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「ーーふふふふふふ…♡ 今日も可愛いー」

自分の髪を、嬉しそうに触りながら、

鏡の前で笑みを浮かべるー。


一見すると、ごく普通の可愛らしい美少女ー。

しかしー、彼女は彼女であって、彼女ではないー。


「ーーーー」

ピキッ、と後頭部のあたりに亀裂が入りー、

彼女は笑みを浮かべながら、

自分の後頭部のあたりを触ると、

まるでー”着ぐるみ”を脱ぐかのように”自分自身を”胴体のあたりまで

脱いでいくー。


そしてー、

信じられないことに彼女の中から、

男が姿を現したー。


顔色が悪く、不健康そうに見せるやせ型の中年男性ー。


そうー

彼女はこの男によって

身体を”皮”にされて、心も支配されてしまっていたのだー。


「ーーククククー

 まさか、こんなことが現実に出来るなんてー…」


美少女の中から出て来た男ー、

柿原 和雄(かきはら かずお)は、笑みを浮かべるー。


柿原和雄は、1か月ほど前までは、

ただの”冴えないおじさん”だったー。

特別優れたスキルを持つわけでもなく、容姿にも恵まれずー、

小さい頃に容姿のことでいじめを受けたことがきっかけでー、

人間関係も苦手ー。


そして、会社では窓際に追いやられて、

若手の社員からも陰口を叩かれるようなー、

そんな日々を送っていたー。


”いつ”リストラされるかも分からないー。

それでも、生きるために働き、働くために寝る、という

そんな生活を繰り返さざるを得なかったー。


しかしーー

ちょうど1か月前ぐらいだろうかー。

あの、雨の日の夜ー、

”そいつ”は現れたのだー。


最初はただの不審者だと思ったー。

だが、その男は和雄に”力”を与えてくれたー


”人を皮にして”支配する、力をー。


その力を使い、和雄はこの子の身体を乗っ取りー、

今、こうして女子高生ライフを送っているのだー。


「ふふふふー

 ”わたし”可愛すぎでしょ」

鏡に向かって自信に満ち溢れた笑みを浮かべるー、

森山 美咲(もりやま みさき)ー


彼女は元々、和雄に皮にされて乗っ取られる前は

大人しくて、優しいー、そんなタイプの子で、

可愛い容姿ながら、本人は自分に自信を持つようなタイプではなくー

”自覚のない美少女”という感じの子だったー。


しかし、今の美咲にはそのような面影はないー。


鏡に映る自分に酔いー、

自分を抱きしめるようなポーズをしながら

「今日もーー綺麗ー♡」と、微笑んでいるー。


謎の男から得た力を使い、通勤時によく同じ電車で見かけた

美咲を皮にして乗っ取った和雄は変わったー。


”美少女”になったことで、

みるみるうちに、自分に自信を持つようになりー、

自分に自信を持つようになったことで、

”冴えないおじさん”に過ぎなかった自分自身の

行動にも積極さが生まれたー。


”そうだー俺は、元々美少女に生まれるべきだったんだー”

最近では、そんな風にさえ思い始めてー

すっかり美咲として、女子高生ライフを送っているー。


”容姿が悪かったから”ー、

つまらない人生を送っていたんだー…。

今の和雄は、そんな風にさえ思っていたー


「おはよ~~~!」

登校した美咲が友達に声をかけると、

友達が嬉しそうに美咲のほうを見て、話しかけて来るー。


”ふふふふー…人気者って最高ー”


自分の学生時代は、周囲から”ばい菌”扱いされて、

いじめを受けたり、無視されたり、

女子からも”気持ち悪い”と言われるような散々な有様だったー。


それがーー

今ではーーー


「ーーかわいいってだけで、これだもんねー…」

休み時間ー、

女子トイレの鏡の前で笑みを浮かべながらそう呟く美咲ー


”中身”は、同じ”和雄”なのにー

見た目が違うだけで、こんなにもチヤホヤされるー

こんなにも、周囲から愛されるー


その快感を、和雄は知ってしまったー。


自分の学生時代とー、

今の、”美咲”を乗っ取って楽しんでいる学生時代を重ねー、

和雄は少しだけ腹立たしい気持ちになるー。


自分だって、決して小さい頃は

コミュニケーションが苦手だったわけではなかったー。


なのにー、いじめられてー、

どんどん人付き合いが苦手になっていたー。


それなのにー

”可愛い”ってだけでー、人がどんどん寄ってくるー。


その現実に無性に腹が立つー。


けどーー

それ以上にーーーー


「ーホント、最高ーー♡」

美咲は、本来の美咲が絶対に浮かべなかったような笑みを

浮かべると、そのままトイレの外に出て、

廊下を歩きだしたー


”人気者の可愛い可愛い女子高生なわたし”に

酔いながらー、今日も美咲は楽しい学校生活を送ったー。



がーーーー

その日の夜のことだったー。


”ーーー久しぶりだなー”

「美咲」のスマホに”男”からの電話がかかって来たー。


和雄が”誰”を皮にしたのかは、

男には教えていないし、知らないはずだったが、

どういうわけか、男は美咲のスマホに電話を掛けて来たのだー。


「ーーー…どうして、この電話がー?」

美咲が表情を歪めながら言うと、

男はその質問には答えず、淡々と言葉を続けたー。


”どうだ?

 俺の言った通り、人生を逆転できただろう?”


男のそんな言葉に、美咲はクスッと笑うと、

「ーー本当に、ありがとうございますー」と、嬉しそうに返事をするー。


男が何故、”美咲”のスマホに電話を掛けて来たのかは

分からなかったが、とにかく、和雄からすれば、

”自分の人生を大きく変えるチャンス”をくれた、この男には感謝しているー。


「俺のようなおっさんが女子高生になってー

 ”見える世界”が変わりましたよー

 今まで俺が見ていた”この世界”はー

 そうー、曇った眼鏡越しに見ていた世界だったと

 思い知らされましたー


 今はーほんっとうにーーー最高です 

 ふふー」


美咲が嬉しそうに言うと、

男は”それはよかったー”と、

穏やかな口調で言葉を口にしたー。


この男はあの日ー

”お前のそのつまらない人生を逆転しないかー?”と、

和雄に”力”を与えてくれたー


そのおかげでー

和雄の”今”があるー。

”和雄”というつまらない人生を捨ててー

”美咲”という最高の人生を手に入れたのだー


”一つ、頼みがあるー”

少し間を置いてから

男はそう言うと、美咲の返事を聞く前に

言葉を続けたー


”明日の朝ー

 駅の北口のコインロッカーから荷物を回収して貰いたいー。

 それを指定する場所で、そこにやってくる男に渡してもらいたい」


男のその言葉に、美咲は「え?」と、首を傾げるー


「そ、それはどういうー?」

美咲が困惑すると、

男は呟くー


”なに、お前は中身のことを気にする必要はないー。

 お前はただ、相手の男にそれを渡してもらえればいいんだー”


その男の言葉に、美咲はすぐに

「そ、それってー…ど、どういうことですか?」と、不安に思いながら

言葉を口にすると、

男は、先ほどまでの穏やかな口調ではなくー、

厳しい口調で今一度、ハッキリと言葉を言い放ったー。


”お前が中身のことを気にする必要はないー。”


その言葉は”詮索するな”と、言わんばかりの口調だったー。


「ーーー……で、でもーーー… え…」

戸惑う美咲ー。


「ーーーー」

男は、そんな美咲の様子に、少しだけ笑うと

静かに言葉を口にしたー


”お前の正体、バラしちゃうぞー?”

とー。


「ーー!!!!」

美咲が表情を歪めるー


”いいのか?”クラスの人気者”の中にはー

 お前のような、冴えないおっさんがいる、と知られてもー?”


 せっかく手に入れたその美少女ライフはもう続けられないしー、

 お前自身もー、どうなることやら?”


男が脅すような口調でそう呟くのを聞き、

美咲は震えながら

「ーお…俺を…脅すんですか?」と、不安そうな表情を浮かべたー。


”ははー、脅すとはー。人聞きの悪い。

 私はただ、”お願い”をしているだけだー。

 どうかな?

 お金を届けるだけでいい。簡単な仕事だろう?”


だがー、美咲は首を縦に振らなかったー


「ーーーーー何も見返りはいらないとあの時に

 言ってたはずですー。

 それに、俺は明日も学校がありますー

 そんなことをする時間はありませんー

 これで、失礼します」


美咲は早口でそう言い放つと、

そのまま電話を一方的に切り、苛立ちの表情を浮かべたー


「くそっ!もうー、俺は…俺はおっさんじゃないー!

 俺はー、いいや、わたしは可愛い可愛い女の子なのよ!」


荒々しい口調でそう叫ぶと、美咲は「ふん」と言いながら

ベッドに投げつけたスマホを拾おうと立ち上がるー。


”ーあの男が何をしてきたって無駄だー

 誰も”こんな可愛い子の中におっさんがいる”なんて信じやしないー”


美咲を着ている和雄はそんな風に思うー。

自分は”美咲”だー。

仮に男が正体をばらそうとも、

”この人、何言ってるの?”みたいな振る舞いを貫けばー

”どちらが有利か”ー


「ーふふふ…みんなは可愛いわたしのことを信じてくれるに

 決まってるじゃないー」


美咲はそれだけ呟くと、笑みを浮かべながら

スマホを拾おうとしたー。


がー、

その時だったー


ずるっー…


「ー!?」

後頭部のあたりで、突然変な感触がしたー。


「ー!?!?!?」

慌てて後頭部のあたりに手をやると、

いつの間にか”美咲の皮”が開いて、

頭の部分がめくれそうになっていたー。


「ーーちょ!?なんだこれー!?」

”美咲”の皮が勝手に脱げそうになるー。


慌てて頭を押さえて、美咲の皮を再びちゃんと着ようとするもー、

今度は、ズボンがズルズルと落ちるかのように、

美咲の下の部分が脱げていくー


「ーーお、おいっ!なんだこれ!?」

脱げそうになった美咲の皮を、慌ててちゃんと身に付けようとする和雄。


けれどー

勝手にペロッと、めくれるようにして美咲の皮が

垂れ下がっていきー、

ついには、和雄の姿が露わになったー


「ーーー!」

それと同時に、電話がかかって来るー


和雄は、慌てて電話に出ると、

再び”男”の声がしたー


”ーー”お願い”聞いてもらえる気になったかな?”

男が何食わぬ声で言うー。


「ーー…く…き、急に皮が脱げたのはーーー」

和雄がそう言うと、

男は”それはどうだろうな?”と、笑いながらー

”だが、お願いを聞いてくれるのなら、お前は美少女ライフを

 送り続けることができるー。”

と、言葉を続けたー。


「くそっー…」

小声で呟く和雄ー。


明らかにこの男が何かしたのだー


遠隔で”美咲”の皮を着れないような状態にすることが

できるのかもしれないー。


そう思いながら

「ーーー俺の美少女ライフを邪魔しないと、約束してくれますか?」と、

和雄が歯ぎしりしながら言うと、


”あぁ、もちろんだともー。お願いを聞いてくれれば

 お前はずっと、美少女ライフを送り続けることができるぞー。

 安心しろー”


と、男は電話の向こうで、そう言葉を口にしたー。


「ーーーー俺が逮捕されたりすることはないでしょうね?」


”はははー、お前が逮捕されることはない。安心しろー”


男は、そう言い切ったー。


「ーーーーーー…」

和雄は考えるー。

男の”お願い”が違法なものかどうかも

そもそも分からないし、万が一犯罪行為で、

万が一、それがバレるようなことがあったとしても、

自分は”美咲”の皮を着ているー。


最悪の場合は、不本意だが、美咲の皮を脱ぎ捨てれば

自分に罪が及ぶことはないだろうー。


「ーーー…分かりましたー」

歯ぎしりをしながら、和雄がそう言い放つと

男は”ありがとうー。話が分かる男で助かるよ”と、言いながらー

”では、その皮を再び”着ることができるように”してやろう”と、

言葉を続けたー。


「ーーー…!」

勝手に裂けるように脱げてしまった美咲の皮が、

再びちゃんと着られるようになり、和雄は安堵するー。


”美咲”に戻った和雄は、

身体を震わせながら

「わたしはー…わたしはもう、美咲なのー…

 可愛くて、人気者の美咲なのー」

と、自分に言い聞かせるように言葉を口にしたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


マスクをしながら、”駅”のコインロッカーから

荷物を回収ー。

言われた通りに、”取引場所”に向かい、

そこに現れた男に荷物を手渡したー。


”ーご苦労だったなー”

男からの電話に、美咲は「もう遅刻するから、これで失礼しますよ」と、

慌てた様子で電話を切ると、

そのまま学校へと向かったー。


「ーーーーうんー今日も、わたしってば、可愛いー♡」

学校の昇降口付近の水道の鏡で、

自分に酔うようなポーズをしながらそう呟くと、

美咲は今日も、教室へと向かっていくー。


”可愛いわたし”に、酔いしれながらー…。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


他人を着て、欲望のままに楽しんでいた彼に

不穏な空気が…★


怪しい人物から貰った力を使うのは、

どんな力にせよ、危険ですネ~笑


続きはまた次回デス~!

今日もありがとうございました~!☆

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