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”他人に変身する技術”が開発され、問題が起き、法規制された世界ー。


表向きには”変身”は使用不可となっていたものの、

裏ではその技術を悪用する人間が残っており、

”偽人間”問題が度々発生していたー。


ごく普通の女子高生・美晴も、

知らないうちに裏社会で暗躍する男に”変身”されて

自分の姿を勝手に使われてしまい、

身に覚えのないトラブルが起きたり、警察に問い詰められたりと

不安な日々を送ることになってしまうー。


そんな”偽人間”問題の被害者となってしまった美晴の運命はー…?


★前回はこちら↓★

<他者変身>偽人間①~身に覚えのない罪~

2XXX年ー とある会社が、”他人に変身する装置”を完成させたー。 だがー”人間”は過ぎたる力を持てば 必ず暴走し始めるー。 すぐに”他人に成りすまして犯罪行為を起こす”人が出てきたり、 好きな子に変身して、欲望の限りを尽くしたりー、 そういった行為に走る人間で溢れてしまったー。 いつしかー ”成りすまし”は、SNS...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーククーバカなやつーーー」

黒い手袋をはめた美晴が、たった今”絞殺”した男を

山中の一角で突き落としながらそう呟くー。


「ーこの姿を使っていると、すぐにヘラヘラして言いなりになる馬鹿とー、

 小娘だと侮って調子に乗る馬鹿が多くて困るー」


美晴ー…

いいや、美晴に変身している男はそう呟くと、

笑みを浮かべながらー

”本来の自分の姿”へと戻っていくー


男は、かつてこの世界で大問題を起こし、法律で禁じられた

”他人に変身する装置”を裏ルートで手に入れていたー


それを使いー、美晴の姿に変身して、

裏社会で暗躍を続けているー。


もちろん、美晴本人はそのことを知らないし、

美晴に許可など取っていないー。


”使えそうな女”を探すために、高校の下校時間に物色しー、

偶然見かけた美晴の姿を、この特殊な装置で遠方からスキャンー、

今では男が好きな時に美晴の姿に変身したり、

元の姿に戻ったりすることができるー


「ーーー」

再び美晴の姿になると、男は笑みを浮かべながら、

「ー本当に、この姿は”いい道具”だぜ」と、

静かに言葉を呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その数日後のことだったー


「なぁ、これー…秋村じゃね?」

「ーーえぇ…?マジで?やばすぎー」

「美晴ちゃん、こんなことしてたなんてー」


朝、学校に美晴が登校すると、

周囲がコソコソとざわつき始めたー。


先日、”身に覚えのない浮気”の件から、

すっかりクラスで孤立してしまった美晴ー。


それでも、一部の友達は”美晴を信じるよ”と言ってくれていたし、

美晴も負けることなく、学校に登校し続けていたー。


けれどー…


「ーーねぇ、これー」

友達の一人が、美晴の近くにやってきて、美晴にスマホを

見せ付けるー。


友達の一人が見せて来たのはー、

昨晩、駅前の高級時計店で、強盗があったらしくー、

犯人は未だ逃亡中ー、

その監視カメラの映像が警察によって公開されたー…

と、いうニュースの映像ー


美晴は困惑しながらも、その映像を見つめるー。


映像に映っているのは、

三人の強盗ー。


”おい!早くしろ!”

そのうちの一人ー

声からすると、どうやら女だろうかー。

その女が、残りの二人に向かってそう叫ぶと、

監視カメラのほうを見つめてからー

その女がー”覆面を取った”のだー。


「ーーー!!!!!」

美晴は表情を歪めたー


”ほら!早く裏口に回れ!”

覆面を取ったその女がそう叫ぶー


その女はーーー

どこからどう見ても美晴そのものでー、

言葉遣いは悪いもののー

その声も、美晴そのものだったー


「ーな…何これ…?」

美晴がその映像を見せ付けて来た美晴が言うと、

「今朝、ニュースになってたやつ」と、友達が言うー。


「ーーーー!!」

美晴がクラスメイトたちのほうを見つめるー


クラスの全員がーー

”美晴ちゃんを信じる”と言ってくれていた友達も含めた

ほぼ全員がー

美晴のほうを冷たい目や、怯えるような目、睨むような目で

見つめていたー


「ち…ちがっ…わ、わたしじゃない…!これ、わたしじゃないよ!」

美晴が必死に叫ぶー。


しかしー

そんな美晴の言葉を、誰一人として信じる素振りは見せずー、

今は”元カレ”になってしまった達志が悲しそうに言い放ったー


「ーー美晴…マジで何してんだよ…

 こんなことしてー……」


悔しそうに言う達志に対して、美晴は「お願い…!違うんだってば!」と、

泣きそうになりながら言い放つー。


それでもー

クラスの誰一人として、もはや美晴を信じようとしなかったー


監視カメラの映像とは言え、

それなりにハッキリとしている映像ー


”美晴を知る人間が見れば、明らかに美晴だと分かるー”


そのぐらい鮮明な映像と”声”だったー


「ーーーーー違う…昨日の夜…わたし、ちゃんと家で寝てたもん!」

美晴が涙目でそう叫ぶー。


その言葉は、虚しく教室中に響き渡るー。

重い空気が晴れることなく、美晴を追い詰めていくー。


「ーーそんなこと言われてもー

 もう無理だよ美晴ちゃんー」


美晴のことを最後まで信じてくれていた友達もそう呟くー


美晴本人以外からすれば

”これは美晴だ”と思ってしまっても仕方がないー


何故ならー

その姿と、声は、正真正銘ー

美晴そのものなのだからー。


この世界に生きる人間であれば”偽人間”問題は知っているー


だが、そういった問題が確実に起きているとは知りながらもー

その”件数”は全体的に見ればわずかであり、

”まさか、自分の身近でそんなことが起きる”とは

誰も思っておらずー、

美晴に限らず”偽人間”問題に直面した人間は、

”自分の知らないところで、自分が何かをしたことになっている”

というとんでもない状況に陥ってしまうー。


「し、信じてー…!わたし、絶対、強盗なんてしてないの!」

美晴がそう叫ぶー。


戸惑うクラスメイトたちー。

そんな時だったー。


教室の扉が開き、担任の先生と、

数名の警察官が入ってきたー。


担任の先生が警察官と話をしながら、

美晴のほうを指さしているー


「ーー秋村 美晴さんだね?

 署までご同行願えますか?」


鋭い目つきの警察官ー。

その言葉に、美晴はゴクリと唾を飲み込むー。


”何もしていないのに、疑われているー”

そのことは、美晴にもすぐに分かったー。


そして、人間は

あまりに恐ろしい自体に直面すると、声すら出なくなってしまうー。


美晴にとって、今がそれだったー


クラスメイトの視線を感じるー。

憐みの目ー、憎しみの目ー、失望の目ー、

”負の視線の数々”が美晴に向けられるー。


「そんな目でー…」

美晴が泣きながら叫ぶー


「そんな目で、わたしを見ないで!!!!!!!!!!」

泣き叫ぶ美晴ー


警察官が、そんな美晴をなだめるようにして

言葉を掛けると、

「とにかく、ここじゃ話はできないー

 一度、ついてきてもらえるかな?」と、

言葉を付け加えたー。


呆然としたまま、美晴はそのまま

警察に連れられていくー。


クラスメイトたちが、今まで以上にざわついてー

何やら色々と言葉を口にしていたもののー

もう、何も耳に入らなかったー


”よくないこと”を口にしているのは、

内容を聞かなくても分かってしまったからー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・


警察に連行された美晴は、ずっと泣きじゃくっていたー。


だがー

取調室にやってきた年配の警察官が

イスに座ると、ため息をついてから、言葉を口にしたー


「”偽人間”ーーー聞いたことはあるね?」

警察官の言葉に、

美晴は泣きながら頷くー


「ー昔…禁止されたって言う”他の人に変身する”ーーって

 やつのことですかー?」


美晴が言うと、年配の警察官は頷いたー


「そう。それだー。

 秋村 美晴さんー。

 君はー…その被害に遭ったー」


その言葉に、

強盗だと疑われて、このまま逮捕されると思い込んでいた

美晴は、一瞬希望を感じたものの、すぐに表情を暗くして、

警察官のほうを見つめるー


”疑われているわけではないー”

そうは分かったもののー

”自分の姿を勝手に使っている人間がいるー”

と、いうことを知ってしまったのだから、

笑顔に戻れるはずなどなかったー。


「ーーー…昨夜の強盗でー

 わざと顔を晒したのはー

 捜査をかく乱するためだろうー…」


年配の警察官はそう呟くー


時計店に強盗に入った男が、

美晴の姿のまま”わざと”監視カメラに顔を映されるようにしたのはー

”警察の捜査をかく乱するため”だと、

年配の刑事は読んでいたー


「犯人は、君の姿を何らかの手段で手に入れて、

 君の姿を使って、少し前から犯罪を繰り返していたようだー」


年配の刑事がそう言うとー、

美晴は涙目のまま「ーそれで、わたしの姿を勝手に使っている

犯人の人はー?」と、質問したー


しかしー、

警察も、美晴の姿で犯行を繰り返している男が

”偽人間”と呼ばれる状態であることは突き止めたもののー

”美晴の姿に変身している”のは、誰なのか、ということまでは

まだ調べることができていなかったー


「ーーー君の顔は全国に報道されてしまったー」


”偽人間”問題の、大きな問題の一つが、

”勝手に姿を使われた被害者”が、犯罪などに使われた場合

”全国に犯罪者として晒されてしまう”ことなどが

しばしば起きることだー。


「ーーーしばらくー、

 普通の日常生活を送ることはできないだろうー」


その言葉に、美晴は「わたし、どうしたらいいんですかー…?」と

困惑の表情を浮かべるー。


「ーーー…犯人はまだ君の姿を使って何かをする可能性があるー…


 …表向きには発表していないんだがー

 ”偽人間被害”にあった人々を一時的に避難させるための

 施設が行政主導で各地に用意されていてねー…


 ご両親と相談して貰って希望するのであれば

 本当の犯人を逮捕したり、ほとぼりが冷めるまで

 そこで暮らしてもらうこともできるー


 ー大規模な施設でねー

 学校もあるし、娯楽施設も中にあるからー

 ひとまず、生活には困らないだろうー」


年配の刑事のそんな言葉に、美晴は困惑しながらも

警察に呼ばれていた両親と合流しー

どうするかを相談ー、話し合った結果

”偽人間被害者向け保護施設”を利用することに決定したー。


美晴は困惑した様子で震えながらも

「ーよろしくお願いしますー」と、警察官に頭を下げるー。


「ーーーーー…」

美晴と、その家族が案内する職員に誘導されて、

立ち去っていくのを見つめながら、警察官は静かにため息をついたー


遠い昔ー

”他人に変身する技術”が生み出されて世界は大混乱を起こしたー


法規制により、何とかその混乱を抑え込むことには成功しー

今は”一応は元の社会”には戻っているー


しかし、一度生み出された力は消えないー。

今でも”他人に変身する技術”は、一部裏社会ー…

つまり、犯罪組織などを中心に出回っていて、

それが稀に、悪用されるー。


が、世間では”既に変身技術は都市伝説”状態となっていて、

自分の姿が勝手に誰かに利用されてしまう

”偽人間”問題も、”まさか自分が当事者になる”とは誰も思っていないー。


だからこそー

今回の美晴の件もそうなったように、

世間は”その本人が犯人”だと勘違いし、叩き始めるー。


当然、普通の日常生活を送ることはできず、

その対策として世界各国に「偽人間の被害者を保護する施設」が

存在するー。


しかし、だからと言って

”変身技術の悪用が世界各地で起きています”と大々的に公表すれば

今度は大パニックが起きるー。


今のこの状況は”勝手に誰かに変身されて、被害を受けた人々”が

泣き寝入りし、一方的に被害を被るという悪夢のような状況だー


「ーー…根本的に対策しないとー

 いつかまた、変身技術で世の中が滅茶苦茶になるぞー…」


年配の警察官は、”このやり方”ーー

”被害を受けた人間に蓋をして保護をする”やり方では

いつか社会が再び崩壊するのではないかと

不安げな表情を浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーククー」

美晴に変身していた男は、

”他人に変身する装置”を手に、

別の学校の近くにやってきていたー


警察官の読み通りー

”時計店で強盗”をした際にわざと美晴の顔を

晒したのは、捜査をかく乱するためー。


そして、”もう美晴の姿を使うのは最後にする”つもりだったためー。


またー

新しい”変身対象”をこの装置に登録してー、

今度はその姿で暗躍するー


「ーー今度は、あの子がいいかー」


眼鏡をかけた大人しそうな少女の姿を確認するとー

カメラのレンズのようなものをその少女に向けてー

男はその”姿”を登録したー


その夜ー


邪悪な笑みを浮かべた眼鏡の少女が、

夜の街で、再び暗躍を始めるのだったー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


知らないところで、自分の姿が勝手に悪用されている恐怖を

描いた変身モノでした~!


いずれ、この世界は大変なことになってしまいそうですネ~…!


お読み下さりありがとうございました!

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