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「ーー今日も疲れた~…」

いつものように、大学での1日を終えた咲月(さつき)は、

そんな言葉を口にしながら、家に向かって歩いていたー。


森崎 咲月(もりさき さつき)ー

彼女は、一見真面目そうに見えて、結構ドジな性格の

女子大生ー。


友達の晴美(はるみ)からも、

”咲月は喋らなければ、凄い頼りになりそうな雰囲気なのになぁ”

などと、いつも揶揄われているー。


しかし、自分ではその自覚はなく、

いつも周りに対して”ドジじゃないもん!”などと言い張っているー。


そんな咲月はー、

早速、今、この場でドジをやらかそうとしていたー。


「ーーあっ!?」

帰り道の途中に通る公園で、突然躓いて転倒してしまう咲月ー。


段差が狭いわけでも、高いわけでもなく、

ごく普通の、急にバランスを崩す理由など全くない階段であったもののー、

”今日の晩御飯の飲み物はジュースにしようか、お茶にしようか”

などということを頭の中で真剣に考えていたせいかー、

階段で盛大に躓き、そのままーーー


「ーーひぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?」

咲月は、”もう手遅れ”なぐらいにバランスを崩したことを

悟ると、そんな悲鳴にも似た叫び声を上げながらー、

そのまま派手にコロコロと階段を転げ落ちてしまうー。


しかもー、最悪なことにー…

転がり落ちたその先に、少し小汚い雰囲気の長髪の男が立っていてー、

そのまま咲月は盛大にその男とぶつかってしまうのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーー…」


目を開く咲月ー。


慌てて、咲月が周囲を見渡すと、

そこは、さっき自分が階段を転がり落ちた公園だったー。


気付けば、転がり落ちた階段の先のベンチに

腰かけた状態になっていて、

どうやら誰かが運んでくれたらしいー


「ーーー…」

幸いなことに、あまり身体の痛みもないー。

てっきり、バランスを崩して階段から投げ出された時は

”もう死ぬかと”思ってしまったけれど、この様子だと

どうやら助かったようだー。


「ーーセーフ!まだ天国に行くには早いもんね!」

咲月はホッとした表情でそう言葉を口にすると、

何度か瞬きをしてから「え?」と、首を傾げるー。


そしてーー


「ーセーフ!まだ天国に行くには早いもんね!」

と、何故かもう一度同じセリフを口にするー。


「ーーん?」

きょとんとした表情で、咲月は首を傾げるー。


「ーなんか、声、変じゃない?」

咲月はそう呟きながら、今度は「セーフ!セーフ!セーフ!セーフ!」と

自分の声を確かめるために何度も何度も言葉を口にするー。


別に”あ~~~”とでも言えば良かったものを、

何故かセーフを連呼したせいか、

通りすがりのおばさんに物凄い顔で見られたものの、

今の咲月には、そんなことを気にしている余裕などなかった。


何故ならーーー


「えぇぇぇ!?何この変なおっさんの声ー!?

 しかもなんか活舌悪くない!?」


咲月が叫ぶー。


慌てて、近くの女子トイレに向かいながら、

「ーーも、もしかしてわたし、口がつぶれたり、歯が折れたりしてる!?」と、

階段から転がり落ちた時の怪我を心配しながら、

そんな言葉を口にしたー。


そしてー

女子トイレに飛び込んで鏡を見た咲月は悲鳴を上げたー。


鏡に映ったのは、”わたし”ではなく、

見知らぬ長髪の男だったからだー。


「ーひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?誰!?」

思わずそんな言葉を吐き出す咲月ー。


「って、この人、わたしが階段から転がり落ちた時に

 ぶつかった人!」

思い出したように、鑑に映っている男の姿を指差すー。


当然、鑑の中の”男”も、同じように指を差してくるー。


「ちょ!人のこと指差すなんて失礼だよ!」

鏡の中の自分に真顔になってそう話しかけると、

数秒間、放心状態になりながら、ハッとしたー


「って、やば!この姿で女子トイレとかダメじゃん!」

男になってしまった咲月はそう叫んで慌ててトイレから出ると、

男子トイレの方から”咲月”が出て来たー


「ーーあ」

男(咲月)は、”わたし”が男子トイレから出てきたことに

少し驚きながらも、

咲月のほうを見つめるー


”わ、わたしが男の人になってるってことはー

 わたしの中には、この身体の人がいるってことー?”


咲月はそんなことを思いながら、

”わたし”のほうを見つめるとー、

”咲月”は、顔をヒクヒクさせながら、男(咲月)のほうを見つめたー。


「ーこれは、 一体、どういうことだー?」

低い声で、怒りをこらえるかのように、

一言、一言、ぎこちなく言葉を発する咲月ー。


「ひっ…!?ど、ど、どういうことってー?

 そ、それはわたしが聞きたいですよ!」


男(咲月)は狼狽えたような表情を浮かべながら

やっとの思いでそう言葉を吐き出すー


どうやらやはり、咲月が階段から転落した際にぶつかった男の身体にー、

ぶつかられた男が、咲月の身体に、

それぞれ入れ替わってしまった様子だったー。


「ーーーーの名は?」

ボソッと咲月(男)が呟くー。


同じ”咲月”の身体なのに、

いつものような優しそうな雰囲気は今の”咲月”からは

感じることはできないー。


「ーーえ?」

男(咲月)は、ハッキリと聞き取れなかったために

もう一度聞き返すー。


すると、咲月(男)は、

鋭い目つきで、男(咲月)を睨みながら

言葉を口にしたー。


「ーー貴様の名は?」

とー。


「き、き、き、き、ききききき、きさま!?」

男(咲月)はビクッとして大げさなリアクションをすると、

そのまま慌ててダッシュして逃げ始めたー


「貴様!待つんだ!」

咲月(男)は、そう叫ぶと、

「この状況、貴様のーーしわざだな!」と、

そう叫んだー。


「ち、ち、ち、ち、違います!違いますよぉ!」

男(咲月)は、戸惑い中、全力で疾走するー。


意外と、男の身体は運動神経が良いのか、

”いつもの自分”よりも身軽に走ることができたー


「わ…わ…は、早いー!身体が軽い!すごっ!」

危機的状況にも関わらず、男と入れ替わった咲月は、

身軽に動く”男性の身体”に感動さえ覚えながら

目を輝かせるー。


「ー貴様!止まれ!」

咲月(男)が、背後でゼェゼェ言いながら叫ぶー。


「い、い、いきなり貴様呼ばわりするような人に

 捕まったら何されるか分からないでしょ!?」


男(咲月)が振り返りながら叫ぶー。


後を追って来ている咲月(男)は、かなりバテている様子で、

髪を揺らしー、乱しながら必死に走っているのが見えるー。


そんな様子を、逃げながら振り返りつつ

見ていた男(咲月)は思うー。


”わたしの身体ー、あんなに疲れちゃって可哀想ー…

とー。


一瞬、立ち止まって”わたしの身体”をなでなでしてあげたい

衝動に駆られたものの、そんなことをすれば

あのヤバい男に捕まってしまう、と何とか思いとどまって、

必死に走るー。


”そ、そういえばー…

 このままなら逃げ切れそうだけどー…

 逃げ切ったあと、どうしようー…?”


必死にそんなことを思いながら、

”いつもより早く走れるこの身体”で全力疾走するのが

いつしか楽しくなってきて、嬉しそうにダッシュを続けるー。


ーーーがーー


「ーーーぶぎゃ!?」

あまりに調子に乗ってダッシュをしすぎて、男(咲月)は

曲がり角を曲がれずに、勢いよく壁にぶつかってしまうー。


「ー死んだ!?」

後を追って来ている咲月(男)が、背後で叫ぶー。


「いたたたた…し、死ぬわけないでしょ!」

男(咲月)は、ツッコミを入れながらも、

再び立ち上がって逃げ出すー。


「ーお、おい!貴様!待ってくれ!」

咲月(男)の叫びに、

”あの人、絶対ヤバい人だよー”と、そう思いながら、

男(咲月)は、逃げながら背後に向かって叫ぶー


「か、か、階段で転んでぶつかったことは

 謝ります!

 で、でも、身体が入れ替わっちゃったことについてはー、

 わたし、本当に知らないんです!」


男(咲月)の言葉に、

咲月(男)は「ー貴様のせいじゃない?」と、表情を歪めるー。


「ーーそ、そう!わたしのせいじゃないー

 か、階段から転んだのはわたしのせいかもだけどー…

 で、でもでもでも!入れ替わりはわたしのせいじゃないー」


男(咲月)は、そう言いながら少しだけ走る速度を緩めるー。

もしかしたら、分かってくれたかもしれないー。

そんな風にちょっとだけ思いながらー。


しかしー…


「ー分かったー なら、殺し合いで解決だ」

咲月(男)は、満面の笑みでそう言葉を口にしながら微笑んだー


「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!?!?

 こ、こ、こ、殺し合いーー

 いやああああ!」


男(咲月)は、”やっぱこの人、ダメー!”と、

再び必死に逃げ始めるー。


満面の笑みで殺し合いしようとか、もはやサイコパスだー。


そう思いながら”満面の笑みで殺し合いを提案したわたし”の顔を

思い浮かべるー


「あぁ…ヤバ…わたし、あんな怖い顔できるんだー」

そう思いつつ、男(咲月)が必死に逃げ続けていると、

やがて、追いかけてきていた咲月(男)は息切れして、

路上に手をついたー。


「ー貴様…!待て!貴様…! 待て!!!」

そう連呼する咲月(男)ー。


髪を乱し、路上に両手をついてはぁはぁ言っている”わたしの身体”ー。

色々な意味で心配だったものの、とにかく一旦逃げないと

ヤバいー。


そんな気がして、男(咲月)は

そのまま「待ちませ~ん!」とだけ声を上げて、

その場から足早に立ち去ったー。



「ーーぐっ… くっ……」

咲月(男)は荒い息をしていたものの、やがて

すぐ近くに、先ほど入れ替わったのとは別の公園が見えて

そこまで移動すると、公園のベンチに腰掛けるー。


「ーーはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」


流石に咲月の身体で無理に走りすぎたー。

息をどんなに吸っても、吐き出しても、

身体の激しい疲労が取れないー。


「ーーーーー…」

表情を歪める咲月(男)ー


「これは…一体…何事なのだー…?」

咲月(男)は、それだけ呟くと、

「ーーあやつめー…」と、

奇妙な言葉を口にするー。


がー、男になった咲月はそのまま逃げてしまったー。

とてもじゃないが、この身体で追いつくことはできないー。


はぁはぁと息を吐き出しながら、

自分のスカートを見つめると、咲月(男)はドキッとして

顔を赤らめるー。


ゴクリ、と唾を飲み込んで自分の胸のふくらみを

服の上から見つめるー。


今までは”男になった咲月”を追いかけることで

頭がいっぱいだったのか、今になって急にドキドキし始めた

彼は、周囲をキョロキョロと見回すー。


”咲月の胸”を触ろうとして、すぐに躊躇するような表情を

見せると、手を引っ込めるもー、

数秒後にまた、胸の方に手を伸ばすー


「ーーじ、自分のなら…OKだよねー…?」

ボソッとそう呟く咲月(男)ー

そして、今度こそ咲月(男)は、ドキドキした様子で、

胸を揉み始めるー


「えへ…えへへへへへ…」

咲月(男)は嬉しそうにしばらく触っていると、

ふと、公園で遊んでいた子供と目が合ってしまった気がして、

ドキッとして、慌てて胸から手を離すー。


「ーーき、き、貴様ー… 今、見たなー?」

咲月(男)は子供に向かってそう言うと、

子供は慌てた様子で、公園から逃げ出していったー。


「ーーふぅ…」

咲月(男)はようやく一息つくと、

「さて」と、再び立ち上がって、”自分の身体”を

追いかけようと歩き出すー。


がーーー


「ーーん?」


どうやら、さっきの子供が慌てて公園から

飛び出した際に忘れたのだろうかー。

その”忘れ物らしき荷物”を見て、咲月(男)は、

”交番に届けるか”と思いながらそれを手にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はぁ~~~~~…」


男の身体で、ようやく”わたし”を振り切った

男(咲月)は大きくため息をついたー。


「あ~…も~…

 階段から転がり落ちるし、急に変な人と入れ替わっちゃうし、

 追いかけ回されるし、最悪すぎるでしょー…


 しかもー…なんか、髪長いしー」


そんなことを思いながら、男(咲月)は、

入れ替わった相手の男の髪を触るー。


”しかも、何か結構整っててむかつくー…”

髭を生やしていて小汚い感じの男ー。

最初はそんな印象を抱いた男(咲月)だったが、

以外と、髭も含めて整えられていて、

”自分の身体”となった状態で、それを触ると、

小汚い感じではなかったことに気付くー。


けど、何だかこの身体は喋りにくいし、

どんな理由にせよ、いきなり相手を貴様呼ばわりするような男は

まともな男ではないと思うー。


「ーーー…はぁ…どうせ入れ替わるなら、幸保先輩と

 入れ替わりたかったなぁ…」


大学で勝手に片思いしている男子の名前を呟く男(咲月)ー。


「ーーー」

”これからどうしよう”ー。

そんな風に考えながら、立ち上がったその時だったー。


「ゲッ…」

男(咲月)は思わず表情を歪めたー。


咲月(男)が、キョロキョロしながら、

男(咲月)を探している姿が見えたからだー。


「ひっ…!?あ、あいつしつこすぎでしょ…!」

そんなことを呟きながら、男(咲月)は

”見つからないように”と、

気付かれる前に、再び逃げ出すのだったー…



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


なんだかヤバそうな相手と入れ替わってしまいましたネ~…★!


もしも実際に入れ替わりを経験するなら、

穏やかな人と入れ替わりたいデス~笑


続きもまた楽しみにしていて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!

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