PFLS最終話解説その4 (Pixiv Fanbox)
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PFLS最終話についての解説と関連作品、お借りしましたリンクです。
(キャプションの3000文字にとてもではないけど全部入らなかったためこちらに貼らせていただいております。全ての記事が完成次第本編作品からもここへのリンクを貼っておきます)
今回はリナリーさんについてです。
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【13P中段~14P】
リナリー・グレイベアさんをお借りしました。
リナリーさんに関してはキャプションの方にもかなり説明をしたのであそこに記載することのできなかったことメインで解説します。該当ページの内容をまとめると
①リナリーさんは書記官ではなく外交官になり外交の権限1/3を与えられた(ノーザリア担当)、これは出世人事の部類。でも本来は最高責任者の地位を与えられてもおかしくない功績を残していた。
②それを阻んだのは内偵であったという事実、ハバカリが周囲に対して筋を通すなら処刑は必須。だが叱責しつつも生存&出世させた。
③彼女のグラーツでの最初の仕事はユニコボルド族への財産の謙譲と居住地交渉の補佐
このようになっています。
リナリーさんは書記官ですがPFLS期間中バランス領における彼女の最大の功績がなんであったかといえば、ハバカリが命じた「住む場所を失うバランス領と協力者の一時的な生活基盤を確保せよ」
(参照:第7話盗人卿と灰色熊の敗戦)
という命令を成し遂げた事にあると思います。(『夜明け前』にて早々に済ませ合流したとの記載アリ。)
ハバカリが本物の貴族ではないと誰もが知りながらその地位を維持できていたのは、他ならぬ領民が「山賊らしいけどこれまでの領主や騎士よりこっちの方がまし」と支持し、スティール家のオルゲンがハバカリを息子と認め領地と爵位を譲り、
その上でレイオン将軍が「証明できない血の繋がりより戦争中の行動によってその今後の判断を行う」と決めたからです。
(参照:第一話盗人卿とその噂)
灰色熊の戦いで領地を失い、ハバカリの「バランス領領主」という地位を支えるのは爵位と領民だけになりました。
戦功をあげ戦後新たな領地を手に入れるまで領民の生活を保障し不満を最小限にとどめる事は生死にかかわる問題で、それを解決できるのは灰色熊の戦いの主戦場となった重要な拠点を支配するグレイベア城主の姪であり文官としてのスキルを所持する貴族・リナリーさんだけでした。
(矢吹さん自身はリナリーさんの両親の地位はそこまで高くないと仰っていましたが、彼女が城主の姪という近親者かつグレイベアの家名をもっている以上彼女はまぎれもない大貴族の一員でありそのランクはスティール家よりはるかに上、帝国や帝国貴族には決して軽んじる事の出来ないものだと考えられます)
領民に避難先を用意しある程度安心した生活を送れるよう交渉を成功させたという手腕、地位と人脈こそがリナリーさんが書記官ではなくノーザリア担当の外交官に任命された理由です。
功績だけでいえば本来グラーツの旧臣やバランス領の全員を差し置いて外交最高責任者に据えても誰も文句を言えないレベルのものです。
しかしながら彼女は内偵であり実質的な背任行為を行っておりそれを自らハバカリに告げました。(参照:超克の盾1)
旗揚げから付き合ってきた山賊仲間ですら領民に狼藉を働けば処断させてきた経緯があり、
(参照:第2話盗人卿とボールランの戦い・第5話盗人卿とある約束)味方の暴走を恐怖で締め付けてきた側面がある以上
「何も被害がなかったから」「自分で正体を告げたから」という理由でリナリーさんを許すことは組織の瓦解を招く可能性すらある為不可能だった、というあたりはキャプションで説明した通りです。
そんな中でもリナリーさんが処刑を免れたのは対外的には最終話の説明通りですが
(参照:最終話14P)
これにあわせてハバカリ側の内情
「領民の生活を救う仕事を成功させたリナリーさんを処刑すれば旧バランス領民から反発を食らう」
「ハバカリは彼女を懐に入れた所有物の一つと認識していた」という理由によるものです。
ハバカリは全12話で3回「自分の所有物には優しいが敵には容赦がない」というセリフを発していた通り一度懐に入れてしまったものに対して他人が思っている以上に愛情を注いでいます。
これは作中別に説明はいらんやろと思って描写しなかったんですが、ハバカリは7歳から大陸中放浪しながら竜を狩りつつ野盗という生活を送っており家もなく衣服も食事も道具も全て他人から奪ったものばかり、自分のものだと明確に言えるのはその体と名前と刀だけでした。
その反動もあってミッカラと出会った後はこの世の全てを手に入れたいと願うようになり
(参照:第8話盗人卿と竜使い)
金も領地も仲間も領民も臣下も自分の懐に入れたものは「ようやく手に入れた自分のもの」ということで余人にはそうみえなくてもとても大事に思っていました。
(参照:”盗人卿”ハバカリ・スティール男爵)
リナリーさんに対して刀を所持していないにもかかわらず竜殺しの呪いが視認できる程の怒りを感じていたのも、信頼し懐に入れていたものが自分を裏切ったことが許せなかったのが原因です。
そしてそれと同時に懐に入れたもの、有能な臣下を失うのが惜しいという気持ちが確かにありました。
山賊騎士には処刑を見逃すだけの功績も領民からの信頼もなかったが、リナリーさんにはそれがある。
ならば彼女の二心ないという言葉が本物かどうか全てをなくした状況から証明して欲しいというのがあの言葉の示す意味です。
そういったリナリーさんに対する信頼と期待を表していたのが彼女に依頼した「ユニコボルド族への財産の謙譲と居住地交渉の補佐」という仕事です。
(参照:最終話13P)
まずハバカリは戦時中シルバーディッシュ家より贈られた財産を保持しています。
この財産は公式キャラエイデン・シルバーの臣として銀流通事業を取り仕切るシルバーディッシュ家の若頭ナハト・シルバーディッシュ氏がノーザリアの有力者達に贈ったものです。(参照:五十嵐さん作『銀の皿』)
この財産には土地権利書も含まれているとのことでしたがそれなりの人数に分割して贈っている以上、シルバーディッシュ家の規模がどれだけ大きくともバランス領民全てが暮らす新領地として使うに足りるような土地ではなかったと思います。
また戦中に処理して軍費にあてるにしてもバランス領のトップ連中がリナリーさんも含めて全員レッドヴァルで戦っていたためその余裕はなかったのではないか……というのが戦後もハバカリが贈り物を保持していたことにした理由です。
次にユニコボルド族は現在居住地の交渉をレイオン将軍と行っています(参照:fkuさん作『両親からの贈り物』)。
解説2のレイオン将軍の項目で説明した通りハバカリが将軍に便宜を図ってもらえた理由のひとつがユニコボルド族が供出した功績をバランス領の名目で帝国に引き渡したことに起因します。
(参照:最終話4P)
だからグラーツ領を得られた理由の半分くらいはユニコボルド族の尽力のおかげということになります。
加えてハバカリは戦争中同盟の条件としてユニコボルド族の青年たちを戦場に駆り出し
(参照:第5話盗人卿とある約束)
敗戦の結果彼らのほとんどを死なせることになりました(fkuさん作『ユニコボルド(哨戒要因)』追記キャプションに記載アリ)
そういった理由からハバカリが政治的に最も借りがあり負い目を感じているのがユニコボルド族です。
廃鉱山とは言え山一つ、ユニコボルド族の持つ鉱物資源は自分が利用してしまった為ユニコボルド族が山を買えるだけの財産を所持しているかは微妙な所…。
だからこそ「貰った財産を全部ユニコボルド族にあげてその他の交渉を手伝ってきなさい」という命令をしたわけです
ユニコボルド族への恩を考えればこの交渉は絶対に失敗することが許されないものです。
やり遂げる力があると知っているから、もう一度信頼したいという気持ちがあるから一番大事なこの仕事をあえて任せた……というような感じでした。
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他の方のキャラに対してこういった厳しい対応を行う事に対して迷いはあったのですが、これ以外の対応をとるとここまでの全てが意味を失ってしまう、それだけはどうしても選択することができず結果としてリナリーさんにはこういった一方的な描写をせざるを得ませんでした。
そのわがままを広い心でお許しいただいた矢吹さん、本当にありがとうございました!