Home Artists Posts Import Register

Content

 私が今週から住み込みのメイドとして勤め始めたお屋敷には、変な壁飾りがある。  手足を壁に埋め込まれた女性を象った、金属製のオブジェだ。  乳首とお股に相当する位置の突起には、緑色のLEDランプが点灯しているが、照明としては暗い。きっと、実用品ではなく、現代芸術というやつなのだろう。  下品な感じがしてあまり好きではないのだが、メイドのお仕事として、今日は掃除を命じられた。  それで触れてみて、いっそう変だと思った。  ランプが灯る乳首とお股の突起が、振動しているような気がする。  鼻に開けられたふたつの穴のうちのひとつから、シューシューと空気が通過する音がする。手を近づけてみると、実際に空気が吸い込まれたり吹き出されたりを繰り返している。  まるで、中に生きている人がいて、呼吸しているかのように。 「その壁飾りに、興味がありますか?」  気になって手を止め、しげしげと見ていると、背後から声をかけられた。 「ひッ!?」  驚いて振り返ると、メイド長が立っていた。 「いえ、興味というほどでは……なんと言うか、ちょっと気になって」 「そうですか……もし少しでも興味がおありなら今日の夜、お勤めを終えてから、ここに来てくださいね。ちょうど今夜、壁飾り係の交代がありますから」  壁飾り係、交代、その不穏な言葉の意味を、そのときの私は深く考えていなかった。  ふだん眉ひとつ動かさない無表情なメイド長が、妖しく嗤ったことに気を取られて。  そして、お勤めを終えて夜。ほんのちょっとだけ気になって、壁飾りの間にやってきた私が見たものは――。

Files

Comments

No comments found for this post.