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とある王国ー


第2王女のアイリーンは、何でも器用にこなすことができる天才肌の

お姫様ー。

その美貌は宝石のように美しく、民衆たちからは

”アイリーン様のお姿を見ることができた者は幸せになれる”などと

言われるほどー。


それでいて、アイリーンは自分の能力や容姿を自慢するようなことも、

気取るようなこともなく、誰にでも優しく、穏やかな性格の持ち主だったー


だがーー


「ーアイリーン様がいなくなった!」

「ーアイリーン様を探せ!」


ある日ー、

森に出かけていたアイリーン姫が突然姿を消しー、

護衛の騎士たちが困惑の声を上げながら森の中を探していたー


「ふふふー…ごめんなさいー」

アイリーンは、物陰からそんな様子を見つめながら笑みを浮かべるー。


美貌に、能力に、人格ー

全てを兼ね備えていると言ってもいいアイリーン姫ー。


だが、彼女は”姫”という立場には決定的に向いていないものを

持っていたー


それがー

”好奇心”ー

何事にも好奇心を抱いてしまい、時に大胆な行動に出てしまうこともあり、

それが家臣らを悩ませているー。


今日もー

そうだったー。


森の奥地に伝説の宝がある、という噂を民から聞いた

アイリーン姫は居ても立ってもいられず、

家臣たちにお願いして、こうして森にやってきていたのだー。


だがー、家臣と一緒だと行動範囲にはどうしても制限が

生まれてしまうー


そこでー

こうして、逃げ出したのだー


「ーーー」


ガサッ!


その時だったー


背後の茂みが揺れて、ハッとして振り返るアイリーン姫。


するとそこにはー

”いかにも村人”という格好の男がいたー。


「ーーーあ…」

随分立派な身なりの女性だなー、と思いつつ、辺境の村の男・ボブが

アイリーン姫を見つめているとー

「あのーすみませんー…わたし、この辺りで見つかったという

 伝説の宝なるものを探しているのですけれどー…

 何か、心当たりはありませんか?」と、

アイリーン姫が丁寧に、ボブに対して質問を投げかけたー


ボブは「宝? えぇー…あ~~さっき、あっちでそれらしきものは

見たけどー」と、頭を掻きながら言うー。


「え?ほ、本当ですか!?」

アイリーン姫が嬉しそうに叫ぶー。

「ーーー宝箱のようなものがー」

ボブがそう答えると、アイリーン姫は最後までボブの話を聞かずに

そのままボブが指さした方向に向かって走り出したー


「あ!ちょっ!ーでも宝箱のあった方向は、足場が悪くてーーー!」


ボブが慌ててアイリーン姫に向かって叫ぶー。


だが、もはや、アイリーン姫の耳にボブの言葉は

入っていなかったー


「ーなんなんだあの娘はー」

森にキノコ狩りをしにきていたボブは、頭を掻きながらも、

「ーーーまぁでも、あんな娘を一人にしておくのも危ないしー」と

ため息をつきながら、アイリーン姫が向かった方向に向かって

歩き出すー。


その直後だったー


「ーきゃあああああああああっ!」


アイリーン姫の悲鳴が響き渡るー。


「ーなっ…」

ボブが慌てて駆け付けるとー、

森の中に生息している怪鳥に、アイリーン姫が囲まれていたー


「ーだから言わんこっちゃない!」

ボブはそう呟きながら、狩りに使う斧を手に、

怪鳥を追い払うー。


怪鳥、と言っても特別強力な魔物ではなく、

一般の村人でも追い払うことができるレベルの存在だー


「ーあ、ありがとうございますー」

アイリーン姫が、心底驚いた様子でそう言葉を口にすると、

ボブは「全くーお嬢ちゃん一人でこんな森の奥に進もうとするなんてー」と、

”やれやれ”という様子で言葉を口にするー。


「ーーで、お嬢ちゃんはどこの村の者だい?

 このあたりじゃ、見かないけどー」

ボブがそう言うと、アイリーン姫は、「あ、あの~…そのー」と、

少し照れくさそうに自己紹介を始めたー


「わ、わたしはそのーーー

 ア、アイリーンと申しますー」


アイリーン姫がそう呟くー。


辺境の村に住むボブは、王国の王女たちには会ったことがなく

姿もハッキリとは知らなかったがー、

第1王女”グレース”

第2王女”アイリーン”

第3王女”リリー”の名は知っていたー。


「ア、アイリーン…?」

ボブが表情を歪めると、すぐに「ま、まさかー第2王女のー」と、叫ぶー。


アイリーン姫は「は、はいー」と、照れくさそうに微笑むー。


するとボブは突然、それまでの態度を嘘のように翻して、

アイリーン姫の前に土下座したー


「し、し、し、し、失礼いたしましたぁ!」

まさか”王女”がこんなところにいるとは思わなかったー


ボブが必死に「無礼をお許しください!」と叫ぶとー、

アイリーン姫は「無礼だなんてー…全然気にしてませんからー」と、

笑いながら言うー


「い、いや、し、しかしーでも、なんでこんなー?」

ボブがそう言うと、

アイリーン姫は秘宝の噂を聞きつけてこの森にやってきたことを

ボブに説明し、宝箱の所まで案内してほしいと、改めてボブに

お願いをするのだったー


「ーーお、お一人でいらっしゃいますか?」

ボブが困惑しながら尋ねるー。


「えっとー…その、護衛は居たんですけどー…」

アイリーン姫は苦笑いしながら、護衛から逃げて来たのだと説明したー


「ははぁ…そ、そうですかー」

ボブはそう言いながらも、”確か宝箱を見た場所は近くだったはず”と

思い、「分かりました」と頷くー。


ここでアイリーン姫を一人にして立ち去ることもできたが、

人情に満ちた性格のボブにはそのようなことはできなかったし、

アイリーン姫がもし、ここで死んでしまったりでもしたら

後味が悪すぎるー。


そう思いながら、ボブはアイリーン姫に”こちらです”と、声を掛けて

宝箱を見かけた場所にまで案内し始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しばらくしてー

ようやく宝箱の前にたどり着いたボブは、

「こちらですー姫様」と、アイリーン姫を宝箱の前まで

案内したー


この辺りには大した魔物はいないー。

ボブの力でも十分に撃退できるー。


だが、王女様がいるとなれば話は別ー。

ボブは今まで感じたことのない緊張を覚えながら

アイリーン姫のほうを見つめるー


「ー本当に、ありがとうございますー」

姫とは思えないほどの物腰の低さと礼儀正しさー。


確かー

現国王のローランドは高齢だったはずー。


そして”国王様の死後、後を継ぐとすればアイリーン様だ”と、

他の村の人間がよく口にしていたことを思い出すー。


”なるほどなー…確かに素晴らしいお方だー”

ボブはそう思いながら、

”第1王女のグレース”のことは、隣の村の男が

散々”生意気な女”と、悪口を言っていたことを思い出すー。


そうこうしているうちに、アイリーン姫は

「開いても、よろしいでしょうか?」とボブに確認してくるー


「えぇ、もちろんー。どうぞー」

ボブが笑いながらそう答えると、

アイリーン姫は期待に胸を膨らませながらー

宝箱を開けたー。


するとーーー

謎の光が溢れ出しー…


ボブがすぐに「姫様!」と、身の危険を感じて、アイリーン姫の腕を

掴んで、宝箱から引きはがそうとするー


しかし、間に合わずに、二人はその光に包まれてしまったー。


「ーーだ、大丈夫ですか 姫様!」


すぐにそう叫ぶボブー…

いやーー、アイリーン…。


アイリーンが、「大丈夫ですか 姫様!」と、叫んだのだー


「へ…?」

一方のボブは、きょとんとした顔で、目の前にいるーーー

アイリーンを見つめているー。


そして、叫んだー


「わ、わ、わたしがもう一人ー… 

 えっ…!?

 あ、あなたはーー…どちら様ですかー?」


ボブがそう呟くと、

すぐに「って、あれー…なんだか、声がー…?」と、

自分の口元を触るー


「ま、まさかー…」

一方のアイリーンは、表情を険しくしながらー

目の前にいるボブのほうを見てー

声を上げたー


「ーーお、俺と姫様の身体がー…

 い、入れ替わってるー!?!?!?」


とー。


「ーーえぇっ!?」

ボブになったアイリーンが叫ぶー。


そうー

二人は、宝箱から発された”謎の光”によって

その身体が入れ替わってしまったのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー入れ替わってしまったものは仕方がありませんねー」


しばらくして、状況を把握したボブ(アイリーン)がそう呟くと、

アイリーン(ボブ)は何度も何度も申し訳なさそうに

謝罪の言葉を繰り返し口にするー。


「ー俺みたいな、冴えないおっさんの身体に姫様をしてしまうなんてー

 本当に、申し訳ありません」


アイリーン(ボブ)がそう言うと、

ボブ(アイリーン)は「そんなに謝らないでくださいー」と、

ボブの顔で微笑むー


”うぉぉぉ…俺の顔なのに、何て神々しいー…!”

アイリーン(ボブ)はそう思いながらー

ボブ(アイリーン)の言葉の続きを聞くー。


「ーーあの…少し提案があるのですけれどー」

ボブ(アイリーン)の言葉に、

アイリーン(ボブ)は思わず「えぇっ!?」と言葉を漏らしたー


「し、しばらく、俺と姫様がこのままの状態で生活する!?」

アイリーン(ボブ)が驚きの声を上げると、

ボブ(アイリーン)は「わたし…普通の村人の暮らしに興味があってー」と、

申し訳なさそうに呟くー。


「ーやっぱり、皆さんの生活を直接体験することって大事だと思いますしー

 ほら…わたしの立場だと、村に行ってもー

 どうしても皆さん、気遣ってしまわれるのでー」


ボブ(アイリーン)がそんなことを呟くと、

アイリーン(ボブ)は「いや、いいんですけどー、でも、それはつまりー」と、

困惑しながら、ボブ(アイリーン)のほうを見たー


「はいー。しばらくの間、あなたにわたしの代わりをお願いしたいですー!」

とー。


「ーえぇぇぇぇぇっ!?」


”お、俺に姫様の代わりなんてできるわけがねぇ!”

アイリーン(ボブ)は心の中で悲痛な叫びを上げながらー、

断るわけにも行かず、そのまま渋々と承諾したー。


姫の護衛が来る前に、お互いとして生活するための

情報交換をする二人ー。


やがて、姫の迎えが来て、

不安いっぱいのままアイリーン(ボブ)は、そのまま

王宮へと戻って行ったー。


”壮大な物語”があるとすれば、絶対に”村人A”的な立ち位置でー、

目立つことなく、無難に一生を終えるはずだったボブの

突然の試練が、始まるのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


王宮に帰還するとー

第1王女のグレースと第3王女のリリーがそれぞれ、

第2王女であるアイリーンを出迎えたー


「あら、アイリーン…

 また、騎士たちに迷惑をかけたようねー?

 全く、これだから王女としての自覚がないものは困りますわ」


第1王女グレースは、

プライドが高く、ワガママで、他者のことを見下す傲慢さの目立つ性格ー

見た目からして、いかにもお嬢様な感じの風貌だー。

その性格が災いし、アイリーンとは違い信望は薄くー、

また、学問や政(まつりごと)に対する能力にも乏しくー

”無駄にプライドが高い”そんなお嬢様になってしまっているー


家臣や民衆からも”国王様の後を継ぐのはアイリーン様がふさわしい”という

声はよく聞かれ、それ故にアイリーンに激しく嫉妬し、

嫌がらせを繰り返しているー


「ーーーお…お姉さまー…も、申し訳…ありませんー」

アイリーンのフリをして、必死に答えるアイリーン(ボブ)ー


「ー謝って済む問題じゃありませんわ!

 王女としての自覚を持ちなさい!」


声を荒げるグレース。


そんなグレースを見かねて第3王女のリリーが声を掛けるー


「お姉ちゃんーそのぐらいにしておこうよ~!」

グレースのほうを見て、リリーはそう言うと、

アイリーンに向かって、「お姉ちゃんが無事でよかった~!」と、

嬉しそうに”お帰りなさいのチュ~!”と、アイリーンにキスをして

微笑んだー


「ーー!?!?!?!」

アイリーン(ボブ)が顔を真っ赤にするー


「あ、お姉ちゃんも嫉妬しちゃうよね?

 おかえりなさいじゃないけど、チュー!」


リリーが無邪気に笑いながらグレースにもキスをすると、

「ーし、嫉妬なんかしてませんわ」と、

顔を赤くして目を逸らしたー


第3王女リリー。

無邪気で天真爛漫な性格ー。

しかし、時折とても残酷で、無邪気な性格も

全て”計算された振る舞い”なのではないかと、噂になっているー

がー、その真相はリリー本人にしか分からないー。


アイリーン(ボブ)は「ーご、ご迷惑をおかけしましたー」と、

戸惑いながら頭を下げると、

「アイリーン様も、お疲れでしょうー」と、家来の男が助け舟を

出してくれたのに従い、そのまま自室へと戻っていくのだったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


12月最初のお話は、村人とお姫様の入れ替わり…

厄介そうな姉妹も出てきてもう大変…な、入れ替わりデス~!


もちろん、ボブになったアイリーン姫の

村人生活も描いていきますよ~!☆


今日もありがとうございました~!

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