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「ーーお、バイト募集中だってー」

友人と二人で歩いていた男子大学生が、そんな言葉を口にして

立ち止まるー


「ーおいおい小野田(おのだ)ーその店、メイドカフェだぜ?」

呆れ顔でそう呟く友人ー。


だが、メイドカフェのバイト募集の張り紙を前に立ち止まった

小野田 公泰(おのだ きみやす)は、

「いやいや、松本(まつもと)見ろよー」と、

バイト募集の紙を指さしながら、友人の松本 文也(まつもと ふみや)を

手招きするー。


「ーーなんだよー女装でもしてメイドになりたいのか?」

冗談を口にしながら文也が公泰の方に近付いてくると、

公泰は「いや、ほら見ろよ」と、もう一度バイト募集の紙を

指さしたー。


「なになに」

文也は少し呆れ顔で、バイト募集の紙に視線を向けるー。


するとそこには”男女問わず”と書かれていたのだー。


「ーあ~…こりゃあれだな、店長とかキッチンとか

 その辺の募集だろ?」


文也が冷静にそう言い放つと、

公泰は「んなこた分かってるよ」と、笑うー。


「ーーいや、ほら、俺のバイト先、今度閉店するだろ?

 だから、ちょうど新しいバイトを探さなくちゃって思ってたしさ」

公泰がそう言葉を口にするー。


文也は「あぁ、なるほどなー」と、納得した様子で頷くー。

確かに、バイト先が閉店になるとかいう話はこの前聞いたー。


「へへー…次のバイト先、ここにするぜー

 メイドカフェならー…もしかしたら可愛い子と

 仲良くなれるかもしれないしー」


ニヤニヤしながら呟く公泰ー

明らかに下心があるー。


そんな公泰を見ながら、やれやれという様子で首を横に振ると、

そのまま文也は「ほら、そろそろ行くぞー」と、公泰に声をかけてから

歩き始めたー。


もう一人、別の友人もこの先の待ち合わせ場所で待たせているー。

あまり、モタモタするわけにはいかないー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


後日ー


メイドカフェ”ファンタジー・ヘブン”に電話連絡を入れ、

面接の約束を取り付けた公泰は、

ファンタジー・ヘブンの前にやってきていたー


店内に入ると、公泰をお客さんだと勘違いした

ツインテールのメイド・天音(あまね)と、

ショートヘアーのメイド・リリが嬉しそうに

公泰を出迎えてくれたー


”うわっ…か、可愛すぎるー

 へへ、こんな子たちと仕事できるなんて最高だなー”


公泰は下心が顔に出ないように気を付けながら、

「あ、すみませんー。実は今日はバイトの面接でー」と、

さわやかな雰囲気で言葉を口にしたー


「チッ」

突然、天音が舌打ちしたような気がしたー。


”えっ!?”

とても、そんなことしそうに見えないぐらい可愛い子なのだが、

可愛いだけでは中身は分からないし、そういう子なのかもしれないー。


もう一人の”リリ”と名札に書かれているほうのメイドが、

「あ、ごめんなさい~!面接でしたら店長のお部屋に直接ご案内しますね」と、

公泰を案内し始めるー


”みんな可愛いなぁ…”

店内で接客中の他のメイドたちの姿が視界に入りーー

そんな風に思いながら、リリの後ろについていく公泰ー。


やがて、店長の部屋についたのか、リリが部屋をノックし、

店長に対し”面接の方がお見えになりました”と、言葉を口にするー


”はいー、じゃあ、入って貰ってください”

店長は男のようだー。

丁寧な口調の店長ー。


リリはその言葉を聞いて「ーこちらの部屋になります」と、

公泰のほうを向いて言い放つと、頭を下げて、そのままお店の方に

戻って行ったー。


「ーーありがとうございます」

リリに対してそれだけ言うと、公泰は深呼吸をしてから

部屋の扉をノックしー、面接の礼儀作法に従って、

そのまま部屋へと入室するー。


中にいたのは、優しそうな雰囲気の30,40代ぐらいの男だったー。


穏やかな感じの笑みを浮かべていてー、

それでいて、下心も感じさせないー。

そう”紳士”とでも言えば良いのだろうかー。

”良き上司”になりそうな、そんな感じの人物だー。


「店長の水島(みずしま)ですー

 本日はよろしくお願いいたします」


柔らかな言葉遣いで、そう言い放ちながら頭を下げる水島店長ー。


公泰も、すかさず名前を名乗り、挨拶をすると、

そのまま面接は始まったー。


面接は、とてもフレンドリーな感じで、

和気あいあいとした、そんな時間だったー。


人前で愛想よく振る舞うのが得意な公泰はー、

大体の場合、面接では相手に好印象を与えることが多いー。

公泰自身も、”俺は面接が得意だ”と、自分でそう自負しているー。


やがてー、”よくある質問”を無難に答えながらー

雑談もしつつ、面接は終わりを迎えようとしていたー


「最後に、何か質問はありますか?」

水島店長がそう尋ねて来るー。


だいたい、面接の最後の方に聞かれる定番の質問だー。


「いえー。色々お話下さって、ありがとうございました」

公泰はそう言いながら頭を下げると、

水島店長は履歴書の方に何かを記入しながら

「ーじゃあ、小野田くんー。これから、よろしくお願いします」と、

即決で”採用”の言葉を口にしー、

握手を求めて来たー。


「えっ!?ご、合格ですか?」

公泰が驚くと、水島店長は「はいー。これからよろしくお願いします」と、

今一度そんな言葉を口にしたー。


「あ、あ、ありがとうございます!」

求められた握手に応える公泰ー。


だがー”問題”はこの先だったー。


「ーじゃあ早速、今日から小野田くんには

 このお店のメイドとして働いてもらうことになりますがー」


「ーーー???」

公泰は、思わず首を傾げたー。


”ん?”

今、俺は何か変な言葉を聞いたようなー


そう思いながら、

水島店長のほうを見つめるー。


「うちの店のメイドさんは、みんなシフト制で勤務をしているので、

 シフトの希望があればーー」


説明を続ける水島店長ー。

その口ぶりは、まるで公泰がメイドとして働くかのような

口ぶりだー。


「ーえ、え?ちょ、ちょっといいですかー?」

公泰が、水島店長の言葉を申し訳なさそうに遮ると

水島店長は「どうかされましたか?」と、穏やかな笑みを

公泰に向けるー


「ーあ、あの…さっきから”メイド”の説明をされているみたいですけどー

 お、俺、男ですよー?

 俺はーー…その、キッチンとか、スタッフ的な仕事だと

 思ってたんですけどー…?」


公泰はそこまで言うと、何だか少しだけ気まずくなり、

「ーあ、あの…俺が男だってことは分かってます…よね?」と、

控えめな口調で確認したー。


「ーーはははは それはもちろんですー。

 小野田くんを女の子と間違える人は、まずいないでしょう」


水島店長は笑いながらそんなことを口にすると、

「ですよね~」と、安心した様子で公泰は言い放ったー


「ーーー…」

そして、顔を上げるー。


「ーーえ…それでー俺の仕事は…」

公泰が困惑しながら、再び聞き返すと、

水島店長は「メイドです」と、即答した。


「えーー…お、俺、男ですよ?」

公泰は、また、そんなことを口にするー。


「ー男女問わない、と書いておいたと思いますが」

笑う水島店長ー


「ーーあぁ、はい、そ、それは見ましたー

 ってー、俺がメイド服着るってことですか?」


「はい」


その言葉に、公泰は”メイド服を着る自分”のことを考えるー


「ーい、いやいやいや、どこにそんな需要があるんですかー!?

 い、いや、あるかもしれませんけど、それはさすがにー!」


公泰が慌てた様子でそう言うと、

水島店長は「安心してください。店内にも”男”のメイドは

たくさんいますよ」と、世間話でもするかのように、穏やかに呟いたー


「ーーは…はい!?」

公泰は困惑するー。


店長の部屋に来るまで”男のメイド”は見ていないー。


「ーーー小野田くんを案内してきたリリちゃんにー、

 今、お店にいる天音ちゃんもー”男”ですよ」


その言葉に、公泰は頭に?をたくさん浮かべるー。


「ーーえ…???え…????」

このメイドカフェは女装カフェか何かか?

いやー、でもさっきの子は二人ともとても女装には見えなかったー


いったいー?


「ーーはははー 

 まぁ、説明するよりも、見た方が早いでしょう」

そう呟くと、水島店長は立ち上がり、「奥の部屋へどうぞ」と、

店長のいる事務室のさらに奥の部屋へと、公泰を案内したー。


そこにはーーー

”メイド服”がズラリと並べられていたー


いやー


「ーーん…?」

表情を歪める公泰ー。

よく見ると、その部屋に並べられていたメイド服は

何だか様子がおかしいー


「ーーここにある”メイド”を着て、小野田くんには

 仕事をしてもらいますー」


「ーメイドを着る…ですか?」

公泰が思わず聞き返すー。


「はい、そうですー。

 小野田くんにそのままメイド服を着なさい、と言っても

 無理があることは私も承知していますー


 ですが、ここにある”メイド”を着ればー

 小野田くんも美少女になることができます」


水島店長が丁寧な口調で言うー。


「ーー…こ、これはー…」

そんな言葉を聞きながら、公泰はその部屋に置かれていた

”メイド服”ではなく”メイド”を手にするー。


そうー

よく見ると”メイド服”ではなく、

人間の顔のようなものや、髪のようなものまで一体化しているー

”メイド服姿の人間の着ぐるみ”のようなものが

その部屋には大量に置かれていたのだー。


「ーーー驚きましたか?

 それを着ることで、小野田くんは、さっきお店で小野田くんを

 案内してくれた子のように”メイド”になることができるんです。

 可愛いメイドに、ねー」


その言葉に、公泰は驚きながらも

「た、試しに着てみてもいいですか?」と、水島店長に確認するー


「ええ。もちろん。どうぞー」

水島店長にそう促されて、公泰は”メイドの着ぐるみ”のようなものを

身に着けるー。


”でも、さっきお店にいたメイドの子はー

 とても着ぐるみを着ている感じには見えなかったけどなー”


そんな疑問を感じながらも、”メイドの着ぐるみ”を着終えるとー

妙に身体に食い込むー…いやー、身体と一体化するような、

そんな不思議な感覚を覚えると同時にー、

その着ぐるみーいいや、”身体の中”に自分が入り込んだようなー、

そんな感触を覚えたー


「えっ… えっ…?」

”メイドの着ぐるみ”を着た公泰は驚くー


感覚的には”着ぐるみを着ている”という感覚ですらなくー、

”その人物そのものになった”

そんな印象を受けるー


「な、なんだこれ… えっ…こ、声までー…

 えっ?!」


口元を押さえながら”メイドになった公泰”が

声を上げるー。


「ーーーすごいでしょう?

 その状態なら、小野田くんはどこからどう見ても、

 美少女ですー」


姿見を指さし、自分で確認するように水島店長が促すー。


「うわぁ…す、すげぇ…」

姿見の前に立った公泰は、自分が美少女そのものになっていることに

驚きー、さらには胸に手を触れるー。


”胸を触られる感触”まで感じたー


「な、なんだこれー…

 え…?ど、どうなってるんですかー?」


メイドの着ぐるみを着たまま、公泰が水島店長のほうを

振り返って不思議そうに言うと、

水島店長は「うちの”最新鋭の技術”で作り出した、メイドスーツ…

と、でも言っておきましょうかー」と、笑みを浮かべるー


「ー着るだけではないー

 声や、感覚までを再現しー

 完全にそのものになることができるー

 そういう、夢の代物です」


水島店長の説明を聞き終えると、

後頭部のあたりを触りながら「これ、脱ぐにはどうすれば?」と

確認するー。


すると、水島店長は丁寧に”脱ぎ方”も教えてくれたー


”メイドスーツ”を脱ぐと、元の感触が戻って来てー

いつもの自分に戻るー


「す、すごいー…

 え…す、好きな子…っていうか、メイドスーツ、選んでいいんですか?」


目を輝かせながらそう確認する公泰ー。


「ええ、もちろん」

水島店長のその言葉に、公泰は色々な”メイドスーツ”を試着してー、

その中からお気に入りを見つけ出しー、

ようやく、”自分の着るメイドスーツ”を決めたー。


「ーでは、今日から小野田くんは、このお店の中では

 ”萌絵(もえ)”として働いてもらいますー」


水島店長が言うー。


公泰は嬉しそうに”萌絵”として、「ありがとうございますー。頑張ります!」と、

頭を下げたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


メイドカフェ”ファンタジー・ヘブン”で、

萌絵として働き始めた公泰ー。


勤務時間後には”専用の部屋”で、

”自由に美少女ライフ”を楽しむこともできるようになっていて、

公泰は”萌絵”として、一人で初めての絶頂を経験したー。


”まさか、女としてイケるなんてー、どうなってるんだこれー?”


建物の2階部分は寮のような感じになっていて、

”ここで暮らさずとも”好きな時に一人ひとり使っていい部屋が

用意されているという好待遇ぶりだったー。


「ーーそういえば、バイト募集してたってことはー

 こんなすごいところ、辞めた人がいたってことですよね?」


公泰が、ツインテールのメイド・天音に聞くと

「そうよ」と答えるー。


天音はツンツンした感じの子でー

”人前では絶対にメイドスーツを脱がない”ため、

その正体は不明だが、

水島店長曰く、この子も”公泰と同じ”らしいー


「やめたのは、麻紀(まき)って子ねー

 その子は普通の”女の子”だったんだけど」


天音はそれだけ言うと、

「それじゃ、お疲れさま」と、シフトを終えた公泰に対して

そう言いながら2階部分から1階へと降りていくー。


最初に案内してくれたリリや、他のメイドとも仲良くなりー、

充実した生活を送る公泰ー。


もちろん、大学に行く時や、自分の家に帰る時にはここを留守にしているが

最近では、暇なときは”ファンタジー・ヘブン”で過ごしているー。


唯一、

”香澄(かすみ)”というメイドだけやたら自分のことを

睨んでくるのが気になるがー

それ以外に問題はないー


聞けば香澄はこの店で現在勤務しているメイドの中で

数少ない”女子”なのだと言うー。


「ーーーーよし、一旦家に帰るか」

この日のシフトを終えた公泰はそう呟くと、

そのまま家へと帰って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”地下1階ー”


「ーーた、たすけてー…」

少し前に”解雇されたメイドの麻紀が、

表情を歪めるー。


退職のために、荷物を取りに来た麻紀は、

この地下室に呼ばれていたー。


「ーー君には”メイドスーツ”になってもらうよー

 今まで、ご苦労様」


水島店長が、そう言い放つと、麻紀に”人を皮にする注射器”を打ち込むー。


麻紀は、悲鳴を上げながら”皮”になっていくーーー


「クククククーーー」


”メイドスーツ”

その正体はー…

人を皮にする注射器で皮にされた人々ー。


しかし、そのことを知る人間はーー

水島店長と、皮にされた被害者たち以外にはーー

ほとんど、存在しないー


「また新しいメイドスーツが出来たー」

笑みを浮かべる水島店長ー。


公泰はまだ知らない

水島店長の恐ろしい本性をー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


何気なく応募して採用されてしまったバイト先が

恐ろしいバイト先だった…!

そんなお話デス~!


気付かないままのほうが、幸せかもしれませんネ…☆!

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