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”可愛い名前を、自分の名前として名乗りたい”


そんな想いを抱いていた雄太郎は、

ある日、”その方法”と出会ってしまうー。


憑依薬を手に入れ、絵里香になった雄太郎は、

”わたしは絵里香…”と何度も何度も”自分”の名前を口にしてー、

この上ない快感を味わったー。


が、その翌日、正気を取り戻した絵里香から

声を掛けられた雄太郎はー…?


★前回はこちら↓★

<憑依>その名前を名乗りたい①~他人の名前~

「ーーーーー」 帰宅したその子は、笑みを浮かべながら鏡を見つめたー。 「ーわたしは…」 鏡の前で、緊張した様子でそう声を発するー。 「ーーわたしは……わたしはー…」 自分で、何度もそう言いながら、緊張した様子で 綺麗な長い黒髪を触るとー、 ニヤニヤと笑みを浮かべながら鏡を見つめるー。 学校に持って行っていた...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー…わたしの身体を勝手に動かしてたのー…

佐山くんだよねー…?」


絵里香に憑依して、絵里香の名前を何度も何度も口にした翌日ー。


正気を取り戻した絵里香に、

そう問い詰められた雄太郎は、表情を歪めたー。


「え… えっ…?」

予期せぬ事態に、泡を吹いて失神しそうな気持ちになりながらも、

何とか平静を装いながら、「え…??え…?な、何のことー?」と、

雄太郎は返事をするー。


「とぼけないでー…昨日、”雄太郎くんの彼女の”とか、言ってたでしょー?」

絵里香のそんな言葉に、

雄太郎はドキッとするー。


”まさかーー、憑依されている間の記憶がー!?”

雄太郎は困惑したー。


確かに昨日、絵里香に憑依している最中に、

調子に乗って”雄太郎くんの彼女の絵里香です”とか、

”雄太郎の妻の絵里香です”とか、名乗った覚えがあるー。


”う、嘘…嘘だよなー…?き、記憶が残るなんてー、聞いてない!”

雄太郎は戸惑うー。


憑依されている間の記憶が残るのであれば、

最初から”自分の名前”を出すようなボロは出さなかったー。


”わたしは早瀬絵里香”と何度も何度も繰り返すだけであればー、

”憑依しているのが雄太郎”だとバレるようなことはなかったはずだー。


しかしー…


「ーーご、ごめんー…な、何のこと言ってるかー、分からないー」

雄太郎は、激しく動揺しながら、なおもとぼけようとするー。


「ーなんで…なんでそんなことするのー?」

絵里香が涙目で雄太郎のほうを見つめるー。


それはそうだー。

”勝手に憑依された”側からすれば、辛いことに違いないー。


「ーーなんで?…ねぇ…どうして?」

絵里香の言葉に、雄太郎は、周囲の視線を集め始めていることに気付きー、

「ーわ、わかった!わかったから!」と、

周囲を見渡してから「ちょ、ちょっと放課後にゆっくり話そう」と、

そんな言葉を口にするー


がーーー


「ーーなんで、わたしに”憑依”なんかしたの!?

 どうしてそんな酷いことしたの!?」

普段、声を荒げることのない絵里香が、涙目で叫ぶー。


昨日ー、絵里香に憑依した時に

”憑依成功…”なんて呟いてしまったことからー、

絵里香も”自分が憑依された”と、理解しているのだろうー。


「ーーー…!」

雄太郎は、周囲を唖然としながら見渡すー


絵里香が泣き叫んだことで、クラスメイトたちが一斉に

こちらを見ているー。


「ーね、ねぇ…絵里香ー?どうしたの?」

絵里香の友達の一人が言うと、

絵里香は「さ、佐山くんがーわたしの身体を勝手にー!」と、

半泣きの状態で事情を説明したー


”ヤバいー、ヤバいー、ヤバい、ヤバい!”

雄太郎はパニックになりながら、その状況を見つめるー。


友人の昭雄も「おいー…お前ー、まさかー」と、

戸惑いの表情を浮かべているー。


「ーー……!!!!!」

パニックになった雄太郎はー、咄嗟に”あること”を思いつくー。


「ーは、早瀬さん!む、向こうで説明するから!」

強引に絵里香の手を掴む雄太郎ー。


「ーちょっ!?は、離して!ねぇ!やめて!」

急に手を掴まれた絵里香が驚いて叫ぶー。


クラス中がどよめくー。


雄太郎は、絵里香の手を無理やり引っ張って、

そのまま教室から飛び出すと、

絵里香を近くの空き教室に押し込んで叫ぶー。


「ーーごめんー!

 こんなことになるなんてー

 こんなことになるなんて、思わなかったんだー!」


念のため学校に持ってきていた残りの憑依薬の一つを手にすると、

雄太郎も、半泣き状態で叫ぶー。


「ー何でー何でー記憶が残ってるんだー!?

 あぁ、くそー…

 くそ、こんなことになるはずじゃなかったんだ!ごめん!」


雄太郎は泣きながらそう言葉を口にすると、

怯えた様子の絵里香を見つめながら、憑依薬を飲み干すー。


その場に倒れ込む雄太郎ー


「ーえっーー…な、なにー!?」

怯えた表情の絵里香ー。


だが、すぐに”雄太郎”が、また”憑依”しようとしていることを悟るー。


「ーーや…やめて…!たすけて!わたしに憑依しないで…!!!」

絵里香が慌てて教室の外に飛び出そうとするー。


だがーー


「ーーひっ!?」

絵里香の身体がビクンと震えてー、

絵里香が震えながら、”倒れた自分”のほうを見つめるー


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

クラスメイトへの憑依がバレてしまったことに、

パニックになった雄太郎ー。

絵里香に再び憑依しても、荒い呼吸はなかなか収まることなく、

「はぁ…はぁ…」と、何度も何度も息を吐き出すー。


そしてー、すぐに

クラスメイトたちが、その教室に駆け付けたー。


”雄太郎が絵里香を強引に連れ去った”ことで、

心配して後を追ってきたのだー。


「ーーー…はぁ…はぁ」

絵里香が、クラスメイトたちのほうを見つめるー。


空き教室には、荒い息をしたまま座り込んでいる絵里香と、

倒れ込んでいるままの雄太郎ー。


絵里香に憑依した雄太郎の身体は、今や”抜け殻”だー。


「ーな、なんだ…これ?」

友人の昭雄が、倒れている雄太郎に「おい!」と、声をかけるー。


「ーな、なにがあったのー?」

絵里香の友達の一人で、雄太郎が”お気に入り”の名前として

候補を上げていた”美空”が、不安そうに呟くー。


「ーーわ、分からないー…き、急に、倒れてー」

絵里香のフリをしながら、雄太郎がそう言い放つー。


だがーー


「ーみんな!騙されないで!」

そう、叫んだのはーーー

隣のクラスの女子生徒だったー。


「ー!?」

絵里香が表情を歪めるー。


「ーわ、わたし、見たの!

 その男子が、変な薬を飲んで、絵里香ちゃんに憑依したの!」

その子の言葉に、どよめくクラスメイトたちー。


どうやら、騒ぎを聞きつけて、”偶然”

雄太郎と絵里香のやり取りを見てしまったらしいー。


「ーーな、何を言ってるのー…?わ、わ、わたしは早瀬絵里香よー」

絵里香の名前をこんな風に名乗ることになるなんてー、

と、思いながらも、雄太郎は昨日に続き”わたしは早瀬絵里香”だと、名乗るー。


「ーーー嘘よ!絵里香ちゃん、”わたしに憑依しないで!”って

 叫んでるのみたし、昨日、LINEで相談もされてるもん!」


その子の言葉に、絵里香は表情を歪めたー


”くそっー早瀬さん、僕に憑依されたことをもう、他の子にも

 相談してたのかー”


絵里香に憑依している雄太郎はそんなことを思いながら

歯ぎしりをすると、

「ーーー憑依なんて、あるわけない」と、

吐き捨てるように言い放つー。


「ーー佐山くんでしょ!絵里香ちゃんの身体を返して!」

隣のクラスの子がそう叫ぶー。


「ーわたしは絵里香!佐山雄太郎なんかじゃない!」

絵里香はに憑依している雄太郎は、

”憑依がバレること”を何よりも恐れてそう叫ぶー。


美空や、クラスメイトたちも心配そうに

「絵里香…だよね?」と言葉を口にするー。


「ーうんー。もちろん。わたしは絵里香だよー」

絵里香がそう言うと、

なおも、隣のクラスの女子ー…

確か、絵里香の幼馴染か何かだっただろうかー。

その子が「嘘つき!絵里香の身体を返せ!」と、半泣きで叫ぶー


「ーうるさい!わたしは絵里香よ!」

絵里香はカッとなって、そう声を荒げるー。


動揺する周囲のクラスメイトー。


そしてー、”雄太郎が倒れている”ことを、

先生に伝えに行った昭雄が、先生と共に戻って来てー

”抜け殻”になった雄太郎の身体が、保健室への搬送ー、

すぐに救急車が呼ばれて、そのまま病院へと向かったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


雄太郎の”抜け殻”が病院に運ばれてからも、

クラスメイトたちはざわついていたー。


「さ、さっきの話ー」

”絵里香”の友人の美空が心配そうに、絵里香に声をかけて来るー。


絵里香はにこっと笑いながらー

「わたしは絵里香だから、大丈夫ー」と、言い放つー。


「ーーーーー」

だが、絵里香の身体は小刻みに震えていたー。


”僕が、早瀬さんに憑依していたなんてバレたらー

 大変なことになるー…

 このままー、このまま隠し通すしかー…”


絵里香はそう思いながら、

「とにかく、”わたしは絵里香”だから大丈夫ー」と、

そう美空に対して言い放つー。


けれどー、美空も、他のクラスメイトも、

絵里香に疑いの目を向けているのも事実だったー。


言動から、仕草まで”全然絵里香になりきることが出来ていない”

雄太郎ー。

いかに、身体が絵里香のものであろうとー、

あんな騒ぎを見せ付けられた以上、

”早瀬さん、アイツに憑依されているんじゃないか”と、

思う生徒たちがいるのは当然だったー。


「ーーー早瀬さん…大丈夫?」

担任の先生も心配そうに呟くー。


「ーえ、あ?はいー!大丈夫、大丈夫です!はい!」

身体を大げさに動かしながら

”元気アピール”をしてみせる絵里香ー。


周囲からどんなに疑われようとー

”わたしは絵里香”で押し通すー。

雄太郎は、そう決意していたー。


”憑依されている証明”なんて出来っこないー。


”わたしは絵里香って、僕が言えばー、

 僕は早瀬絵里香なんだー!

 身体は、正真正銘、早瀬さんのものなんだからー”


自分の悪事がバレるー。

そんな危機感から、雄太郎は後先考えずに絵里香に憑依ー、

もはやこのまま隠し通すにはー、

絵里香に憑依し続けるしかなくなってしまっていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


絵里香として、下校しようとする雄太郎ー。


”くそっー僕はこれからどうしたらー?”


絵里香はソワソワした様子で、戸惑いの表情を浮かべるー。


雄太郎だって、こんな風にすることが目的だったわけではないー。

単に、絵里香や、他の”可愛い名前の子”の身体で、

”わたしは絵里香”とか”わたしは麻奈美”とか、

そんな風に、名前を名乗りたかっただけだー。


もちろん、憑依される側からすれば、それだってとんでもないことだしー、

イヤだということは分かっているー。


けれどー…

それでもー…


こうなってしまった以上ーーー


「くそっー…どうして、どうして憑依されている間の記憶が

 残ってたんだー」


苛立ちながら呟く絵里香ー。


”憑依薬の説明書”にはー

記憶が残らないー…と、書いてあったようなー…

いやーもしかしたら”思い込み”かもしれないー。

勝手に、”憑依された側には記憶は残らない”と決めつけていただけかもしれないー。


そんなことを思いながら絵里香がため息をつくとー

「ーーー佐山!」と、背後から声が聞こえたー。


「ーーえ?」

思わず、振り返ってしまう絵里香ー。


絵里香の苗字は”早瀬”だー。

雄太郎の苗字である”佐山”で振り返るのはおかしいー


「ーーやっぱりー…」

友人の昭雄が、表情を歪めるー。


”わざと”絵里香のことを”佐山”と呼んだのだー。


「ーーーな、な、な、なにー?

 わたしは”早瀬 絵里香”だけど?」

雄太郎も、自分が”ミス”をしたことに気付きながらも、

必死に誤魔化そうとそう言葉を口にするー。


「いや、もういいよー。

 お前、佐山だよなー?」

昭雄が言うと、絵里香は「ー違う!わたしは早瀬 絵里香!」と、

焦りながら言葉を口にしたー。


「ーいやいや、バレバレだよー佐山ー…

 なぁ、…どういうことか分からないけど、

 早瀬さんに身体を返してやれって」


昭雄が心配そうに言葉を口にするー


「ー…だから!わたしは早瀬 絵里香なの!」

声を荒げる絵里香ー。


普段の絵里香はこんなにすぐに怒ったりしないー。

明らかに”昭雄の指摘が事実”であることを証明してしまうようなー、

そんな反応だー。


「ーーー…なぁ、佐山ー…

 俺も一緒に謝ってやるからー…

 な?」


昭雄がなおも”雄太郎”を説得するー


「ーーわ、訳の分からないことい、言うなよ!  

 わたしは、わたしは絵里香なんだよ!」


絵里香がぎこちない口調で言うー。


「ーーおい、さやーーー」


「わたしは早瀬 絵里香だって言ってんだろ!」

絵里香はそう叫ぶと、

昭雄は驚いて口を閉ざすー。


「ー佐山佐山佐山ー な、何なのよ!

 わたしは絵里香!!!

 わたしは早瀬 絵里香!!!

 勝手にボクだって決めつけるな!」


絵里香は、もはや”僕は雄太郎”と言っているに

等しい言い方でそう否定すると、

そのまま慌てた様子で立ち去っていくー。


”認めないー”

”認めないー”

”認めなきゃ、バレないー”

”だいじょうぶー、だいじょうぶー”


”憑依”がバレることに恐れをなした雄太郎は、

”明らかに怪しい”のに、”わたしは絵里香”を貫こうとしていたー。


③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


正体が発覚しそうになって、

自暴自棄に「わたしは絵里香!」を乱発する雄太郎くん…!

そう言い切られてしまうと、明らかに嘘っぽくても、

なかなか”憑依”と(周囲からすれば)断定できないので

大変ですネ~笑


次回が最終回の予定デス~!

今日もありがとうございました~~!

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