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「ーーわ~!思ったより綺麗~!」

そんな言葉を呟きながら、小屋を見つめる彼女ー。


「ーー確かに、イメージよりずいぶん綺麗だなー」

彼女と共に山小屋を見ていた、

彼氏の上野 照康(うえの てるやす)が、

そう言葉を口にすると、

「キャンプなんて小さい頃お父さんに連れて来られて以来

 だから、楽しみ~!」と、

張り切った様子で、彼女の堀岡 紗智(ほりおか さち)が、

言葉を口にするー。


照康と紗智は、同じ大学に通っている大学生ー。

元々、高校時代から知り合いだったこともあり、

大学に進学後、”周りに知り合いがいない”二人は、

何となく一緒に行動することが多くなり、

そのまま意気投合して、恋人同士になったー。


大学に入学して既に1年半ー。

もう、二人ともすっかり、他の友達もできて

大学に馴染んでいるものの、

今でも、二人の仲は変わらないー。


今日はー、大学の休みを利用して、

二人でこうして、キャンプ地に足を運び、

たった今、宿泊する予定の山小屋に到着、

思ったよりも山小屋が綺麗なことに、紗智が喜んでいるー。

そんな状況だったー。


山小屋に荷物を置いて、周囲の散策を始める二人ー。


川の近くまでやってくると、照康は、物珍しそうに

川の流れを見つめるー。


都会暮らしの二人は、普段、こういった川を見る機会も

そんなにないー。

そのため、こういう川を見るのは、珍しかったのだー。


「ーー大丈夫?退屈じゃない?」

紗智が、川の流れを見つめる照康の近くに駆け寄ってくると、

笑いながら、そんな言葉を口にするー。


元々、二人で”キャンプデート”をすることを提案してきたのは、紗智だったー。

大学の先輩からの勧めで、”面白そう”と思った紗智が、

彼氏の照康に相談し、こうしてそれが実現したのだー。


が、少し照康が退屈そうに見えた紗智は、

心配そうにそんな言葉を口にするー。


「ーーーいや、全然ー。

 むしろ、楽しんでるよ」

照康がそう言うと、

紗智は「も~!照康ってば楽しんでるのかどうかわからない~!」と、

笑いながら、照康の肩をポンポンと叩くー。


「えぇ、そうかなぁー。

 今、滅茶苦茶、ワクワクしてるけどー」

照康がほんの少しだけ笑いながらそう言い返すと、

紗智は「どこがワクワクしてる顔なのよ~?」と、

クスクス笑いながら、照康の顔を見つめたー。


「ーー照康が、外から見ても分かるぐらいに

 嬉しそうにしたり、びっくりしてる姿、いつか見て見たいなぁ」

紗智がそんな風に冗談を口にしながら笑うー。


照康はー、”基本的に無表情な感じ”の男子で、

喜んでいるのか、怒っているのか、あまり分からないー。

ただー、感情が分かりにくいだけで、とても優しくー、

さりげない気配りもできるため、紗智はそんな照康のことが

好きになって、今に至っているー。


「ーなんか、小さい頃からよく言われるんだよな…

 嬉しいのか、悲しいのか分かんないってー」

照康がそう言うと、紗智は笑いながら、

「あははーわたしなんか逆に”怒られてるのに笑ってるでしょ!”とか

 叱られたことあるけどー」と、そんな過去の思い出を口にするー。


色々と話をする二人ー。

やがて、山小屋の周辺を一通り散策して、

晩御飯を前に、一旦小屋の方に戻ろう、としたその時だったー。


「ーーーあれ?」

紗智がふと、小屋のある方向と反対側の木々を見つめながら、

不思議そうに首を傾げるー。


「ん?どうかしたか?」

照康がそう反応すると、紗智が「今、なんか光ったようなー?」と、

不思議そうに言葉を口にするー


「ー光った??何も見えないけどー」

紗智の指さす方向を、照康も見つめるー。

だが、照康の目には何も映らないー。


「ーー…ちょっと見に行ってみない?」

興味津々!という様子でそう言葉を口にする紗智。


「危なくないか?」

照康が、それだけ返事をすると、紗智は「大丈夫大丈夫ー」と、

そのまま”光が見えた”という方向に向かって歩き出すー。


照康はやれやれ、という様子で紗智の後ろからついていくー。


”ーーー心霊的なやつ、苦手なんだけどなー”

そんなことを心の中で思いながらも、

紗智を守るために、それを表に出さずに紗智の後をついていくー。


がー…

その時だったー


「ーーわっ!?」

前を歩いていた紗智が、突然そんな声を上げて、

眼前から姿を消したのだー。


「ーーー!?!?!?!?!? 紗智!」

照康は、少し驚いたような表情を浮かべながらも、

冷静にスマホのライトで周囲を照らすー。


「いたっ!?」

付近から”男”の声が突然聞こえるー


「ー!?」

照康は、自分たち以外にも誰かいるのかと、不思議そうに

表情を歪めながら周囲を照らすー。


だが、男らしき姿は見当たらないー。」


とりあえず、そんなことは後だと、

紗智が落ちたと思われる場所を照らすと、

そこには水が見えたー。


「水? ココにも川がー?」

そんなことを思いながら、紗智が落ちたと思われる場所を

手探りで探すー。


すると、すぐに紗智の手を発見し、

そのまま照康は紗智をひと思いに引き上げたー。


「ーーーーー」

ズブ濡れになった紗智が「はぁ…はぁ…はぁ…」と、

荒い息を吐き出している様子を見て、

照康が「大丈夫か?」と、心配そうに紗智に近付くと、

紗智は「ー大丈夫も何も、いきなり痛かったぞ!」と、

そんな言葉を叫ぶー


「えっ… あ、あぁ…ご、ごめんー

 引っ張る力が強すぎたかなー」

照康が申し訳なさそうにそんな言葉を口にすると、

紗智は、突然「あ…あれ?なんじゃこの声!?」と、

自分の喉元のあたりを触り始めるー


「ーーえっ!?紗智…?」

照康は、困惑しながら”様子のおかしな”紗智のほうを見つめると、

紗智はさらに言葉を続けたー


「ーーふほっ…えっ!?こ、この胸の膨らみはー!?

 しかも、濡れて透けておるわ!

 うへへへへへー」


あまりにも下品な、紗智らしからぬ言動ー。

お構いなしに、紗智は濡れた服の上から、自分の胸を

揉み始めるー。


「ーいや…!? えっ…? 何してんのー?」

照康は、ただただ困惑するー。


するとーー


「こら~~~~~~!」

と、どこからともなく、男の声が聞こえて来たー。


「ーー!」

照康は驚いて、その声がした方向を再度、ライトで照らすー。

どうやたここの水は”泉”のようだー。

山奥にはこんな場所もあるのか、と思いつつ、

男の声が泉の中から聞こえてきているような気がして、

戸惑いの表情を浮かべるー


すると同時にー、泉の中から、”屈強なおじさん”と、呼ぶに

ふさわしいような、そんな男が姿を現したー


「わ、わたしの身体で何をしてるの?!

 っていうか、これは何!?」


おじさんがそう叫ぶー。

見た目の割に、女のような口調だ。

そういうおじさんなのだろうかー、と思いつつ、

照康が「え…あ、あなたはー?」と、

普通の人間よりも少し大きく見える感じの、

そのおじさんに声を掛けるー。


すると、横にいた紗智が、胸を揉みながら言ったー。


「ー”泉の精霊さんじゃ”」

とー。


「ーーは?」

照康が珍しく、驚いたような表情を浮かべながら

紗智のほうを見るー。


「ーーえ?このおっさん、紗智の知り合い?」

紗智に対して、照康が小声でそう確認すると、

「おっさんとは失礼な!わしは泉の精霊じゃ!」と、

照康の頭を突然、紗智が引っ叩いたー。


「いてっ!」

照康がそう声を上げながら困惑すると、

「ーーちょ、ちょっと!?どういうことー!?」と、

”泉の精霊さん”とやらが叫んだー。


「ー?????? ????」

照康は、意味不明なこの状況に困惑しながら、

紗智と精霊を交互に見つめるー。


精霊はまるで女のような口調で話をしているし、

紗智は胸を揉みながらニヤニヤしているー。

まるで、意味が分からないー


「ちょっと!さっきからわたしの身体で何をしてるの!?」

精霊が、図太い男の声でそう叫ぶー


「え…ど、どういうことー?」

照康が、戸惑いながら、精霊のほうを見つめると、

「ーて、照康! こっちがわたしで、

 そっちのわたしはー…わたしじゃないの!」と、

精霊がそう言葉を口にするー


「は…??? え…????」

照康は、なおも意味不明、と言わんばかりに困惑の表情を浮かべるー。


「ーこ、ここに落ちた後、気付いたらこの身体になっててー!」

精霊がそう叫ぶと、

胸を揉んでいた紗智は笑みを浮かべたー。


「ー泉に落ちて来たお嬢ちゃんと、中にいたわしがぶつかってなー。

 気付いたら、入れ替わってたってわけじゃ」

と、”紗智になった精霊”が、そう説明したー


「え…じ、じゃあ、まさかー…」

照康が、紗智(精霊)のほうを見つめると、

紗智(精霊)は、指をペロリと舐めながら

「ーわしが精霊でー、そっちがこの身体の持ち主じゃー」と、

笑みを浮かべるー。


「ーーは…はぁ…?そ、そんなことー

 いや、っていうか、だったら勝手にそういうことすんなよー」

照康が、胸を揉んでいる紗智(精霊)にそう指摘すると、

「ーこんなモンが目の前にあったら、揉まずにはいられないじゃろ?」と、

笑みを浮かべながら、ニヤニヤと自分の胸を揉むー。


「ちょっと!いい加減にして!身体を返して!」

精霊(紗智)が、そう叫ぶと、

紗智(精霊)は、笑いながら、”元自分”の身体を見つめるー


「ーーそうしてやりたい気持ちはあるんじゃがー」

紗智(精霊)は急に真剣な表情になるー。


照康は、そんな様子にゴクリと唾を飲み込むー


”まさか、元に戻れないとか言うんじゃないんだろうなー”

と、流石に、心の中での緊張感が高まって来るー。


「ーー…1日に何度も身体を入れ替えると、

 人間の身体は、入れ替わる際の負担に耐え切れなくなり、

 ダメになってしまうんじゃー…


 だからー、一番早くても、明日の昼ぐらいまで

 待つ必要があってなー…」


紗智(精霊)の言葉に、

精霊(紗智)は「えぇっ!?じゃあ、わたし、明日まで

泉のおじさんなの!?」と、悲しそうに叫ぶー。


「おじさんではなく、精霊さんじゃ」

紗智(精霊)は、そう言い放つと、

照康は「それ、本当だろうなー?」と、冷静に言葉を口にするー。


「本当じゃー。

 何なら、今、身体を返してもいいがー、

 たぶん、このお嬢ちゃんの身体は中から腐って

 ダメになってしまうじゃろうなー」


紗智(精霊)が、そんな言葉を口にすると、

精霊(紗智)は「こ、怖いこと言わないでよー…!」と、

戸惑いの表情を浮かべるー。


「ー大丈夫じゃ。それは今、この場でもう一度入れ替わった場合の話じゃ。

 明日まで待てば、普通に元に戻れるー」


紗智(精霊)が、笑顔を浮かべながらそう言い放つと、

精霊(紗智)は「じゃあ……明日まで待つー」

と、少し不貞腐れた様子で頷いたー。


「ーと、とりあえず…もう時間も遅いし、

 いったん三人で山小屋に戻ろうー」

照康のそんな言葉に、紗智(精霊)は

「ふひひー久しぶりの人間の身体ーしかも、女じゃ」と、

ニヤニヤしながら、歩き始めるー


「も~~!こんな変態おじさんと入れ替わっちゃうなんてー!」

そう言いながら、精霊(紗智)も、泉から出ようとした

その時だったー


「ーーーえ…!?」

精霊(紗智)が表情を歪めるー。


「ど、どうした?」

照康が不安そうにそんな言葉を掛けると、

精霊(紗智)は「か…身体が泉の外に進まないー」と、

そう返事をするー。


すると、紗智(精霊)が、振り返りながら声を発したー


「すまんのぉ…わしは泉の精霊…

 その泉からは出られないのじゃー。

 一晩、そこで過ごしていて貰えんかの?」


紗智(精霊)の言葉に、

精霊(紗智)は「え~~~~!?!?」と、泉の中で

思わずあたふたとし始めるー。


「ーーーー」

照康は、困惑の表情を浮かべながらも、

精霊(紗智)に近付くと、

「明日まで、精霊さんとやらが、紗智の身体で変なことしないかどうか

 ちゃんと見張っとくからー」と、

照康はそう言葉を口にするー。


「ーーうん…せっかくのキャンプだったのにー」

寂しそうに呟く精霊(紗智)に対して、

照康は「また、改めて予定を考えよう」と、だけ言うと、

紗智(精霊)のほうを見つめたー。


「ーー人の身体を借りてるんだってこと、忘れるなよ?」

そう釘を刺すようにして言うと、「分かってる分かってる」と、

紗智(精霊)は、手を振りながら、山小屋の方に向かって歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


精霊(紗智)のことを心配しながらも、

山小屋の方に戻る気満々だった紗智(精霊)をそのまま

野放しにすることはできないと、

仕方がなく、精霊になってしまった紗智を置いて、

山小屋に戻って来た照康ー。


するとー、

突然、紗智(精霊)がニヤリと笑みを浮かべたー


「ーーふぉふぉふぉ…

 早速、わしと遊ばんか?

 この子のこと、好きなんじゃろ?

 今なら何だってしてあげられるぞ?


 さぁ、してほしいことを言うが良い」


紗智(精霊)が、普段の紗智が浮かべないような

ドヤ顔でそう言い放つー。


が、照康は首を横に振ったー


「いや、いいー。

 中身がおっさんの紗智に興味ないしー」

照康が白けた表情でそう言い放つとー

「なっ!」と、紗智(精霊)は、驚いた様子を浮かべたー。


しかしーーー


ニヤリと笑うと、紗智(精霊)は、突然、照康に身体を密着させて

甘い笑みを浮かべて来たー


「ーふふふ♡

 そんなこと言っちゃって、ホントはわたしと遊びたいんでしょ?」


”女”の口調で、そう言い放つ紗智(精霊)ー


少しだけドキッとしてしまった照康は

「やめろよー」とだけ言うと、そのまま紗智(精霊)から

少し離れようとするー。


がー

一瞬、照康がドキッとしたのを見逃さなかった

紗智(精霊)はニヤァ…と、笑みを浮かべるのだったー…。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


まさかの”泉の精霊”と入れ替わってしまうお話デス~!

大変なことになってしまう予感しかしないですネ~笑


続きは、また次回デス~!

今日もありがとうございました~~!

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