初夢の巫女緊縛 (Pixiv Fanbox)
Published:
2018-12-31 15:02:15
Imported:
2021-10
Content
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
初夢の巫女緊縛
緊縛。
固く縛ること。
国語辞典の記述以外の意味がこの言葉にあると知ったのは、中学生の頃だった。
職業体験で訪れた神社。同級生たちとキャッキャッしながら、生まれて始めて巫女服を身にまとい、おみくじやお守りを売ったり、巫女舞の真似ごとをした帰り途《みち》。立ち寄ったいつもと違う道のいつもと違う本屋さんの、うっかり迷い込んだオトナの本のコーナーで、私は見てしまった。
緊縛。
まず目に飛び込んだのは、その文字。
続くタイトルは、憶えていない。
着衣の乱れもいっさいなく、ただ衣装の上から胸の膨らみの上下に、縄をかけられて縛られた――巫女さん。
私自身が巫女体験をしたあとだけに、強烈に目に焼きついたのだろうか。
とはいえごくふつうの女子中学生だった私には、その本を手に取るどころか凝視する勇気もなく、逃げるようにその場を立ち去ってしまった。
それから数年、ありきたりな体験をしながら成長するうち、その本の記憶は頭の片隅に追いやられていた。
それが再び蘇ったのは、地元の県立高校を卒業し、大学に進んだ年の冬。新たにできた親友に誘われて、巫女のアルバイトをすることを決めたときだった。
本番のための研修で神社を訪れ、親友とキャッキャッしながら巫女服を身にまとい――。
「あっ……」
あの本のことを思い出し、思わず声をあげて。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
怪訝そうな親友に愛想笑いでごまかしたものの、もうその記憶が消えることはなかった。
アパートに帰って画像を検索、ドキドキしながら緊縛画像を収集するうち、再びあの本の表紙の写真に出逢った。
何年も前に、一瞬見ただけの写真。もしかしたら、違うものだったのかもしれない。しかし巫女服の上から乳房を絞りだすように、ギッチリと縄をかけられた女性の画像は、あの写真と同じものに感じられた。
以来、私は緊縛の虜になった。
夜な夜な検索するうち、緊縛を体験する方法があることも知った。
しかし、一歩踏みだす勇気もないまま時は流れ、年末。巫女のアルバイトをする大晦日がきた。
巫女服に袖を通し、鏡の前に立ったとき、一瞬画像が頭をよぎる。しかし次々と訪れる参拝客の対応に忙殺され、そんなことを考えている余裕はなくなった。
そして深夜、というより早朝。参拝客が一段落したとき。
「交代で休憩して」
先輩の巫女さんが、私たちに告げた。
「先に休んでいいよ」
親友の言葉に甘え、奥の座敷で腰を下ろしたとき、急に眠気に襲われた。
「さすがに寝ちゃうのは……」
まずいと思ったが、耐えられそうにない。
「座ったままなら、寝込んじゃうことはないよね……5分だけ」
そうつぶやいて、瞼を閉じた直後――私は、眠りに落ちた。
「ぅ、あ……」
低くうめいて、意識が戻った。
思いのほか、深く寝入ってしまったのか。そのせいで畳の上に倒れ込み、身体の下敷きにしてしまったのか、腕が動かない。背中に回し、コ形に曲げて、手首を重ねた状態から、まったく動かせない。
(起きなきゃ……)
そう考えて、倒れているわけではないことに気づいた。
眠りに落ちたときのまま、正座から脚を崩した状態で、私は座り込んでいた。
「うぇ(えっ)……?」
とまどい、声をあげると、口から溢れたのは言葉ではなく涎。
(やだ、恥ずかしい……)
羞恥心を感じ、それを手で拭き取ろうとして、やはり腕は動かなかった。
そこでようやく、私はわが身に異変が起こっていることを知った。
(わ、私……縛られてる?)
そのことに気づき。
「あんぇ(なんで)……?」
思わず声を出しかけて、喋れないことにも気づいた。
(えっ、えっ……)
混乱しつつ身をよじると、なにか硬いものを噛まされた口から、ゴポリと涎がまた溢れる。
猿轡の布が、涎を吸ってくれないのか。
いや、違う。
猿轡は、布ではない。固く結んで作った結びめの瘤を口に押し込められ、縄で猿轡を嵌められているのだ。
そして、肉体を縛《いまし》めているのも、同じ縄。
両手を背中でコ形に組まされ、巫女服の上から乳房を挟みこみ、絞りだすように胸縄をかけられて。下側の胸縄には、緊縛をより強固にする閂《かんぬき》の縄目も施されて。私はきつく縛りあげられている。
あの、画像の女性のように。
そう考えたとき、ズクンときた。
「あっ、ふぁ……」
縄の猿轡を噛まされた口から、吐息が漏れる。
肉の芯が熱く火照る。振動するなにかを押しつけられた媚肉から蜜が――。
「うぇ(えっ)……?」
そこで、私は別の異変に気づいた。
細かく振動する物体が、私の感じるところに押し当てられ、固定されている。
知っている。私自身が持っているわけではないが、振動する親指大のピンク色の物体は、ローターだ。
「ぉうぃうおぅ(どういうこと)……?」
わけがわからない。
なぜ自分が、縛られているのか。縛られて、感じるところにローターを押し当てられているのか。
(で、でも……)
このままじっとしているわけにはいかない。
どうしてこうなったのかはわからないが、このまま座して待っていても、事態が好転するとは思えない。
体勢を変え、脚に力を込め、立ち上がる。この場から逃げようと、閉じられた襖に向かって歩き出し――。
「あうッ!?」
数歩進んだところで、誰かに縄目をつかまれたように、身体を引き止められた。
「あぅうッ!?」
驚き、バランスを崩して、畳の上にへたり込む。
どうやら、緊縛の縄を天井の梁に結びつけられていたようだ。そのおかげで、勢いよく倒れることは防げた。
とはいえ、これでは動けない。逃げるどころか、出入り口の襖にもたどり着けない。
そのうえ――。
「あぅあッ!」
畳の上に尻餅をついてしまったせいで、いっそう強く媚肉にローターが押しつけられた。
「あふぁあッ!」
そのせいで、そこに生まれる快感が大きくなった。
いや、私が大きな快感に襲われているのは、ローターのせいだけではない。無理に動いたことで、縄目の厳しさを再確認したためだ。
中学生の頃、偶然見てしまった緊縛写真集の表紙の女性のように。収集した画像のように。巫女姿で厳重に縛りあげられているからだ。
きつく縛られて燃え上がる性向をはっきりと自覚しながら、私は高められる。
いまだ達したことのない、性の高みに向かって一直線に押し上げられる。
そして――。
「あふぁあ……うぃ(イッ)クぅううッ!」
くぐもった声で喘ぎながら、私は恍惚の世界にたどり着いた。
「……ッ!?」
カクンと前のめりに倒れかけ、私は目覚めた。
「あ、れ……?」
気づくと、縛られていなかった。肉体を縛める縄だけでなく、縄の猿轡も、仕込まれていたはずのローターもなかった。
「夢……だった?」
居眠りして夢を見ていたのだろうか。
あんな夢を見るなんて、女の子としては恥ずかしいかぎりだが、現実じゃなくてよかった。
そう考えて胸をなでおろし、親友と交代するために立ち上がりかけて――。
「えっ……どうして?」
薄く手首に残る縄目の痕を見て、私は呆然とつぶやいた。
あれはほんとうに夢だったのか。それとも現実だったのか。あるいは神社だから起こった、人智を超えたできごとだったのか。
わからない。わからないが――。
(少しだけ、勇気を出してみよう)
私はなにかに背中を押された気持ちで、一歩踏み出してみることを決めた。