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「中にいるんでしょ?拓真ー」

幼馴染の優姫が帆乃香の皮をかぶっている

拓真にそう言い放った。


ーーー!?


拓真は驚きを隠せないー

帆乃香が皮になったことは、

誰も知らないはず。

知っているとすれば、拓真に、”人を皮にすることができる

ドッキリグッズ”として、スプレーを渡した

遊園地の係員・名坂だけのはずだ。


「---…」

大丈夫だー

ばれるわけがないー


もう”拓真”が死んだんだー。

拓真はそう自分に言い聞かせる。


帆乃香を皮にしてしまった償いー

自分としての人生をしてて

帆乃香として生きることー

それが、拓真の選んだ道だった。


「----…な、な、なんのこと…かなぁ?」

帆乃香は笑いながら言う。


「----…」

優姫は、帆乃香のほうをじっと見ている。


「---中に、いるんでしょ?」

優姫が、もう一度そう呟くー


だがー

帆乃香の皮を着こんでいる拓真の意思は固かった。


帆乃香がー、

帆乃香が元に戻るまでー

自分は帆乃香の代わりを演じるー


帆乃香がいつ戻ってきても、大丈夫なようにー


それが、

軽い気持ちで帆乃香を皮にしてしまった自分にできる

せめてもの、償いー。


「---…まぁ、いいよ」

優姫が少し寂しそうに呟いた。


「-ーー変なこと言って、ごめんね」

それだけ言うと、優姫はあきらめた様子で

そのまま立ち去って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


拓真は”死人”になったー。

もう、後戻りすることはできないー


このまま、帆乃香の皮を着こんで、

帆乃香として、生きていかなくてはいけないー


帆乃香は、自分の部屋でパソコンを

いじっていたー。

綺麗な手ー

帆乃香の手ー


まさか、自分が帆乃香になってしまうなんて…


鏡を見るー

そこには、帆乃香の顔ー

少しドキッとしながらも、

拓真は調べ事を優先したー。


遊園地の係員・名坂ー。

遊園地側によれば”名坂と言う係員はいない”との

ことだったー


と、なれば”遊園地が嘘をついている”か、

”名坂という係員が、遊園地の係員に扮して

 拓真に「人を皮にできるグッズ”を渡した”か、

そのどちらかということになるー。


帆乃香を皮から元に戻すためには、

あの道具を手渡してきた人物ー

名坂と接触するしかない。

彼の居場所を探し出し、彼に

帆乃香を元に戻す方法を聞き出すー

それしか、ない。


それまでは、拓真が帆乃香の皮を着たまま

帆乃香の代わりをするー。

帆乃香が戻ってこられる日までー


そして、帆乃香が戻ってきたら

拓真はー

帆乃香を皮にしてしまったことを”償う”つもりだー。

もう、自分は、”死んだこと”になっているのだからー


「--ん」

足を組んだままパソコンを見つめていた帆乃香は

あるネットのニュースを見て、手を止めたー


”行方不明の男性、遺体で発見される”


というニュース。


その顔はー


「こいつはー」

帆乃香は、ネットに載っていた

被害者の顔写真を見て驚くー


あの日ー

遊園地で拓真に”皮にする道具”を渡した男ー

遊園地の係員を名乗っていた名坂という男と

全く同じ顔だったー


「どういうことだ?」

帆乃香はそのニュースを見つめるー。


記事にはー

被害者は名坂 和利(なさか かずとし)という男で、

1か月半ほど前から行方不明になっており、

昨夜、山中で”まるで着ぐるみのようにペラペラになった遺体”が

見つかったというのだー。


「--こ、、これは…どういうことだ?」

帆乃香は戸惑うー。


名坂という男が唯一の手掛かりだったー。

そして、その男は、もう”死んでいるー”


「--1か月半前…」

1か月半前と言えば、

遊園地に行く前のことだー

その時からこの男は行方不明だったのだという。


(あのとき、遊園地でわざわざ俺の前に姿を現して

 人を皮にする道具なんて渡したのはなぜだ?)


帆乃香は、頭の中がごちゃごちゃして、頭を抱えたー。


「くそっ!」

帆乃香はイライラして机をたたいた。


「あーー…」

たまたま部屋に弟の健介がやってきていた。


「--あ…ご、ごめん」

帆乃香ははっとしてほほ笑んだー。


「---」

健介は、帆乃香に気を遣って

飲み物を持ってきてくれた。


「大丈夫?」

健介が心配そうに言う。


「え?」

帆乃香が首をかしげると

健介は続けた。


「最近お姉ちゃん、なんか…こう、、

 イライラしてるように見えるからー」


健介の言葉に

帆乃香は、作り笑いを浮かべて

「大丈夫だよ…ごめんね」と悲しそうにほほ笑んだ。


確かに、イライラしているかもしれないー

帆乃香を元に戻す方法を一生懸命探してはいるものの

うまく行かないー。

早く帆乃香を元に戻してあげたいー

こんな、皮の状態ではなくー

元の帆乃香にー。


「---……やっぱり、拓真おにいちゃんのこと?」

健介が言う。


健介は、姉の彼氏である拓真のことを

お兄ちゃんと呼んでいるー


「---…

 (中身は俺だなんて、絶対に言えないな)」

少し自虐的に笑うと、

「それもあるけど…

 いろいろかな…!

 心配かけてごめんね!」と

帆乃香っぽく振舞って、健介を安心させようとほほ笑んだー


・・・・・・・・・・・・・・・


ーーー「俺と、付き合ってくれないか?」

頭が、真っ白になった。


翌日の昼休み。

空き教室に呼び出された帆乃香は、

帆乃香を皮にして、着こんでいる拓真の悪友・磯野から

告白されていたー


「---……え、、、えぇっ!?」

帆乃香は思わず叫んでしまう。


(おいおいおいおい、磯野、冗談はやめてくれよ…

 俺、男と付き合う趣味はないぞ!

 身体は女だけど…)


「--俺さ…ずっと、好きだったんだ…

 それに…拓真のやつから

 ”もし、俺に何かあったら帆乃香のこと頼む”って

 そう言われてたんだ。


”言ってねーよ”


帆乃香の中にいる拓真はそう思った。


だが、ここでそんなことを言えば、正体が

ばれてしまう。

あまりの驚きに、帆乃香の皮が少しずれてしまう。

あやうく、ぱっくりと開いてしまうところだったー


「---ご、、ごめん…

 わ、わたし、、俺、じゃない、、拓真のこと…

 今でも好きだからー」


そう呟いて、足早に帆乃香は

立ち去っていくー。



「----あ」

空き教室から出た帆乃香の前に

拓真の幼馴染・優姫が現れた。


「---どうしたの?そんなに慌てて」

優姫が不思議そうに言う。


「あ、いや、、、い、、いえ

 なんでも…」

帆乃香がそう言うと、

優姫は一息ついたあとに口を開いた。


「明日の放課後、ちょっとお話できるかな?」


優姫は、静かな声でそう言い放ったー


”とても大事な話がある”のだと言う。


「わ、、わかった」

帆乃香はそう返事をすると

優姫の前から立ち去ったー


早くー

早く、

帆乃香を元に戻さないとー


俺が、彼女を皮にしてしまったー

せめてもの償いは、

皮になってしまった彼女を元に戻すことー

その間、彼女として、ふるまい続けることー。


・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


「ふふふふふふふ…」


部屋中にー

男子大学生の写真が張り巡らされているー


その写真はー

全部、拓真のものだったー


「--ずっと、ずっと、ずっと、ずっと

 一緒なのにー


 他の女と付き合うなんてー

 ゆ る せ な い」


大学にいるときとは、まったく雰囲気の違う

派手な服装で椅子に座っている女子大生ー


幼馴染の優姫は、

静かに呟いていたー


高校と大学選びはーー

拓真と一緒の学校を選んだー


拓真のことをいつもいつもいつもいつも

愛して愛して愛して、愛していたー


それなのに、帆乃香がわたしから拓真を奪ったー


歯ぎしりをする優姫。


部屋には、帆乃香の写真も貼られているー

帆乃香の写真は、ボロボロだー


「--泥棒猫っ!泥棒猫っ!泥棒猫!」

優姫は、果物ナイフを手に、

帆乃香の写真の顔の部分を何度も何度も突き刺していくー


「せっかくー

 せっかく、あの女を”排除”できたのにー」


優姫はーー

拓真を帆乃香から取り戻そうと、

”帆乃香を処分しようと”したー


その結果、裏サイトで手に入れたのが

”人を皮にするスプレー”だったー


実験も兼ねて、近所を通りかかった男にそれを使ったー

その相手が、名坂という男ー。

名坂が1か月半前、消息を絶ったのは、

優姫に皮にされてしまったからだー。


そしてー、

優姫は、名坂の皮を着て、

遊園地の係員を名乗り、

拓真に”皮にするスプレー”を手渡した。

好奇心旺盛な拓真ならー

帆乃香にスプレーを使うと信じてー


そうー

遊園地で、拓真が出会った係員・名坂は

”男の皮を被った優姫”


優姫の目論見通り、

拓真は帆乃香にスプレーを使い、

帆乃香は皮になった。


ここまでは計画通りだったー

翌日、優姫は偶然を装い、拓真の家に行ったー


だがー

ここから、計算が狂うことになるー。

正義感の強い拓真は

”帆乃香を皮にしてしまった…”と自分に

打ち明けてくると優姫は予想していた。


しかし、予想に反して

拓真はそのことを隠し、さらには

自分自身が消息を絶ったことにして、

帆乃香の皮を被り、帆乃香になりすます道を

選んでしまったー


”帆乃香を皮にさせて、落ち込んでいる拓真を

 幼馴染として励まし、

 最後に、自分が拓真の彼女になる”


そんな、優姫の計画は失敗しようとしていたー…。


帆乃香を葬りー

自分が拓真を手に入れる。

そのはずだったのにー


「--どこまで邪魔をするの…」

ボロボロになった帆乃香の写真を見つめて、

憎しみに満ちた表情を浮かべると、

優姫は、帆乃香の写真を口に含みー

怒りの形相でかみ砕いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌朝ー。


朝を迎えるー

穏やかな朝ー


帆乃香は、今日は穏やかな気持ちだった。


弟の健介と雑談をし、

学校に向かうー


学校でもいつも通り、

穏やかに過ごす。


そして、昼休みー


「--今日の放課後、昨日言った通り、

 お話、できるよね?」


優姫が言う。


「---え」

帆乃香は、その瞬間、恐怖したー


ーーーー!?!?!?!?!?!?


起きてからー

今まで

”自分は帆乃香”だと思い込んでいたー


自分が、拓真だったことを忘れていたーーー


「あ、、、うん」

冷や汗をかきながら帆乃香はそう返事をしたー


「ど、、、どういうこと…?」

”自分が拓真だという自覚”を

今日の朝から昼休みまで失っていたー


「---…は、、早く…早くなんとかしないとー」

強い不安を感じながら

帆乃香はそう呟いたー


④へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


狂気の幼馴染・優姫は

いったい何を語るのでしょうか~?

次回が最終回の予定デス~

(皮モノで4話以上書くのは初めてだった気がしますー)



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