子は台詞を連ねる。その声色には熱がこもっているが、無機物である兜は一切の表情を通さない。昂ぶる声、乱れる吐息、紅潮した女体の身悶え――椅子に座る彼女の、兜以外の全てがあからさまな発情を示しているからこそ、余計に兜の中身に想像が行く。

「それでは、サクジョウ学園高等部1年、美術部所属、富田日向子、3サイズは82D、58、82、ただいまから芸術に殉じて屠畜されます。どうか私の死に姿を観賞してください」

 そう言うなり、兜の内側から響く声は止んだ。

 暫しの静寂の後、動きを見せたのは、日向子ではなく彼女に兜を渡した女生徒であった。

 女生徒はビデオの中で、ポケットの中から小さな長方形のケースを持ち出し、空ける。

 そうして女生徒が取り出したのは、注射器であった。

 女生徒は微塵の躊躇いも見せず、事務的にその針を日向子の腕に刺し、中身を注射した。

 日向子の全裸がびくりとする。痛みを感じたのか、はたまた。

 それっきり、日向子の身体は僅かな呼吸に上下するばかりで反応を見せなくなった。

 彼女は一体、どんな表情をしているのだろう。

 悶々とさせられながら一分ほど経った頃、不意に映像に変化が見られた。

 日向子の身体が、震え始めたのだ。

 それはどんどん激しくなっていく。明らかに正常な動きではなく、小刻みで、不規則な痙攣だ。女体が秩序を失い、本能的な反応に支配されていく様子は滑稽であった。文字通りの鉄面皮が全く変わらず在るからこそ、余計に異常な反応が強調されている。

 日向子はやがて、己の首元へ掻き毟るように手を伸ばした。

 身体をびくん、びくんと跳ねさせながら、健康的な足をバタつかせる。

 ついに、日向子は甘い嬌声を叫び、激しく身を捩った。

 その姿はもう、理性的な少女ではなく、一匹の雌に他ならない。

 暴れるあまりに椅子から転げ落ちそうになる日向子の身体を、注射を打った女生徒のほか、数名の女生徒が画面外から現れ、押さえつける。

 二人の女生徒が精一杯に腕を押さえるが、それでも日向子の生理的痙攣は止まらない。

 酷く下等に、しかし艶やかに身悶える日向子。

 そこに、もう一人の女生徒が彼女の胸を揉みしだいてレズ奉仕を始めたので、映像はいよいよ、壮絶なまでのいやらしさに満たされた。

 身を捩る日向子の豊満な乳肉が揉み潰される勢いで形を変え、女生徒によって弄られる秘部から愛液が煌く。

 日向子は女生徒にされるがまま、さながら目隠しをされ電気椅子に束縛されているかのように、訪れる快感に身を委ねるしかないといった様子だ。

 女生徒は日向子の全身に手を這わせる。滑らかなお腹周りを撫で上げ、乳首を弄り、女体の艶やかさを執拗になぞりたてる。

 太腿の間に手を忍ばせて弄ると、その分だけ日向子は激しく喘いだ。

 しかしどれだけ乱れようとも、兜に隠れた表情は分からない。

 ビデオ越しの嬌声や水音は音質がチープな分余計に淫靡で展覧会場を桃色一色に染め上げているかのような。

 私も、呼吸を忘れて魅入るしかない。

 すぐ傍にある『想像力のオブジェ』を意識しながら、釘付けになるしかない。

 響く、日向子の暴れる音。

 五分ほど経っただろうか。

 やがて日向子の身体は動きを失っていった。

 いよいよ動かなくなったその時、不意の激しい痙攣と共に、日向子は潮を噴いて絶頂した。

 反応を無くし始めた最期に示す仰け反り絶頂は、線香花火の終わり際の煌きを思わせる。

 ――それさえも、ついには収まった。

「終わりました」

 言葉と共に、画面外へと女生徒達が立ち去っていく。

 後にはただ、椅子に身を委ねる日向子の女体が、僅かな痙攣と共に小水を漏らす様子が流れるばかりだった。

   *   *   *

 映像を見終えた私は、改めて『想像力のオブジェ』を眺めた。

 映像よりも、日向子の身体は青白くなっているような気がする。

 屠畜された死体は、すでに剥製に作られたに違いない。

 そして甲冑の兜。

 頑なに日向子の表情を隠している。この奥にある顔がどんな顔なのかを想像させるのが日向子の狙いなので、当たり前といえば当たり前なのだが、私はその奥の顔が無性に気になり、気がつけばオブジェの近くに歩み寄って、兜に手を伸ばしていた。

 すると、慌てた様子で会場のスタッフが現れ、「展示物には手を触れないでください」と注意された。

「すみません」

 スタッフに謝罪した私は、改めてオブジェに目を向ける。

 どうしてもあの兜を脱がせたい。

 そんな衝動が、ムラムラと私の中に起こっていくのを感じた。

 これ以上ここにいるのは危険だ。

 そう思った私は、足早に会場を後にした。

   *   *   *

 この街に娯楽施設は少ないと書いたが、そのせいなのか、夜になると街からは人の姿はなくなってしまう。

 夜の街を歩く私の姿を見ているのは、夜空を照らす満月のみと言っても過言ではないだろう。

 私はサクジョウ学園美術部の展覧会が開かれた「旧オオワド美術館」に向かっていた。

 旧とつく通り、実は「オオワド美術館」としての機能は別の場所に移動しており、残った美術館跡地をイベント主催者などに貸し出す方式を取っている。

 私は「旧オオワド美術館」の敷地に入り、音楽室の窓を探した。

 音楽室は、その名の通り音楽系の作品を展示する部屋である。

 公にされていないが、防音工事の際の不手際と老朽化で、音楽室の窓はうまく外せば窓枠ごと外れてしまうのである。セキュリティを考えると大問題だが、当時の経営者が施工費用をケチったため、そのままになっている。

 なぜこんなことを知っているかというと、私のもとの職場が「旧オオワド美術館」だからである。

 館内に入ると、当然ながら人は一人もいない。電気も非常灯がついているくらいである。

 私はサクジョウ学園の展示ブースに向かった。

 肉畜展示のコーナーには、昼間と変わらない『想像力のオブジェ』こと、日向子の肉体が夜闇の中で静かに鎮座していた。

 薄暗く、静かな会場の中で、日向子の身体は異様な重量感を放っている。

 決して豊満な肉体ではないのにも関わらず、妙な性欲を喚起させられる。

 私は日向子の肉体の近くに懐中電灯を置くと、日向子が着けている兜を脱がせにかかった。

 どうしても、兜の奥の素顔が見たかったのだ。

 屠畜された女体に乗っかった、兜の内側は如何な表情で彩られているだろうか。

 私が想像するに、肉畜はその死を喜ぶような存在だ。日向子も肉畜の一人。ということは、さぞや悦楽に浸ったに違いない。

 だから、多くの肉畜のように、まるで天国を見ているような、極めて穏やかな顔をしているかもしれない。


 一方、屠畜の手法は、毒殺という窒息をもたらす手法だ。

 何かの本で読んだことがあるが、「窒息は性的快楽の隠し味」であるらしい。

 さらには、確か映像では他の女生徒が日向子の胸を揉んでいた。

 死の快楽と性の快楽に浸って、天にも昇るような心地だったのではないか?

 その顔は、恍惚に染まっているのではないか……。


 しかし、非専門家である生徒が注射による毒殺を実施すると、失敗する可能性もある。

 もし万が一、屠畜が失敗した場合、彼女は歯を食い縛って?或いはだらしなく開いて?白目を剥いて舌を突き出して?または苦悶に満ち溢れた、加虐心を煽る顔に?……


 思い浮かぶ限りの淫靡な表情が、脳裏に焼き付けられるかのようだ。

 兜を外し終わり、期待に胸を膨らませながら懐中電灯を向けた。

 そこに映し出された顔は――


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 私は彼女の死に顔を眺めながら、暫しの感動に浸った。

   *   *   *

 展覧会終了後、私は大枚をはたいて『想像力のオブジェ』を購入した。

 家に持ち帰った私がしたことは最早、言うまでもないだろう。

 日向子の被っていた兜は、取り外して別に飾っている。

 今宵も私は、想像以上の日向子の表情を独り占めしながら、彼女との死姦に耽るのである。

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