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本当の地獄ー。

それを見たことはあるかーーー?


俺は、、ある。


愛する娘の亜優美(あゆみ)が、とある男に誘拐された。

そして、誘拐された亜優美は、その男に憑依されてしまい、

思うがままにされてしまった。


毎日のように俺は亜優美に呼び出された。


河川下、公園、メイドカフェ、カラオケ…。


日に日に亜優美は”変えられていった”


大人しく、真面目な亜優美はーー

俺の前で壊れて行った。。


男を誘うような格好をさせられ、

タバコを自らの意思で吸い、

メイドカフェで男を誘惑し、

カラオケボックスで共犯の男と激しい行為を繰り広げた。


亜優美はその後解放されたーー

だがーーー。

亜優美は”変わってしまっていた”


乗っ取られている時間が長くなれば長くなるほどーー

乗っ取っている私の思考が娘さんに影響を与えていくんですよ。


憎き白髪男の言葉が思い出される。


乗っ取られている間、憑依している人間は

”亜優美の脳”を使う。


その結果、亜優美本人までもが、

白髪男の思想に影響されてしまったのだったーー。


だから、お父さん…ううん、

 もう”おじさん”かな?

 これでお別れ。サヨナラ…


意地悪な笑みを浮かべる亜優美を思い出すーー。


亜優美ーーー

俺はーーお前の事をーーー。


俺は気づけば真っ暗闇の世界を一人歩いていた。


「---お父さんだなんて思ってないから!

 …ほんっとうに最低」


亜優美に言われた言葉を思い出すーーー。

亜優美はーーー

もう、戻らない…


俺はーーーもう疲れたーー

亜優美の居ない世界に生きていたって…


いっそのこと、この暗闇の世界でーーーー。


「---さん」


声が聞こえたーーー


「お父さんーーーーーー」


俺はハッとして前を見ると、

そこには悲しい表情の亜優美が立っていた。


亜優美…。

俺は、”優しい面影のある”亜優美の姿を見たーー


「お父さんーーー助けてーーーー」

亜優美はそう言い、涙を流した。


「あ、、、亜優美!」

俺は手を伸ばした。

だがーーその手は亜優美には届かない。


伸ばせば、、

伸ばすほど…

亜優美が遠ざかっていくーーー


「----亜優美!」

竜二は荒い呼吸で目を覚ましたーーー


ーー夢だった。


机に飾ってある家族で撮った写真を見る。。

亜優美と妻の姿ーー

亜優美の屈託のない笑顔ーー


「……」

あれから5日。

竜二は未だに、傷も癒えず、

何も考えられない日々を送っていた。


だがーー今のはーーー?

亜優美が助けを求めていた。


いや、、分かっているただの夢だ…


だがーー

これで良いのか?

何もせず、このまま諦めていて…。


朝食が喉を通らず、ボーっとコーヒーを飲んでいた

竜二は、うかつにもシャツにコーヒーをこぼしてしまった


「--ちょっと!何やってるの!」

妻の栄子が怒る。


妻の栄子はーーー

娘の亜優美が憑依されたことを知っていたー


カラオケボックスに竜二が呼び出される前に、

亜優美からかかってきた電話…


そのとき、憑依された亜優美は

自ら自分が憑依されていることを母に告げた


「もしもしぃ~?おかあさん~?

 ふふっ、亜優美だよ♡」


「わたし…憑依されて、身体も心も

 奪われちゃったの…」


「今はね~お母さんのこと、軽蔑してる。

 あの男と結婚するなんて、信じられない…!」


「今のわたしは、お前のことクソババアだと

 思ってるから…」


「そうそう、それとね、お父さん、あんたにも

 わたしが憑依されたこと秘密にして

 ひとりで抱え込んでるの。

 ふふ…夫婦なのに、娘のことも教えてくれないんだよ?

 あんたの夫…

 ふふふふふ…」


電話で、そう吹き込まれた母の栄子は…、

夫である竜二が、亜優美のことを隠していたことに

不信感を抱いていた。


「ホラ、早く拭いて!

 そういうの、時間が経つと落ち無くなっちゃうから」


竜二は、栄子から布きんを渡されて、

シャツを拭いた。


なんとか少し色は落ちたようだ


栄子は、露骨にピリピリしているー。


”俺のせいだー”

竜二が思うー


あの男はー

俺から全てを奪おうとしているー


「---”時間が経つと”落ちなくなるーーか。」

竜二は呟いた。


ーーー時間が経つと…

待て…。

”すぐなら消せる…”


竜二は自分のシャツの薄くなった汚れを見る。


亜優美と竜二はーー

17年間も一緒に暮らしてきた。


だがーーあの白髪男はどうだ?

亜優美に憑依して、亜優美の思考を書き換えて、

まだたった10日じゃないか…


”すぐ”なら、、、

塗られた記憶を…

間違った記憶を…間違った感情を

消し去れるんじゃないか?


「フッ……また、夢物語か…」

竜二は自暴自棄に呟いた。

もう、、、終わったんだ。

亜優美は、もう戻らないーー


「お父さん、、助けてーーー」


だがーーー

例え、0.1パーセントでも可能性があるなら…。


「-----すぐなら落ちる!」


竜二がつぶやいて立ち上がると

妻の栄子が「え?」と不思議そうな顔をした。


竜二はすぐさま行動に出た。


そうだ、逃げてどうする?

亜優美に蔑まれるのが怖いのか?

自分が恥ずかしい思いをするのが怖いのか??


ーーそんなことどうだっていいじゃないか。

一番怖いのは、亜優美を失うことだ。

例え、、0.1パーセントでも可能性があるのならーーーー


「あなた、

 ”お金は払う”

 ”謝る”

 ”娘を返してくれ”

 それしか言ってませんでしたよねぇ?


 娘さんには一度も何も、呼びかけもしなかった。

 いつもいつもアンタは自分の事だけだ。

 娘さんを心配するような言葉の一つもなかった。


 金を返す。娘を返せ。謝る。 そればかり。

 亜優美ちゃんに何一つ、言葉をかけてあげなかったーー」


白髪男の言葉を思い出す。

確かに、ヤツの言うとおりだーーー


金で解決しようとしていた。

亜優美に、何も呼びかけてあげられなかったーーー。


だがーー。


「--俺はどうなってもいい…

 このままでいいはずがない…」

竜二は玄関から飛び出すー。


亜優美は、まだ高校に通っているー


自分は、逃げていたー

亜優美に会いに行こうと思えば、

会いに行くことができるー


それなのにー

逃げていたー。


変えられてまった娘の亜優美にー

蔑まれることが怖くてー、

亜優美から逃げていた。


だが、もう逃げないー。

例えーー

その先に、さらに深い地獄が待っていたとしてもーーー。


・・・・・・・・・・・


「---……どう?」


高校の昼休みー

亜優美の友人であり、

白髪の男に憑依薬を”提供”した、ニット帽の男・栗原の

娘である由恵は、

憑依された挙句、変えられてしまった亜優美に

対して、言葉を投げかけていた。


「どう?今の気分は?」

由恵が尋ねる。


「---…いい気分です…」

亜優美はうつろな目で答える。


由恵はー

亜優美に対して劣等感をいつも抱いていたー。

成績も、人気も、何もかも、亜優美には勝てないー


そんな亜優美が優しくしてくることに腹が立ったー。

大人しく、あまり友達のいない自分に

優しくしてくることに腹が立ったー。

逆恨みなのは分かっているー


けれどー

それでも、亜優美が自分を見下している気がしていたー


「ーーふふふふ…

 いい気味…

 亜優美、あんたはもうわたしには永遠に勝てないー。

 

 ふふふ…

 あんたは、永遠に、わたしのしもべなのよ」


由恵が亜優美を睨みながら言う―。


「はい…

 わたしは、永遠に、しもべです…」

亜優美が生気のない目で答えるー。


憑依からは解放されたー

だが、白髪男により都合の良いように

記憶をいじられた亜優美はー

白髪男を父親だと思い込みー

実の父である竜二を憎み、

由恵には絶対服従を強いられていたー


クラスメイトたちの前では

一見すると”ふつう”に振る舞っている亜優美ー


けど、

由恵と二人になった時には、

亜優美は、由恵のしもべになるー。


「わたしの靴をお掃除してもらおうかなぁ~」

由恵がイスに座って、亜優美に靴を差し出す。


「はい…お姉様…」

亜優美は、由恵をお姉様と呼び、

躊躇なく、自分の舌で由恵の靴を

掃除し始める。


由恵は、笑みを浮かべながら、

亜優美が自分の元に膝をつき、

靴を舐めている姿を見つめるー。


”わたしたち、友達でしょ?”


”美月と由恵と出会えて、本当によかった”


”これからも、友達でいようね”


由恵は、亜優美に靴の掃除を

させながら、”元の亜優美”のことを

思い出していたー。


友達のあまりいない自分に、

亜優美は声をかけてくれたー

亜優美と美月ー

ふたりは、自分を、本当の友達として

迎え入れてくれたー。


「----」

自分の靴を、虚ろな目で舐め続ける亜優美を

見る由恵。


由恵は唇を噛みながら、

亜優美を足で突き飛ばす。


「そんな目でわたしを見るな!」

由恵が声を荒げるー


亜優美はおろおろとしながら

「申し訳ありませんでした…お姉様…」と呟く。


そして、また、由恵の靴の掃除をしようとする。


「もういい!」

由恵はそう叫ぶと、亜優美を一人、置いて

空き教室から立ち去るー。


”違うー”


「わたしがしたかったのは、こんなことじゃない…」

由恵は、歯ぎしりをするー


亜優美に勝ちたかったー

何か、ひとつでもー


でもー

今の亜優美はー

ただの抜け殻ー


白髪男と、お父さんの操り人形ー


「---だいじょうぶ?」


由恵の前には、

友人の美月がいたー。


美月は腕を組みながら

悪い笑みを浮かべているー


美月は今ー

由恵の父親であるニット帽の男・栗原に

憑依されているー


「ーーー…お父さんには、

 関係ないでしょ」

由恵はそれだけ呟くと、

憑依されている美月を無視して

イライラした様子で立ち去るー


亜優美もーー

美月もーーー


もう、いないー。


本当に、これでよかったのだろうか…。


・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


竜二は、娘の亜優美が通う高校に

やってきていたー


「----…亜優美…」

正門から出てきた亜優美ー。


竜二は、そんな亜優美に声をかけた。


亜優美に、何を言われるのか分からないー

けれどー

それでも、逃げていたら何も始まらないー。


「----……今更何の用?」

亜優美が嫌悪感をにじませる。


「---亜優美…ごめんな…

 俺のせいで…

 こんなことに巻き込んで…」

竜二は頭を下げる。


「はぁ?人殺しの癖して、

 今更何の用?」


人殺しー

白髪男の娘が自殺した件の事だろうー。


「---すまなかった」

竜二は、正門前で土下座するー


「本当に、すまなかったー。

 亜優美ー

 頼む…目を覚ましてくれ…亜優美…」

地面に額をこすりつけて

土下座を続ける竜二ー。


「----はぁ?うざ…」

亜優美が立ち去ろうとする。


「---亜優美…頼む………

 お願いだ…俺はどうなってもいい…」

竜二が嘆願するように呟く。


「----…」

亜優美が振り返って竜二に近づいてくるー


そしてー

亜優美は竜二の手を踏みにじった。


「うっぜぇんだよ!」

敵意をむき出しにして言う亜優美。


亜優美は白髪男に植え付けられた

憎しみに完全に支配されて、

父親である竜二の手を

力の限り踏みにじるー


「----おやおや」

そこにー、ニット帽をかぶった美月が

やってくるー。


美月も、憑依されて身体を奪われてしまったー。


「----諦めの悪い男ですねぇ」

美月がニヤニヤと笑うー。


「---クソ野郎が…!」

竜二は、土下座の態勢のまま

ニット帽の男に憑依された美月を睨む。


「ーーー…過去のことも、

 亜優美のことも…全部話したい…

 亜優美に憑依していた男に会わせてくれ」


竜二が苦しそうに叫ぶー


正門前には、何人かの生徒が

ギャラリーを作っているー


「ーーうぜぇ!うぜぇ!

 これ以上、お父さんを困らせるな!」

亜優美が激しい口調で叫ぶー。


”お父さん”とは竜二のことではないー

白髪男のことだー


「---頼む…話し合いをさせてくれ…頼む…」

竜二が頭を下げ続ける。


「----」

ニット帽を被った美月が周囲を見渡して

舌打ちする。


ギャラリーが出来てきた。


「---亜優美ちゃん…

 そろそろ行こうか」

美月が呟くと、亜優美は「二度とわたしの前に

姿を見せるな!」と、荒い口調で言い放つと、

そのまま美月に連れられて立ち去って行った。


「亜優美…」

頭を下げ続ける竜二ー


周囲の生徒たちが

”おいおい、なんだよこのおっさん”と

竜二を笑いものにし始めるー。


「-------」

そんな様子を、亜優美の友人・由恵は

不快そうな表情で見つめていたー


いつまでも土下座をやめない竜二。

”頼む…”とうわごとのように呟く竜二ー


そんな竜二に、

由恵は近づいていったー


「----…ここ」

由恵が紙切れを渡す。


「----えっ」

竜二が泣き顔のまま顔を上げる。


「ここに、亜優美がいるから」

由恵はそれだけ言うと、

そのまま立ち去って行くー


”どうしてー…”

由恵は自分の行動に苛立ちを感じるー


”ここまでする必要はあったのかな…”

由恵は、今更後悔しても遅いけど…と

自虐的に笑いながら、竜二の前から姿を消した。


「…亜優美が、、ここにいる…?」

竜二は渡された紙切れを見つめながら、

決意の表情を浮かべるのだったー


⑦へ続く


・・・・・・・・・・・・


コメント


今日のお話の、後半の展開は

全てリメイクオリジナルですネ~!

原作では、そのまま亜優美のいる場所に

向かっているのですが、

そこまでの過程がとても乱暴

(会社の情報網を使って住所を突き止めた!)だったので、

今回はリメイク版の新キャラクター・由恵を

絡めてエピソードを増やしてみました!


このあとも、元々の作品と異なる展開もあるので

ぜひお楽しみ下さいネ~!


今日もお読み下さり、ありがとうございました☆!

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