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俺は、死んだー。


”さすがに”やりすぎたかもしれないー


俺は、4年前ー

高校2年生の時に、幼馴染の金原 亜咲美(かなはら あさみ)に

憑依したー。

ずっと好きだった亜咲美の身体を手に入れた俺は

その身体でやりたい放題したー。


何人もの男を誘惑し、

家では毎日のようにエッチに溺れて

亜咲美をしゃぶりつくしたー。


そしてー

大学に入った俺は、

実家を飛び出した。

実家を飛び出した俺は毎日のように亜咲美の身体で

男を誘惑しては連れ込み、 

激しいエッチを繰り広げた。


が、やりすぎたー。

遊びつくして捨ててやった男の一人が、

凶行に走ったのだー


男と遊んで帰ってきた俺はー

家のそばで待ち伏せしていた男に

そのまま部屋に入り込まれて

散々乱暴をされた挙句ー

殺されてしまった…。


そしてー

俺は今、あの世にいるー。


「---ふん」

まだ死にたくはなかったが仕方がない。

十分に楽しませてもらったー


それにー


「くくく…死んでも、身体はこのままか」

俺は笑みを浮かべた。


俺の姿は、亜咲美のままだー

声も可愛い声のまま。


むしろ、死んだあと、生前の身体で

過ごすことになるのであれば

早めに死んで正解だったのかもしれない。


今は綺麗なこの亜咲美の身体も

年老いれば、どんどん衰えていく。


「さて…今度はあの世で

 男どもを誘惑してやるか」

亜咲美の低い声ー。

本当の亜咲美はこんな声を

出さなかった。


乗っ取った直後は、低い声で

しゃべるだけで興奮したものだー。


さすがに何年も亜咲美として

過ごした俺は、もう興奮しなくなってきたがー


遠くー

長くー

終わりが見えない一本道ー


ひとつの道、そして周囲はずーっと続く

綺麗な花畑ー


これは、天国への道かー

それとも、地獄への道かー。

そもそも、天国と地獄なんて分け目があるのか。

それは、俺には分からない。


俺は歩く。

亜咲美の姿で、色っぽくー。


俺の身体は亜咲美を乗っ取った時に消滅したー

自分の身体を失うのと引き換えに、

亜咲美を乗っ取ったのだ。


「ようこそ…」


ーー!?


俺が振り返ると、

そこには、黒いシルエットのような生き物がいた。


人間のかたちをしているのだが、

顔も、何もない。

ただ、”人のかたちをした黒いシルエット”が

そこにいるー


「な、なんだお前は」

俺は亜咲美の声でそう尋ねた。


「----あの世への案内人…」

黒いシルエットはそう呟いた。


「なるほど…死神ってやつか」

俺は、亜咲美の姿かたちのまま

そう呟いた。


「---」

黒いシルエットは、返事をしない。

顔も真っ黒だから、表情が分からないー


「----」

黒いシルエットが指をさした。


「--?」

俺が髪の毛をなびかせながらそっちの方向を見ると

巨大な遊園地のように輝くー

”楽園”がそこにあった。


「死後の人間は、あの世界で暮らしている。

 争いも、何もない、それぞれの幸せを手にすることのできる

 ”エデン”」


黒いシルエットが言った。

男とも、女ともわからない、機械音声のような声だ。


「”人生”とは長く過酷なものー

 それを終えた人間たちに”おつかれさま”の気持ちを

 こめた贈り物ー

 それが、エデン」


「---へぇ」

俺は笑みを浮かべた。

鏡がないからわからないが

今の亜咲美は悪い顔をしているはずだー。


エデンー

そこで俺は亜咲美の身体を使って

エッチに溺れてやる。


俺は、ゾクゾクしながらエデンを見つめながら言う。


「じゃあさっそく、俺をエデンに案内しろ」

女の声で男言葉を口にする俺。

ここでは、もう隠す必要もないー


「----」

黒いシルエットは動かない。


「--なんだよ?」

俺が言うと、

黒いシルエットが近づいてきた。


「ここへはー

 死んだときの姿でやってくる」

黒いシルエットが言った。


黒いシルエット曰はく、

”自分が一番理想としていた時の姿”で

人はあの世にやってくるのだという。


特に意識はしていなかったが

亜咲美の死ぬ直前の姿でここにいるということは

俺は女子大生としての亜咲美の姿が

一番好きだったのだろうー


「------」

「------」

俺は黒いシルエットの方を見つめる。


黒いシルエットが意味深な沈黙を

浮かべているー。


「---……なんだよ?」

俺が言うと、黒いシルエットは答えたー


「---…じゃあ、どうして」



「どうして、私に姿がないと思う?」

黒いシルエットがそう言い放った。


「---あ?死神だからじゃないのか?」

俺が言うと、

黒いシルエットは答えた。


「--私は死神ではないー」


「--あ??さっき、あの世への案内人って言ったじゃないか」

俺が可愛い声でそう言うと、

黒いシルエットは答えた。


「ふふ…私はあんたを待っていた」

黒いシルエットが言う。


「--なんだって?」

俺はいらだってきた。


なんだこいつは?

顔も何もないくせして。


俺は、さっさと”エデン”に向かいたかった。


だがー


「私が、こんな姿なのはーーー

 ”奪われた”からー」


黒いシルエットが言う。


「---奪われた…?」


「--そう」

黒いシルエットがそこまで言うと、

突然、感情的になって叫んだ。


「---お前に身体を奪われたんだ!!!!!」


とー。


!?!?!?


「その姿はーー私の姿だ!」

黒いシルエットが叫ぶー


「ま、、まさかお前…」

俺は叫んだー


まさかー


まさかこいつはーーー

”俺に身体を乗っ取られた亜咲美”-?


「あ、、、亜咲美なのか!?」

俺は叫ぶー

亜咲美の姿で。


「そう!あんたに身体を乗っ取られて、

 私の魂は死んだー

 そして、私は、他の人とは違って

 姿も持てないままー

 姿がないからエデンにも入れないまま

 ずっと、ずっと、ここに一人でいたんだよ!」


黒いシルエットが叫ぶー


姿がないのはーー

”俺に奪われたからー”


身体を奪われて死んだ亜咲美は

あの世でも、姿が、ないー


そしてー

”声”もないー。

だから、機械音声のような

無機質な声しか出ないー。


「く、、くく…悪かったと思ってる」

俺が乗っ取った幼馴染の亜咲美とこんなところで

再会するとはー


「--で、でもよ…いい身体だったぜ!

 そ、それに、憑依薬なんてものが見つかったんだから

 仕方ねぇだろ!」


俺は開き直ったー

死んじまった以上、もう仕方がない。

ここはあの世だー。

もうどうすることもできない。


「--私…ずっとずっとずっとずっとここであんたを待ち続けた」

黒いシルエットが言う。


「ずっとずっとずっとずーっと」


俺はその言葉を鼻で笑ったー


「ご苦労さん」

身体はもう俺のものだ。

俺が亜咲美でー

亜咲美は”無”だ。


「その黒いシルエット姿、似合ってるぜ」

俺は余裕をかましながら

エデンの方に向かって歩き始めたー


しかしー


ガシッ


ー!?


背後から黒いシルエットにつかまれた。


「な、なんだよ!離せ!」

俺が亜咲美の声で叫ぶと

黒いシルエットは呟いた。


「あんたは、私と一緒に地獄に行くの」

黒いシルエットは不気味に震えながら言った。


「な、、ふ、ふざけんな!離せ!」

俺はもがくー

ふざけるなー

俺はあの世でも、好き放題やるんだ!

邪魔をするな!


「---行き場を失った魂は

 エデンではなく、永遠の闇に行くの…」

黒いシルエットがぶるぶる震える。


もしかしたらー

笑っているのかもしれないー


「--もうこれ以上、

 あんたに私の身体はー

 私の姿は使わせないー


黒いシルエットが俺をがっちりとつかみー

そしてー

そのまま地面に沈んでいこうとする。


「--!?」

俺の身体も黒いシルエットに合わせて

地面に沈み始めている。


「お、、おい!待て!待ってくれ!」

俺は叫ぶー

亜咲美の可愛らしい声には

恐怖の感情がにじみ出ている。


「--わ、悪かった!悪かった!」


俺は叫ぶー


「とりあえず謝ればいいー」

黒いシルエットが呟く。


「あんたはいつもそうだったー」


幼馴染の亜咲美に、

俺はよく怒られていたー

だらしないところをー、だ。


小さいから俺は

亜咲美に”悪かった!”を繰り返してきたー


だが、俺は

悪かった!と叫ぶだけで改善しようとしなかったー

謝ってとりあえずその場をやり過ごして、

また失敗をするー。


その、繰り返しだ。

俺は、そういう人間だ。


亜咲美に憑依するときもそうだった。


”悪い悪い!”

俺に憑依されかけて苦しみ、泣き叫ぶ亜咲美に

俺はそう言ったー。


そしてー

殺されるときもそうだった。


亜咲美の身体で、誘惑した男の一人に襲われた俺は

”ごめんなさい!ごめんなさい”と必死に叫んでいたー


「あんたには、中身がないー」

黒いシルエットが言うー。


気づけば、俺の身体と黒いシルエットの身体は

既に半分ぐらいまで沈んでいた。


「あんたをずっと待っていたー」

黒いシルエットが言う。


「やめろ!やめろ!やめてくれ!許してくれ!」

俺は亜咲美の身体のまま、

泣き叫んだ。


「消えたくない!消えたくない!」

俺はもがくー


はるか彼方に見える

死後の人間たちの楽園”エデン”の方を見つめながら


「そ、そうだ!亜咲美!

 い、いっしょにエデンに行こう!」

俺は叫ぶー


「俺がなんとかするから!

 亜咲美にもそんな黒い姿じゃなくて

 ちゃんと姿を貰えるように、

 俺がなんとかするから!

 だから、一緒にエデンに行こう!」


消えたくないー

エデンに入ってしまえば俺のものだー。

亜咲美はさっき言った。

”姿がない”とエデンに入れないと。

口車に乗せて、エデンに駆け込んでしまえば

俺の勝ちだー


「----」

黒いシルエットの動きが止まる。

沈みかけていた俺の身体も、止まる。


「そう。亜咲美…

 いっしょに、いっしょにエデンに行こう」

俺は、亜咲美の姿で優しく微笑んだー


「消えたくないー

エデンに入ってしまえば俺のものだー。

亜咲美はさっき言った。

”姿がない”とエデンに入れないと。

口車に乗せて、エデンに駆け込んでしまえば

俺の勝ちだー」


ーー!?


黒いシルエット…亜咲美がそう呟いた。


「え…」

俺は唖然とする。


心の声が、どうしてー?


「どうせあんたはそういうやつよ」

黒いシルエットがさっきまでよりも激しく

ぶるぶると震える。


そして、俺をものすごい勢いで

地面に引きずりこみはじめた


「やめろ!やめろ!やめろ!!!

 やめてくれぇ!助けてくれぇ!」

俺は叫ぶー


いやだ。消えたくないー


いやだー!


”やめろ!やめろ!やめてくれぇ!


俺は思い出すー


死んだときもー

同じことを言っていたー


亜咲美として誘惑した男に襲われた時も

同じことを言っていたー


俺は、何も進歩していないー


「た、、たすけ…!」

頭以外、全部地面に引きずりこまれた俺が叫ぶー。


そしてー

俺はすべて地面に引きずりこまれてー

そのまま意識が途切れたー


・・・


・・・・・


・・・・・・・


”俺”は目を覚ましたー


「---!?」

慌てて周囲を見渡す俺ー


すると、周囲には、亜咲美がいたー


亜咲美がーーー

数えきれないほどー


「ここは…わたしの怨念の世界」

亜咲美が言うー


「--あんたを…永遠に苦しめてやるー」


俺は、亜咲美の怨念に襲われてー


永遠に苦しむことになるー


そう、永遠にー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


憑依したまま死んだらどうなるのか、

憑依された子はどうなってしまうのかを

勝手に想像しながら書いたお話でした~☆!


たま~に、こういう変わった視点の

憑依も書いてみたくなっちゃいます!


今日もありがとうございました~!




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