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有名ファッションデザイナーの”レイナ”-。

カリスマ的人気を誇る存在で、

ファッション界であれば知らない人間はいないー。


次々と奇抜なアイデアを生み出していき、

一躍、有名になった彼女はー

既に”3代目”だー。


15年前ー

突如としてファッションデザイナーとして姿を現したレイナは、

その美貌と、美貌だけではない実力で

ファッション業界のカリスマになったー。


レイナは、有名ファッションデザイナーの娘だった。

だからー、

最初は”親のコネだろ”などという

声も世の中にはたくさん出回っていた。


しかしー、レイナは実力を示したー

自分の美貌を惜しげもなく利用し、

話題を作り上げて、

さらにファッションデザインの面でも

圧倒的な実力を見せつけたー


レイナが現れてから1年ー。

世間で、レイナをバッシングする声は

ほとんどなくなっていた。


そして、5年が経過したある日、

レイナは突然”引退”を発表したー。

そして”後継者”を1名育てると宣言。

一般から公募し、選ばれた一人がー

”2代目レイナ”となったー


2代目レイナは現役の女子大生で、

初代レイナ以上の美貌の持ち主だった。

自ら過激な衣装で公の場に姿を現すこともあり、

初代以上の人気を誇りー

それから6年間、ファッション界のカリスマとして活躍したー


が、2代目レイナも引退を発表。

初代のときと同じように、”後継者”を公募しー

”3代目レイナ”が決まったー


3代目は、一見すると、とてもおとなしそうな

感じの女性だったが、

非常に活発で、おしゃれ好きだったため

その”ギャップ”も人気になったー


そして、それから4年ー


”3代目レイナ”が引退を発表したー

初代、2代目の時と同じように

”後継者をひとり”育てることを宣言してー。


・・・・・・・・・・・・


「--わたし、応募してみようかな~」

女子大生の裕美香(ゆみか)が言う。


「え~、あのレイナのやつ~?」

友達の清子(せいこ)が言う。


「--うん。

 私、レイナのファッションデザイン好きだし~


 まぁ…自分がああいう格好したりは

 できないけど、純粋にすごいなぁ~って」


裕美香が言うと、

清子はほほ笑んだ。


「でも2代目のときも、初代のときも

 応募者数凄かったみたいだよ~」

清子の言葉に、

裕美香は苦笑いする。


「う~ん…デザインなんてなんの経験もないし、

 確かに無理かもだけど…

 でも、挑戦するだけなら何も減らないし

 やってみようかなって」


裕美香の言葉に

清子は「まぁ、挑戦することは大事だよねー」とほほ笑んだ。


そしてー

裕美香は、”4代目レイナ”の公募に応募した。


応募者数は7256名ー。

一人のファッションデザイナーの後継者争いに

これだけの人間が名乗りを上げた。


ファッションデザイナー・レイナは、

初代から3代目まで、

まるで”同じ人物かのように”年々

デザイン力はパワーアップしていた。


初代から2代目

2代目から3代目。

しっかりと初代レイナの想いが

受け継がれているということなのだろう。


2週間後ー。

裕美香は、レイナの面接にやってきた。


なんとー

”書類選考”に通ったのだ。


レイナはいつも、最初に”書類選考”を行い

その後に”面接”を行い、

そして後継者を指名している。


履歴書は確認するものの、

職務経歴も問わず、学力も一切問わない。


それが、レイナたちの方針だった。


「----はじめまして」

パーティドレス姿の3代目レイナが笑顔で

裕美香を出迎えた。


「あ、、、は、、はじめまして…

 あの、、わたしなんかを選んでくださって

 ありがとうございます」


裕美香は頭を下げた。


書類選考を通過したのは、たった18名ー。

まさか自分が通るとは思わなかったー

大したスキルも実績もないのにー


「-----じゃあ、座って」

3代目レイナが笑うー


レイナが”3代目”になったのは4年前。

4年前に比べると、今のレイナも少し年老いたように見えるー。

3代目の年齢は非公表だが、デビュー当時が20中盤~ぐらいで、

今は30代に行くか、行かないかだと思われる。


「---」

「---」

緊張する裕美香。


しかし、レイナは何も聞いてこない。


じろじろと裕美香のほうを見つめているー


レイナと一瞬、目が遭うー。


レイナはにっこりとほほ笑んだー

”一筋縄ではいかない”


裕美香はそう思った。


芸術性の高い人間は、時に

常人には理解できないような

感性を持っていることがある。


レイナも、そうなのかもしれない。

じーっと、まるで品定めするように

裕美香を見つめたあとに、

レイナは静かにほほ笑んだー。


「---あなた…」

レイナが口を開くー


”--!!”


裕美香は、この面接に来る前に

あることを調べていたー


それは、”レイナとの面接で何を聞かれるのか”

だー。


2代目レイナが3代目レイナを募集していた時のことが

まだツイッター上に残っていた。


それを調べると

”じっくり見つめられたあとに”お帰り下さい”と言われた”という

書き込みが多かった。


面接は見るだけなのだと。


だがー、

一部では

”私は質問された”という人もいた。


その情報を見て、裕美香は確信していたー


”質問なしで、お帰り下さいは、不採用だー”


とー。


つまりー

今、3代目レイナが口を開いたということはー

裕美香は”見込みあり”と判断されたということだー


「あなたー洋服になる覚悟はある?」


「え?」

裕美香は思わず首をかしげてしまう。


言っている意味が分からない。


「わたしの仕事は、お客様の喜んでもらえるような

 洋服をデザインすること


 そのためにはー

 洋服の気持ちになることが大切なの」


3代目レイナは言う。


「よ、洋服の気持ちに…」


「そう」

3代目レイナはほほ笑んだー


洋服の気持ちになることで、

洋服が”他人に着られる”とはどういうことなのか、ということを

理解できるー、

レイナはそう言った。


そして、洋服として着られる気持ちを理解することは、

”自分がもしも洋服だったら?”という

イマジネーション力につながり、

結果、洋服に対して経緯を払い、

ファッションデザイナーという仕事に対して

誇りと、洋服に対する感謝の気持ちを

得られるのだという。


(さすが…レイナさんの言うことは違うなぁ…)

裕美香は内心で感心する。


芸術家…というか

そんな力に溢れている。


初代レイナと2代目レイナも、

この3代目レイナと同じ気持ちだったのだろうかー


「---着られる覚悟…あなたには、ある?」

3代目レイナの言葉に、

裕美香は意を決して頷いたー


「------合格よ」

3代目レイナが呟いた。


「えっ!?」

裕美香が信じられない言葉を聞いて震えだす。

歓喜の、震えだ。


「え…今、なんて…?」

裕美香が言うと、

3代目レイナは笑いながら

「あなたが4代目レイナになるのよ」と呟いたー


「で、、でも、本当にわたしなんかで…!?」

裕美香は不安に思う。


自分にファッションデザインをできるだけに

知識も経験もないー

そのことを裕美香は不安に思ったのだった。


しかしー


「---だいじょうぶ。

 ノウハウは、全部、あなたに渡すわー…

 だから、安心なさい」


3代目レイナの言葉に、

裕美香は”ありがとうございますっ!”と叫んだー


帰り道ー

裕美香はまだ、夢見ごこちだったが

あることを考えていたー。


自分にレイナとしてふるまうことなんて

できるのだろうかー、と。


初代レイナも、2代目レイナも、3代目レイナも

自分の身体すらファッションの広告塔にし、

積極的に活動していたー

だがー裕美香は違う。


どちらかというと

おとなしいタイプで、

歴代レイナのように

自分自身がファッションモデルのようになりながら

積極的に活動していくことなんてー


しかも…

レイナは一人で活動しているー。

そんなこと、自分にできるのだろうかー


とー


けれどー

ノウハウは全部渡す、という

3代目レイナの言葉を信じることにしたー


”まだ、誰にも言わないでね”

3代目レイナからはそう言われた。


レイナは、”この人だ”と決めた人がいたら

即決するのだというー

それが、裕美香だった。


だがー

まだ裕美香の後にも面接の予定が入っている。


そんな中、裕美香が”合格したー”なんて叫べば

世間が混乱する。

だから、誰にも言わないでほしい、とのことだった。


”もし、広まっちゃったら、わたしも合格取り消し

 しないといけないから…”と

少し脅しっぽいことも言われたけれど、

”まぁ仕方ないのかな”とあまり

気にしないようにしていたー


・・・・・・・・・・・・・


後日ー


3代目レイナから呼び出された裕美香は

大学が終わった後にレイナのところに向かうー


「--お邪魔します…」

裕美香が事務所に入ると、

そこには、ミニスカート姿のレイナがいた。


今日もとても、かわいらしいファッションだー。


「---おめでとう」

3代目レイナが言う。


「え…?」

裕美香は首を傾げた。


「今日からあなたが、正式にレイナよ」


その言葉に、裕美香は首をかしげる。


「え!?ちょ、待ってください!いきなり!

 まだわたし、何も教わってませんよ!?」

裕美香が苦笑いしながら言う。


今の状態でレイナを引き継いだら

それこそ大変なことになる。


まだ、ファッションデザイナーのことなんて

何も分からないー。


「--ふふ…大丈夫よ。

 今から”すべて”を教えてあげる」

3代目レイナがほほ笑むー


「ーー今から、裕美香ちゃんには

 洋服のきもちになってもらうわね」


3代目レイナはそう呟くと、

裕美香のほうに手をかざしたー


「---?」

裕美香は”どうやって洋服の気持ちなんか

知るんだろう?”と疑問に思うー


しかしー

次の瞬間ー


ぺり…


イヤな音がした。

何かが、はがれるかのような音。


「--ねぇ、裕美香ちゃん。

 今、”初代”と”2代目”は何をしていると思う?」


3代目レイナはほほ笑みながら言う。


「え…!?」


裕美香は、ふと考えてみるー


そういえばー

初代レイナも、2代目レイナも引退してからは

表舞台に姿を現していないー。


初代も、2代目も、隠居するような年齢じゃないー


「答えはー」

3代目レイナがほほ笑むー


「----!?!?!?!?」


鏡の前に座っていた裕美香は

目を疑ったー


自分が、ぱっくりと2つに割れたーーーー


背後の3代目レイナが邪悪にほほ笑むー


「洋服の気持ちー

 着られる気持ちー

 くくくくくくくく」


とー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「---皆さん初めまして。

 師匠から”レイナ”を引き継ぎました。

 

 先輩たちと同じように、

 新しいファッションを生み出していこうと考えていますー

 よろしくお願いします」


生放送の番組の出演したのはー

”4代目レイナ”になった裕美香だったー。


秘書のような恰好で、大胆に足を見せつけ、

妖艶にほほ笑む裕美香ー


この日からー

”3代目レイナ”は姿を消して

”4代目レイナ”が

表舞台に立ち始めたのだったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


何が起きたのでしょうか~?

第2話では、第1話後半の、曖昧な部分から

描いていきますよ~☆

お楽しみに~!





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