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「じゃあ、そろそろ元に戻るかー。」

可愛らしい雰囲気の彼女ー…松永 麗奈(まつなが れいな)が、

その雰囲気に似合わない言葉遣いで、言葉を口にするー。


胡坐をかいている麗奈は、

まるで男のようだー。


「ーーうんー…!なんかすごかったねー!」

隣にいた彼氏の村山 正孝(むらやま まさたか)が

そう言葉を口にするー。


さわやかそうな好青年ー、という雰囲気の彼ー。

だが、その振る舞いは胡坐をかいている麗奈とは違い、

まるで”彼女”のような、そんな雰囲気だったー。


二人はー、今”入れ替わっているー”

麗奈の中身は彼氏の正孝ー、

正孝の中身は彼女の麗奈ー

そんな状態だー。


二人は今日、

休日を利用して、”入れ替わり”を楽しんでいたカップルー。


偶然、彼氏の正孝が見つけた

”入れ替わりアプリ”を使って、二人は今日1日、

入れ替わりを楽しんでいたー。


「ーーそれにしてもホントに入れ替われるなんてすごくない?」

正孝(麗奈)がそう言うと、

麗奈(正孝)も「はははー…俺も入れ替わるまでは半信半疑だったけど」

と、言いながら、

「今でも俺が麗奈の声で喋ってるなんてーなんか不思議な気分だよ」と、

少し照れくさそうにそう言葉を口にしたー。


「ー”人の声”として聞くのと、”自分の声”として聞くのだと

 大分聞こえ方も違う風に感じるよねー!」

正孝(麗奈)が楽しそうに笑うー。


”正孝の声”を、他人として聞くのと、

自分自身が”正孝の声”を出すのでは、なんだか聞こえ方が

違うし、感覚も違うー。


”自分の声を電話で聞いたり、

”自分の声を映像で聞いたりするときに、

何だか違和感を感じるのと同じような感覚だー。


「ーーーーーあ、そういえばさっきはごめんなー」

麗奈(正孝)が少し苦笑いしながら言うー。


「ーーううんー全然ー。

 わたしだって、失敗しそうだったしー」


入れ替わり中の”トイレ”のことを話す二人ー。


”麗奈の身体”での初めてのトイレにてこずって

少し服を汚してしまった麗奈(正孝)は、

そのことを改めて詫びるー。


「ー逆にいきなり、何の戸惑いもなく

 当たり前のように完璧にトイレを済ませる方が不気味だしー!」

正孝(麗奈)が笑うー。


「ーーはは、確かにそうかもなー

 でも、麗奈は割と、俺の身体でのトイレスムーズだった気がするけど?」

麗奈(正孝)が揶揄うような、そんな言葉を口にすると、

正孝(麗奈)は「そ、それはー…たまたま上手く行っただけ」と、

笑いながら目を逸らしたー。


「ーーっと、つい色々話しちゃったなー」

麗奈(正孝)はそう言うと、胡坐をかいていた足を崩しながら、

スマホを手にするー。


”入れ替わりアプリ”を起動する麗奈(正孝)ー

その読み込み画面が表示されるー。


”入れ替わりアプリ”は、悪用防止のために

色々な機能が搭載されていて、

入れ替わる時には、二人がそれぞれ

お互いのスマホで、ボタンを3分間押し続けなければならないー。


強引に相手に押させる…ということを防ぐために

”あえて”長い時間を設定しているようだー。


また、”意識を失わせて”その間に入れ替わりアプリを操作させることを

防ぐために、ボタンを押し続けている間に数度、

質問が表示されるようになっているほか、

3分間の間に、どちらかが”キャンセル”と口にした場合、

アプリは強制的に終了されて、以降使用することができないなどなど、

同意がないまま、入れ替わることはできないように

色々な工夫が施されていたー。


正孝と麗奈のように”お互いが納得した状態”でしか

入れ替わることができないのだー。


「ーーあ、そうだー

 戻る前に何かやっておきたいことはー?」


麗奈(正孝)が、改めてそう確認すると、

正孝(麗奈)は「ーあ、一つだけー!」と、笑うと、


「ーー麗奈、結婚しようー」

などと、”彼氏の身体”で、自分にプロポーズの言葉を口にする

正孝(麗奈)ー


「ーーちょっ!?えぇっ!?」

麗奈(正孝)は、いきなりプロポーズの言葉を口にさせられた

自分の身体を見つめながら、顔を赤らめると

「なんちゃってー、一度言って見たくてー」と、

悪戯っぽく正孝(麗奈)は微笑んだー。


「ーーははは、び、びっくりしたぁ」

麗奈(正孝)は、そう言いながら

スマホの方に再び視線を落とすー。


二人が現在大学生ー。

正孝としては麗奈との結婚も、いずれ真剣に考えるつもりではいるー。

がー、学生のうちは、まだこの先どうなるか分からないし、

”社会人になって、1、2年して生活がある程度安定したら”

そういうことを考えるつもりでいたー。


「ーーふふー」

正孝(麗奈)が笑うー。


そんな正孝(麗奈)を見て

”麗奈はー、今すぐにでも結婚したいのかなー?”と、

そう思いながら”入れ替わりアプリ”の画面を見つめたー。


”パスワードを入力してください”


いつも表示される”ログイン画面”だー。

不正にアクセスされれば、予期せぬ入れ替わりが起きる可能性も

あるために、入れ替わりアプリのアカウントを作る際に、

必ずパスワードの設定を求められるー。


「ーーーー」

麗奈(正孝)は、「よし」と、思いながら、

設定したパスワードを入力するー。


がーーー


”パスワードが違います”


画面上に、そう表示されるー。


「ーーー……」

麗奈(正孝)は、”あれ、おかしいな?”と思いつつ、

もう一度パスワードを入力するー。


パスワード入力中に、違うボタンに触れてしまったのかと思い、

今度は慎重に、スマホの画面をタップしていくー。


”ーーにしても、麗奈の指って綺麗だよなー”

スマホをタップする”今は自分自身の指”に、少しドキドキしながら

そんなことを考える麗奈(正孝)ー


今度こそ入力を終えて”決定”ボタンを押すー。


がーーー


”パスワードが違います”


「ーーーは…?」

麗奈(正孝)は”あれ?このパスワードにしなかったっけ?”と

思いつつも、表情を歪めるー。


入れ替わりアプリを始めて使用したのは、ついさっきだー。

アカウントの作成もさっき行ったばかりー。

パスワードは、正孝自身がよく、こういうアプリを使う際に

使っているパスワードを使ったー…はずだったのだが、

違ったらしく、”パスワードが違います”と画面に表示されているー。


「ーーーどうしたの?」

正孝(麗奈)が不思議そうに首を傾げるー。


「ーーーーあ……いや、えっとー…」

麗奈(正孝)は、少しバツが悪そうにそう言葉を口にするー。


”パスワードを忘れちゃった”などと言えば、

当然、正孝(麗奈)のことを不安にさせてしまうー。


がーー


「ーー…何かトラブルー?」

正孝(麗奈)も、麗奈(正孝)の反応を見て

そう悟ったらしく、そんな言葉を口にしたー。


「ん、う~ん…いや、あの、パスワードが違ったみたいで」

麗奈(正孝)のそんな言葉に、

正孝(麗奈)は「えぇっ…?」と、少し驚きながら、

「ーーお、落ち着いて思い出してみて」と、

そう言葉を口にするー


麗奈(正孝)は「ははー、ごめんごめんー。すぐ思い出すから」と、

言いつつも、しばらくスマホの画面を見つめたー。


”同じパスワードの流用”はしてはいけないー。

そうは言われつつも、正孝は”何かあってもあまり問題ないもの”には

いつも大体似たようなパスワードを使っていたー。


そのため、今回も”いつもの”を入力したつもりだったのだが、

どうやら違っていたようだー。


「ーーあ~~じゃあ、あっちの使ったのか」

麗奈(正孝)は思い出したかのように呟くー。


もう一つ、遊びで登録するようなサイトやアプリで

良く使うパスワードがあるー。

そっちのパスワードを登録したに違いないー。


そんなことを思いながら、

麗奈(正孝)が再びパスワードを入力するー。


がーー


「ーあれっ…」

麗奈(正孝)は、少し困惑したような声を発したー。


”パスワードが違います”


また、そう表示されてしまったのだー。


「ーーーー…」

麗奈(正孝)は、しばらく絶望の眼差しでスマホを見つめるー。


「ーーえ…?ねぇねぇ、大丈夫ー?」

流石に、正孝(麗奈)も少し不安に思ったのか

そんな言葉を口にするー。


その言葉に、麗奈(正孝)も「え、えっとー…」と、

そう言葉を口にすると、一旦スマホを机の上に置いて、

深呼吸をしたー。


「ー大丈夫ー。今、思い出すからー」

麗奈(正孝)が、そう呟くー。


がー、”麗奈の顔”は、とても焦ったような、

そんな表情を浮かべているー。


「ーーあははー…わたしって

 慌てるとそんな顔するんだねー」

正孝(麗奈)は苦笑いするー。


普段、自分の姿を写真で見たり、

鏡で見たりする時も

”自然に慌てている自分の表情”というものは、

あまり見る機会はないー。


鏡の前に立っている時に、慌てていることは少ないし、

写真に写る時に、何かに焦っていたり、慌てていたりすることも

あまりないー。


人間は、”何かに焦っている自分”の姿や表情を見る機会というものは

あまりなかったりするー。


「ーーははー…か、顔に出てるー?」

麗奈(正孝)は苦笑いしながら、”今の自分の顔”を指差すと、

「ーうん!なんかー、こうー、新鮮な顔してる!」と、

正孝(麗奈)はそう言葉を口にしたー。


「ーーー…はははー」

少しだけリラックスした気持ちになる麗奈(正孝)ー


入れ替わりアプリを登録する際には、

”パスワードを2回”入力しているー。

設定用に入力したあとに、確認用にもう一度同じものを

求められる、よくあるアレだー。


”ーってことは、打ち間違えって可能性もあんまないよなー”

麗奈(正孝)は、冷静に色々な可能性を考えていくー。


”いつも使っているもの”の、入力ミスの可能性も考えたものの、

入れ替わりアプリに登録する際に、2回、同じパスワードの入力を

求められているために、その可能性は低いー。


偶然2回同じ入力ミスをする可能性は低いだろうー。


と、すればー…。


麗奈(正孝)が、さらに考えるー。


「ーーー…」

そんな、”自分”の、悩む顔を見て

正孝(麗奈)は、興味深そうにニコニコしているー。


”ーわたしの考えている顔、意外と賢そうに見える!”

そんな発見を楽しみながら、

正孝(麗奈)はふと、

「ーそういえば、入れ替わりアプリに登録した時に

 メールとか来てないの?

 そこにパスワード書いてあったりしない?」と、

そう言葉を口にしたー。


「ーーあ、そっかー。

 確かに登録するとき、メールアドレスも入力したから

 メールは来てるかもなー」


正孝(麗奈)の言葉に、麗奈(正孝)も納得したように

そう返すと、意気揚々と、登録時に使ったメールアドレスを開くー。


がーーー


「ーーー…あぁ…肝心のパスワードが載ってないー」

少しがっかりした様子で呟く麗奈(正孝)ー。


「ーじゃあ、”パスワードを忘れた場合はこちら”みたいなやつはないの?」

正孝(麗奈)が、さらにそんな言葉を口にするー。


「お!そういや、そういうのよくあるよなー!」

麗奈(正孝)も、また希望を取り戻したかのような表情を浮かべると、

その項目を探すー。


「あ!あった!」

お目当ての項目を見つけた麗奈(正孝)ー


心底嬉しそうに笑顔を浮かべると、

「ーわ!嬉しそうなわたしの顔!」と、正孝(麗奈)は、

入れ替わっている状況をまだ楽しんでいるのか、

そんな言葉を口にしたー。


そこには”パスワード再発行の手順”も書かれていて、

麗奈(正孝)は少し安堵した様子で、

その画面を見つめるー。


「ーーー登録時のメールアドレスに

 パスワード再発行のためのメッセージを送るってさー」


麗奈(正孝)が説明を読み終えて、そう言葉を口にすると、

正孝(麗奈)は「よかったー!これで解決だね!」と、

そんな言葉を口にしたー。


画面に表示されている案内に沿って、

必要事項を入力、

パスワード再発行のためのメールを送信して貰うー。


「ーーーよし!これで戻れる」

麗奈(正孝)が嬉しそうに言うと、

正孝(麗奈)は「も~!今度はパスワード、忘れないでよね!」と、

そう言葉を口にしたー。


だがーーー


「ーーー…????」

数分しても、メールが届かずに麗奈(正孝)は表情を歪めるー。


「どうしたの?」

正孝(麗奈)がまた、不安そうな表情を浮かべ始めると、

不思議そうにそう言葉を口にするー。


「あ、いやー…なんか、メールが来なくて」

麗奈(正孝)がソワソワした様子で、自分の髪をいじりながら

そう言葉を口にするー。


戸惑っているのか、何かを触らずにはいられない様子だー。


「ーーあれじゃない?迷惑メールにふりわけられてるとかー」

正孝(麗奈)の言葉に、

麗奈(正孝)は「あっ、そっかー」と、希望に満ちた目で

迷惑メールフォルダを確認したものの、

やはりそこには何もなかったー。


「ーーーなんで届かないんだー?」

もう一度、パスワード再発行のためのメール送信の手続きを

繰り返す麗奈(正孝)ー


それでもやはりメールは届かずに、ただ困惑するー。


「くそっ!なんで!」

麗奈(正孝)は、そう声を上げるー。


「わっ!?わたしの身体でイライラしちゃだめ!

 まずは落ち着いてー」

正孝(麗奈)がそう言うと、

麗奈(正孝)は「ご、ごめんー」と、すぐに謝罪の言葉を口に

しながら、深呼吸をするー。


そして、仕方がなく

「じゃあ、このパスワードかも」と、

パスワードを改めて入力したもののー、

やはり、そのパスワードも違っていたー。


そんな様子を見つめていた正孝(麗奈)は、ふと不安そうに

言葉を口にするー


「ねぇ…あまり何度も連続で間違えたりするとー

 ”ロック”されたりするんじゃないー?」


その言葉に、

麗奈(正孝)も、”確かに”と、思いつつー、

不安そうな表情で、自分の手にしているスマホを見つめたー。



②へ続く


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コメント


入れ替わりアプリのパスワードを忘れちゃった…☆

そんなお話デス~笑


2話完結なので、次回が最終回デス!


楽しみにしていて下さいネ~!

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