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「ねぇ、ゲームしよっか」

島崎がそう言ったのを聞いて、俺は思わずビクリと身体を震わせた。



ドアが開けられた女子サッカー部の部室の前。

練習が終わり、さっさと帰ろうと部室の前を通った俺に中から声を掛けて来たのは3人の先輩だった。

女子サッカー部で有名なこの3人は、サッカーよりも俺達男子サッカー部を苛めるために部活に来ているのではないかと思う程に性格が酷いことで有名だった。

弱小である男子サッカー部と比べ、女子サッカー部は県内でも有数の強豪校として有名で、学校でも圧倒的に女子サッカー部の権力が強かった。

男子サッカー部は女子に目の敵にされ、コートの清掃から準備まで男子サッカー部が行うのが当然となっている。

その中でも島崎、橘、本城。

この3人は悪魔だった。

サッカーもレギュラーから外れたことが無い程上手い上に見た目が良く、勉強も出来て性格が明るいので、教師からの受けも良い3人。

当然生徒からの人気も高く、試合になれば男子だけでなく女子生徒までもが集まって応援にくる程だ。

しかし実際は性格が悪い上に、相手が苦しむことが好きなドS。

怖い連中とも付き合いがあるという噂もあり、苛められている男子たちはそれを誰かに相談することもできず、教師に言ったところで3人の評価が高いせいで信じて貰えず、結局は泣き寝入りすることしかできないのだ。


3人は部活終わりにランダムで男子サッカー部員の誰かに声を掛け、そいつをターゲットに弄ぶのが恒例だった。

そして今日のターゲットに俺が選ばれてしまったのだ。


「ねぇ、ゲームしよっか」

俺と3人の先輩たちしかいなくなった部室で、島崎が俺に向かってニヤニヤ笑いながら言ってきた。

ターゲットに選ばれたことが初めてではない俺は、『ゲーム』という単語を聞いて過去の嫌な記憶が一気に蘇ってきた。

男子部員3人でオナニーをして、誰が一番最初にイけるかのゲーム。

口に水を含んだまま先輩たちから順々にケツを蹴られて、一滴も零さないでいられるかのゲーム

そんなゲームには勿論罰ゲームが用意されており、散々な目に合ったのを思い出す。

「げ、ゲームですか。良いっすね。やりたいです」

俺は声が震えそうになるのを堪えながら、なんとか返事をした。

ここで乗り気な様子を見せないと、もっと酷い目に合わされるのは経験上皆知っている。

先輩たちといる間はずっと楽しそうに、乗り気でいることが俺ら男子部員たちの間での暗黙のルールだった。

「今日はあなたのために良いゲームを考えてきてあげたのよ」

「あ、ありがとうございます!」

「ゲーム考えてきたって、橘ってすっごい後輩思いじゃーん」

「ほんとほんと。あんたもこんな後輩思いな先輩がいて嬉しいでしょ?」

「う、嬉しいっす」

三人が部室のベンチでユニフォームのまま座り、俺を見ながら口々に言うなか、俺は必死に作り笑顔を浮かべて3人の前で後ろ手に組んで立っていた。

「で、橘はどんなゲーム考えてきたの?」

「まぁまぁまぁ。私達のことを思ってくれてる後輩にとっては簡単なゲームよ」

橘は健康的に焼けた肌で白い歯を見せて笑いながら、自身の履いているスパイクをモゾモゾと動かし始める。

俺は嫌な予感がしながらも、ただただヘラヘラ笑っていることしかできなかった。

「ほら、私達って今練習終わりで足が臭いじゃない?」

「うんうん、今日暑かったしかなりくさくさになっちゃってるねぇ」

「っていうか今も匂ってるしー」

「でしょ?だけどそんな足の匂いにも、人によって違いがあると思うのよ。だから、今から須藤君には嗅いだ足が誰の足の匂いか当てて貰おうと思ってさぁ」

橘からとんでもないゲームが提案され、思わず作り笑いをしている顔が引きつってしまう。

「ぷっっっ!!何それ面白そう!」

「良いじゃんやろうやろう!」

そしてそんな橘の提案に乗り気な二人。

つまり、今から俺はあいつら三人のあの臭そうな足を嗅ぐと言うこと…

只でさえ足なんて嗅ぎたくないのに、サッカー終わりでグチャグチャになったソックスを履いた、こいつらの臭そうな足を嗅ぐなんて冗談じゃない。

「い…」

嫌ですと口まで出かかった言葉を必死に飲み込む。

「い、良いっすね」

そしてなんとか笑いながらそれだけ言うので限界だった。

「でしょ?須藤君もこの足、嗅ぎたいよねぇ?」

橘は返事をした俺に向かって足を伸ばし、汚れた白いスパイクに青のソックスを履いた足をブラブラと揺らす。

「は、はい。嗅ぎてぇっす」

どんなに嫌でも、全てを肯定することしかできない。

少しでも機嫌を損ねると蹴られたりともっと酷い目に合わされるのだ。

見るからに臭そうな足を嗅ぐのは嫌だが、痛いのはもっと嫌だった。

「よし、須藤君もそう言ってるし早速始めよっか!ほら、そのまま膝ついて四つん這いになりなさい」

「はい!」

俺は橘に言われた通り、その場で四つん這いになって三人の方を見上げる。

「あははっ、犬みたぁい。えっと…あぁ、これで良っか」

すると島崎がベンチに置いてあった汗拭き用のタオルを取ると、俺の方へと来て目を隠すように頭に縛った。

「ねぇ、ちゃんと見えないようになってる?」

「は、はい!見えないっす」

目隠しは少し目の上にあったせいで、目線を下にすれば少しだが見ることはできていた。

だけどそれは敢えて言わない。

少しでもゲームを早く終わらせるには一回で匂いを当てなくてはいけないから、このぐらいのズルは許して欲しい。

と言うか、そもそも匂いを当てさせるなら、まずは見える状態で一度三人の足を嗅がせてから目隠しをして再度嗅がせて、誰の足の匂いかを当てると言うのが普通ではないのか。

ヒントもなくいきなり嗅がされて当てられる訳がないのだ。

最初から当てさせる気がないのだから、このズルはお互い様だろう。

「よし、じゃあ最初は…」

最初俺の位置からみて真ん中に橘、左に島崎、そして右に本城がいた。

タオルの隙間からは足元しか見えないが、左の奴が真ん中に移動したのが分かった。

そしてそいつが赤いスパイクを脱ぎ、ソックスを履いた足を露わにする。

つまり今から俺に嗅がそうとしているのは島崎だ。

島崎は外の空気に触れた涼しさを楽しむように、スパイクから現れた青いソックスを履いた足指をグニグニと動かす。

ぐっしょりと足汗で蒸れているのが見ただけで分かり、練習後のため土汚れでドス黒く汚れていた。

「じゃあいくよ~」

そう言う橘の声が聞こえた瞬間、俺の鼻へと島崎の足裏が押し付けられた。

「っっっっ!!」

鼻の穴を塞ぐように島崎の足裏が張り付き、足汗で濡れたソックス越しに弾力のある熱い足裏を鼻で感じる。

嗅ぐ前からその感触の不快感で全身に鳥肌が立っていた。

「ほら、嗅ぎなさい」

今度は本城の声が聞こえ、俺は仕方なく鼻からすぅっと息を吸い込んだ。




続きは4月7日に他プランでも公開予定

現在タバコプランにて先行公開中

全文約8300文字


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