Home Artists Posts Import Register

Content

入れ替わってしまった彼女と大怪獣ー。


そのことに気付かないまま、

彼氏の拓己は瑠理香の様子が何だかおかしい、と違和感を覚えながらも、

瑠理香自身の体調がだんだんと回復しているようにも見えたために、

ただ、見守ることしかできない状況が続くー。


一方、大怪獣になってしまった瑠理香は、なんとかそのことを、

誰かに伝えようとするも、上手く行かずー…。


そんな中、瑠理香(大怪獣)は、人間としての知恵をさらに身に着け、

ついに、病院から姿を消してしまう…。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>大怪獣のイレカワリ②~不安~

彼女の瑠理香と幸せなひと時を過ごす中ー、 突如として出現した謎の大怪獣ー。 何とか彼女を守ろうと、大怪獣の出現した海岸沿いから 離れようとする拓己ー。 しかし、謎の赤い光に包まれー 大怪獣と瑠理香の身体が入れ替わってしまったー… そうとは気付かず、突然暴れ出した彼女を、何とか病院に 運び込むことに成功し...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーんふふふふふ…美味しいー… んふっ… んふっー」


瑠理香(大怪獣)が四つん這いの状態で、

男から出た血を嬉しそうに舐めているー。


「ーはぁぁ…人間の血ー…たまらないー」

興奮しきった声でそう言い放つ瑠理香(大怪獣)ー


瑠理香(大怪獣)に誘惑された男は、

連れていかれた先で、身体の自由を奪われた挙句、

ナイフで傷をつけられて、ひたすら血を舐められていたー。


「な、な、なんなんだーお、お前は!」

怯えた様子の男ー


だが、瑠理香(大怪獣)はお構いなしで、男の血を指に付けると、

指を口の中に入れて、何度も何度もしゃぶったー


「んっふぅぅぅ~♡ 人間の 血ー」

瑠理香(大怪獣)が、にっこりと微笑むー。


そんな様子を見て、男は「ーい、い、イカれてるー…!」と、

困惑の表情を浮かべることしかできなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「る、瑠理香が消えたー!?」

彼氏の拓己は、病院から瑠理香が消えた、という報告を受けて

驚きの表情を浮かべるー。


「えぇー。病院から出て、タクシーに乗り込む姿が、カメラにー」

風間医師のそんな言葉に、

一瞬”そんなに簡単に脱走できてしまうなんてー”と、拓己は思ったものの、

病院も今は色々と忙しいー

患者自身が脱走しようとすれば、すぐに出れてしまうものなのかもしれない、

と、そう思い直しながら話を聞くー。


瑠理香の母親も、心配そうに風間医師から色々なことを聞いているー。


「ーーと、とにかく俺、色々探してみます!

 もしも、瑠理香の居場所が分かったら連絡下さい!」


拓己は、それだけ言うと、病院の外に飛び出し、

瑠理香を探し始めるー。


どこに行ったのだろうかー。

瑠理香の家ー、拓己自身の家ー、

少しでも思い当たる場所をそれぞれ探すー。


しかし、瑠理香の姿は見当たらないー。


「ーーー…ん?」

そんな時だったー。


家電量販店の前を走っていた拓己が、足を止めて

店先の前のテレビに映し出されたニュースを見つめるー。


”大怪獣への攻撃、本日14時過ぎに発動”

そんな見出しと共に、大怪獣がいるあの海岸沿いの映像が

映し出されているー。


”怪獣対策チーム”ガーディアン”が本日14時、怪獣への総攻撃を

 開始することを先ほど発表しましたー。

 安全のため、周辺一帯の地域を封鎖、万全を期しての攻撃を

 行う、とのことです”


ニュースのリポーターの言葉を聞きながら、

拓己は「ーーあの大怪獣、本当に倒せるのかー?」と、

言葉を口にするー。


テレビに映っている海岸沿いのライブ映像を見ると、

例の大怪獣が”妙な動き”をしていることに気付いたー


「ーーはは…なんだあいつー…何か妙に変な動きだなぁ…」

拓己は、テレビでそんな映像を見ながらも、

それ以上は考えずに、「おっと!そうだったー!」と、

そのまま瑠理香を探して走り出したー


そしてー

街を駆け巡って1時間20分ほどが経過したその時ーーー


「!!」

拓己は、ふと、見覚えのある後ろ姿が見えて、その方向を見つめたー。


「ーー瑠理香!」

そうー、瑠理香(大怪獣)の姿を発見したのだー。


「ーーあ…」

瑠理香(大怪獣)が振り返ると、

拓己は「よ、よかったー…急に病院から抜け出して、何を考えてるんだよ!」と、

少し心配そうに声を上げると、

瑠理香(大怪獣)は「ふふ…ごめんごめんー」と、

そう言葉を口にしたー。


「ーーーー拓己ー…わざわざ、わたしのこと心配して

 探しに来てくれたんだー?

 でも、もう大丈夫ー。わたし、健康になったしー、

 すっかり”記憶”も入り込んで来たしー


 もう、入院してなくて大丈夫ー」


瑠理香(大怪獣)はそう言い放つー


”記憶ー”

瑠理香の脳からの”記憶”の流入がさらに進み、

昨日までとは違い、大怪獣はついに、”何の違和感もない瑠理香”として

話せるほどに、”瑠理香”となったー。


「ーーた、確かに、昨日よりも元気そうだけどー…

 で、でも、急に抜け出すなんてダメだろ?」


拓己がそう言うと、瑠理香(大怪獣)は

「も~…細かいなぁ」と、少し不満そうに頬を膨らませてから、

「ーーそうだー……今日、拓己、”わたしの家”に来ない?」

と、瑠理香とは思えないような不気味な笑みを浮かべたー


「ーーーえ…る、瑠理香の家ー?

 べ、別にいいけど、何で急に?」


拓己は、表情を歪めるー。


お互いに一人暮らしでもあることから、

互いの家に行き来をした経験はあるー。

だから、そこまで驚くことではないのだがー、

しかし、何だか今日の瑠理香は、やっぱり様子が変だー。


「ーーーあれーーー…え~っと…」

瑠理香(大怪獣)が、そんな言葉を口にしたその時だったー。


拓己のスマホが鳴り、

拓己は「あ、ごめん」と、一言、瑠理香(大怪獣)に謝ってから

電話に出るー。


相手の番号は知らない番号ー。

だが、瑠理香のこともあり、病院関係者や、瑠理香の家族関係かも

知れないと思い、電話に出たー。


がー…

相手は全く予想外の相手だったー。


「ーーーー!!!」

相手の話を聞いた拓己は、慌ててその場を駆け出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”あなたが明村 瑠理香さんの

 恋人の宮原 拓己さんで、間違いないでしょうかー?


 自分はー

 怪獣対策部隊”ガーディアン”に所属する者ですー。


 時間がありませんー。

 落ち着いて聞いて下さいー。

 我々”ガーディアン”は、大きな過ちを犯しましたー。


 絶対に外に漏らしてはいけない機密ですがー、

 このまま黙って見殺しにすることは、自分にはできませんー。


 ーーあなたの彼女の、明村さんは今ー、

 ”大怪獣”と入れ替わっていますー。

 総理大臣にも極秘で我々が開発した、

 ”レッド・ライト”と呼ばれる新兵器を用いましたー。


 あなたも、あの場で見たはずですー。

 ”赤い光”をー。


 あの光は、大怪獣と、明村 瑠理香さんの身体を入れ替えた時に

 発された光ー。


 我々の計画は、”大怪獣の中身を人間にしてしまうことで”

 怪獣を無力化し、そのまま葬り去る、というものー。


 大怪獣の中身が人間になれば、慣れない怪獣の身体を

 完全に使いこなすことはできないでしょうしー、

 何より、”人間を傷付ける行動”は、なかなかできないはずー

 そういう理由で、”人間と怪獣の身体を入れ替える”極秘兵器を

 開発、そして使用しましたー。


 我々の上層部はー、

 ”明村 瑠理香さん”が中身の大怪獣をそのまま駆逐する決定を

 既に下していますー。


 14時になれば、一斉攻撃が行われー、

 明村瑠理香さんは、怪獣の身体で死にますー。


 ーーー…今更、こんなことをあなたに伝えてもどうにもならないかも

 しれないー。

 でも、このまま黙っていることは、自分にはできなかったー。


 本当にーーーー…申し訳ありませんでした”



それがーーー

拓己のスマホにかかって来た電話ー。



「くそっー… ふざけんな!」

拓己は、あの海岸に向かって走っていたー。


”大怪獣”と”瑠理香”の身体が入れ替わってたなんてー。


時間は既に14時間近ー。

早くしないと、”大怪獣対策チーム・ガーディアン”とやらが、

瑠理香ごと怪獣を抹殺してしまうー


罪悪感に耐え切れず、拓己に連絡してきた男が言うには

”入れ替わり対象は、近くにいる無害そうな人間であればだれでも良かった”

とのことだったー。


瑠理香が、”怪獣の入れ替わり相手”に選ばれてしまったのはー、

単に”運が悪かった”のだろうー。



「ーーー君!ここから先は立ち入り禁止だー!」


そんな言葉を無視して、拓己は海岸沿いまでたどり着くと、

大怪獣(瑠理香)に向かって叫んだー


「瑠理香ーーー!!!!」

拓己が、そう叫ぶと、海岸沿いの展開していた

ガーディアンの部隊の兵士が、「君!何をしている!」と、叫ぶー。


「ーうるさい!お前たちは、瑠理香をー!

 瑠理香の命を何だと思ってるんだ!」


そう言い返すと、拓己は大怪獣(瑠理香)の近くまで行き、

大怪獣(瑠理香)を見つめたー。


さっきー、テレビでライブ映像を見た時”変な動き”をしていた理由も

分かったー。


中身が、瑠理香だったからだー。


「ーー瑠理香ー… 瑠理香なんだろー?

 今、俺が助けるからー…」


そう言いながら、拓己はスマホを手にするー。


全国にこの場から動画を配信し、

”大怪獣の中身は人間”であることを全国に伝えるー。


そうすれば”ガーディアン”とやらも、大怪獣(瑠理香)を

攻撃することなど、できないはずだー。


そうしてー、

時間を稼ぐうちに、何とか瑠理香と大怪獣の身体を元に戻す方法を

”ガーディアン”たちと交渉して、探って行かなくてはいけないー。


「ーーーー君は、何者かね?」

ふと、そんな声が響いたー。


海岸上空を飛ぶ、ヘリコプターからだー。


「ーー…お、俺は、瑠理香の彼氏です!

 どうして、こんなことをするんですか!」

拓己がそう叫ぶと、

ヘリコプターから声が響くー。


”私はガーディアンの総司令官・大泉だー。

 ーはて、どうしてこんなことを?とは、

 どういうことかね?”


大泉の言葉に、拓己は”くそっ!あくまでとぼける気かー”と、

そう思いながら、大怪獣(瑠理香)のほうを今一度見つめるー。


「ーーーこ、この大怪獣の中身は、人間です!

 攻撃を、少し待ってください!」


拓己がそう叫ぶー。


”立場上”、一般人と怪獣の身体を入れ替えて、

反撃してこなくなった怪獣を一方的に抹殺しようとしていたー、

などということは”認められない”のだろうー。


そう考えた拓己は”責める”のではなく、

とにかく攻撃をいったんやめてもらえれば何でもいい、と判断し、

そのまま説得を続けるーー。


”ほぅ、中身が人間ー?”


ヘリコプターから”ガーディアン”総司令官・大泉の声が

響いてくる。


大泉はあくまでも”怪獣と人間が入れ替わっているなどとは

始めて知った”と言わんばかりの口ぶりだー。


「そうですー!中身は人間なんです!」

拓己が言うと、

大泉は思わず笑ったー。


”証明する方法はあるのかね?”

とー。


「ーーーー」

拓己は困惑するー。


”申し訳ないが、間もなく総攻撃の時間だー。

 そこをどいてもらおう”


大泉の言葉が響き渡る。


しかし、それでも拓己は食い下がるー。


「中身が人間かも知れないのに、この怪獣を殺すと言うんですか!」

とー。


すると、大泉は再び笑ったー


”君は、トロッコ問題を知っているかね?”


「ーーー…トロッコー…

 暴走したトロッコが進む先に、

 5人がいる道と1人がいる道がある…

 どっちを助けるか?みたいな奴ですよね?」


拓己が聞き返すと、

”そうとも”と、大泉は口にしたー。


そしてー

大泉は言い放つー


”私は、迷わず”一人を犠牲にする方”を選ぶー。”


とー。


”5人を犠牲にするか、一人を犠牲にするかー。

 その選択しかないのであれば

 私は何の迷いもなく一人を犠牲にして5人を助けるー。


 この世界は綺麗な世界ではないのだ。

 犠牲の上に、平和は成り立っているー。


 仮にその大怪獣の中身が人間だったとしよう。

 しかし、それがどうしたというのかね?

 今、ここでその怪獣を駆逐せねば、100、1000、万の犠牲が

 出るかも知れないー”


大泉はそこまで言うと”14時に攻撃開始 変更はない”と、

そう宣言したー。


14時まであと3分ー。


拓己は、大怪獣(瑠理香)の足元まで走っていくと、

「瑠理香!いったん海に逃げるんだ!」と、

海のほうを指さしたー


怪獣の身体なら、泳げるはずー。


「瑠理香が逃げている間に、俺がなんとか元に戻す方法を探すからー!」

拓己がそこまで言うと、

大怪獣(瑠理香)は、咆哮をあげたー。


「ーー瑠理香…本当にごめんー。

 必ず、助


ーーー!?!?!?!?!?!?


その直後、

待機していた”ガーディアン”の兵士たちが目を疑ったー。


大怪獣(瑠理香)が、拓己を”踏みつぶした”のだーーー


拓己の声は一瞬にしてかき消されて、

大怪獣(瑠理香)が、ガーディアンの部隊に向かって

怒りの咆哮を上げるー


「ーなっ!?どういうことだー!?」

大泉が叫ぶと、部下の兵士が「分かりません!」と叫ぶー。


兵器を結集させるまで、攻撃を待っていたガーディアンー


だが、それが”裏目”に出たー。


入れ替わった瑠理香とガーディアンは、

”瑠理香になった大怪獣”がそうであったようにー、

次第に相手の”脳”の持つ記憶が入り込んでいたー。


同時にーー

”元の自分”の自我がどんどん薄れていたー


瑠理香になった大怪獣は、今ではすっかり、

瑠理香として振る舞えるようになっていると同時にー

自分が”怪獣”であったことも忘れ始めていたー。


そのため、最後に拓己と話した際に瑠理香(大怪獣)は

”血を吸うために、拓己を家に誘った”のに、

そのことを忘れて「あれ?」と、不思議そうに言葉を口にしていたー。


一方の大怪獣(瑠理香)も、そうー。

自分がどんどん怪獣になっていくことを危惧して、瑠理香は必死に

変な動きをして、人間に助けを求めていたもののー

拓己が到着した時点では、もう、瑠理香としての自我をほぼ、失っていたー。



大怪獣(瑠理香)の攻撃が始まるー。


「ーーくそっ!迎撃しろ!」

大泉が、ガーディアンの部隊に指示を出すと、一斉攻撃が始まったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ガーディアンの総攻撃により、大怪獣(瑠理香)は、

海中に転落、そのまま消息を絶ったー。


だが、遺体は確認されておらず、

ガーディアンが、必死に行方を追っているー。


東谷総理大臣も、”大怪獣撃退”と、国民に説明したものの、

国民の不安は消えないままだったー。



そしてーー

それから数年ー


瑠理香(大怪獣)は、自分が怪獣であったことも忘れー、

怪獣の頃好きだった”血を飲む”という習性も失い、

完全に”瑠理香”として生活していたー


彼氏の拓己の死後、1年ぐらいして瑠理香(大怪獣)には

また新しい彼氏が出来て、今はその彼氏と幸せに過ごしているー。



「ーーしかし、瑠理香って”怪獣映画”好きだよなー

 そんな風には見えないのにー」

彼氏がそう言うと、

瑠理香(大怪獣)は、興奮した様子で、これから見る怪獣映画の

パンフレットを見つめているー


「ーふふふー なんだかわからないけど、

 怪獣映画見ると、妙に懐かしい気持ちになってー」


瑠理香(大怪獣)は、そう言い放つと、

これから始まる映画にワクワクしながら、

穏やかな笑みを浮かべたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


大怪獣と入れ替わってしまうお話でした~!★


”一緒に暮らすエンド”も書き始める前に、

候補にあったのですが

結局、こちらの結末にしました~!


怪獣と入れ替わってしまった時の身体の感覚…

(戻れるなら)ちょっとだけ体験してみたい気もします~笑


お読み下さりありがとうございました~!

Files

Comments

No comments found for this post.