特別対談|backword制作後日談 - somunia×ヤカ×ぬヴェントス - (Pixiv Fanbox)
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先日、somuniaのyoutubeチャンネルにて、
2nd EP 「fable in sleep」収録曲 "backword" のMVが公開されました。
これを機に、作曲作詞を担当している お馴染み ワニのヤカさんと、MV制作をしてくださった ぬヴェントスさんにお声がけをして、この作品について色々なお話をしました。backwordの作詞制作秘話や、MVの注目ポイント、MVでは使われなかったフォント案の公開など、内容盛りだくさんの後日談です。
このページを読み終わった時、きっともう一度MVを見たくなるはず。
〈 一緒にお話をしてくれる方 〉
YACA IN DA HOUSE
歌ったりビートを鳴らしたりしているワニ。“twinkle night feat. somunia“の後半でラップするワニ。サンプリングミュージックを広めるため日々悪戦苦闘中。
ぬヴェントス
1991年生。早稲田大学卒業後、インターネット広告代理店にてWEBマンガの編集業務に従事。2016年から趣味で映像制作を始め、2018年に同社を退社。現在はフリーランスで活動中です。
歌詞について
somunia:backwordの歌詞について、以前も話したことがありましたが、こういったオープンなところで話すのは初めてでしょうか?
ヤカ:いろんなところで話してる気もしますが、何気に初めてかもしれません。
somunia:hook(サビみたいな部分)はワタシ、ラップ部分はヤカさん、と分担して制作しましたね。2人で作詞するのは初めてだったので、初めはどこから手をつければいいのか分からなかった...。
ヤカ:自分的には周りの仲間と結構やるというか、やっている音楽的に分担して書くっていうのがよくあるのですが、ソ的には初挑戦とのことで、なるべくソに寄り添うようにやりました。今思えば託しすぎたなと思う(笑)テーマとかサビ全部とか。
somunia:託されすぎだなとは思ってませんでしたが、テーマ決めの部分は確かに大変でした。ワタシたちは作詞の方法がやや異なるので、どうやって作っていくべきか考えてしまって。ヤカさんは韻を踏むところから、どんどん肉付けしていきますよね。
ヤカ:どうだろう。韻から単語が導き出されて、その単語に合うように言葉が肉付けしていくこともあるし、もちろん内容に沿って書いていきながら完成を目指すこともあるすね。両方ともやりながらテーマから外れないようにゴールを目指す感じ。
somunia:要するに天才ということですね。
ヤカ:国語の試験みたいなもんで、『「コロッケ」「揃って」「踊って」っていう単語を使って文章を作りなさい』みたいなことを脳内とメモ帳の上でやるわけです。しかも「夕方をテーマにしなさい」みたいな条件付きで。
somunia:なるほど...提示されたテーマを混ぜながら韻を踏みつつ、内容の濃い歌詞になるのがすごいです。今回のbackwordのテーマは「過去」だったので、somuniaの過去楽曲を連想させるような要素も入れて欲しい、という鬼のような注文をしてしまいました。
ヤカ:最終的にはそこまで多くsomunia楽曲の要素を入れなかったけど、わかる人は言葉の節々から感じると思う。
somunia:そこまで多く入っていないのかもしれないけど、どことなくsomuniaの楽曲の世界観の詰め合わせに聞こえる、不思議ですね。
ヤカ:「ステップも全部覚えた」とか引用したりしてないのに放課後のダンスフロアだって言われてたりして。不思議ですねえ。
somunia:ワタシもてっきり引用だと思っていました、驚きです。今回のテーマ「過去」に関して、散々「過去にいく」ことに対する考え方を擦り合わせて、その過程でタイムスリップを題材にした映画なども見ましたね。そういうこともあり、サビに映画要素が多くなったかもしれません。映画の真似とか、エンドロールとか、フィルムとか。
ヤカ:実際にタイムマシンに乗ったらあの映画っぽいなあって思うのかな、変だね。
somunia:今回、同音異義語遊びみたいなことしましたよね。歌詞カードを読まないと分からない、MVで歌詞を初めて「その漢字を使うのか」と知れるような仕掛けを何箇所かいれて。
ヤカ:自分は「Surikizu」とかいろんな曲でそういう『耳騙し』みたいなことやるんだけど、性格悪いって言われる(笑)
somunia:backwordではまず「期待」と「機体」これは機体が壊れて止まらないというのと、これからのことにワクワクして期待が止まらない、どちらにも聞こえる仕掛け。そして「何回」と「難解」何回でもやる、と難解だとしてもやる、どちらともとれる仕掛け。
ヤカ:実際どっちでもよくて、好きに解釈してくれても大丈夫なようにはなってる。
somunia:正直、解釈は人それぞれでいいですよね。
ヤカ:そこまではこっちが決められないからね。
somunia:今回の作詞の中で、ここはうまく書けたなというフレーズはありますか?
ヤカ:ブリッジていうかPreChorusっていうか、「コーヒーのしみ〜」のパートは一番も二番も可能な限り韻を踏みつつ、内容もしっかりしててよくできた部分だと思うっす。一番と二番で比較して見て欲しい。
somunia:その部分、MV上の演出もすごく綺麗でさらに頭に残りますね。
ヤカ:この詞を書いてた時のソム氏ってせっぱ詰まってたというか、いろんな期待を背負ってた感じがしていて、当時のそれが強く出てる一曲な感じがしますね。
somunia:本当に制作時は忙しくて忙しくて...。その中でも形にすることができたのは、ヤカさんのおかげです。ここからは、backwordのMV制作を担当してくださった ぬヴェントスさんも交えてお話したいと思います。
MVについて
somunia:ぬヴェントスさん、よろしくお願いいたします。
ぬヴェントス:よろしくお願いいたします!
somunia:今回はとっても素敵なMVを制作してくださり、本当にありがとうございました。すごく感動しました。
ぬヴェントス:ありがとうございます!こちらこそ、素敵な楽曲にMVを付けさせていただく機会をくださって、ありがとうございました。
ヤカ:僕からもお礼させてください!ありがとうございます!
somunia:ぬヴェントスさんを知ったのは、ヰ世界情緒さんのMVを拝見したのがきっかけで。楽曲をさらに素敵なモノにする、素晴らしい映像を作る方だなあと思いました。
ぬヴェントス:恐縮です…!オリジナル曲のMVを作る時は、"楽曲の持っている世界観を翻訳する"っていう気持ちでMVを作らせてもらってるので、「楽曲をさらに素敵なモノにする」っていう表現はドンピシャで嬉しいですね 笑
ヤカ:提供させてもらった曲が、さらにぬヴェントスさんによって拡張されていくのは本当に楽しかったですね。ワクワクがすごい。
somunia:「backword」は、どんな印象でしたか?
ぬヴェントス:そうですね… 今回って実は最初から「backword」のMVを作るって決まっていたわけじゃなくて、複数ある曲の中から選んで「backword」に決定したじゃないですか。だから最初に聴く時点ですでに「どういうMVにするか」っていう感覚で聴いてしまっていて、そういう意味では純粋な曲の感想ではないのかもしれないですけど、
元々今回「歌詞のタイポグラフィ全部自作してえな!」って思っていたので、ラップパートは聴いていてとてもワクワクしました。
加えて、somuniaさんの元々のイメージや事前に伺っていた「タイムマシン」っていう曲のコンセプトからネオンっぽいビジュアルもイメージしていたのですが、そのあたりのイメージにもピッタリハマってきて、「すごく映像のイメージがわく作品だな…!」って思いました。
somunia:それぞれの言葉に合うフォントや動きになっていて、とても感動しました。ヤカさん自身も自分の歌詞がこんな風にMVになるのは初めてですか?
ヤカ:もちろんもちろん。自分の書く詞はラップがルーツと言うのもあり、めちゃくちゃに文章量が多いと思うんですよ。あの量のタイポを自作してもらったっていうのは本当にすごい…ありがたすぎる…。backwordは歌詞を読む面白さもあると思うので、こうやってMVという視覚情報にしてもらって、その上タイポにフォーカスを当てて作ってもらえたのはすごく解釈一致です。曲も喜んでいる。
ぬヴェントス:ありがとうございます。なんかもう…お褒め頂く言葉がもうカッコいいですね… さすがです…。
somunia:ヤカさんは発する言葉が全てかっこいい。
ヤカ:かっこいい人しかいない…。
ぬヴェントス:文字のデザインはむちゃくちゃ楽しかったです!
簡単に手書きでデザイン → 動きだけ先に決める → 動きに合わせて一文字一文字作 っていう作り方をしたんですけど、そのおかげで一文字一文字ちゃんとイメージしながら作れました。文字ごとにかけた時間とかもバラバラですし、気に入ってる文字もあれば今見たら「いや~これは」みたいなのもありますし、ぶっちゃけクオリティのバラつきがエグイなって自分では思ってます。
somunia:初めて映像を見た時、全てぬヴェントスさんが作ったものだと気が付きませんでした。全部手書きからデザインされていると知って、驚きのあまり思わず大きい声出しました..。MVには使用しなかったデザインなどもあるのですか?
ぬヴェントス:最初はけっこういろんなフォントで展開しようと思っていたので、作ったけど結局使ってないのはいくつかありましたね。音楽記号を組み合わせた感じのやつとか、手書きっぽいやつとか… ゴチャゴチャしてるのは曲の雰囲気を邪魔してしまうなと思って、最終的な数は絞ったんですけどね。
※MVでは使用されなかったフォント
somunia:こういったアイデアってどうやって作られていくのか、すごく気になります。
ぬヴェントス:なんとなく「日常的に気になる動き」みたいなものをメモしてて、それを文字にはめてみたらどうなるかな~って感じで作ってます。
今回で言うと、曲とは全然関係ないんですけど、巻き尺?メジャー?ですかね、あの距離図る工具。あれって結構伸ばすと途中でパキッて折れて、手首を動かすと折れた部分だけがスライドするじゃないですか。「じゃないですか」とか言って全然伝わる気がしないんですけど、あの動きがおもしろいなーと思ってて、今回「細めの線をベースにして文字作ろう」とは思っていたので、メジャーのあの動き合いそうだなと思って、組み合わせてみました。
ヤカ:言われると確かにメジャーの巻き取り感ありますね、すごい納得!!
somunia:こういう話を聞いてからもう一度MVを見たら、また違った楽しみ方ができそう。ちなみにMVの中で一番お気に入りの文字はありますか?
ぬヴェントス:線路の「路」ですね。
モーションは「現在地」の「現」と、「タイムマシン」が気にいってます。「路」はけっこう序盤にできたんですけど、これが気に入りすぎたせいで割と序盤から「全然だめだ!路を超えられねえ!」って呪縛にかかってました…。
somunia:路を超えられねえ! の響き好きです...。路、すごく可愛い。
ヤカ:「制」とか味があって好きですね、そうきたか!と思いました
ぬヴェントス:「路」の気に入ってるところって、たぶんこの一文字じゃ「路」って読めないんですよ。「路」トークばっかで申し訳ないですけど笑
たぶん「制」は一文字でも伝わる気がするんですよね。でも多分「路」は「線路」って並びだから「路」に見えると思っていて。そういう、本来単体で成立している"文字"を、連続性とか文脈も込みで見てみないと解読できないみたいな、そういう具合に抽象化できたかなと思ってて、それで気に入ってます。「制」は、メジャーみたいにパキパキさせたらもっと面白かったかもですね!
ヤカ:文脈によって成立する文字…前後がないと成り立たないっていうのがとても時間的ですね。好きです。
somunia:なんか、こうしたらもっと面白かったかもみたいなことってものづくりをしている上で付きまとう感情だと思うんですけど、それが今回の360°動画に繋がってきますね。
ぬヴェントス:360度動画に関しては、実は去年から「MV二本公開してみてえな」っていう願望があって。勝算があったわけじゃなくてただ「やってみたい」っていうだけなんですけど。そこで『backword』をご提案いただいた際に「時間」っていうテーマと組み合わせられるんじゃないか?って思って、それで2本作ろうと思いました。
二本目を360度にしたことについては、正直最初はやりたいこと先行すぎて「なんでやるんだっけ」って意味を見失ってたんですけど、Youtubeの360度動画の仕様上、視点の移動ができないんですよね。回転はできるけど。
移動できないっていう制限がかえって「誰かに憑依して、その人の見ている景色を見る」みたいな視点になるんじゃないかなと思って、製作途中で自分の中で筋が通りましたね。
somunia:ワタシ自身も同じ楽曲のMVを別バージョンで連続投稿するのは初めてだったので、この提案をしていただいた時は すごくワクワクしました。360°動画の制作にあたって、制作時の「もっとこうしていたら?」という、もしものメモを書いて集めましたよね (360°MVの中で、目の前のPCに表示される文章) 曲が進むにつれ、私の分とヤカさんの分が表示されていく演出になっていて。「もっとこうしていたら?」についてメモを書いているとき、結構悩みませんでしたか?
ヤカ:悩みましたね。曲のリリースが去年と言うこともあって色々振り返りながらまとめました。後悔を書き出すって行為は意外と時間とともに薄れていったり、逆に厳選されてしっかり覚えているのは覚えてたり、というのを体感しました。
somunia:ぬヴェントスさんも普段制作時はそういった「もっとこうしていたら...」みたいなご経験はあるほうですか?
ぬヴェントス:むちゃくちゃたくさんありますね! 正直公開された直後から「ああああそここうすればよかったああ」って毎回思ってます。
somunia:ありますよね..。今回の360°MVであえてそういうことを見せる表現をしたのが、斬新というか新鮮でした。その横には1本目公開時のコメント欄が表示されて、たくさんのお褒めの言葉が流れていて...360°MVを見て、考えさせられたというコメントも多かったです。
ぬヴェントス:ぶっちゃけて言ってしまうと、somuniaさんヤカさんのコメントは「選択次第で起こり得た別の可能性」で、右のコメント欄は、むちゃくちゃ性悪な表現ですけど「どの未来を選択したとしても変わらなかったであろう結果」のメタファーでした。ほんと性格悪いメタファーですけど…。
somuniaさんが「シュタゲみたいな」っていうことをぽろっとおっしゃってたので、そういうところからイメージして作ってますね。ラストサビの浮遊物体が電子レンジなのとかもシュタゲリスペクトです。
※シュタゲ:STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)の略称。とても面白い作品。
somunia:シュタゲ、大好きです。
ぬヴェントス:僕も好きなので、楽しかったです笑 360度動画にせよ、ヤカさんが仰る「路」デザインの時間的要素にせよ、やりたいこと先行で作って動機とか理由が追いついてくるっていう、ハンターハンターのジンみたいな作り方ができたのがすごい楽しかったです。
ヤカ:笑 そういえば公開日がバックトゥーザフューチャーの放映日で笑いました。88マイルとか、ジゴワットとかそこがネタ元なので。
ぬヴェントス:全然知らずに公開日決めてましたね笑 公開後にsomuniaさんに言われて「え」「 ああ笑 ラッキーラッキー笑」って感じでした。
somunia:こういう偶然があるから、面白いですね。
ぬヴェントスさんは、本当に素晴らしい映像を作ってくださるクリエイターさんです。ぜひ今後も、somunia楽曲の世界観を翻訳して欲しいです。
ヤカ:ボク自身の経験の中でも貴重な体験させていただきました、お二人のおかげです!ありがとうございました。
ぬヴェントス:こちらこそ、ほんとに楽しく作らせていただけました…! ほかの楽曲でも「あーこういうMVいいなあ」っていう案があったりしたので、機会あればぜひ作らせてください!!!
somunia:はい、是非。既に楽しみです。
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