お屋敷の壁飾り (Pixiv Fanbox)
Published:
2024-02-09 09:00:00
Imported:
2024-02
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私が今週から住み込みのメイドとして勤め始めたお屋敷には、変な壁飾りがある。
手足を壁に埋め込まれた女性を象った、金属製のオブジェだ。
乳首とお股に相当する位置の突起には、緑色のLEDランプが点灯しているが、照明としては暗い。きっと、実用品ではなく、現代芸術というやつなのだろう。
下品な感じがしてあまり好きではないのだが、メイドのお仕事として、今日は掃除を命じられた。
それで触れてみて、いっそう変だと思った。
ランプが灯る乳首とお股の突起が、振動しているような気がする。
鼻に開けられたふたつの穴のうちのひとつから、シューシューと空気が通過する音がする。手を近づけてみると、実際に空気が吸い込まれたり吹き出されたりを繰り返している。
まるで、中に生きている人がいて、呼吸しているかのように。
「その壁飾りに、興味がありますか?」
気になって手を止め、しげしげと見ていると、背後から声をかけられた。
「ひッ!?」
驚いて振り返ると、メイド長が立っていた。
「いえ、興味というほどでは……なんと言うか、ちょっと気になって」
「そうですか……もし少しでも興味がおありなら今日の夜、お勤めを終えてから、ここに来てくださいね。ちょうど今夜、壁飾り係の交代がありますから」
壁飾り係、交代、その不穏な言葉の意味を、そのときの私は深く考えていなかった。
ふだん眉ひとつ動かさない無表情なメイド長が、妖しく嗤ったことに気を取られて。
そして、お勤めを終えて夜。ほんのちょっとだけ気になって、壁飾りの間にやってきた私が見たものは――。