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「ーーただいま~!」

実家で暮らす男子大学生・久本 竜太(ひさもと りゅうた)が、

帰宅したー。


「ーーお邪魔しま~す」


そんな竜太の隣にいた

可愛らしい女子大生が、微笑みながら家の中にやって来るー。


彼女は竜太の彼女、沼澤 彩香(ぬまざわ あやか)



「ーーあ、綾香(あやか)さん!こんにちは~!」


そんな綾香の姿を見て、嬉しそうに声を掛けたのは

竜太の妹で、現在女子高校生の由紀奈(ゆきな)だったー。


「由紀奈ちゃん久しぶり~」

綾香が微笑みながら手を振るー。


兄の竜太と、同じ大学に通う綾香が付き合いだしたのは

今から数か月前のことー。


竜太はよく、綾香を家に連れて来るため、

今では妹の由紀奈もすっかり、

綾香とは親しくなっていたし、まるでお姉ちゃんのように

慕っていたー。


「ーー元気にしてた~?」

綾香が、微笑みながら由紀奈に話しかけると、

由紀奈は嬉しそうに近況を報告するー


そんな様子を少し離れた場所から

微笑ましそうに見つめていた竜太は、

しばらく間を置いてから、


「俺は先に部屋に行ってるからー」と、

綾香に伝えて、そのまま階段を登るー。


「あ、うん~!」

綾香がそう返事をすると、少しの間、由紀奈と

話の続きをしてから、やがて

「そろそろ竜太が待ってるから2階に行くね」と、

由紀奈に断りを入れてから、そのまま階段を登り始めたー。



「ーーあ~…綾香さんって本当に可愛いし、優しいしー

 なんで、お兄ちゃんを選んでくれたんだろうー?」


少し疑問に感じながらも、

そんな言葉を呟く綾香ー。


綾香の兄・竜太は

決して”イケメン”ではない。


元々、大学に入るまでは一度も彼女が

出来たこともなかったし、

モテないことをよく愚痴っていたー。


”俺に彼女なんていらないんだ”とか、

そんなことばっかり言っていたし、

由紀奈自身は、別に兄のことを嫌ってはいないものの、

正直、細かいことにこだわりすぎて、

女子からモテるような感じではなかったー



そんな兄・竜太に、綾香のような彼女が出来た、ということは

妹の由紀奈からしてみても”奇跡”だったー。


”お兄ちゃん、綾香さんのこと、絶対に傷つけちゃだめだからね!”


由紀奈は事あるごとに、兄の竜太にそんなことまで言っているぐらいだー。


綾香を逃せば、もう、綾香のような”理想の彼女”は

絶対に現れないー。


そんな風に由紀奈は確信していたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ガチャー。


由紀奈と話を終えた綾香が、

由紀奈の兄・竜太の部屋にやってくると、

「随分長かったな~」と、笑うー。


「ーへへ…”お姉さんみたいに慕われる”って、

 マジでドキドキするんだからな?」


綾香は、先ほどまでとは全然違う口調で

そう呟くと、笑いながら竜太の部屋のベッドに座って、

まるで男子のような座り方で、雑に足を開いたー。


「ーーはははは、まぁ、由紀奈も懐いているみたいだし、

 ちょうどよかったよ」


竜太がそう言うと、綾香は笑うー。


「ーでもまさか、兄貴の彼女が”男”だなんて

 思わねぇだろうな」


笑いながらそう言う綾香ー。


「ーははは、その言い方はやめろよー

 ”身体”は正真正銘の女だろ?」


竜太がそう指摘すると、

綾香は「まぁな」と、言いながら自分の胸を触るー


「おっぱいも、下のお口もー

 くへへ 正真正銘の女だぜ」


綾香がニヤニヤしているのを見て、

竜太は「まったく、美女が台無しだなー」と、呆れた様子で笑うー。


「いいじゃねぇか。どうせ、”中身”が俺じゃなけりゃ

 お前は今だって童貞なんだからよ」


綾香の言葉に、竜太は「はいはい」と、あきれ顔で呟くー。



「ーに、しても、お前がその子に憑依してから、

 もうすぐ半年かー」


竜太が少し懐かしそうに呟くと、

続けてー


「”後悔”はしてないのか?」

と、尋ねたー。


「ーー後悔?するわけねぇだろ

 こんな可愛くて、エロイ身体を自分のものにできたんだぜ?」


綾香はニヤニヤしながら嬉しそうに自分の手を眺めるー。



綾香はー

竜太の”親友”に憑依されて、身も心も完全に支配されていたー。


元々ー、

綾香と竜太は”同じ大学に通っているだけ”で、

ほとんど接点はなく、

親友の恵一(けいいち)に対してよく

”あの子、可愛いよなぁ~”などと言葉を口にしていただけで、

直接の面識はほぼ0に等しかったー。


綾香からしてみれば、

竜太のことを、”同じ大学で見かける人”ぐらいにしか

思っていなかっただろうー。


その、綾香が今や、竜太の彼女だー。


だが、付き合い出したのは、”綾香が憑依されたあと”


綾香本人は、

竜太のことなど、好きでも何でもないだろうし、

今、こうして竜太と付き合っているー…などということも

本人からしてみれば信じられないことだろうー。



「ーー最初は驚いたよー…

 ”憑依する”とか言い出したときはー」


竜太が、半年前のことを思い出しながら笑うと、

綾香は「へへへ…でも、マジだっただろ?」と、笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーあ!」


1階ではー、

由紀奈が玄関先にキーホルダーが落ちているのを

見つけていたー


「これ、お母さんの?」


由紀奈はそう言いながらも”ちがうよね…”と、付け加えながら

母親にキーホルダーを見せつけるー


「ー綾香ちゃんのじゃないかしら?」

由紀奈の予想通り、母親のモノではなかった

そのキーホルダーは、どうやら兄・竜太の彼女・綾香のものの

ようだったー。


恐らく、さっき由紀奈と話している最中か、

家に入ってきた時に落としてしまったのだろうー。


そう思いながら、

「ーじゃあ渡してくるね」と、

由紀奈は、何も考えずにそのまま、

2階にある兄・竜太の部屋へと向かったー



”しっかし、お前、由紀奈に懐かれてるよなぁ~”



”ーーはははは、まさか”沼澤 綾香”って子が

 憑依されてるって知ったら驚くだろうな~”



竜太の部屋から聞こえてくる笑い声ー。


「ーーーえ…」


由紀奈はその言葉に、竜太の部屋の前の

廊下で立ち止まるー。



”でもでも、由紀奈ちゃんは

 ”俺”に懐いてるんだぜ?

 だって、身体は沼澤綾香でも、

 由紀奈ちゃんと初めてあった時には

 既に俺が憑依してたんだから”


綾香の声ー。


いつもとはまるで違う男のような口調ー


”まぁな~ でも、本当のことを知ったらなんて言うかー

 由紀奈、真面目だからさ”


竜太の声ー。



”ーその時はその時だろー?

 それに、お前だってこの女が憑依されてることを知ってて

 こうして付き合って、エッチだってしたんだから

 同罪だぜ?”


綾香がそう言うと、

竜太は”ははは…まぁ、誰にも言わないし、バレないだろ”と、

静かに呟いたー



「ーーーー…ど…どういうことー…」

部屋の前で偶然、そんな会話を聞いてしまった由紀奈は、

表情を歪めていたー。


「ーーーーー」

身体が震えるー。


拾ったキーホルダーを届けに来たはずなのに、

部屋に入ることができないー。


”……え……え…綾香さんって…… え?”


頭がまだ混乱しているー。


部屋の中から聞こえて来た

兄・竜太と、兄の彼女である綾香の会話ー。


その内容を今一度頭の中で考えてみるー


けれど、あまりに現実離れしすぎていて、

由紀奈は、そのことを理解しようとしても、

なかなか理解することができなかったー


そしてー

”言葉の通り”ならー

お兄ちゃんとその彼女はー

とっても恐ろしいことをーーー



ガチャーーー


「ーーー!」

由紀奈がビクッとするー。


部屋からーー

兄・竜太の彼女である綾香が出てきてしまったのだー



「ーーーー由紀奈ちゃんーーー」

綾香の表情が、一瞬、歪むー。


いつも見たことのない”恐ろしい顔”だったー。


だが、綾香はすぐににこっと笑ってー


「どうしたの?部屋の前で何してたの?」

と、穏やかな口調で答えたー



しかしー

その綾香の”目”は笑っていなかったー



「ーーあ、綾香ー」

後から、兄の竜太も部屋の中から出て来るー


由紀奈は震えながら、ゴクリと唾を飲み込みー

そして、咄嗟に誤魔化したー


「ーーー…あ、綾香さんのー

 キーホルダーが玄関に落ちててー」


と、さっき玄関で拾った綾香のキーホルダーと

思われるものを、そのまま差し出すー。


「ーーーーー」


綾香はしばらくの間、怖い目で由紀奈を見つめていたが

やがて


「あ、そうなんだぁ~!わたしってばうっかりしちゃった!

 届けてくれてありがとね!由紀奈ちゃん!」


と、

笑顔でキーホルダーを受け取ったー。


由紀奈は震えながら「どう…いたしまして…」と、呟くー。


”聞いていたこと”を悟られてはいけないー。


そう、思ったー。



けれどー、その思いとは裏腹に、

身体が無意識のうちに震えてしまうー。


身体の震えが止まらなくなってしまうー。


「ーーふふ…由紀奈ちゃんってばー

 どうしたの?

 顔色、悪いよ?」


クスッと笑う綾香ー。


「ーーーえ… えっと…い、いえ…なんでもないんですー」

由紀奈は無理に笑おうとしながら、綾香のほうを見つめるー。



「ー由紀奈ー…もう、戻っていいぞ」

綾香の背後にいた兄の竜太が、由紀奈に助け舟を出すかのように

そう呟くと、

由紀奈は綾香に頭を下げてから

「ご、ごゆっくりどうぞー」と、そのまま足早に

1階へと立ち去って行ったー。



「ーーーーーふ~~~」

竜太の部屋に戻る二人ー。


竜太が気まずそうな表情を浮かべながら、

沈黙していると、やがて、綾香が先に口を開いたー。


「ーーー聞かれたんじゃないのか?」

とー。


「ーー…ん? ん~~~どうだろうな?」

気まずそうな雰囲気の竜太ー。


「由紀奈ちゃん、俺のこと見て怖がってたー

 震えてたの、見ただろ?

 さっきの会話、聞かれたんじゃ?」


綾香がもう一度ー

今度はよりハッキリとした口調でそう呟くー。


「ーき、き、聞かれてないだろー?

 大丈夫だよ」


竜太はそう言い返すー。


竜太からしても、”彼女の綾香”は、

親友が乗っ取っている身体ー…なんてことを

知られるのは、当然まずいー。


しかしー、

竜太は妹の由紀奈のことをそれなりに可愛がっているー。


だからこそー

綾香が”何を言い出すか”と、ひやひやしていたー。



「ーーーなぁ…」

綾香が再び口を開くー。


「ー今の、絶対聞かれたよな?」


綾香が先ほどよりも強い口調で言うー。


その表情に、笑顔はないー。


可愛らしい女性の見た目なのに、

”中身が違う”と分かっていると、

底知れぬ恐怖を感じてしまうー。


「ーい…いや…ゆ、由紀奈はー…

 そのー…天然だから、気づいてないよー」


竜太が苦笑いしなたらそう言うと、

綾香が突然、竜太に近付いてきて、

思いっきり、竜太の横の壁を叩いたー


「ーー万が一、”憑依”がどうこう騒がれたら

 俺が困るんだよ竜太

 分かるだろ?


 俺はもう自分の身体はないー

 今は、この女の身体が俺の身体だー


 でももし、お前の妹に”憑依”のことを知られて

 騒がれたらどうなる?」


綾香の言葉に、

竜太は「お、お、落ち着けってー」と、

壁ドンされたような状態になりながら、

必死に声を振り絞るー。



「ーーーもしも憑依がバレたら俺は終わりだー

 ”この女”を元に戻すことになったら、俺はどうなるー?


 帰るべき身体がない俺はーーー

  

 ”死ぬ”しかなくなるー」


綾香はそう言い放つと、

「由紀奈ちゃんには悪いけどー…」と、呟きー

何かをバッグから取り出したー。



「ーーえっ…」

竜太は、表情を歪めるー。


「ーこうなったら、お前が由紀奈ちゃんに憑依するしかねぇ」


綾香は、鋭い目つきでそう言い放つー。


「ーーい、い、いや、ま、待ってくれよ!」

竜太が狼狽えながら綾香のほうを見つめると、

綾香は言ったー


「ーお前は俺が憑依したこの女を彼女にしてるんだー。

 もう、お前はー”共犯”だー。


 お前だけが退き返そうだなんて、そうはいかないー


 それに、万が一、問題になっても

 お前には自分の身体があるけど、俺にはない。」


綾香はそこまで言うと、竜太を睨みつけながら呟いたー。


「ーーー由紀奈ちゃんが、さっきの話を聞いてたなら、

 お前が、由紀奈ちゃんに憑依するしかねぇ」


綾香の冷たい口調に、

竜太はゴクリと唾を飲み込みながら

「い…いや…き…き…気のせいだってー」と、

震えながら答えることしかできなかったー。


そんな竜太を見て、綾香はにっこりと微笑むー。


「ー”彼女”を守るために、

 竜太はちゃんと、やるべきこと、やってくれるよね?」


とー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


”お兄ちゃんの彼女の秘密”に気付いてしまった妹…


”親友が憑依している彼女”と、

”大事な妹”の狭間でお兄ちゃんが選ぶ運命は…?


続きはまた次回デス~!


今日もありがとうございました~

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