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可愛い子の名前を名乗りたいー。

そんな想いから、”憑依薬”を使った雄太郎ー。


絵里香に憑依して”わたしは絵里香…”と何度も可愛い名前を呟き、

”他人の名前を、他人の身体で名乗る”快感を味わいつくしたー。


しかし、憑依されていた絵里香に記憶が残っていたことから

状況は一変ー、

雄太郎は、絵里香に再び憑依して、周囲から明らかに怪しまれているのに

”わたしは絵里香!”で無理矢理押し通そうとするー…


その果てに待つ運命はー…?


☆前回はこちら↓☆

<憑依>その名前を名乗りたい②~発覚~

”可愛い名前を、自分の名前として名乗りたい” そんな想いを抱いていた雄太郎は、 ある日、”その方法”と出会ってしまうー。 憑依薬を手に入れ、絵里香になった雄太郎は、 ”わたしは絵里香…”と何度も何度も”自分”の名前を口にしてー、 この上ない快感を味わったー。 が、その翌日、正気を取り戻した絵里香から 声を掛けら...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅した絵里香は、

母親に声を掛けられたー。


親友の昭雄にも、他のクラスメイトにも、明らかに怪しまれているー。


けれど、雄太郎は”わたしは絵里香”を貫けば、

”誰にも僕が憑依していることを証明できない”と、

そう、思っていたー。


がーー


「ーー絵里香ー…大丈夫ー?

 例の子はー…?」

母親の言葉に、絵里香は表情を歪めるー


”早瀬さんー…まさか、親にもー?”

心の中で激しい苛立ちを覚えるー。


そうー、

昨夜、雄太郎に憑依されたあと、意識を取り戻した絵里香は

両親にも”憑依”のことを相談してしまっていたのだー。


「ーーークラスの子に憑依されていたって言うならー

 やっぱり、警察に連絡した方がー」

心配そうに”絵里香の母親”が、そう呟くー。


”警察”


その言葉に、絵里香に憑依されている雄太郎は、

激しく動揺したー。


「ーお、お母さんー…大丈夫ー。

 や、やっぱりわたしの勘違いだったみたいー。

 警察になんか通報しなくてもいいからー

 そ、そのことは忘れてー」


それだけ言い放って、絵里香は母親の前から

立ち去ろうとするー。


だがーーー


「ーーーあなたーー…」

母親が”信じられない”という様子で、怯えの色を浮かべながら、

絵里香に声をかけたー。


「ーーー…!」

絵里香は、母親の様子が明らかに変わったことに気付き、

表情を歪めるー。


「ーーー絵里香はーーわたしのこと”お母さん”とは呼ばないわー」

母親の言葉に、絵里香は目を見開いたー


”くーーーー…”

墓穴を掘りまくる雄太郎ー。

そもそも、憑依を悪用するのには、決定的に”悪知恵”が足りていないー。


”くーー…マ…ママかー…?”


「ーーた、た、たまにはイメチェンしようと思って!

 普段は、”ママ”って呼んでることぐらい、分かってるよ」


絵里香がそう言うと、

”既に手遅れ”だったのか、絵里香の母親が「あなたは、誰ー…?」と、

怯えた表情で言い放つー


「ーーわたしは…わたしは絵里香よ!

 お母さんの娘! 決まってるでしょ!」

必死にそう言い放つー


欲望のために”わたしは絵里香”と名乗りたかったのにー

まさか、こんな風に、何度も何度も”絵里香”を名乗ることになるなんてー。


「ーー違う…!あなたは誰!?絵里香を返して!」

母親の言葉に、絵里香は「だから!わたしは絵里香だってば!」と

声を荒げるー


「ーー違う!!あなたがー…あなたが絵里香の言ってたー

 佐山雄太郎くんー?」


「ーー!」

絵里香はさらに表情を歪めるー。


”くそっ!早瀬さんめー!僕の名前を母親にまで言ってたのか!”


雄太郎はそう思いながらも、

絵里香の身体で「自分の娘を知らない男子の名前で呼ぶとか、酷くない?」と、

言い放つー。


しかしー、母親は慌てて電話の方に向かうと警察に通報してしまったー


「ーーちょ!! ねぇ!おい!!!やめろ!!」

絵里香が叫ぶー。


だが、母親は止まらないー


”娘が、娘が誰かに乗っ取られてー”と、

必死に電話をしているー。


がーーー

警察は”おかしな通報”として、相手にしなかったのかー、

すぐに駆け付けることはなかったー。


「ーーはぁ…はぁ…はぁ…」

警察が来ない と知った絵里香は荒い息を吐き出しながら

笑みを浮かべるー。


”そうだー…憑依なんて、誰も信じないー

 どんなに疑われたって、誰もー”


絵里香はニヤニヤしながら、怯え切った母親の方を見つめると、

「わたしは早瀬 絵里香だよー」と、笑みを浮かべながら

呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー。


学校に到着すると、再びクラスメイトたちから

”疑いの目”を向けられたー。


それもそのはずー。

”絵里香の記憶”がない、雄太郎に絵里香のフリを

完全にすることはできないー。


女子との会話でボロを出しまくりーー

間違えて男子トイレに入るし、

イスに座るときにスカートも全く気にしないし、

”雄太郎の大好物”のコーラを平気で飲むしー、

雄太郎としては”絵里香のフリ”をしているつもりだったが、

明らかに”わたしは絵里香じゃない”と言っているに等しい状態だったー。


「ーーーー本当に…絵里香?」

友人の美空からそんな風に聞かれるー。


「どこからどう見ても、わたしは早瀬絵里香でしょ?」

絵里香がそう言い放つー。


美空は表情を歪めるー。


明らかに、疑われているー。


けれどー、雄太郎は”わたしは絵里香”と言うのをやめないー。


乗っ取られている絵里香本人に”反論すること”が出来ない以上、

周囲は確証を持つことは出来ず、

そのままの状況が続くー。


”僕はー…僕は悪くないんだー!

 最初は1回だけの憑依にするつもりだったのにー

 早瀬さんが僕に憑依されている間の記憶を覚えていたのがいけないんだー”


そんなことを思いながら、

今日も1日、”絵里香”として、過ごすー。


先生にも疑われているー。

それでも”わたしは早瀬です”と、堂々と断言するー。


嘘でも、力技で”真実”にすることは、できるのだー。



「ーーいい加減にしろ!」

放課後ー。


雄太郎の友人・昭雄に呼び止められた絵里香は、

昭雄からそんな言葉を投げかけられていたー。


「ーお前…!そんなことするやつだったのか?

 見損なったぞ!

 名前フェチとか冗談で言ってたころはよかったけどー

 本当に…そんなことするなんてー!」


昭雄が悔しそうに、絵里香のほうを見つめながら叫ぶー。


だが、絵里香は

それでも「わたしは早瀬 絵里香なんだけど」と、冷たく言い放つー。


「わたしは、名前フェチじゃありませ~ん!」

怒りを込めて、煽るような口調でそう言うと、

立ち去ろうとする絵里香の腕を、昭雄が乱暴に掴んだー


「ーーーー”きゃ~~~~~~~~~~~~~~”って叫ぶよ?」

絵里香が不満そうな顔を浮かべながら言うー。


「ー!」

昭雄が反射的に手を離すー。


「ーーわたしは女子なんだからー。

 男子の昭雄くんは、気を付けないとーーー」

悪意いっぱいにそう言い放つと、絵里香はそのまま

学校の外に向かって歩き出したー。


”大丈夫ー”

”大丈夫ー”


そう、自分に言い聞かせながらー。



「ーーー!」

がー。

今度は帰宅すると警察が待ち構えていたー。

どうやら、絵里香の母親が何度も通報したことで、

話だけ聞きに来た様子だったー。


警察から色々質問される絵里香ー。

絵里香の誕生日や、血液型など、簡単な質問をされるー。


それに、答えていく絵里香ー


”ふ~~~…昨日の夜、念のため覚えておいてよかったー”


こんなこともあろうかと、絵里香に憑依した雄太郎は

昨日の夜、生徒手帳やスマホから絵里香の最低限の

個人情報を暗記しておいたのだー。


それが、役に立ったー。


「ーーじゃあ~~…君は、早瀬絵里香、で間違いないね?」

警察官の言葉に、

絵里香は「はいー。わたしは早瀬絵里香です」と、微笑むー。


「嘘つき!わたしの娘を返して!」

そう叫ぶ母親ー。


しかしー

警察官がそれを静止して、

「じゃあ、佐山さんー。学校帰りで疲れているところ、

 ご協力ありがとうございました」と、

絵里香に言い放つー。


「いえ、こちらこそー」

絵里香がそう頭を下げると、

警察官が少しだけ、”うすら笑い”のようなものを

浮かべた気がしたー。


呆れている時に浮かべるような、そんな、笑みをー。


警察官が帰宅していくー。


「ーーーー」

部屋に戻る絵里香ー。


その時だったー


”し、、しまっ…!”

さっきのやり取りをずっと考えていた絵里香はミスに気付いたー


最後、警察官は

さりげなく”佐山さん”と言ったー。

それを、絵里香は”そのまま”流してしまったー。


絵里香の苗字は”早瀬 絵里香”ー

それなのに、”佐山さん”と言われて無反応はおかしいー。


あの警察官はー、

”佐山 雄太郎”の名で、絵里香をわざと呼んだのだー。

しかも”くん”付けではなく”さん”付けでー。


”くん”で呼ばれれば、絵里香に憑依している雄太郎もすぐに気づいたかも

しれないー。


しかし、”さん”で呼ばれたため、そのまま流してしまったー


「ーく…くそっ!僕を騙したな!!

 僕は、僕は早瀬絵里香だぞ!」


部屋の中で一人、怒りの叫び声を上げると、

絵里香は怒りに任せてカバンを床に叩きつけたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「”君のお母さん”から通報があったー」

警察官が、再びやってきて、絵里香に何かを見せるー。


それはーー

雄太郎の部屋にあった”憑依薬”の容器と、説明書だったー。


「ーーー!!!」

絵里香は目を見開くー。


絵里香の母親が、雄太郎の母親に連絡を取り、事情を説明ー

”抜け殻になった雄太郎”が意識不明のままで、

困惑していた雄太郎の母親は、

”息子が他の子に憑依しているかもしれない”と聞かされて

激しく動揺ー。

そして、息子…雄太郎の部屋を調べたところ、

雄太郎がそのままにしていた憑依薬の容器を発見し、

絵里香の母親にそのことを伝え、警察がそれを回収、

ここに持ってきたのだー。


「ーーーこれは、何かな?」

憑依薬の容器を手にしながら言う警察官ー


「ーし、し、知りません!」

絵里香はそう言うと、

「わたしは早瀬 絵里香です!そんなもの、知りません!」と、

そのまま扉を閉めようとしたー。


がーーー


「ー雄太郎…! 雄太郎なんでしょ!?」

警察の背後からー、”雄太郎の母親”の声がしたー。


「ーどういうことか分からないけど、バカなことはもうやめて!」

雄太郎の母親のその言葉に、

絵里香に憑依している雄太郎は激しく動揺し、

瞳を震わせるー


「ーー…う…う、うるさい!わたしは、あんたのことなんて知らない!

 わたしは早瀬 絵里香!雄太郎なんかじゃない!!!」


絵里香がそう叫ぶー。

目には、”逮捕される”かもしれない恐怖から、涙が浮かんでいるー。


「観念しなさいー。佐山雄太郎くん」

警察官の言葉に、絵里香は「違う!わたしは絵里香!わたしは絵里香なんだよ!」

と、必死に叫ぶー。


「ーー雄太郎!」

雄太郎の母親が叫ぶー。


「絵里香を返して!」

絵里香の母親が叫ぶー。


「ーーく… く… ぅ…ぅ~~~~~~~~~~~~!」

どうすることもできなくなって、頭を抱えながら

その場にしゃがみ込む絵里香ー。


「ーーわたしは、わたしは、わたしは絵里香ー

 わたしは絵里香だー

 わたしは、わたしは絵里香ー

 わたしは絵里香ー」


泣きながら、そればかりを繰り返し、

髪をぐしゃぐしゃになりながら、呟く絵里香ー。


「ーー君は、佐山雄太郎で間違いないね?」

警察官が確認するようにして言う。


「ー違うー。僕はーー僕は早瀬絵里香だ!」

ついに、一人称までちゃんと言うことが出来ずに

そう叫ぶー。


「ー憑依しちゃいけないなんて法律、ないだろうしー、

 わたしが、わたしが早瀬絵里香じゃないってどうやって

 証明するんだよ!?

 証明できるもんなら、してみろよ!」


絵里香が泣きながらそう言うと、

警察官はため息をついたー


「何もしなくても答えは出るー」

とー。


「ーえ?」

絵里香が表情を歪めるー。


「ーー佐山くん。君の身体は今”抜け殻”の状態だー

 このまま放置を続けると、どうなると思う?」


警察官の言葉に、絵里香は「どうって…?」と、呟くー。


「君の身体は、死ぬー。

 魂のない身体は、数日で死に至るー。

 そうすれば、君はどうなる?

 身体が死んだ君は、早瀬絵里香でいることもできなくなり、

 そのまま、消滅するー。

 魂と身体は一蓮托生ー。

 このまま君が”早瀬絵里香”と名乗り続けるのは構わないー。


 でも、そうしたら、君は死ぬんだ。

 そうだなー。持ってあと3日ー。

 3日後には、君が早瀬絵里香なのか、佐山雄太郎なのか

 君がこの場で認めなくても、答えは、出るー」


警察官の言葉に、絵里香は

「そ、そうやって、自白させようとしてー!

 わたしは、わたしは早瀬絵里香なんだよぉおおおお!!!!」と、

怒りの言葉を叫ぶー。


だがーーー


「なら、試せばいいー。

 3日もすれば、君は消えて、早瀬絵里香が正気を

 取り戻すだけだ」


警察官の、その自信満々な言葉に、絵里香は

目に涙を浮かべながら、「そ、そんなことー」と、呟くー。


「ーーもう一度言う。

 このまま”早瀬絵里香”に憑依し続ければ、君は、死ぬー」


警察官の言葉に、

ついに絵里香は耐えきれなくなりー、

「うわああああああああああああああ!!!!!!」と、叫ぶと、

絵里香の身体から抜け出して、そのまま雄太郎の身体の方に

舞い戻って行ったー。


「ーー絵里香!」

絵里香の母親が、気を失った絵里香に駆け寄るとー、

やがて、絵里香が寝起きかのように目を覚ましてー、

状況がすぐには分からず、不思議そうに首を傾げたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー!」

”抜け殻”となった雄太郎が、入院していた病院で、

雄太郎が目を覚ますー。


だがー

その場には、既に別の警察官が待ち構えていて、

雄太郎はそのまま警察署に連行されたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーにしても、よくあんなこと知ってたなー」

現場に駆け付けた刑事の一人、年配の刑事がそう言うと、

絵里香に憑依した雄太郎を説得していた30代ぐらいの刑事が笑ったー


「いいえ、全部ハッタリですよー。

 そもそも憑依なんて、初めて聞きましたし、今でも驚いてますー。


 抜け殻になった身体が死ぬっていうのもー、

 身体が死ねば”憑依している魂も消える”って言うのも、全部、適当ですー


 本当は、身体はずっと抜け殻でも平気かもしれませんし、

 仮に本体が死んでも、魂は消えないかもしれませんー」


雄太郎を説得した刑事がそう言うと、

年配の刑事は「んだよ、ハッタリかよー」と、笑いながらも

「俺もマジかと思ったよー。大したもんだ」と、

苦笑いしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


雄太郎は、憑依薬の入手ルートなどを

散々聞かれた挙句、

警察からはとりあえず釈放された。


憑依薬は既に確保され、憑依薬の入手ルートにも

捜査が入ったー。


雄太郎がまだ高校生なことや、

憑依薬自体、法律上でどう対応していいのか定まっておらず、

釈放となったのだったー。


がーーー

”絵里香への憑依”というとんでもないことをやらかした雄太郎にー

もう学校での居場所などなかったー。


友人の昭雄も、絵里香本人も、先生でさえも、軽蔑のまなざしを

雄太郎に向けるー。

そして、雄太郎の家族もー。


自分の身体に戻った雄太郎は、

1か月持たず、精神的に病んでしまいー、

部屋に引きこもるようになったー。



「ーーーーーー」

雄太郎の母親が、今日も雄太郎の部屋に向かうー。


「ーー雄太郎ー」

心配そうに声をかける母親ー。


だがー


雄太郎は、部屋の端っこで体育座りをしながら

「ーわたしは絵里香ー わたしは絵里香ー

 わたしは絵里香なんだー 憑依なんて、してないー」と、

現実逃避をするかのような言葉を、

虚ろな目で呟くだけだったー。


”わたしは絵里香ー”


なおもそう呟く雄太郎の目はー

もはや、完全に輝きを失っていたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ひたすら色々な形で、

乗っ取った身体の名前を名乗り続けるお話でした~!☆


もうちょっとかしこい子が憑依薬を使っていれば

また違う結末になってた気がしますネ~笑


お読み下さり、ありがとうございました~!


今日(10日)の夕方~夜頃に、

”FANBOXの今後執筆予定の新作”を新たに6作品発表しますので、

楽しみにしていて下さいネ~!

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