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夫と、息子に囲まれ、何不自由のない

幸せな生活を送っていた清美ー。


しかし、ある日…彼女は自分のことを”兄貴”と呼ぶ謎の男・ヤスと出会い、

思い出してしまうー。

自分は、”本来の清美”ではなく、

大学時代の清美に憑依した”極悪人”であったことをー。


本当の自分を思い出した清美は、豹変しー、

本性を露わにしてヤスと合流するー…。


★前回はこちら↓★

<憑依>そうだ、俺は極悪人だった①~記憶~

秋村 清美(あきむら きよみ)は、 ごく平凡な、幸せな日々を送っていたー。 大学を卒業し、大学時代から付き合い始めた彼氏の英輔(えいすけ)と結婚ー 今では長男の秀太(しゅうた)も、誕生してー、 家族に囲まれる幸せな日々を送っていたー。 「ーーいってらっしゃい~!」 その日も、清美は、夫である英輔をいつ...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ボンテージ姿のまま、散々ヤスと楽しんだ清美は

笑みを浮かべながら煙草の煙を吹かせるー


「へへ…兄貴…すげぇや…」

ヤスは、清美との欲望の時間を思い出しながら、

ニヤニヤと笑みを浮かべるー。


「ークククーだろ?

 たまたまあの時、出くわした相手がこの女で良かったぜー」

清美はそう言いながら笑うー。


あの時は、命を狙われていて

”誰”に憑依するか選ぶ余裕はなかったー。


たまたま目の前に現れたのがこの清美だったために、

清美に憑依したがー、

もしも、あの時、目の前に現れたのが屈強なマッチョだったとしても、

いいや、おじいさんやおばあさんだったとしても、

全身タイツの怪しすぎる不審者だったとしても、

憑依していただろうー。


それほどまでに、篤弘はあの時、追い詰められていたのだー


「ーククククー

 今じゃ俺が、美人の人妻だもんなぁ」

ニヤニヤしながら、自分の身体を誇らしげに見せ付けるような

ポーズをする清美ー。


「ーーへへへ…最高っすよ兄貴ー」

ヤスはそれだけ言うと、チラッと時計を見つめるー。


時間は既に、日付が変わろうとしているような時間ー


「でも、いいんすか兄貴?

 夫と子供がいるんでしょ?」

ヤスが少し困惑した様子で言うと、

清美はだらしなくソファーに座りながら

「ーー”記憶”思い出したからなー」と、笑ったー。


”今日のお昼までの自分”も、確かに自分であることには間違いないー。

清美に憑依した直後、車に跳ね飛ばされて記憶を失ったとは言え、

”本来の清美”に戻ったわけではなく、

この数年間は”篤弘としての記憶を失った篤弘が、清美として生きて来た”のだー。


当然、篤弘自身の記憶を取り戻してもー

自分が”清美だと思い込んで来たこの数年”の記憶は消えないし、

想いも、消えないー。


ヤスが戸惑いながら、そんな清美のほうを見つめていると、

清美は煙草の火を消しながら笑ったー。


「ー確かに、”秋村 清美”としての記憶もあるしー、

 さっきまで考えていたことも全部、覚えてるー。


 ーーでも、俺は俺だし、”俺”を選んだだけさー」


清美は笑いながら、胡坐をかいて座ると、

「ーーまぁでも、記憶を何年も失ってて、別人として過ごして来てー

 急に記憶を取り戻すってのは、変な気分だなー」

と、清美は少し複雑そうな表情を浮かべるー


「まるで、俺が二つの心を持ってるようなーそんな気分でー…

 俺が何なんだか、分からなくなるー」


清美のそんな言葉に、ヤスは少しだけ心配そうに「兄貴ー」と、

言葉を口にしたー。


「ーーへへー、まぁでも、今は自分の身体に滅茶苦茶興奮してるしー

 やっぱ俺は”俺”の要素の方が強えってことだよ」


清美はそれだけ言うと、立ち上がったー。


「ーーさ~て、このあとはどうする?

 カラオケでも行くか?

 この女の歌声、結構いい感じでーー」


清美がそこまで言うと、ヤスは「兄貴」と、

珍しく真剣な表情で、”兄貴”のほうを見つめたー。


「ーーー…あん?なんだ?

 カラオケじゃなくて、ホテルにでもー」

清美のそんな言葉を、ヤスは首を横に振って遮ると、

「兄貴ー…一度、家族のところに帰って下さい」と、

言葉を口にしたー。


「ーーーあ?? んだよー

 別に俺はー」

清美がそう言うと、ヤスは「ダメっすー。一度、一度帰って下さい」と、

もう一度、今度はさっきよりも強い口調で言い放ってきたー


「ーーーー…は~~~~」

清美は長い髪を掻きむしると、

「ーーーーーーあの旦那、怒ってるだろうなぁ」と、

時計を見つめながら言うー。


息子の送り迎えも家事も放棄して

ここに来たのだー。


「ーーー…ーーチッー

 面倒くせぇ」


清美はそう言いながらも、

”確かに、そろそろ帰ってあげなくちゃー”という気持ちも

心の中から芽生えて来るのを感じー、

今一度深く、ため息をついたー。


「ーーーまぁ、しゃあねぇ…

 今日のところは一度帰るとすっか」


そう言いながら立ち上がる清美ー


「ーーっと、俺の服、どこに脱いだっけ?

 まさかボンテージ姿で街を歩くわけにゃ、いかねぇしなー」

清美のそんな言葉に、ヤスは

「兄貴!雑に脱ぎすぎっすよ!」と、散らかった部屋を

見つめながら笑ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「は~~~~~~~…」

面倒臭そうに髪を掻きむしる清美ー。


”昨日まで”は、当たり前のように夫・英輔をー、

そして息子の秀太を母として愛していたー。


けれど、今日”ヤス”と再会して、その想いは変わったー

”本当の自分”を思い出したのだー。


清美としての記憶もあるー。

憑依した時点で、清美の”脳”からその記憶を引き出すことが

できるようになっていたし、

車にはねられて、記憶を失った後”清美”として過ごした間の記憶も

当然あるー。


それでもー

やはり彼にとってー、篤弘にとって”俺は俺”だったー


「ーったく…英輔になんか言われるんだろうなー」


そう思いながら、家の前にやってくるとため息をついたー。


記憶を取り戻した以上ー、

もう”元の清美”には戻れないー。

どんなに清美として振る舞おうとしても、

自分は”男”なのだからー、

今は自分の身体となった”清美”の身体も、

他人行儀で、イヤらしい視線で見てしまうー。


「ーーー自分のこと、エロいって思っちまうもんなー

 今まで、そんなことなかったのにー」


清美はそれだけ呟くと、静かに家の玄関の鍵を開けて、

そのまま中に入ったー。


もう、日付は変わっているー。

明らかに、秀太も、英輔も寝ているだろうー。


いいやー…

英輔は怒っているかもしれないー。


”ーま、うるせぇこと言って来たらぶん殴ってやるか”

清美はそう思いながら、静かにリビングの方に入っていくとー、

英輔が、ソファに座ったまま、険しい表情を浮かべていたー。


「ーーー清美ー…」

ウトウトしていたのだろうかー。

英輔は、少し眠そうにしながら、清美が帰ってきたことに気付くと、

大きく息を吐き出したー


”ーーもう、”わたし”は、今朝までのわたしじゃないんだぜー?

 わたしは、”俺”だって思い出したんだからー”


清美がそんなことを思いながら、

どう言い返してやろうかと、そう思っていると、

英輔は立ち上がり、清美に近付いて来たー。


「ーーーーふふー…わたし、

 家のことも、お迎えもー…


清美が、そこまで言いかけると、

英輔は当然ーーー


「ーー!?!?」

清美を、優しく抱きしめて来たー。


「ーーーなっー」

清美が少し驚きながら、そう声を上げると、

英輔は「よかったー」とだけ、静かに呟いたー


「な、なにがー」

清美が表情を歪めながらそう言うとー、

英輔は「清美が無事で、本当によかったー」と、

心底安堵した様子で言い放ったー。


てっきり、何か文句を言われたり、小言を言われたりー、

暴力を振るわれたりするかと思っていた清美は困惑するー


「ーーお…いえーー…わたしが、何をしてたか、聞かないの?」

清美が不満そうな表情を浮かべながらそう言うと、

英輔は「話してくれるなら聞くしー、話したくないなら無理には聞かないよ」と

優しく言葉を口にしたー。


そうだー

英輔は、大学時代からとっても優しいー。

今も、昔もー。


「ーーーーーー……」

清美は険しい表情を浮かべながら、

英輔のほうを見つめて笑みを浮かべるー。


「ーーーー他の男と遊んでたって言ったらー?」


清美の邪悪な笑みー。

こんな清美の表情は見たことがないー。


清美に憑依している篤弘は、英輔の反応に

”少し”ムカついていたー。

なんだか、気に入らなかったー。


不満があるなら怒ればいいー。

息子と夫を放り出して、連絡も取らずに

他の男と遊んでいた妻を怒ればいいー。


だが、それをしない英輔に何だか苛立ちを感じていたー。


「ーーーーーーたとえそうだとしてもー

 清美が無事でよかったー」


英輔は、”浮気”宣言のような言葉を言われても、

動じずにそれだけ言い放ったー。


ただ、心底清美の身を案じる英輔ー。


「ーーーーーー………お人好しすぎでしょー」

”清美”として、不満そうにそう囁くも、

何だか、目から涙がこぼれそうになるー。


”ーーなんだよー…くそっ”

篤弘はそう思いながら、夫である英輔の悲しそうな目とー、

心底安心しているような目を見てー、

思わず目を逸らしたー。


そうこうしているうちにー、両親が会話していることに気付き、

息子の秀太も目を覚まして、寝ている部屋から

顔を出したー


「ーおかあさん…?」

秀太が目に涙を浮かべながら、清美に駆け寄って来るー


「ーーー…」

清美は表情を曇らせながらも、

近付いてくる秀太を、無意識のうちに抱きしめていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ーーーー昨日は、ごめんー」


朝早くー

清美は、夫の英輔にそんな言葉を口にしたー。


「ーーーはは、いいさー。

 何か理由があるんだろー?


 もし、なかったとしてもーーー

 人間、誰だってたまには全部イヤになって

 投げ出したくなることもあるさー…


 でもー、

 清美はこうして戻って来てくれたー

 だから、それだけでいいんだー」


英輔はそれだけ言うと、

「今日は、秀太のことも俺が送っていくからー、

 ゆっくり休んでてー」

と、笑いながら言葉を口にするー。


普段から、英輔は”家のこと”も仕事をしながら

やるタイプで、全部清美任せ、というタイプでは

決してないー。

秀太の送り迎えは仕事の時間の都合上で、清美が

することが多いだけで、

これも、決して英輔は押し付けているわけでもないー。


自分が純粋な”女”であればー

いいやー…”篤弘”としての記憶を取り戻さなければー

こんな素敵な夫に、これからもずっと寄り添っていただろうー。


けれどー


「ーーー……」

複雑そうな表情を浮かべている清美を見て、

英輔は、心配そうに「”体調が悪い”とかはないよな?」と、

言葉を口にするー


「ーーうん。それは、大丈夫ー」

清美が目を逸らしながらそう言うと、英輔は「よかったー」と、

だけ頷いて、そのまま秀太を送る準備をし始めたー



やがてー、英輔と秀太が出かけていくー。


一人残された清美は不機嫌そうに

「ー優しすぎだろー…お人好しのバカがー」

と、そう呟くー。


「ーーーーーーー」

昨日、”記憶を取り戻した”直後はー、

こんな家族捨てて、またヤスと好き放題やるつもりだったー。

しかも、今度は”女”という武器も手に入れたー。


肉体的には前より弱くなってしまったかもしれないがー、

それでも、今度は”美貌”という武器を手に入れたのだー。


それを使ってヤスと共に欲望の日々を送るつもりだったー。


今までも、そうしてきたー。

それが”俺”という人間だー。


でもー…

昨日、家に帰って来てー…

”清美”としての自分ー…ここ数年間、

記憶を失い、ずっと育んできた生活の大切さも

改めて実感してしまったー


「ーくそっー……」

清美は悔しそうな表情を浮かべながら、歯ぎしりをするー


”篤弘”として生きるのかー

”清美”として生きるのかー。


ヤスとまた好き放題、裏社会で暴れ回りたいー。

でも、それをすれば”清美”として生きていくことはもうできないー。


しかし、かと言って、英輔と秀太と共に

清美としてー、優しい母親として生きていくのは難しいー

”俺が俺である”ことを思い出してしまったし、

完全に、今まで通りとはいかないー。


今だってそうだー。

胸を見下ろすだけで興奮してしまうし、

自分の口から清美の声が出るだけで興奮してしまうー


もう、元に優しい母親には戻れないのだー。


「ーーーーー」

清美はイライラした様子で髪を掻きむしると、

少ししてからため息をついて、

”ヤス”に電話を掛けたー。


”おぅ、ヤスかー?

 今日も、会えるかー?”


とー。


そしてーー

ヤスと会い、また”欲望の限り”を尽くしたー。


しかしー、今日は”昨日”とは違いー、

夕方には切り上げると、帰る準備をし始めるー。


「へへー、兄貴ー今日は早いっすね?」

ヤスがそう言うと、

清美はニヤリと笑みを浮かべながら言葉を口にするー


「ーククー、今まで通りの”清美”のフリをしてー、

 なんかー…こいつのバカな夫と子供をー

 悪だくみに利用できないかと思ってなー。」


清美がそう言うと、

ヤスは少し間を置いてから

「さっすが兄貴!昨日まで大事にしていた夫と子供にまで

 そんなことを考えるなんて、やっぱ極悪人っすね!」

と、笑ったー。


”兄貴”はいつも”俺は極悪人だ”と、言っていたー。


そんな言葉を返すかのようなー、誉め言葉ー


「ククー…だろ?」

清美はそう言うと、ヤスと遊んでいたアジトから外に出るー。


ため息をつく清美ー。


だがー、”兄貴”と別れたヤスもまた、少し複雑な表情を浮かべながら

静かにため息をついていたー…



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


数年間、自分であったことを忘れて暮らしたあとに、

急に前の自分のことを思い出したら…


もし私だったらどっちを選ぶのか…を、

ちょっと考えてみましたが、

なかなか難しい問題ですネ~笑


皆様だったら、どうしますか~?笑


続きはまた次回デス~!

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