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「ーーーおいっ…!お前!!!

 何してるんだよー……!」


戸惑いの表情で叫ぶ男ー…


「へへへへー…何って?お前の彼女の身体で楽しんでるんだよー」

女は、ニヤニヤしながら

叫んだ男の方を見つめているー。


「ーや…やめてよ…!ねぇってば…!」

その場にいたもう一人の男が、まるで女のような口調でそう叫ぶー。


がー、女はニヤニヤしながら、一人で指を舐めー、

イヤらしい手つきで自分の胸を触りながら、

言葉を口にしたー。


「ーどうせ、”お前たち”は

 ここでの出来事を忘れるんだー。

 ここはー”そういう場所”だからなー」

笑みを浮かべる女ー。


彼女ー…霧島 萌々香(きりしま ももか)は、

今ー、”憑依”されていたー。


学校近くにあるこの神社にはー

ある不思議な現象が起きていたー。


それはー、”幽体離脱”ー


毎日黄昏時の決められた時間に、

神社脇の謎の小さな石像が複数立っている空き地で

その現象が起きるのだーー。


原因は”空間のゆがみ”ー

この場所での過去のとある出来事により、

毎日黄昏時のこのタイミングに空間にゆがみが生じー、

一時的に外界から隔離されるー。


そしてー、その”一時的に外界から隔離されているタイミング”で

その場所にいる人間の魂が”幽体離脱”してしまうという

現象が起きるのだー。


それを利用してー、

彼ー、亀井 哲治(かめい てつはる)は、

クラスメイトの霧島 萌々香に憑依したのだったー。


萌々香と、その彼氏である倉島 伸二(くらしま しんじ)を

それぞれこの場所におびき寄せー、

この現象が起きる時間を待ちー、

この場所が外界から隔離されて、その場にいた三人の魂が

幽体離脱した隙をついて、迷わず萌々香に憑依したー。


「へへへへへー…

 お前の彼女のこれ、マジで気持ちいいぜ?」

胸を揉みながら、彼氏の伸二に対してそう言い放つ萌々香ー。


しかし、反応したのは伸二ではなく、

この場所に二人をおびき寄せた哲治ー。


そうー、今、この場にいる三人は、

哲治⇒萌々香

伸二⇒哲治

萌々香⇒伸二

と、いう形に憑依していたー。


萌々香の身体が奪われた直後ー、

幽体離脱していた伸二と萌々香の魂は

”余りの身体”に吸い寄せられて、それぞれ、

哲治と伸二の身体に入り込んでいたー。


魂だけの状態では、人間、壊れてしまうために、

しばらくそのままでいると、自然と近くにある

”空っぽの身体”に吸い寄せられるのだー。


「ーーふざけるな!萌々香の身体を返せ!」

哲治(伸二)がそう叫ぶも、

萌々香(哲治)は「イヤだね」と、即答しながら

今度は嬉しそうにスカートをめくり始めるー。


「ーーこんなの…酷いよー…」

彼氏である伸二の身体で泣きじゃくる萌々香ー。


「ーはははははっ!

 何て言われようが関係ないぜ!」

嬉しそうに笑う萌々香に憑依した哲治ー。


がー、そんな様子を見て、哲治(伸二)は叫ぶー。


「ーーこんなことしてタダで済むと思うなよ!

 先生にも相談するし、お前の親にもー

 いや、警察にもー…!」


哲治(伸二)は、そう叫ぶと、

萌々香に憑依している哲治は、笑みを浮かべながら

指をチッチッチッチッ、と動かしたー。


「ー残念ーーー

 ここの幽体離脱はさー、”空間のゆがみ”が原因で

 起きてるんだけどー、

 ”空間のゆがみ”は、すぐに修復されるんだー。


 まぁ、今、この時間のこの場所は

 簡単に言えば”バグってる”状態だー。


 大体この状態は毎日この場所で、15分ぐらい続くー。


 でもーー

 それが終わるとー、

 ”歪んだ空間内であった出来事”はなかったことになるんだよなぁ…


 だからー、お前たちはあと5分もすれば、

 今起きてる出来事を忘れるんだよー。」


萌々香に憑依している哲治は、勝ち誇った表情でそう言うと、

「ーーってことで、俺のやりたい放題ってわけさ」と、

ゲラゲラ笑いながら、

萌々香の身体で、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、

煽るようなポーズを繰り返すー


「ーーお…そう言ってる間に、ほらー、

 だんだん空間のゆがみが直って来たみたいだぜー」


周囲の、不気味な波打つ景色がだんだんと元に戻って来るー。

この時間に、この場所にいた人間は外界から隔離されて幽体離脱するー。

”外”からは、そのことを視認することもできないー。


「ーーーーー…く… ま、待て!

 だったらお前はなんで、この場所のことを知ってるんだー!?

 今、起きてる出来事を忘れるんだったらー…!」


哲治の身体で伸二がそう叫ぶと、

萌々香(哲治)はニヤリと笑ったー。


「ーーククククククー

 ”それ”を教えても、お前はもう忘れるから、意味はないー」


その言葉と同時にー

空間のゆがみは”修復”されて、光に包まれたー。


「ーーーーーーーー」

何事もなかったかのように、伸二は

彼女の萌々香と共に話をしながら、いつものように下校している最中ー。


”一時的に歪んだ空間”の中にいた人間は、

”普段、その時間によくいる場所”に自然に戻されるー。

歪んだ空間の中での記憶はなくなり、

そこでの出来事はなかったことになってー。


「ーえ~?ホントに~?

 それは何か怖くない~?」

萌々香が笑うー。


「ーあははー大丈夫大丈夫ー。そんなの迷信だってー」

さっきの出来事とは何も関係ない話題を話しながら

伸二は歩くー。


二人は、哲治の言った通り、

たった数十秒前の出来事を、すっかりと忘れていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーふぅー…最高だったぜー」


神社に立っていた哲治は笑みを浮かべるー。


昔から、この神舎には”幽体離脱現象が起きる”という

都市伝説的な話があったー。


それに興味を持ち、オカルト好きの哲治は、

毎日のように高校での授業が終わると

この場を訪れて、神社中を調べて回ったー。


そして、その結果、見つけたのだー


”幽体離脱”をー。


黄昏時のある時間に、神社脇の

石像が並んでいる場所にいると、

”時空のゆがみ”に巻き込まれて、幽体離脱することをー。


最初にその現象に巻き込まれた時には本当に驚いたー。


しかしー、何度か繰り返すうちに、

哲治は気づいたー


”ここでの出来事はなかったこと”になっていることー

そして”なかったことになるだけではなく、記憶も失うこと”をー。


しかしーーー


「ー何故か”俺”は、記憶が残るんだよなー」

哲治は笑みを浮かべるー。


そうー、

この場所での幽体離脱は”世界のバグ”ー。

バグはすぐに修正され、そこでの出来事もリセットされ、

人々の記憶から消えるー。


だからこそ、”幽体離脱現象”に巻き込まれる人間は今までに

何百人、何千人といたものの、

その空間から抜け出した時点で、その場での出来事も記憶も

なかったことになるため、

”幽体離脱”という奇妙な現象が起きても話題にならず、

都市伝説のような話として流れているどまりになっているのだったー。


しかしー、

この哲治は違うー。


何故か、”彼にだけは”記憶が残るー。


だからーーー…


「ーーわたしー

 哲治くんのことが、昔から大好きだったのー!」


後日ー

哲治はクラスのアイドル的存在・愛奈(まな)を

この場に呼び出して、”幽体離脱現象”を発生させたー。


自分の身体を奪われ、哲治の身体に追いやられた愛奈が、

戸惑いの表情を浮かべているー。


「え…わ、わたしー?」

哲治になった愛奈の言葉に、

愛奈に憑依した哲治は

「ふふー哲治君、どうしちゃったの?」と、

ニヤニヤと笑みを浮かべるー。


今日は、憧れの女子を”自分に告白させる”という

シチュエーションを楽しんでいる哲治ー。


”俺になった愛奈ちゃんが戸惑う姿も見たいしなー”

そんなことを心の中で呟きながら、

愛奈の身体で、目の前にいる”自分”に告白するー。


「ーーえ……え…???

 え…????」

哲治に憑依した状態の愛奈は、何が起きたのか

全く理解できていないー。


この場所の空間が歪む時間帯に、

”自分ともう一人”だけの状態にしていると、

実質的に入れ替わったような状態にすることもできるー。


時として、そんな楽しみ方もする哲治ー。


「ーーだ~か~ら~、わたし、哲治くんのこと

 前からずぅ~っと、大好きだったの」


愛奈に憑依している哲治は、甘い声でそう言い放つー。


「ーーえ… えっ…

 す、す、好き???

 そ、そんなこと思ったことー…な、ないけどー…」


自分の身体から追い出されて、哲治の身体に憑依した状態の愛奈が

戸惑いの中、そんな言葉を口にすると、

愛奈に憑依している哲治は露骨に不機嫌そうにー、

「ーなんだよ…そんなに正直に言わなくていいじゃねぇかー」と、

不満そうにー強引に”自分”の身体を掴んでキスをし始めるー。


「ーーちょ、ちょっと…やめて!」

”逃げる自分”ー。


がー、”この現象”が起きている間は、この周辺の場所から

出ることもできないー。

愛奈の身体のまま、”自分”に何度も何度もキスをした哲治は、

興奮した様子で「ホント、最高だぜー!」と、笑みを浮かべたー。



もちろんー

時間が来ればそれは”なかったこと”になり、

愛奈は何事もなかったかのように日常生活に戻るー。


「ーーへへへへへー…

 この場所の秘密を”認識”できるのは、この俺だけー。

 俺は何でもやりたい放題だぜー」

哲治は嬉しそうにそんな言葉を口にしながら、

今日もその場を後にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


春休みの最中ー。

哲治は、仲の良い友達を数名集めて、

”また”いつものように楽しんでいたー。


「へへへへー萌々香ちゃんの身体を”また”げ~~っと!」

萌々香の身体で狂ったように笑う哲治ー


「ま…またー!?」

萌々香の彼氏・伸二が困惑の表情を浮かべるー。


”また”とは、どういう意味なのかー。

この場所での”ゆがみ”が終わると、通常は記憶が消え、

出来事はなかったことになるー。


そのため、伸二も、萌々香も”前”のことを覚えていなかったー。


「ーふふふふふー

 幼馴染のわたしのこと、ホントは好きなんでしょ?」


萌々香が、呼び出した”別の”男子生徒である

沢田 重幸(さわだ しげゆき)に、そう言いながら

クスクスと迫るー。

ーもっとも、重幸もこの場での幽体離脱現象に巻き込まれて、

今は哲治の身体の中にいるー。


「ーー…えーー…こ、これは一体ー

 ど、どういうことだよ…!?」

重幸は、この場所での憑依を楽しんでいる哲治の”親友”ー。


しかし、哲治とは違い、この場所での出来事を認識できず、

憑依を共に楽しんでいるわけではないー。


「ーーへへへへ…どうもこうもねぇよー

 この場所では不思議な現象が起きるんだー

 

 へへー親友のお前にいい思いをさせてやろうと思ってさー」


萌々香に憑依した哲治が、哲治の身体に憑依している状態の重幸に迫るー。


重幸は”萌々香”の幼馴染で、萌々香のことを密かに好きだったことは

知っているー


「い、い、いや…だ、ダメだろそんなのー?

 本人が嫌がってるんだしー!」

哲治の身体で、重幸はそう叫ぶと、

萌々香(哲治)は、不満そうに表情を曇らせるー。


その場で口論になる二人ー。


残りの二人は、戸惑いながらその様子を見つめているー。


やがてー…

”空間が歪む時間”は終わりー、

その場所での出来事はなかったことになり、全員が元に戻ったー。


「ーーチッー…

 なんだよ重幸のやつー、

 意外とノリが悪いんだなー」


元に戻った哲治は、不満そうにしながら

そんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーーーー」

自分の部屋で、表情を歪める哲治の親友・重幸ー。


”あの空間”で起きる不思議な幽体離脱現象は

それが終わればなかったことになり、

記憶も消えるー。


そうーー

通常はーーーー。


だがーーー


「ーーーー…さっきのはー…?」

重幸は、”哲治と同じく”ーーー

あの場での出来事の記憶が残っていたー。


「ーーー………あいつに、聞かないとー」

そんな言葉を口にすると、重幸は時計を見つめながら

”今日はもう遅いし、明日にしよう”と、

そう言葉を口にしたー。


そして、翌日ー。


「ーーなぁ、哲治ー

 ”昨日”のは一体何だったんだー?」

哲治を呼び出した重幸がそう言うと、

哲治は「昨日の?」と、表情を歪めるー。


「ーー神社の”幽体離脱”ー。」

重幸の言葉に、哲治は驚きの表情を浮かべたー。


「ーーな…お、お前ーーまさか…?」

哲治は思うー


”俺以外に、あの場所で記憶が残るやつなんてー…

 いるはずがー…”


とー。


だがー、”自分がどうして記憶が残っているのか”

分からないしー、そもそも”自分以外にそういう人間がいるはずはない”

と、いうのも、そもそも何の根拠もなく

そう思っていただけだー。


「ーーーー……ーーー安心しろー。

 普通の奴らに記憶は残らないー

 あの空間での出来事は、全部リセットされて、

 なかったことになるからー…

 俺もお前も、存分に楽しめーーーー


「ーー…な、なんてことをー…

 まさかお前ー…萌々香の身体で好き勝手ー…」

重幸が呆然とした表情で言うー。


「おいおいー誰の記憶にも残らないんだから

 何も問題はーー」

哲治がそう言いかけると、重幸は

「そういう問題じゃないだろ!」と、そう言葉を口にしたー。


「ーみ、みんなに記憶が残らないからいいやー、とかー

 ヤベェ奴の考えることだろー…

 ーー…ーー悪いけど、俺には黙ってるなんてできないー」


そう言うと、重幸は”昨日の出来事”を、

幼馴染の萌々香や、その彼氏の伸二に伝えようとするー


「お、おい!待てよ!」

慌てた様子で哲治が叫ぶー。


がー、重幸は萌々香や伸二に連絡を入れると、

そのまま昨日の出来事を話し始めてしまうー。


「ーーーーー…」

呆然とする哲治ー。


だがーーー

”4月1日ー”


哲治は、そんなカレンダーを見つめながら笑みを浮かべるー


「ーーククククー…

 無駄だぜーシゲー。」

哲治のそんな言葉に、重幸は「あ?」と、不満そうに振り返ると、

哲治は笑みを浮かべながら言葉を口にしたー。


「ーー俺たち以外、あの場所での出来事は

 記憶に残らねぇんだー。

 

 それにー

 今日はちょうど”エイプリルフール”ー

 お前のそんな話、誰も信じやしないー」


哲治のその言葉に、重幸は表情を歪めるー。


「ーー俺はこれからもあの場所で”お楽しみ”を続けさせてもらうぜー

 お前があの場所を楽しむかどうかは、お前の自由だー。


 でも、俺のジャマだけはするなよ?」


哲治はそう言いながら立ち去っていくー。


重幸は、哲治を無視して

萌々香や伸二に”昨日の憑依”の出来事を伝えて

注意するように促すー。


がーーーー…


”ーーあははー

 そういえば、今日エイプリルフールだもんねー”


幼馴染の萌々香からはそんな返事が返ってきてしまうー。


「ーーくそっ!」

重幸は、困惑の表情を浮かべながらそう呟くと、

なんとか親友の凶行を止めようと、走り出すのだったー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初のお話は、エイプリルフールの要素が登場する

憑依モノデス~!


昨月の漆黒プラン向け特典で募集した、

”登場させてほしい嘘”を、それぞれ絡めたお話になっています~!

(それぞれ絡めるのに割と、頭をひねりました~笑)


次回は後編…、

どんな風に決着がつくのか見届けて下さいネ~!


今日もお読み下さりありがとうございました~!

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