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あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。 初夢の巫女緊縛  緊縛。  固く縛ること。  国語辞典の記述以外の意味がこの言葉にあると知ったのは、中学生の頃だった。  職業体験で訪れた神社。同級生たちとキャッキャッしながら、生まれて始めて巫女服を身にまとい、おみくじやお守りを売ったり、巫女舞の真似ごとをした帰り途《みち》。立ち寄ったいつもと違う道のいつもと違う本屋さんの、うっかり迷い込んだオトナの本のコーナーで、私は見てしまった。  緊縛。  まず目に飛び込んだのは、その文字。  続くタイトルは、憶えていない。  着衣の乱れもいっさいなく、ただ衣装の上から胸の膨らみの上下に、縄をかけられて縛られた――巫女さん。  私自身が巫女体験をしたあとだけに、強烈に目に焼きついたのだろうか。  とはいえごくふつうの女子中学生だった私には、その本を手に取るどころか凝視する勇気もなく、逃げるようにその場を立ち去ってしまった。  それから数年、ありきたりな体験をしながら成長するうち、その本の記憶は頭の片隅に追いやられていた。  それが再び蘇ったのは、地元の県立高校を卒業し、大学に進んだ年の冬。新たにできた親友に誘われて、巫女のアルバイトをすることを決めたときだった。  本番のための研修で神社を訪れ、親友とキャッキャッしながら巫女服を身にまとい――。 「あっ……」  あの本のことを思い出し、思わず声をあげて。 「どうしたの?」 「ううん、なんでもない」  怪訝そうな親友に愛想笑いでごまかしたものの、もうその記憶が消えることはなかった。  アパートに帰って画像を検索、ドキドキしながら緊縛画像を収集するうち、再びあの本の表紙の写真に出逢った。  何年も前に、一瞬見ただけの写真。もしかしたら、違うものだったのかもしれない。しかし巫女服の上から乳房を絞りだすように、ギッチリと縄をかけられた女性の画像は、あの写真と同じものに感じられた。  以来、私は緊縛の虜になった。  夜な夜な検索するうち、緊縛を体験する方法があることも知った。  しかし、一歩踏みだす勇気もないまま時は流れ、年末。巫女のアルバイトをする大晦日がきた。  巫女服に袖を通し、鏡の前に立ったとき、一瞬画像が頭をよぎる。しかし次々と訪れる参拝客の対応に忙殺され、そんなことを考えている余裕はなくなった。  そして深夜、というより早朝。参拝客が一段落したとき。 「交代で休憩して」  先輩の巫女さんが、私たちに告げた。 「先に休んでいいよ」  親友の言葉に甘え、奥の座敷で腰を下ろしたとき、急に眠気に襲われた。 「さすがに寝ちゃうのは……」  まずいと思ったが、耐えられそうにない。 「座ったままなら、寝込んじゃうことはないよね……5分だけ」  そうつぶやいて、瞼を閉じた直後――私は、眠りに落ちた。 「ぅ、あ……」  低くうめいて、意識が戻った。  思いのほか、深く寝入ってしまったのか。そのせいで畳の上に倒れ込み、身体の下敷きにしてしまったのか、腕が動かない。背中に回し、コ形に曲げて、手首を重ねた状態から、まったく動かせない。 (起きなきゃ……)  そう考えて、倒れているわけではないことに気づいた。  眠りに落ちたときのまま、正座から脚を崩した状態で、私は座り込んでいた。 「うぇ(えっ)……?」  とまどい、声をあげると、口から溢れたのは言葉ではなく涎。 (やだ、恥ずかしい……)  羞恥心を感じ、それを手で拭き取ろうとして、やはり腕は動かなかった。  そこでようやく、私はわが身に異変が起こっていることを知った。 (わ、私……縛られてる?)  そのことに気づき。 「あんぇ(なんで)……?」  思わず声を出しかけて、喋れないことにも気づいた。 (えっ、えっ……)  混乱しつつ身をよじると、なにか硬いものを噛まされた口から、ゴポリと涎がまた溢れる。  猿轡の布が、涎を吸ってくれないのか。  いや、違う。  猿轡は、布ではない。固く結んで作った結びめの瘤を口に押し込められ、縄で猿轡を嵌められているのだ。  そして、肉体を縛《いまし》めているのも、同じ縄。  両手を背中でコ形に組まされ、巫女服の上から乳房を挟みこみ、絞りだすように胸縄をかけられて。下側の胸縄には、緊縛をより強固にする閂《かんぬき》の縄目も施されて。私はきつく縛りあげられている。  あの、画像の女性のように。  そう考えたとき、ズクンときた。 「あっ、ふぁ……」  縄の猿轡を噛まされた口から、吐息が漏れる。  肉の芯が熱く火照る。振動するなにかを押しつけられた媚肉から蜜が――。 「うぇ(えっ)……?」  そこで、私は別の異変に気づいた。  細かく振動する物体が、私の感じるところに押し当てられ、固定されている。  知っている。私自身が持っているわけではないが、振動する親指大のピンク色の物体は、ローターだ。 「ぉうぃうおぅ(どういうこと)……?」  わけがわからない。  なぜ自分が、縛られているのか。縛られて、感じるところにローターを押し当てられているのか。 (で、でも……)  このままじっとしているわけにはいかない。  どうしてこうなったのかはわからないが、このまま座して待っていても、事態が好転するとは思えない。  体勢を変え、脚に力を込め、立ち上がる。この場から逃げようと、閉じられた襖に向かって歩き出し――。 「あうッ!?」  数歩進んだところで、誰かに縄目をつかまれたように、身体を引き止められた。 「あぅうッ!?」  驚き、バランスを崩して、畳の上にへたり込む。  どうやら、緊縛の縄を天井の梁に結びつけられていたようだ。そのおかげで、勢いよく倒れることは防げた。  とはいえ、これでは動けない。逃げるどころか、出入り口の襖にもたどり着けない。  そのうえ――。 「あぅあッ!」  畳の上に尻餅をついてしまったせいで、いっそう強く媚肉にローターが押しつけられた。 「あふぁあッ!」  そのせいで、そこに生まれる快感が大きくなった。  いや、私が大きな快感に襲われているのは、ローターのせいだけではない。無理に動いたことで、縄目の厳しさを再確認したためだ。  中学生の頃、偶然見てしまった緊縛写真集の表紙の女性のように。収集した画像のように。巫女姿で厳重に縛りあげられているからだ。  きつく縛られて燃え上がる性向をはっきりと自覚しながら、私は高められる。  いまだ達したことのない、性の高みに向かって一直線に押し上げられる。  そして――。 「あふぁあ……うぃ(イッ)クぅううッ!」  くぐもった声で喘ぎながら、私は恍惚の世界にたどり着いた。   「……ッ!?」  カクンと前のめりに倒れかけ、私は目覚めた。 「あ、れ……?」  気づくと、縛られていなかった。肉体を縛める縄だけでなく、縄の猿轡も、仕込まれていたはずのローターもなかった。 「夢……だった?」  居眠りして夢を見ていたのだろうか。  あんな夢を見るなんて、女の子としては恥ずかしいかぎりだが、現実じゃなくてよかった。  そう考えて胸をなでおろし、親友と交代するために立ち上がりかけて――。 「えっ……どうして?」  薄く手首に残る縄目の痕を見て、私は呆然とつぶやいた。  あれはほんとうに夢だったのか。それとも現実だったのか。あるいは神社だから起こった、人智を超えたできごとだったのか。  わからない。わからないが――。 (少しだけ、勇気を出してみよう)  私はなにかに背中を押された気持ちで、一歩踏み出してみることを決めた。

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Comments

Anonymous

これって続きあるんですか?

masamibdsm

こちらは新年企画の作品ですので、続編の予定はありません。

Anonymous

そうですか。次の作品も楽しみに待ってます。