Home Artists Posts Import Register

Content

「ーーすみませんー。夫は今、留守でしてー」

ニコニコしながら、そう言葉を口にする美穂(みほ)ー


「ーーーあ、いえー…

 こちらこそ、急におしかけてすみませんー」


そう言葉を口にするのは、

今、目の前にいる”美穂”の夫である

泉沢 博光(いずみさわ ひろみつ)の

友人・内野 隆夫(うちの たかお)ー。


隆夫は、”ある目的”でこの家にやってきたのだが、

図らずも、その目的は果たされることになったー。


「ーー内野さんのことは、夫もよく話をしていてー」

クスクスと笑う美穂ー。


「そ、そ、そうですかー」

隆夫は少し恥ずかしそうにそう言葉を口にするー。


隆夫が今日、友人である博光の家にやってきたのはー、

”少し前に結婚した博光”が、本当の結婚したのかを疑ってー、

”妻”である美穂が実在するのかどうかを

”お土産を持ってきたフリ”をしながら確かめに来たのだー。


隆夫は、学生時代からの博光の友人で、

昔から”お前は絶対生涯独身だと思うけどなぁ”などと揶揄っていたー。


その通り、博光は30代中盤に差し掛かり、婚活にも失敗・挫折したことから、

”俺と一緒に、お前も生涯独身だな!”などと、最近も揶揄っている

ところだったー。


がー、そんな博光が突然”結婚”したと連絡してきたのは

先月のことだったー。

隆夫は飛び上がるほどに驚き、”嘘だろ!?”と言いながらも

博光のことを祝福したもののー、

次第に”一向に妻の美穂と会わせてくれない”ことから、

”本当は、美穂なんて女性は実在しないのではないか”と

疑い始めてー、今日ー…実際に博光の家にまでわざわざやってきて

”確かめに”来たのだー。


だがーー…美穂の存在を確かめるどころか、

親友である博光の家に、その”美穂”がいたのだー。


「ーーなんかーわたしのこと、実在しないんじゃないかってー

 疑ってらしたとかー」


美穂がクスクス笑いながら、揶揄うようにして言葉を口にすると、

隆夫は慌てた様子で、

「あ、いやー、いえー…そ、そのー…す、すみませんー」と、

顔を真っ赤にしながら言葉を口にするー。


博光に会って、今日も”妻は留守だから”とか言い出したら

”本当はいないんだろ~?奥さんが帰って来るまで待っちゃおうかな~?”

とか、そんなことを言いだすつもりだったー。


「ーーふふふふー

 別にいいですよー。

 でも、わたしはこうして実在してますから!」


美穂は冗談めいた口調で、自分に手を触れながらそう言うと、

隆夫は恥ずかしさから顔を赤らめながら

「で、で、でもー…ヒロが美穂さんみたいな人と結婚するなんてー」と、

そう言うと、

「ー博光と一緒にいると、心の底から落ち着くんですー」と、

美穂は夫のことを口にしながら、とてもうれしそうな表情を浮かべたー。


その様子に、嫉妬に似た感情を覚えながらも

隆夫は「ーーあ、これ、アイツと一緒に食べて下さいー」と、

”探る口実”として用意していたお土産を手渡すー。


「ーあ、わざわざありがとうございますー。」

美穂のそんな言葉に、”美穂が実在するのかどうか”を疑っていた

隆夫は気まずくなった様子を見せながら、

「ーーすみませんー。急にお邪魔して失礼しましたー

 アイツにも、よろしくお伝えください」、

と、そう言葉を口にして、その場から足早に立ち去って行ったー。


「ーーー」

クスッと笑いながら、玄関先の表札を見つめる美穂ー。


そこには”泉沢 博光” ”美穂”と、

そう書かれているー。


「ーーーーへへへー隆夫のやつ、驚いただろうなぁ」

博光の妻・隆夫はそう言葉を口にすると、

ニヤニヤしながら「あの驚いた顔、笑えるぜー」と、

そう言葉を口にしながら、玄関の扉を閉めて、

部屋の中へと戻っていくー。


そしてーーーー


「ーーーーまさかーーー」


そう言葉を口にすると美穂の身体が

一瞬、流体金属のような状態になってからー…

”夫”である博光の姿に変わるー。


「ー”美穂”も俺だとは思わないだろうなーへへへへ」

美穂の姿から、”夫”である博光の姿に戻ると、

博光は笑みを浮かべながら、鏡を見つめるー。


「ーーってーーーこれじゃ、”女装”だなー」

”美穂”の姿で着ていた服を慌てて脱ぐと、

苦笑いしながら、いつも自分が着ている服を身に着けるー。


”服も一緒に変わってくれりゃいいのに、

 流石にそこまで都合よくはいかないかー”


そう思いつつ、博光は着替えを終えると、

笑みを浮かべたー。


「ーーに、しても隆夫のやつの驚いた顔は最高だったなー!」

嬉しそうに笑う博光ー。


博光はーーー

”独身”だー。


学生時代からの友人・隆夫から

よく一緒に”生涯独身だな!”などとネタにされていた博光は、

”俺は絶対に結婚するからな!”と、昔から言い返していたー。


しかし、結果はーーー…

30代にして婚活にも失敗、散々現実を見せ付けられて

結婚相談所も退会ー、

隆夫の言う通り、このまま”生涯独身コース”が濃厚になりつつあったー。


けれどー、そんなある日、出会ったのだー。

”他人に変身することができる”変身薬をー。


それを使って、博光は”一人二役”で、”妻”を作ったー。


自分自身の姿と、街中で見かけた”見ず知らずの女”の姿を使って、

”夫”と”妻”その両方を演じているのだー。


妻・美穂など、本当は存在しない架空の存在ー。

その正体は”博光自身も名前すら知らない女の姿”に変身している博光自身ー。


変身薬は、”変身したい相手を見つめながら服用すること”で、

以降、いつでもその相手に念じるだけで変身することができるようになる、

そんな薬だー。

それを手に入れた博光は、街中で偶然見かけた女を対象に

変身薬を使い、その姿を勝手に使って”妻の美穂”を名乗っているー。

大学から出て来たことから、恐らく女子大生だと思うー。


本当の名前は知らないし、

”本物”が、どんな人間なのかも知らないー。


だがー、この”可愛い姿”さえあれば、そんなことはどうでもよかったー。


「ーーしかし、隆夫のやつ、急に家にまで来るなんてなー」

そう思いながら、博光は”脱いだ服”を見つめるー。


いつでも変身して着替えられるように、

博光自身の姿でいる時は女性としての衣服を、

そして、”美穂”の姿でいる時には男性としての衣服を

すぐに着替えられる場所に置いてあるー。


変身にかかる時間は10秒ほどだし、

慌てて着替えれば、着替えにそう時間はかからないー。


「ーーって、とっさのことだったからノーブラで出ちまったけどー

 まぁ、気付かれてないよなー。」


博光はそう言葉を口にしながら、

少し時間を空けてから、隆夫にLINEを送ったー


”お土産、ありがとなー

 そういや、”美穂”と会うのは初めてだったっけー?”


そんなメッセージを何食わぬ顔で送るー。


”ーーお、おぅー…

 っていうかーなんかそのー疑ってて悪かったなー”


隆夫から返事が来るー。


ニヤリと笑みを浮かべる博光はー、

”架空の妻”である”美穂”の姿に変身すると、

そのまま男物のシャツを着たまま、

「まぁ、”美穂”も俺なんだどねぇ~」と、

ニヤニヤ笑みを浮かべながら

その綺麗な指で、続けて返信を送信したー


”ーーはは、疑いが晴れて良かったよー。

 美穂もお前に会えて喜んでたー”


とー、そんな返信をー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーあ、おはようございます~」

ゴミ出しを”美穂”の姿でしていた博光は、

近所のおばさんと挨拶を交わすー。


「ーーおはようございますー

 今日もいい天気ですねぇ」

おばさんのそんな言葉に、

空を見つめながら「そうですね~」と、

微笑む”美穂”ー


そのまま家の中に戻っていくと、

今度は”美穂”から、自分の姿に戻るー。


「ーやべっ!また女装状態になっちまった!」

そんなことを口にしながら、すぐに”男”としての

服装に着替えると、今度はそのまま会社に向かう準備をするー


今度は”博光”として、家の外に出ると、

さっきのおばさんがゴミ置き場周辺の掃除をしているのが見えて

「おはようございます」と、何食わぬ顔で挨拶をしたー


「あ、泉沢さん、おはようございますー

 今日はいい天気ですねぇ」


おばさんは、まさか目の前にいる”博光”が、

さっきの”美穂”と同一人物だとは夢にも思わずに

そんな言葉を口にするー


「ーーはははーでも、午後からは曇って来るみたいですよ」

博光はそんな愛想のよい言葉を口にしながら

”挨拶、2回目だけどなー

 っていうかこのおばさん、誰にでも同じこと言ってるんだなー”

と、内心でそんな言葉を口にするー。


そして、そのまま会社へと向かう博光ー。


博光は、今も”独身”だー。

しかし、周囲には”妻”がいるように見えるー。

”美穂”という名の架空の妻が、確かに存在しているように

見せかけることができるー。


生涯独身ー。

けれども、夫婦のフリをすることができるー。


彼は、”生涯独身夫婦”として、今日も生活を続けていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


休日ー。


今日も博光は”いつもの見ず知らずの女”の姿に変身して

”美穂”として、買い物をしていたー。


「ーーーーー」

美穂は少しだけニヤッとするー。


この”姿”で、おしゃれな格好をしていると、

時々”視線”を感じることがあるー。

それが”男”である博光にとっては快感だったー。


自分がイケメンならまだしも、

博光は決してイケメンではないー。

既に30代中盤だし、簡単に言えば”ただのおっさん”だー。

そんな博光にとって、”外で誰かの視線を感じる”という経験は

とても新鮮でー、興奮するものだったー


「ーへへへへ…あのおっさん、俺のこと見てるー」

”美穂”の姿のままそう呟くと、

”おっさんを揶揄ってやろう”と、思いながら、

その男性客のほうをちらっと見つめるー。


やはり”美穂”のことを見ていたのだろうー。

慌てて視線を逸らす様子が見えて、思わず”美穂”は、

笑ってしまうー。


「ーーくくくくーー

 まぁまぁ、気持ちは分かるぜー」


そんな言葉を口にしながら”美穂”は、本来の目的である

”買い物”を済ませるために気を取り直して、

商品棚のほうを見つめたー。


「ーーーーーー」

買い物を終えて、帰宅する最中ー

”美穂”は、通りがかったお店の前で

”アルバイト募集中”の表示を見つけるー。


「ーーー…」

メイドカフェのバイト募集ー。


それを見て、”美穂”として外出中の博光は

思わずドキッとしてしまうー


”へ…へへへー 今の俺の姿なら、メイドカフェで

 バイトもできちゃうんだなー”


口が乾くようなドキドキと興奮を覚える”美穂”ー。


博光は30代中盤だが、

恐らく”美穂”を名乗らせているこの女は、

”20代前半”のはずだー。


全然、メイドとしても行ける年齢だしー、

何よりも可愛いー。


「ーーー」

”メイド”として振る舞う自分自身のことを考えながら

”俺が、メイドー”と、そう言葉を口にして、

思わずニヤニヤしてしまう”美穂”ー。


がーーー


”ーーまぁ、”俺”としての仕事が週5であるしー、

 姿は違っても、俺自身であることには変わりないからー

 体力が持たねぇよなー”


”博光”と”美穂”ー。

周囲からは夫婦に見えても、

実際は”一人二役”をやっているだけー。

当然、”自分自身”として行動しようと、

”美穂”を名乗って女の姿で行動しようと、

”同じ人間”であることには変わりはない。

体力的には限界があるのだー。


「ーーそれにーーー…

 本名が分からないしー、色々問題が起きそうだからなー」

”美穂”を名乗ってメイドカフェのバイトに応募したい気持ちを

グッと堪えながらその場から立ち去るー。


”美穂”を名乗っているこの”姿”の本名は知らないー。

大学から出て来た以上、あの大学の学生である可能性は

高いものの、本名は知らないー。


勝手に”泉沢 美穂”を名乗ってバイトを始めてー、

万が一、何か問題が起きたりするとまずいー。


そう思いながら、

仕方がなく帰宅した博光は、

「今日はちゃんと先に着替えるぜ」と、

”美穂”として着ていた衣類を脱ぎ捨てると、

そのまま普段、自分が着ている服に着替えー、

”男物の服を着た美穂”の状態になると、

そのまま変身を解除したー。


変身するときも、解除するときも、

服は”その時着ているもの”のままー。


女⇒男に戻るときに服を着たまま戻ると

”サイズ”が合わずに服が破れることがあるー。


”美穂”として行動している女の姿の方がー

細く、博光の方が体格がいいために、

女物の服を脱ぐのを忘れて、変身を解除すると

大変なことになるー。


この前も、それでタイツをダメにしたー。


「ーーーさてーー」

博光はひと息つくと、

”メイドカフェでバイトできなくても、メイド服を着ることはできるよな”と

思い立って、早速メイド服を注文するー。


注文を終えて、ワクワクした様子で笑みを浮かべると、

スマホのほうを見つめる博光ー。


すると、そこにーーー

友人の隆夫からのメッセージが届いていたー。


”お前が結婚したっていうから、俺も本気だして彼女作ったぜ!”

とー。


「ーは?」

表情を歪める博光ー。


”彼女”とは、そんなに簡単にできるものなのだろうかー。


”どうだー?今度、4人で一緒に食事でもー”

隆夫のそんなメッセージを見つめながら、

博光は「え…」と、困惑の言葉を口にするー。


いつの間に、親友の隆夫に”彼女”などできたのかー。


そしてーーー

”博光”と”美穂”は一人二役ー。


”二人同時”に存在することはできないー。


親友からの思わぬメッセージに、博光は困惑の表情を浮かべることしか

できなかったー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


変身能力を使って

一人二役で夫婦のフリをしている…

そんな男の人のお話デス~!笑


なんだか良からぬ雰囲気しかしないですネ~!!


続きはまた次回デス!!☆!

楽しみにしていて下さいネ~!

Files

Comments

No comments found for this post.