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5.ポニーガールのご褒美  三原班長が馬小屋に現われたのは、食事のあと。牧童が食器を片づけて去ってしばらくしてからだった。  ほかの看守は連れず、いつもの乗馬鞭型電気鞭は手にしているものの、それ以外の武器は携行せずに。  三原班長の電気鞭の電圧は、おそらく看守の電気警棒よりはるかに低い。あくまで調教時に痛みを与えるための器具であり、一撃で敵を制圧できる武器ではない。  加えて彼女の体格は、夏海と同じくらいだ。職業柄なんらかの武術の心得はあるだろうが、お互い素手で闘えば、夏海なら秒殺できるだろう。  そんな三原班長が、太い梁の下に夏海を立たせ、脚を肩幅より少し広い程度に開かせる。  開いた脚を閉じられないよう、金属製の棒に繋がれた枷を、夏海の足首と膝に嵌める。  そのあいだ、三原班長が夏海の足技を警戒しているようすはなかった。  それは油断しているのか。それとも、一定程度夏海を信頼しているのか。  ともあれ、理由がなんであれ、夏海にもその隙を突くつもりはなかった。  仮にここで三原班長を蹴りで昏倒させても、できるのは馬小屋から出ることだけ。  拘束されたままでは敷地を取り囲むフェンスを登れないし、その最上部には電気柵が設えられている。  フェンスの途中にあるゲートにも、もうひとつの外部への通路、本部棟に通じる扉も電子錠がかけられ、けっして開けられない。  それ以前に、馬奴隷が単独で屋外に出ればすぐ監視塔に見つかって、駆けつけた看守に取り押さえられるだろう。  そうなると、もう終わりだ。  この先どれほど従順に振る舞っても、刑期が短縮されることはなくなるだろう。それどころか、厳しい懲罰を受けたうえで、長く延長されるに違いない。些細な粗相を逐一咎められ、ことあるごとに懲罰と刑期延長を繰り返されることもありえる。  それより、なぜか夏海には、三原班長を攻撃しようとする気持ちすら生まれなかった。  そうすることが当然のように自重した夏海の脚の拘束を終え、三原班長が立ち上がる。  すると、いつもはポニーブーツのせいで夏海より低い位置にある彼女の顔が、脚を開かされたせいでほぼ同じ高さにあった。 「うふふ……」  同じ高さで夏海を見つめて妖しく嗤い、片方のストラップに吊られて顔の横にぶら下がっていた馬銜を口に押し込む。 「きちんと噛んだ?」 「ぁう……」  問われてうなずいたところで、ストラップを止めて固定される。  それから三原班長は、手綱にも使われる幅広の革紐を梁に投げ上げた。  さらに梁の上部を通って落ちてきた革紐を、長さを調整してボディハーネスの背中の金具につなぐ。  梁に吊られた状態。開いたポニーブーツの足は床についているものの、その体勢からしゃがむことはできない。横方向への移動もできない。  そうして夏海をその場から動けなくしてから、三原班長が夏海の前に立った。 「うふふ……」  そして、もう1度妖しく嗤う。  どうして、嗤うのだろう。  そもそもなぜ、脚を開かせたうえで、動けないよう拘束したのだろう。 『調教初日としては上出来よ。午後は休憩して、夜には約束どおりご褒美をあげるわ』  その言葉が正しいとするなら、彼女はご褒美を与えに来たはずなのに――。  そこで、薄く嗤ったまま、三原班長が夏海の胸に触れた。 「ぃうッ!?」  特殊ラバースーツ越しに、ハーネスで絞り出された乳房を手のひらて包み込まれ、驚いて身体をピクンと跳ねさせる。  しかし、ボディハーネスを革紐で梁に吊られ、その場から動くことはできなかった。  1週間アームバインダーに閉じ込められ続けた腕は存在感を失い、払いのけようとすることもできなかった。  乳房を包み込んだ手がサワサワ動き始めても、その狼藉からは逃れられなかった。 「ぁえぇ(やめて)……」 「いいえ、やめないわ」 「ぉうぃえ(どうして)?」 「これが、188番にとって、最高のご褒美だからよ」  そう言われて、三原班長のもうひとつの言葉を思い出した。 『ポニー調教でエッチな気分になるような、188番に最適なやり方でね』  そうなのだろうか。こういう淫らな行為が、自分にとって最高のご褒美なのだろうか。自分はそういう、エッチな女の子なのだろうか。  以前の夏海なら、そんなに疑念すら抱かなかっただろう。  しかし今は違う。  夏海にとって信用できる人物は、ここには三原班長しかいない。おまけに、必ず毎日数時間顔を合わせている。  はじめは味方とまではいえないと考えていても、気づかないうちに、心の奥底には親近感に似た感情が生まれていた。  そんな人物が、調教中こう言った。 『188番、あなた意外と才能あるのね。ポニー調教でエッチな気分になるなんて』  加えて、夏海は股間プレートの排泄孔から溢れた汗を、女の子のお汁だと思い込まされた。  それで自分はポニー調教で昂ぶるような性質を秘めていたのかもしれないという疑念を抱いたところで、三原班長の自信たっぷりの言動である。  そのうえ、実際夏海の乳房には、ゾワリゾワリと妖しい感覚が生まれていた。  特殊ラバースーツの囚衣を着つけられる前、潤滑用ローションを素肌に塗り込められたときのように。 「うふふ……」  薄く嗤った三原班長が、ユルユルと夏海の乳房を揉みしだく。 「うふふ……」  瞳を妖しく輝かせ、特殊ラバースーツ越しに、あくまで優しく。  それは、性体験のない女子を、性的に高めるのに最適の愛撫。  数知れないほどの女子を調教してきた三原班長は、経験の少ない女の子の扱いを熟知している。  そんな事実に気づく余裕もなく、夏海は卓越した指技に昂ぶらされていく。 「んっ、ふっ、んっ……」  漏れる吐息に、少しずつ甘みが混じってきた。 「んっ、ぅあう……」  馬銜の隙間から、ゴポリと涎が溢れた。  その涎が、顎を伝って胸に落ちる。そこを揉みしだく三原班長の手をも濡らす。  それを気に留めるようすもなく、彼女の手はいやらしく、でも優しく動き続ける。  特殊ラバースーツ越しに、乳房の柔らかい肉に軽く指を埋めながら。その動きがけっして不快な感覚を生まないように。 「うぃあぁ(いやぁ)……」  涎をこぼしながらそう言ったのは、ほんとうに嫌だからではない。こんな状況で、性的に昂ぶらされることが、怖かっただけだ。  格闘家としては同階級女子最強クラスであっても、性体験では夏海はいち初心者にすぎない。  そして、そんな夏海の心の動きをも、三原班長は読みきっていた。 「ほんとうに、嫌なの?」 「うぇ(えっ)……」 「つらい? 苦しい? 気持ち悪い?」 「う、うぃうぇ(いいえ)……」 「じゃあ、少しだけ、私に身を委ねてみて?」  言われて、そうしてもいいかもしれないと思ってしまった。  それは、ここにきて三原班長を信用する気持ちが、さらに強くなっていたから。  その理由は、馬銜を噛まされた口でも、会話が成立しているとに気づいたこと。  実のところ、馬銜の口で喋る言葉は、まったく聞き取れないわけではない。発音はかなり不明瞭にはなるが、母音だけなら判別できる。  加えて、こういう状況で経験の少ない女の子が口にする言葉の種類は限られている。そのうえ三原班長は、その数種類の言葉を何度も何度も聞いている。  その経験から、夏海がなにを口走るか予測し、母音から実際に喋った言葉を特定しているだけなのだ。  そもそも、ご褒美を与えるにあたり馬銜を嵌め直したのも、こうして夏海を誘導するため。  とはいえ、そのことを夏海は知らない。  知らないから、自分が三原班長に理解されているのだと思い込んでしまう。  自分にとって三原班長がほかの看守たちとは違う存在であるように、彼女にとっても夏海は特別なのだと信じ込まされてしまう。  その思惑が功を奏し、夏海の身体から緊張感によるこわばりが緩んだことを敏感に察知し、三原班長の手が大胆に動き始めた。 「んっ、んふっ、んぅん……」  吐息に甘みが増したところで、乳房全体を揉んでいた指が、乳首をつまむ。 「んひっ!?」  それで夏海がピクンと身体を震わせたところで、特殊ラバーの下でぷっくり膨れたそれを、親指と人差し指でクリクリとこねる。 「んぅん……んあっ」  ゾワリ。乳首に生まれた妖しい感覚が、乳房全体に広がった。 「あっ、んっ、んぁん……」  ゾワリ。乳房から背すじへと、妖しい感覚が駆け抜けた。  それが脳に達し、夏海を蕩けさせた。 「んぁ、あぅん……」  蕩けた夏海が甘く喘いだところで、三原班長が責めかたを変えた。  それまで重ねた指をすり合わせる程度の力でこねていた乳首を、キュッときつめにつまむ。 「あっあッ!?」  それでゾワリとした感覚が、いっそう強くなった。  もう1度。 「あっふぁ……」  繰り返し。 「あぅうん……」  キュッ、キュッとリズミカルに乳首をつままれ、妖しい感覚がどんどん大きくなる。 (気持ち、いい……)  その感覚が性の快感だと、すでに夏海ははっきり認識していた。 (ちくび、気持ちいい……)  そこへの愛撫で性的に高められているのだと、完全に自覚していた。 (こ、こんなことじゃ……)  いけない。  馬奴隷の身分に堕とされ、厳重に拘束されての愛撫という異常な状態で昂ぶらされることに、わずかな抵抗感が生まれる。  とはいえ、肉の昂ぶりを抑えようと思えたのは一瞬のこと。  乳首に生まれ、乳房に広がり背すじへと駆け抜ける大きな快感は、芽生えたばかりの自制心をあっさり押し流した。 (ダメ、昂ぶっちゃ……)  しかし、押し留められない。 「あっ、あっあぅ……ッ」  馬銜を噛まされた口から漏れる声も抑えられない。 「んっあっ、あふうッ!?」  ゴポリとこぼれる涎も止められない。  胸に垂れる涎にまみれながらも、三原班長の手は止まらない。  それすら潤滑剤として利用しているかのように、その指技はますます妖艶さを増していく。  つままれていた乳首を、ギュッと押し込まれた。 「んっふ、ふあッ」  押し込まれた乳首を、グリグリとこねられた。 「はっふぁあ、あッ」  こねられたあと、ピンと弾かれた。 「あッ、あぁああッ!」  それで、1段高められた。 「あっふぁ……」  また、乳首をつままれた。  親指と人差し指でさっきより強く握り潰されてから、ひねるようにキュウッとつねられる。  ふだんなら痛みを感じたであろう強い刺激でも、今は快感しか覚えない。 「はふぁああッ!」  艶めいて喘ぎ、馬銜を噛まされた口から涎を噴き出す。 「うふふ……」  薄く嗤って手にかかった涎を舐めとる三原班長の妖艶な表情にドキリとした直後、もう一方の手で繰り返し。 「はひゃああッ!」  それで、さらに1段高められた。  肉が蕩ける。  熱に浮かされたようにぼうっとして、思考することすらできない。 「上の口も下の口も、もの欲しそうに垂らした涎でグショグショね」  かけられた下品な言葉の意味も、もうよく理解できない。  いや、理解していたとしても、否定することはできなかっただろう。  それほどまでに、夏海は蕩けていた。 「はふぁ、んぁああっ!」  今の夏海にできるのは、艶やかに喘ぎながら昂ぶらされることのみ。  そこで、三原班長が唇の端を吊り上げた。 「そろそろ、頃合いかしらね。1回イッとく?」 「うぇ(えっ)……うぃう(イク)……?」  復唱するように、不自由な口で問いかけたときである。  官能に蕩けぼやける視界の端で、三原班長が手にした鞭を軽く振った。  ヒュン。  手首だけで振られた鞭が、空気を切り裂く。 「ンひ……ッ!?」  その先端が乳首をかすめ、短く悲鳴をあげる。  しかし、痛みを感じたのは一瞬。  すぐにそれをはるかに凌駕する乳首の快感が襲いくる。 「ンひッ、ふひゃああッ!」  その快感に喘いだところで、三原班長の言葉。 「ほうら、やっぱり鞭で気持ちよくなってる」  それは、今朝も言われた言葉。 『鞭でも気持ちよくなっちゃったのかしら?』  そうなのか。ほんとうに自分は鞭で気持ちよくなったのか。  にわかには信じがたいが、鞭がかすめた乳首に、痛みを消し去るほどの快感を覚えているのは事実。  だとすれば――。  実のところ、それもまた三原班長の手練手管。  乳首への愛撫で夏海の肉体を高め、受ける刺激すべてを快感に変換してしまう状態に貶めたうえで、快楽をリセットしてしまわない程度の軽い痛みを与えたのだ。  そして、そのことを夏海には知らせず、鞭で気持ちよくなってると告げた。  それが功を奏し、夏海の精神は揺さぶられた。  自分はポニー調教はおろか、鞭でも感じてしまう子ではないかという疑念を、いっそう強めてしまった。 「うふふ……」  そこで、三原班長が妖しく嗤った。  直後、お股に衝撃を感じた。  股間にみっちりと貼りついて覆う金属板を鞭で軽く打たれたのだと気づいたときには、その衝撃は快感に変わっていた。 「ぁふぅあああッ!」  目を剥いて喘ぎ、押し上げられる。 「あひはひ、ひゃああッ!」  繰り返し、リズミカルに股間の金属板を叩かれ、追い上げられる。 「はひ、はふぁあぁあッ!」  金属板を叩く振動で、お股の感じるところすべてを刺激され、高いところへ飛ばされる。  ガクン、と膝から力が抜けた。  ミシッ、と軋む革紐に身体を支えられた。  ハーネスが肉に食い込み、その刺激すら快感を生む。 「あひッ、はふぁああッ!」  嬌声を抑えることができない。 「はふぁ、あふぁああッ!」  そうしようと思っていないのに、背すじが、首がのけ反る。  脚には力が入らず、ガクンガクンと身体が揺れる。  そのたびに、ギシッギシッと革紐が鳴く。  自分で自分の肉体が、まったく制御できない感じ。 「ぅああッ、ぉんあぉ(こんなの)……」  初めてだ。 「あぅあッ、ぁあぃ(私)、ぁあぃい(私ぃ)……」  いったい、どうなってしまったのか。  その答えを三原班長が、薄く嗤って教えてくれた。 「鞭で気持ちよくなる188番は、鞭でイッちゃうのね」 「あふぁあ……うぃうぇ(鞭で)、うぃう(イク)……?」  ぼうっとしながら、さっきも同じ言葉を聞いたような気がした直後、なにかが来た。  いや、夏海のほうがたどり着いたというべきか。  股間の金属板を叩く鞭に押し上げられて、夏海がイク。 「はヒャあぁああッ!」  巧みに鞭を操る三原班長に追い上げられて、夏海がイク。  馬奴隷として拘束され、馬奴隷として鞭で愛撫され、絶頂に達する。 「あヒャッ、あぁあああッ!」  そしてひときわ高く喘ぎ、ビクンビクンと跳ねたあと、夏海はガックリと身体の力を抜いた。  そこは、大いなる悦びの場所だった。  ほかに代えがたい不思議な幸福感に満ちた世界だった。  イク。絶頂する。  自分がそうなってしまったことを実感しながら、夏海は恍惚に酔う。  気づくと、脱力した身体を、手綱の革紐で吊られて支えられていた。  自らの足で立とうしてもうまく脚に力が入らず、革紐に繋がれたボディハーネスがミチっと肉に食い込んだ。 「はふぁ……」  それで性的な刺激を得て、馬銜を噛まされた口から、涎を垂らし甘い吐息を漏らしてしまう。  それが呼水となり、あの快感を思い出した。 (もう1度……)  イキたい。圧倒的な快感に押し上げられ、不思議な幸福感に満ちた、恍惚の世界にたどり着きたい。  理性ではなくオンナの本能の部分で、そう思った。  しかし気づくと、三原班長の姿は見えなかった。  夏海に快感を与え、恍惚の世界に導いてくれる人はいなかった。  そう、『導く』ではなく『導いてくれる』。  ご褒美と称した愛撫とその結果の絶頂を経て、夏海のなかで三原班長が占める場所が、少しだけ変化していた。  それが、どういう意味を持つのか、夏海にはわからない。  そもそも夏海は、己の精神の変化に気づいていない。  やがて、ふたり組の牧童がやってくる。  声をかけることなく夏海を梁に吊る革紐をと金属棒つき足枷を外し、身体を干し草の上に横たえると、来たときと同じように無言で去っていく。  そのモノを扱うような事務的な態度に、三原班長の愛撫との違いを感じながら、明日からも調教をうまくこなそうと心に決めた。  そうする理由が、以前と少し変化していることにもまた、気づかないまま。

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