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竜二は決意していたー。


ニット帽の男の娘・由恵から

教えてもらった場所に、亜優美は、いる。


そこに行けば、亜優美に会うことができる。

だったら、行く以外に選択肢はない。


「---どこ行くの?」

妻の栄子が不審そうに尋ねる。


「---奪われたモノは、、奪い返す」

竜二はそれだけ呟く。


妻の栄子は

何も言わないー。


夫婦間も、冷え切ってしまったー。

修復の鍵は、亜優美を取り戻すことー。


竜二はそれしかないと考えていたー

竜二は、車に乗り込むと、

神妙な面持ちで、

教えてもらった、白髪男の家へと車を走らせたーーー。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


とあるマンションの一室。

そこに、男の家はあった。


相楽 雄一郎(さがら ゆういちろう)

それが白髪男の名前のようだ。


そしてその下にはーーー

”亜優美”と書き足されていた。


竜二は、今ここで暴れて扉をぶち壊してやりたい気分になった。


亜優美はお前の娘じゃないー。

俺の、大切な娘だー…。


竜二は拳を握りしめる。


そしてー

呼び出し音をならした。


すると、扉が開いたーーー


顔を出したのはーーー

最愛の娘、亜優美だった。


「は…?何でアンタがここに?」

亜優美が、ゴミを見る様な目で竜二を見つめる。


「亜優美ーーー。

 迎えに来た。一緒に帰ろう。」


竜二は優しく告げた。

だが、亜優美は馬鹿にしたように笑った


「帰る?私が?

 ふざけないで!

 いったでしょ?

 アンタなんかおとうさんじゃないって!」


亜優美は言うーー

侮蔑の感情を隠そうともせずにーー


「亜優美!お前の父親は俺だ!

 しっかりしろ! 

 俺に親孝行してくれんじゃなかったのか!

 亜優美!」


竜二は亜優美に呼びかけたーー


だがーーー

無意味だった。


今の亜優美には、そんな言葉は、届かないー。


「--プっ…」

亜優美が失笑するー。


玄関先であまり騒いでいると

周囲の部屋の住人が出てくるかもしれないー。

竜二は、少しだけ周りを気にしているー。


その時だった。


「---入れてあげなさい」

奥から男の声がしたーーー。


白髪男の声だーーー。


「あ、お父さん♡

 は~い!」


亜優美が嬉しそうに満面の笑みで

家の奥に向かって返事をすると、

竜二を睨んで「良かったね」とだけ不愛想に言って

竜二を招き入れた。


亜優美は肩出しで胸を強調し、

ミニスカートという格好だった。


普段の亜優美は、大人しめの

控えめな服装を好んでいた。


それがこんなーー


「どうぞ」

白髪男がイスを指さした。

竜二は白髪男を睨みながら座る。


「---何よ?」

竜二の視線に気づいた亜優美が、

竜二を睨んだ。


「---いや、、、

 随分変わってしまったな…ってな」


竜二はいつもの調子でーー。

亜優美にいつも話しているような調子で

語りかけたーーー。


亜優美は笑う。


「だって、私、すっごく可愛いでしょ?

 他のブスとは違うぐらいに!


 こうやって、可愛い恰好してると、

 すぐ男の人も寄ってくるの!


 ウフフ…

 お小遣いなんかも貰えちゃったりしてね♪」


亜優美が足を組んでイスに腰掛けて

微笑みながら言った。


「--亜優美ーーーー」


男を誘うーー。

本人の口からそんな言葉、聞きたくなかった。


「---私がね、、憑依している間に、

 こうつぶやいたんですよ」


白髪男が言う


「私は可愛いーーー

 私は可愛いーーー」


それは呪いの言葉ーーー。

思考を書き換える悪魔の言葉ーー


「そうして何度も何度もつぶやいているうちに、

 彼女自身の思考も、それに染まっていったわけですよ」


白髪男がお茶を飲みながらそう言った。


「ウフフ…

 お父さんのおかげで、私、自分の可愛さに気づけたの♪


 今まで私、男の人とかが苦手だったけど、

 こうやって、ちょ~っと見せてあげてば、

 男なんてすぐに私のモノになるの!ウフフフフ…」


そう言って、亜優美がわざとスカートの中が少し見えるように

足を組み直した。


竜二は震えるー。

亜優美をこんなにした白髪男への怒りー?

ここまで変えられてしまうという現実に対する恐怖ー?


震えながら、竜二は口を開いた。


「----亜優美!目を覚ませ!」

ーと。


だが、亜優美は笑う


「あはは、私は正気だよ、”元”おとうさん~?


 心から自分のコト可愛いと思ってるし、

 男の人を誘うのも楽しくてたまらないの!


 今は体を使って、お父さんのためにお金を

 稼いだりもしてるんだよ~

 凄いでしょ?」


亜優美が竜二に顔を近づけて

挑発的な笑みを浮かべた


「亜優美ーーー、

 お前、自分の体をーーー」


竜二は怒りに震える。

竜二を、嘲笑うかのような笑みを浮かべる亜優美ー。


分かっているー

亜優美が悪いのではない。

けれどー

それでもー。


亜優美は男を誘いーーー

体を売って、白髪男の為にお金を稼いでいるーーー


「介護はどうしたんだよ!亜優美!」

竜二は叫んだ


亜優美は、介護職に就く夢を持っていた。


けれどー

亜優美はさぞ馬鹿にしたように笑った


「介護ォ~?

 そんなくだらない事して何になるのよ!

 もう、そんなの辞めちゃった」


その言葉を聞き、白髪男は笑みを浮かべて

亜優美に近づいた。


亜優美は嬉しそうに、うっとりとした表情で

その男の方を見た


「---どうです?森田さん。

 私のーーー自慢の娘は?」


そう言って白髪男が亜優美に抱き着くと、

亜優美も嬉しそうに微笑んだー。


「……ふざけるな

 亜優美は俺の娘だ。」


「---フフ、本人は嫌がってますよ」


白髪男が笑う。


「--おとーさん!今日もしちゃう?」


亜優美が顔を赤らめて言う。


「フフ、まだ早いよ亜優美」

そう言うと、白髪男が亜優美にキスをした。


亜優美も嬉しそうにそれを受け入れているーー。


男が亜優美の胸を触る。

亜優美が気持ちよさそうにあえぎ声を出すーー


「き、、貴様…」


竜二は白髪男にとびかかり、ぶん殴ってやろうかと

思った…


だが…。


「------」


竜二は目をつぶり、心を整えた。

”力づく”で白髪男・相楽を殴り倒すことは

恐らく簡単だろう。

腕っぷし自慢ではないのは

その風貌からよくわかるー


だがー

それをしたら”終わり”だー。


今の亜優美は、容赦なく警察に通報するだろうー。


そうなればー

竜二は逮捕されるー

竜二が逮捕されれば、もう、終わりだー。

亜優美を助ける人間は、居なくなる…。


竜二は深呼吸をして、口を開いた。


攻めるなら

”力”ではなく”心”だー。


「---亜優美、聞いてくれ」

竜二が言うと、亜優美が白髪男と抱き合いながら、

こちらを向いた。


「-ー俺はさ、昔、

 ”子供なんていらない”

 そう思ってた。


 でも、お前が生まれてから変わった。


 亜優美ー、

 お前が俺にとっては何よりも大切な存在になった。


 今まで仕事を頑張ってこれたのもー。

 全部、お前のおかげだ」


竜二は亜優美に呼びかけるようにして言う。


亜優美は

「はいはい」と、呆れたような声を出す。


だが、竜二は構わず続けた


「亜優美!俺にとってお前は俺の宝だー。

 お前を守る為なら会社なんて無くなったっていい!

 貧乏になったって言い!

 何があっても、お前は俺の宝なんだ亜優美!」


「うるさくない?アイツ?」

亜優美が白髪男に言うと、

白髪男は笑って

「まぁ聞いてあげなさい。負け犬の遠吠えを…」と笑う。


亜優美は「うん♡」と嬉しそうに答えると、

竜二の方を睨むようにして見つめるー。


「亜優美ーー

 お願いだ、元に戻ってくれーー。


 俺と過ごした17年間を思い出してくれー。

 亜優美ーーー。

 母さんも悲しんでる!


 頼む!俺の言葉が届いているならーー

 戻ってきてくれ」


竜二は涙声で土下座した。


しかし…

手に痛みが走る。


亜優美が俺の手を踏みつけていた。


「---だからぁ、、正気だって言ってるでしょ?

 ”元”おとうさん」


亜優美が竜二を睨みつける


「中学校の父親の参観日の日、

 来てくれるって約束したのに来てくれなかったよね?


 高校受験で私が悩んでるとき、

 何もアドバイスしてくれなかったよね?


 アンタはいつも、いつも、いつも!

 仕事ばっかりで、

 亜優美の事なんてどうでも良かったんでしょ!」


亜優美が感情を露わにして言う。


「ーーーそれは…」

全て、実際にあった話だーー。

中学の父親参観の日もそうだーー


亜優美はあの時、


「お父さんは仕事大変だから、大丈夫だよ!

 気にしないでね!」


と言っていたーーー


だが、本当はつらい思いをさせていたのかもしれない。


高校受験の時、亜優美は悩んでいた。


だが亜優美はいつも

「私なら大丈夫!

 お父さんも大変だと思うし、私のことは気にしないで!」

と笑顔で言っていた…


ーーー本当は、、

いつも寂しい思いをさせていたのかもしれない。。


竜二は目の前にいる亜優美を見た。

蔑むような目で俺を見ている。


白髪男に書き換えられただけじゃないのかもしれないー


これが、亜優美の本心なのかもしれないー

これが、娘の本心なのかもしれないー…。


「-----亜優美、

 寂しい思いをさせたなら謝る。


 俺は確かに、、仕事を優先して、

 お前に寂しい思いをさせたかもしれない。


 けれどーー

 亜優美、俺はお前のことを本当に愛しているーー

 本当に何よりも大切にーー」


そこまで言うと、亜優美が笑った


「言ってて恥ずかしくないの?

 馬鹿みたい!」


亜優美が不機嫌そうに白髪男の方に向かうと、

また、うっとりとした表情で白髪男を見つめた


「私のお父さんは、アンタじゃない!

 この人が、私の大切なお父さん♡

 あぁ…一緒に居れるだけで幸せ♡ 」


亜優美のミニスカートにはシミが出来ている。

白髪男と向き合っただけで感じてしまっている。


亜優美の思考はそれほどまでにーーー。

白髪男が勝ち誇った表情でこちらを見る


「---俺は、

 亜優美の為なら死んだっていい!」


竜二は叫んだー。


亜優美がその言葉に反応する


「ならーー死んじゃえ!」

亜優美が笑いながら言った。


竜二は、顔が赤くなるのを感じたー

怒り、悔しさ、悲しさ、

自分に対するふがいなさー

それらが全てまじりあうー。


白髪男と亜優美が何やら小声で会話する。


そしてー

亜優美が微笑んだ。


「じゃあさ、わたしの為に死んでよ」

亜優美はそう言うと、イライラした様子で

キッチンから包丁を取り出した。


そして、

竜二の方に包丁を向ける。


「ふふふふ…

 どうです?

 ”実の娘”に包丁を向けられる気持ちは?」

白髪男が笑う。


「---わたしのために死ねるんでしょ?」

亜優美が”どうせそんなことできないくせに”と

言いたげに笑みを浮かべるー。


だがー

竜二の返事は、亜優美も、白髪男も

予想していないものだったー。


「あぁーーーー

 亜優美、お前を助けられないなら、

 俺は、、死ぬよ」


その言葉に、亜優美と、白髪男は

少し驚いた表情を浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・


ニット帽をかぶった

亜優美の親友・美月が

ポケットに手を突っ込みながら

ボーイッシュな格好で道を歩いているー。


「---」

美月がやってきたのは、

竜二の家ー。


竜二の妻・栄子が

一人、家族の帰りを待っている家ー。


美月は邪悪な笑みを浮かべるー。


美月は今、

白髪男・相楽に憑依薬を提供した男・

栗原に憑依されているー


栗原は、とある研究所で働いていて、

本社には秘密で、憑依薬の研究を進めていたー

そして、学生時代の同級生だった相楽から

”復讐”の話を持ちかけられた栗原は、

憑依薬を白髪男・相楽に提供したー。


白髪男の相楽は、亜優美に憑依し、

復讐を開始したー


「---くくく」

美月は笑うー


目的は、3つあったー。


ひとつは、

”友”として、若い頃の同級生・相楽の

復讐に力を貸してやったことー


ふたつめは、

まだ試作段階の憑依薬を相楽を使って

”テスト”したことー。

人間に使うのは、亜優美への憑依が初めてだった。


そして、みっつめは、

ニット帽の男自身の娘・由恵のためー。

由恵は、いつも亜優美に勉強でも人望でも勝てず、

嫉妬していたー

そんな亜優美を蹴落とすためー


全ての目的は、達せられたー


そして、最後にー。


♪~


美月は、竜二の家のインターホンを鳴らしたー


”はいー?”

中から竜二の妻・栄子の声がしたー


美月はにやりと微笑むと、

「亜優美ちゃんの友達の美月です…

 ちょっとお話があるのですが…」と

作り笑いを浮かべながら呟いた…


⑧へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


リメイク第7話でした~☆

原作は全部で7話で終わっているのですが

新しい部分とかを追加したので、

リメイク版のほうが長くなりました!


少しでもお楽しみ頂けていると嬉しいデス!

今日もありがとうございました~!


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