Kagu Bondage (Pixiv Fanbox)
Published:
2019-03-01 10:11:16
Edited:
2022-04-02 05:13:45
Imported:
Content
Kagu Bondage
「机田さん、棚野さん、わかっていますね?」
卒業式のあと学年主任の先生にかけられた言葉に、私、机田波留子《つくえだ はるこ》と親友の棚野亜希子《たなの あきこ》は、表情をこわばらせてうなずいた。
私立KB学園。
その校名は学園創始者のイニシャルに由来していると言われるが、実は違う。KBはKagu Bondage、すなわち家具拘束の略なのだ。
それを知る学園生は、3年生では私と亜希子のみ。下級生のなかにも知る者はいるだろうが、それが誰なのかはわからない。
学園に通うあいだの授業料と寮費の免除、さらに年季明けの進路の確約と引き換えに、学園理事長の歪んだ欲望を満足させるため、卒業から1年間家具拘束されて過ごす。
その条件を飲んで入学した学園生と、限られたごく一部の教職員以外、真実を知る者はいない。
もちろん、気が変わって1年間の家具拘束を断ることもできる。その場合でも、授業料や寮費を請求されることはない。
ただし、将来の進路の確約は失う。
そして学園の理事長は、KB生がどんな望みを抱いても、叶えられるほど強い力を持っている。逆にいえば、その力を約束を違えた者の将来を潰すために使うこともできる。
実際、過去に断った卒業生もいたらしいが、彼女たちが幸せに暮らしているという話は聞いたことがない。
それよりなにより、私と亜希子には夢がある。ふたりでやりたいことがある。
(だから……!)
強い意思を込めてうなずきあい、私たちは理事長差し回しの高級車に乗り込んだ。
黒塗りの高級車で私邸に運ばれた私と亜希子は、理事長の書斎に案内された。
そこで自由意思で家具拘束を受けることを選んだという意味の同意書にサインすると、理事長が薄く嗤って私たちに告げた。
「制服と下着を脱ぎなさい」
「えっ……?」
その言葉に、とまどいの声をあげたのは私。なぜなら、そこには理事長と私たち以外に、何人かのメイドさんがいたから。
「そんなの、聞いてない!」
声を荒げて抗議したのは亜希子。なぜなら、私たちの契約に、人前で裸になることは含まれていなかったから。
「あら、貴女たちはたった今、同意書にサインしたばかりよ」
「な、なんですって……?」
「ここを見なさい……家具拘束を受けるにあたっては、KB学園理事長の指示にすべて従うこと」
しかし、同意書の理事長が指差した箇所には、たしかにそう書かれていた。
「そ、そんな……でも、裸で家具拘束だなんて……」
「もちろん、今からでも辞退することは可能よ。辞退しても、約束どおり授業料や寮費を請求したりしない」
だがその場合、将来の確約を失うことも約束どおり。
(どうする?)
その思いを込めて亜希子を見ると、彼女も私を見ていた。
(やろう……!)
鳶色の瞳の奥に、強い意思を感じる。
そして同じ意思は、私のなかにもある。
あらためてそのことを確認し合い、革張りのチェアに腰かけた理事長とメイドたちが見守るなか、私と亜希子は制服に手をかけた。
まずブレザーを脱ぎ、歩み寄ってきたメイドに手わたす。
カッターシャツの一番上のボタンを外し、リボンタイを抜き取る。
シャツとスカートどちらを先に脱ぐか一瞬考えて、亜希子がしていたようにカッターシャツとボタンを上から順番に外していく。
露わになる校章入りの白いブラ。
ちなみに私たちは、学園と理事長から支給された衣類以外、身につけることを許されていない。休日、ほかの寮生と外出するときの私服も、理事長が選んで用意したものだ。
シャツに続いてスカートも脱ぐ。
ブラとお揃いのショーツも、もちろんソックスも校章入りの指定品。
「下着も脱ぎなさいと言ったでしょう?」
下着姿でもじもじしていると、理事長が冷たく言い放った。
「くっ……」
亜希子が悔しげにうめき。
「ぅう……」
私がくるおしくうめく。
もう一度見つめ合い、うなずき合って両手を背中に回す。
ホックを外し、カップを手で押さえて肩紐から腕を抜き、最後にブラごと手を下ろす。
すると、私たちが下着を脱ぐことをためらった理由が。一般の学園生なら、いやふつうの女性なら、けっして着けることのない装具が露わになった。
それは乳房の頂点、ぷっくり膨れた豆を貫き穿つ金属環――乳首ピアス。
ピアスを外せば穴は塞がるからと言い含められて着けられたときは、太さ2ミリ程度の小さな輪だった。
以来少しずつピアス穴は拡張され、今は太さ5ミリ、直径5センチ程度の巨大な輪が乳首を貫いている。
もうここまでくると、ほんとうに元に戻るか不安はある。
だが私には、この先一生亜希子以外に全裸を見せるつもりはない。亜希子にも、私以外に乳房を晒す気持ちはない。だから、跡が残っても問題ない。
とはいえ、学園生活を送るうえでの不便はあった。
まず、ほかの寮生と一緒に入浴することはできなかった。KB学園の寮はふたり部屋で、各部屋にシャワールームが設えられていたが、私たちは3年間、大浴場を使えなかった。
さらに、常に乳首ピアスの存在を意識していなければいけない。
乳首はもっとも敏感な場所のひとつである。その感じやすい肉の内側から、絶えず硬い金属に刺激され続けるのだ。ブラでピアスの動きを抑えてはいても、片時もその刺激からは逃れられない。
そして私と亜希子が存在を意識し続けないといけないものは、ショーツの下にもあった。
それは貞操帯。性器を封印する硬いステンレス鋼製の下着を、私と亜希子は着けられていた。
その見た目は、乳首ピアス以上にインパクトがある。ただし、装着の違和感は乳首ピアスよりずっと小さい。
それは、貞操帯が精密にサイズを測定されて誂えられた私たちの専用品であるうえに、日常生活に支障をきたさないよう工夫された代物だから。
Tバックショーツにも似た形状のそれの横ベルトは、ウエストではなく腰骨の上端に沿う形状。
そこは胴体のなかでは一番肉が薄い場所だけに、体型変化の影響を受けにくい。おまけにお腹を圧迫しないから、食事もふつうに採れるし、運動もできる。
お尻の穴の周りは丸くくり抜かれていて、大きいほうの排泄には問題ない。媚肉の部分は溝が切られており、その上に小さな穴が無数に開けられた板が別に重ねられている。そのため洋式トイレならおしっこの排泄にも苦労しない。
ただし、性器にはいっさい触れられない。
シャワーを浴びるとき、お湯やボディソープの泡を流し込んで洗浄してはいるが、完全に洗い流せているか自信はない。
そんな場所を清潔に保つため、毎週日曜、医師の資格を持つ理事長によるメンテナンスが行われてきた。
両手を拘束され、目隠しされて貞操帯を外され、そこを検査されながら拭き清められる。
初めは死にたくなるほどの羞恥心に身悶えたものだが、毎週繰り返されるうち、その行為にも馴らされてしまった。
だから、私たちは理事長に裸を見られることには慣れている。
しかし、年齢が近いメイドに見られるのは恥ずかしい。乳首ピアスや貞操帯を見ても、彼女たちが驚いたそぶりを見せないのが、せめてもの救い――。
そんなことを考えていると、理事長が貞操帯の鍵と目隠しを含めた複数の拘束具をメイドに手わたした。
「家具拘束用の貞操帯に交換してあげなさい」
「はい、奥さま」
メイドが軽く膝を折り、優雅に挨拶して拘束具と鍵を受け取る。
「ちょっ、それは……」
私の代わりに抗議の声をあげたのは亜希子だ。
「それは、あんまりだ……です」
思わず乱暴に抗議して、思い直して『です』だけつけ足すのが亜希子らしい――などと感じる余裕は、そのときの私にはなかった。
「家具拘束を受けるにあたっては、KB学園理事長の指示にすべて従うこと……」
そこで私たちを交互に見て、理事長が再び同意書の条文を暗唱した。
「どうする? 今からでも辞退することは可能よ」
薄く嗤って訊ねる言葉も、先ほどと同じ。
そして、私と亜希子が辞退しないのも同じ。
彼女は、私たちが絶対に降りないと確信しているのだ。
ふたりの夢を、その実現のため強い決意をもって臨んでいることを、知っているのだ。
そしてそうと気づいても、どうすることもできない。私たちには夢のために続けるか、夢を諦めて降りるか、ふたつにひとつの選択肢しかない。
「始めなさい」
私と亜希子がうめいて視線を落としたところで、理事長がメイドに命じた。
「かしこまりました」
その命令に応え、私の背後に立ったメイドに、目隠しのアイマスクがわたされる。
「失礼します」
頭の後ろから声が聞こえた直後、視界が黒い革に占拠された。
反射的に目を閉じたところで、柔らかい革が瞼に触れる。そのまま額から頬にかけて密着し、私の視覚が奪われる。
「首輪を着けさせていただきます」
続いて前から声が聞こえ、首に革が巻きつけられた。
「両手を拘束いたします」
そして、次は手枷。
「お手を失礼します」
手枷を着け終わると、メイドは私の腕を上げさせ、肘を折って頭の後ろで首輪の金具とつないでしまった。
これでもう、手で身体を隠すことができなくなった。
とはいえ、使われた拘束具は理事長のメンテナンスのときと同じ。拘束された姿勢もいつもと同じ。
そしてこれから追加される拘束も、私は知っている。
「おみ脚をお開きください」
膝の少し上にも革の枷を着けられ、予想どおりの言葉をメイドが口にした。
カチャカチャと金具の音がするのは、膝の上の枷にバーが繋がれているのだろう。これで、脚を肩幅より少し広い程度に開いた状態から、閉じられなくなった。
そうしてメンテナンスのときと同じ姿勢に拘束されたところで、貞操帯の南京錠が外される。
カチッ、と小さな金属音とともに、おへその下あたりで貞操帯がみっつに分かれた。
熱く火照る媚肉が、外気に晒される。
晒された媚肉に視線を感じ、反射的にヒクヒク震える。
「奥さま、いい具合になっております」
私の媚肉を覗き込んだメイドの言葉。それは、どういう意味なのだろうか。
『いい具合』というのは、おおよそ理解できる。常に乳首ピアスに刺激し続けられている私のそこは、濡れそぼっているはずだ。だからこそ、メイドに見られることをためらった。
「そう、予想どおりね。そのまま家具拘束用貞操帯装着を進めて頂戴」
とはいえ、その言葉の意味はわからない。
毎週メンテナンスをしていた理事長が、私たちの状態を予想していたことは理解できる。しかしそれが、家具拘束用貞操帯となんの関係があるのか。貞操帯は媚肉の状態にかかわらず、そこを密閉して触れられなくするための装具なのに――。
そこで、新たな貞操帯が腰に巻きつけられた。
ひんやりと冷たい、ステンレス鋼製の横ベルト。それが腰骨に引っかけるようにみっちりと巻きつけられ、おへその下で仮留め。
それからお尻のほうにぶら下がっている縦ベルトを、開いた脚のあいだから前側に――再び性器が閉じ込められると思った刹那、お尻の穴に冷たいものが触れた。
「ひうっ!?」
短く悲鳴をあげたところで、その物体がお尻の穴にズルリと侵入してきた。
完全なる不意打ち。括約筋を引き締めて侵入を拒む暇《いとま》はなかった。
「ひいいッ!?」
ふだんは一方通行で排泄するだけの場所に、異物を挿入されるおぞましさ。
思わずぶざまな声をあげてしまった直後、亜希子も悲鳴をあげた。
「ふふふ……メイドたちの手際のよさに感謝しなさい」
「な、なにを感謝しろって……ひいいッ!?」
言い返そうとした亜希子の言葉は、途中で変な声に変わった。おそらく、私と同じように異物を奥まで挿入されたのだ。
「挿入された金属棒は、太さ1センチ程度。ローションをたっぷりまぶしてあるから、挿入を拒めるものではないわ。でも無理に肛門を引き締めて拒もうとすれば、激痛に襲われる。その時間的余裕を与えず挿入を済ませたメイドに、感謝しなさいと言ってるの」
その言葉に、私も亜希子も言い返すことはできなかった。
異物を肛門内に固定するように、貞操帯が閉じられようとしていたからである。
「や、やめて……お願い」
私の口から出た言葉は、抗議ではなく憐れな懇願。
「やめ……いやだ……」
亜希子の声も、拒絶にすらならない。
逃れようにも、拘束された身体を抱えるようにメイドに押さえられ、身動きできない。
「いやぁ……やめてぇ……」
弱々しい懇願が聞き入れられるはずもなく、貞操帯が閉じられる。
媚肉が、ムニッと金属板に押し当てられる。
その感覚が、いつもの貞操帯と違うことを気に留める余裕がないまま、縦ベルトが仮留めされていた横ベルトに組み合わされ――。
カチリ。
南京錠が施錠され、肛門に異物を挿入されたまま、私の股間は再封印された。
家具拘束用の貞操帯を着けられた私たちを待っていたのは、コルセットだった。
ファッションアイテムでなどではなく、クラシカルな本格的矯正具のそれを着けられ、メイドの手で編み上げ紐を引き締められ、ウエストはふだんより10センチ近く絞られてしまった。
そのせいで、お腹が苦しい。お腹だけじゃなく、乳房のすぐ下まで締めあげられ、胸郭を膨らませて呼吸するのが困難になった。
それから、額に特殊な染料でなにかを書かれた。
「毎日洗えば、2週間程度で落とせます」
メイドに言われ、同じように書かれていた亜希子を見ると、彼女の額には『棚』と書かれていた。そしてたぶん、私の額には『机』と書かれているのだろう。
『うふふ……卒業後どの家具になるか、決まったも同然ね』
私たちの姓を知ると、理事長はそう言った。そのときから、亜希子は棚に、私は机にされることが決まっていたのだ。
そして決定どおり、私たちは自分の身分を額に刻印された。
私は机に、亜希子は棚に、学園生から家具へと堕とされた。
そんな状態で手枷を後手につなぎ替えられて、私は廊下を連行されていく。開脚を強制する腿枷と目隠しのアイマスクを外され、後手の両腕をふたりのメイドに取られてヨチヨチ歩かされる。
亜希子はいない。書斎を出たところで、別の方向に連行されていった。
そこで、不安な気持ちが生まれた。亜希子が側にいないだけで、その姿が見えないだけで、私は強く在れなくなった。
それほどまでに、私のなかで亜希子の存在は大きいもの。
いや、ただ大きいだけじゃない。
亜希子はすでに、私の一部。私もまた、亜希子の一部。ふたりはお互いにとって、かけがえのない存在。
もし亜希子が男の子なら――もっとも男子なら好きになっていないだろうが――卒業してすぐ結婚していただろう。
でもこの国ではまだ、女の子どうしの結婚は認められていない。
そこでいつしか、私たちは同性婚が認められた他国に移住、その国の市民権を取得して、結婚することを望むようになった。
とはいえ、それもまた困難な夢。仮に実現するとしても、どれほどの時間と労力がかかるかわからない。
そんなとき、KB学園の家具拘束制度を知った。
理事長に訊ねると、彼女の権力をもってすれば、数年で実現できると断言した。
「年季明け、かの国に留学する。その間に私が各方面に手配すれば、卒業と同時期に市民権を取得させてあげられるわ」
そう言って彼女は、過去に同じ手法で市民権を取ったKB生OGの事例を紹介した。
「そのためにも、学園生でいるあいだに、日常会話くらいはできるようになっておきなさい」
さらに理事長は、そのために英会話の講師までつけてくれた。
それで彼女のことを信用した私たちは、貞操帯や乳首ピアス装着を受け入れてKB生として過ごした。
(だから……)
あと少しだ。たった1年、家具拘束に耐えるだけで、私と亜希子の夢は叶う。
そう考えて萎えそうになる気持ちを奮い立たせ、私は廊下を連行されていく。
「ふっ、ふっ、はっ……」
コルセットのせいで深く息を吸い込めず、浅く短い呼吸を繰り返しながら。
「はっ、はぅ、はぅ……」
一歩歩くごとに、異物にお尻の穴を抉られながら。
「はぅ、はぅ、はぁ……」
そこで、貞操帯の金属板に押しつけられた媚肉に感じる刺激が、いつもより大きいことに気づいた。
(そういえば……)
媚肉が貞操帯に閉じ込められるとき、いつもと感触が違うと感じた。
そのことと、刺激が大きいことは関係あるのだろうか。
実のところ、新しい貞操帯の媚肉にあたる部分の形状は、これまでと違っていた。歩くだけで媚肉が擦られ、緩く刺激されるよう、工夫されたものになっていた。
そのことも、さらに用意されているしかけも知らず、私は長い長い廊下を連行されていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
コルセットで胸郭の動きを制限された身を強制歩行させられ、呼吸はますます荒くなる。
「はぁ、はぁ、はぁあ……」
いや、それはただ苦しいだけじゃない。
お尻の金属棒と媚肉部分のしかけに、緩く性感を煽られているからでもある。
そのことに気づいたところで、私にはどうすることもできない。
「はぁあ、はぅん、はぁ……」
私にできるのは、熱い吐息を漏らしながら、恥ずかしくみじめな姿で連行されていくことのみ。
そしてたどり着いた部屋には、奇妙な形の机が置かれていた。
幅は1メートル弱、奥行きは60センチを少し超えるくらいか。勉強机をひと回り小さくしたような机の天板には丸く穴が開けられ、その部分で前後2分割になっている。
(あれに拘束されるんだ……)
そう確信したところで、上半身の拘束が追加される。
二の腕にも革の枷が嵌められ、その枷どうしを短いベルトで繋がれ、腕は一本の棒のようにまっすぐ揃えて拘束された。
それからコルセットを着けられたウエストの一番細いあたりで、腕ごとベルトを締められた。
メイドの拘束は容赦ない。あらゆるベルトは、限界ギリギリまで引き絞って、バックルを留められる。金具をはめるとごくわずかに締めつけが緩むが、それでも拘束はきつい。
(こんなきつく拘束されて、1年間も……)
耐えられるのだろうか。
(いえ、耐えなきゃいけない……耐えてみせる!)
不安になりがちな気持ちを必死に奮い立たせたところで、メイドが天板の前部分を外した。
「天板の窪みに首の後ろを当ててお座りください」
机の下の床に2本、ベルトを敷いて命じられ、そのベルトに脛を載せるように、正座で座る。すると天板の後ろ部分の窪みは、私の首の位置にぴったりだった。
おそらく、そうなるよう天板の高さを調整しているのだ。
その高さは勉強机としては若干低すぎるが、使うときは椅子の高さで調節できるだろう。それになにより、実用性より私を家具拘束するということが最優先なのだ。
そんなことを考えるうち、折りたたんだ脚をまとめて、2本のベルトで締められた。これで、もう立ち上がることはできない。
さらに脚を縛《いまし》めるベルトを、机の土台部分に接続された。これでもう、机から離れられなくなった。
そして動けなくなった私を机と一体化させるべく、メイドが再び天板の前部分を載せる。
丸い穴が私の首を捕らえたところで、左右ふたつずつ、合計4箇所の金具で天板を固定していく。
さらに金具ひとつひとつに鍵をかけられ、私は机とひとつに拘束された。
しかし、まだまだ拘束は終わらない。
天板の穴と私の首の隙間を埋めるように、内側に黒いウレタンが貼られた鉄の首輪が嵌められた。
それで首をまったく動けなくされて、首輪も天板に固定された。
「口をお開けください」
そこで、メイドがみっつ穴が開けられた黒い樹脂製の玉に複雑なベルトを組み合わせた装具を手に告げた。
(あの玉を、口に入れられるんだ)
ボールギャグを知らなくともそう感じ、ギュッと固く口をつぐむ。
(口に入れられ、ベルトで留められると、喋れなくなってしまう)
そう考えて、最後の最後で抵抗を試みる。
「仕方ありませんね……」
そこで小さくため息をつき、メイドがポケットから小さなリモコンを取り出した。
「使用する許可は、奥さまにいただいておりますので」
そしてそう言うと、眉ひとつ動かさずリモコンのスイッチを押した。
その刹那――。
「ぃぎぁあああッ!」
お尻の穴に猛烈な衝撃を感じ、前後不覚に悲鳴をあげてしまった。
「あぁあぁッ……んがッ!?」
意識せず全身がこわばるような衝撃が突然終わったところで、口中に玉を押し込まれた。
「んぐッ、あぅあ……」
すかさず、頭の後ろでベルトを締め込まれた。これで、大きな玉を吐き出せなくなった。
「あぅあ、んぁう……」
さらに、顎の下でベルトを締められた。これで、噛まされた玉に下顎を押しつけられた。
「んぁう、んぅう……」
そして鼻の横を通って頭頂部から後頭部に達する逆Y字の縦ベルトを締められると、頭を押さえられて口を開けようとできなくなった。
肉体に加え、口まで完全に拘束されて、もう私にはいっさいの自由がない。
「このリモコンですが……」
私が完全拘束を実感したところで、メイドがリモコンの説明を始めた。
「スイッチを押すことで、肛門に金属棒から電撃を与えることができます」
それでさっき感じた衝撃が、電撃だったのだとようやく気づいた。
「ぉうあ(そんな)、うぉう(ひどい)……」
思わずあげた抗議の声は、言葉にならなかった。苦悩に身悶えかけて、身体はピクリとも動かせなかった。
そのことであらためて拘束の厳しさを実感したところで、メイドがリモコンを操作する。
「さらに、モードを切り替えると……」
そこで貞操帯の中、媚肉の直上で、なにかが振動を始めた。
「ひうっ!?」
それで思わず声をあげ、媚肉に強い刺激を感じる。
強い刺激を受けて、緩く煽られ続けてきた性感が、一気に高められ始める。
「はふ、はっ……ふはっ!?」
そこで、口中に押し込まれて固定された玉の穴から、涎が噴き出した。
「はふうっ!?」
慌てて吸い込もうとしてできず、噴き出した涎は私の顎を伝って落ち、天板に水たまりを作った。
「わかりましたか?」
涎のことにはいっさい触れず、メイドが言葉を続ける。
「この振動が、あなたへのご褒美。さっきの電撃が、罰になります」
言葉を続けながら、私たちが学園で使っていた教科書を、私の顔の前に積み上げる。
そして積まれた教科書が私の頭の高さに達し、視界の大半が奪われたところで、部屋の扉が開けられた。
台車に積まれた大きな箱――机と同じ木目の棚の背面が、教科書の隙間からチラリと見えた。
(亜希子の棚だ!)
すぐそう直感するが、亜希子の姿は見えない。
私の机の斜め前に、台車に載せられた亜希子の棚が運ばれてきた。
運んできたメイドと部屋にいたメイド、4人がかりで棚が台車から降ろされる。
降ろされた棚が、私の机の横に据えつけられる。
そこで、ようやく視界の端に棚が入った。
しかし、見えるのは棚の横板だけ。亜希子の姿はいっさい見えない。
棚の扉が開けられる。
「ぅう、ぅうぅ……」
亜希子の苦悶のうめき声が低く聞こえるなか、私の顔の前に積まれていた教科書が、亜希子の棚に収納されていく。
「就寝時には、いったん拘束が解かれます……」
その作業を続けながら、メイドが口を開いた。
「ただし、それは導眠剤を投与し、強制的に眠らせてから、そのあいだに排泄に含めた身体のメンテナンスを行い、充分な睡眠時間ののち、強制覚醒する前に再び拘束します」
つまり、意識があるあいだは、常に拘束されているということだ。
なんという残酷さだろう。
『1年間、家具拘束されてすごす』
それが文字どおりの意味だったのだと、今さら思い知らされた。
(亜希子は……)
どうなっているのだろう。
どう思っているんだろう。
愛しい人の顔が見たい。ひと目顔を見て、安心したい。思いを共有したい。
でないと、これほど厳しい拘束と残酷な現実に耐えられるそうにない。
亜希子の顔が私より凄絶な状態に貶められていることも知らず、私は切実に願ってしまう。
しかし、その望みは叶えられなかった。
教科書の収納を終えたメイドが、亜希子の棚の扉を閉める。
亜希子のうめき声が、再び聞こえなくなった。
気づくと、私たちが据えつけられた場所の対面の壁に、1枚の写真パネルが飾られていた。
それは私たちが、KB学園に入学してすぐ撮られた記念写真。
まだ家具拘束がどんなものかも知らず、手をつないでピースサインでにこやかに笑う私と亜希子。
はたして、これほど残酷な目に遭わされるとわかっていたら、KB生に志願しただろうか。
わからない。わかったところで、あとの祭り。もはや無残な家具拘束から逃れる術《すべ》はない。
そのことを実感させられながら、私は否応なく貞操帯のしかけに昂らされていった。
私たちのことをモノを見るような、そこにもともとあった家具を見るような視線を向けるメイドたちの環視のなかで。
(了)