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洗脳されてしまった妹・雫の反抗的な態度を前に、

平和だった神里家の日常は崩れ去ってしまうー。


両親ともに、豹変した雫に戸惑い、母と娘のー

父と娘の関係に亀裂が入る中でも、

兄の悠馬は”何を言われても俺は雫の味方”と、とことん雫のことを

信じる決意を改めて固めるー。


そんな中、悠馬は雫の豹変に関係していると思われる謎の男・

玉城東吾と会うために、

東吾がいるバー、”スターダスト・イリュージョン”へと足を運び、

そこで玉城東吾と遭遇するー…


★前回はこちら↓★

<MC>歪められた絆⑩~家庭~

暴走族のたまり場となっている ゲームセンターに乗り込んだ兄の悠馬は、 暴走族のリーダー・修から、 ”雫の豹変”に関係していると思われる男・玉城東吾の情報を 聞き出すことに成功したー。 東吾と会う際には、いつも スターダストイリュージョンという店で会っていたのだと、 修は言うー。 ”妹の雫の豹変”の謎に次第に...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★主な登場人物★


・神里 悠馬(かみさと ゆうま)

大学生。妹の雫が豹変したことに困惑する。


・神里 雫(かみさと しずく)

高校生。兄の悠馬のことが大好き。少しイタズラっ子な一面も。


・森永 愛梨沙(もりなが ありさ)

大学生。悠馬の彼女。成績優秀な優等生。コスプレ趣味がある。


・藤嶋 亮介(ふじしま りょうすけ) 

大学生。高校時代からの親友。困った時には頼りになる存在。


・西園寺 美桜(さいおんじ みお)

高校生。妹・雫の親友。表裏が非常に激しい。


・九条 輝樹(くじょう てるき)

高校生。妹・雫の幼馴染で悠馬とも小さいころから面識がある。


・玉城 東吾(たまき とうご)

裏社会の便利屋。ヘルメットの人物と共に雫を洗脳した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー”雫が正気じゃない”とは、どういうことですかー

 答えて下さいー」


様々な形のグラスやお酒が並ぶその空間ー

薄暗い店内のバーで、悠馬は勇気を振り絞りー、

オールバックにトレンチコートの男・玉城東吾に向かって

そう言い放ったー


玉城東吾なる男が”まともな男ではない”ことは、

風貌と、本人から放たれる雰囲気で伝わってくるー。


「ふぅ……」

東吾はそう呟くとワインを口にしながら、

「井上」と、バーのマスターに声を掛けるー。


東吾は1万円札を井上に渡すと、

「俺はこのガキと少し大事な話があるー。

 その諭吉さんで、ちょっくら遊んで来いー」と、

”悠馬と二人きりで話をしたい”という趣旨の言葉を口にしたー。


「ーーーー」

だが、バーのマスター・井上は、そのまま外に出て行くことはせずに、

東吾に向かって手を差し出したー。


「あん?」

東吾が首を傾げると、井上は

「諭吉さんが一人じゃ寂しいだろ?もう一人よこせ」と、

ニヤニヤ笑みを浮かべながら言い放ったー


「ったく!しょうがねぇなお前は」

東吾はうんざりした様子でそう呟くと、財布から諭吉さんー

つまり1万円札をもう一枚取り出して、そのまま井上に手渡したー。


「ーへへ、どうも」

井上は2万円受け取ると、ようやく満足したのか、そのまま店の

外に出て行くー。


井上は、出て行く時に店の入り口の札を”準備中”に変えて、

そのまま立ち去っていくー。


「ーーさて…」

これで、店内には東吾と悠馬の二人だけー。


クラシック音楽が流れる中、東吾は静かに言葉を口にしたー。


「ー神里 雫が正気じゃないー…

 それはどういう意味か、って聞いたな?」


から揚げを食べながら「畜生、冷凍ヤケしてんじゃねぇか!」と、

一人、店にはいない井上に対する文句を口にする東吾ー。


悠馬はそれを無視して、

「ー街で誰かと電話しながら、そう言っているのを

 聞いた人間がいるんですー。

 それにーあんたが雫の周りをウロウロしてるのも知ってますー。」

と、言葉を続けたー


まだ、玉城東吾の正体がー

雫にどう関わっているかが”ハッキリと分からない”ため、

体裁だけでも整え、敬語で話す悠馬ー。


「ーーーーーほぅー」

東吾はそれだけ言うと、「まぁ、飲めよ」と、

先程井上に出されたオレンジジュースを指さすー


「ーー長いするつもりはありませんー

 雫に…俺の妹に何かしたんですか?」


悠馬は、単刀直入にそう言い放つー。


「ーーした」

東吾は、ワインを飲み終えると、そう呟いたー


その言葉に、悠馬は自分の身体中から

怒りが噴き出してくるのを感じたー。


「ーーー…何をしたんですか?」

悠馬は、歯ぎしりをしながら、そう呟くー。


「ーダークアプリ・Mって知ってるか?」

東吾の言葉に、悠馬は首を横に振るー。


「ーー人を洗脳して、意のままに操るアプリ、だそうだー

 お前の妹に、それを使ったー」


あっさりと”事実”を口にする東吾ー

悠馬は思わず机を叩いて「ふ…ふざけるな!」と、声を荒げるー。


「ーせ、洗脳ってなんだよー…!

 し、雫にあんたは一体何をしたんだ!」

感情的になって、そう叫ぶ悠馬ー。


さらに続けて

「そんなアニメや漫画みたいな洗脳なんてできるわけがない!」と、

悠馬は声を荒げるー。


組織が時間を掛けて”人の思想を変える”類の洗脳は

現実世界にも存在するのは分かっているー。


だが、たった半日足らずで、”まるで別人のようにしてしまう”

そんなー、アニメやヒーロー番組みたいな”洗脳”はあり得ないー。


杖を人に向けて一瞬で洗脳したり、

向き合って目を赤く光らせて洗脳したり、

特殊な装置をくっつけて洗脳したりー、

そんなことは、現実ではできるはずがないー


険しい表情の悠馬を見つめながら、東吾は

「まぁまぁ、落ち着けよー」と、笑いながら言うと、言葉を続けたー。


「ーー俺は嘘をつくのが嫌いでなー…

 神里悠馬ー、そう、お前にも今、俺は腹を割って話しているつもりだー


 俺の言うことは嘘じゃないー。

 いいか?お前の妹、神里雫は、そうー…洗脳されているー」


東吾は身振り手振りを加えながら、少しふざけた口調でそう言うと、

悠馬は「嘘だー…!」と、唖然とした表情で東吾を見つめるー。


確かに、雫の豹変ぶりから”雫は正気ではない”ということは、

理解していたつもりだー


しかし、いざ、雫の豹変に関係のありそうな人物に

”お前の妹を洗脳した”などと、面と向かって言われてしまうと、

流石に動揺せざるを得ないー。


「ーーーあんたー…さっき、嘘つかないって言ったよなー?

 だったらー…どうして雫を”洗脳”したー?」


「ーーさぁ」

東吾はニヤリと笑いながらワイングラスを口につけるー


「ー雫を洗脳したって言う…そのアプリだったかー…?

 ダークアプリとかいうやつを見せて見ろ!」


悠馬がそう言うと、

東吾は「それはできない」と、ワイングラスを口から話ながら笑ったー。


「ふ…ふざけるな!」

悠馬が怒りを露わにして、ワイングラスを手で払うと、

横に吹っ飛んだワイングラスが、薄暗い店内のテーブル席の方で

音を立てて砕け散ったー。


「ーおいおい、井上がキレるぞ?」

バーのマスター・井上の名前を出すと、東吾は悠馬のほうを見つめたー


「嘘をつかないんだったら…正直に言えよ…!」

怒り心頭の悠馬ー


妹を洗脳した、などと言われて黙っていられるわけがないー。


「ーー嘘はついてない」

東吾はそれだけ言うと「焼き鳥も食いたくなってきたな」と

言いながら立ち上がって、勝手にバーのカウンターの中に入っていくー


「ー…井上って人がキレるんじゃないのか?」

悠馬は、先ほど言われた言葉の仕返しもかねてそう言い放つと、

東吾は「ふはっ…!アイツは諭吉さんを渡しておきゃ、文句は言わないぜ」と、

勝手に焼き鳥を作り始めるー。


「やっぱ冷凍食品じゃねぇか」

一人でブツブツ言いながら、悠馬の視線を感じたのか、

東吾はさらに言葉を続けたー。


「ーー俺は”裏社会の便利屋”玉城東吾ー。

 依頼人から依頼されただけで、お前の妹を洗脳した理由は知らないし、

 聞いてないー」


東吾は焼き鳥を加熱しながらそう言い放つー


「ーさっきのダークアプリ・Mだが、

 俺はお前の大事な妹が洗脳されたのを横で見ていただけで、

 俺がアプリを使ったわけじゃないー。


 入手ルートも不明だし、俺は持ってないー」


東吾はそこまで言うと

「ー言ったろ?俺は嘘をついてない。これで満足か?」と、

おちょくるようにして笑ったー。


「ーーー……じ、じゃあ、依頼人ってのは誰なんだ?」

悠馬が言うと、東吾は「知らん」と、だけ呟いて

「ま、こんなもんだろ」と、完成した焼き鳥を

立ったまま食べ始めたー。


「ーーー…知らないだって…?

 ふ、ふざけるなー!

 裏社会の便利屋だか何だか知らないけど、

 相手の名前も分からずに仕事をするって言うのかー?」


悠馬が叫ぶー。


東吾は「相手のことは詮索しないーそれが裏社会のルールだ」と、

焼き鳥を噛みながら言い放つー


「ーー…な、ならーどんなーー」


「ーー悪いが、容姿の話もできねぇ。

 なんせそいつは、フルフェイスのヘルメットで顔を隠してて

 俺も顔を知らねぇからな」


そこまで言うと、東吾は悠馬の隣の座席にわざわざ座って

悠馬の肩に手を回すと、

「なぁ、神里悠馬ーお前にいいもの、見せてやるよ」と、

小声で囁くー


「ーーーー」

悠馬が表情を歪めると、その返事を待つ前に、東吾は

スマホで動画を再生し始めたー。


「せ…洗脳…? せ、洗脳ってなにー…!?

 わたしに何をするつもりなの!?」


そこに映し出されたのはー

東吾とヘルメットの人物に拘束された雫の映像ー


雫が”洗脳”される直前の映像ー


「し、雫ーー!!!!!」

スマホの画面に向かって叫ぶ悠馬ー。

映像に叫んでも意味がないとは理解しつつも、

叫ばずにはいられなかったー。


「ーーお兄ちゃん!たすけて… おにいちゃん!」


映像の中で必死に助けを求める雫ー。


「ーーーお前は、兄を憎みー、全てに不満を抱きー、

 非行を繰り返すんだー。

 ”自分の意思”でー」


東吾の言う”依頼人”こと、ヘルメットの人物が

東吾の言う通り、顔を隠したまま機械音声のような声で

そう呟くー。


「お兄ちゃんは、絶対に助けに来てくれるから!!!」

「うっ… うっ… あっ… あぁぁっっ…やめて…」

「あ… ぁ… ぁ…」


雫が”ダークアプリ・M”とやらの餌食になり、意識を失うー


そしてー

目を覚ました雫はー


「ーー大好き?あいつが?ふざけないで!」


豹変していたーーー


雫の豹変の理由が、全て分かったー


悠馬は拳をぶるぶると震わせると、

「お前らああああああああ!」と、東吾に襲い掛かったー


「おぉっと!暴力反対!」

東吾はふざけた調子で、悠馬の攻撃を回避すると、

「ーお前も、焼き鳥になるか?」と、今ちょうど食べている

最中だった”砂肝”の焼き鳥を指さしながら笑うー。


「ーーーそうだー

 最後に一つ教えておいてやるー。

 依頼人についてだがー、

 確かに俺は名前も、顔も知らないー

 だがー」


そこまで言うとー

店の扉が開きー、

バーのマスターの井上が帰ってきたー


「んだよ!井上!諭吉さん二人もあげたのに戻ってくんの早すぎだろ」

東吾がそう言うと、

井上は「ゲーセンで2万なんてあっという間だからなー」と、

そのまま店内に戻ってくるー


「ーーっておい!グラス割れてるじゃないか!

 しかもおい!テメェ玉城!勝手に俺の店で焼き鳥作るんじゃねぇ」


井上がそんなことを言いながら、東吾を見つめると、

東吾は「悪かったなー」と、言いながら1万円札をさらに机に叩きつけたー


「へっ、なら仕方ねぇ」

井上はすぐに納得して笑みを浮かべるー。


悠馬が、東吾のほうを睨みつけていると、

「悪いなー。時間切れだー」と、これ以上は悠馬に何も教える気はないー、

という様子でそのまま焼き鳥の続きを食べ始めるー


「ふざけるな…!まだ話はー!」

悠馬がそこまで言うと、東吾は「ーーしつこいとモテないぜ?神里悠馬」と、

笑いながら呟くー


「ー誰も、お前にモテても嬉しくないだろうが」

バーのマスター・井上が突っ込むと、東吾は「ちげぇねぇ」と、笑うー。


悠馬がさらに食い下がろうとするー。


しかしー


東吾は突然、カウンターを思いきり叩くと、

カウンターがそのまま粉砕されて、悠馬はビクッとするー


「今日は、これで終わりだー。

 それとも、お前のツラ、粉砕するか?」


笑いながら東吾が言うー。


「ーーーー………ーー」

悠馬はその様子にゴクリと唾を飲み込みながらも、

なおも”元に戻す方法は?”と確認しようとするー。


しかしー


「はいはいはいはい、そこまでそこまで」

バーのマスター・井上が東吾との間に割って入るー。


「ーこいつ、本当に君のツラ、粉砕するから

 それ以上はやめておいた方がいい。


 玉城、お前も俺の店でガキのツラ、粉砕するんじゃねぇぞ」


井上の言葉に、

東吾は「へっ、流石にお前の店を殺人現場にはしねぇよ」と、言うと、

そのままカウンターに座って再び焼き鳥を食べ始めたー。


玉城東吾とこの井上という男の関係は知らないー。

やり取りを見ている限り、友人関係か、親しい関係なのは間違いないだろう。


だが一方で、”雫の件”を話しする際に、わざわざ1万円札を渡して

井上を退店させたところを見ると

”裏”の部分とこの井上は関係のないようにも見えるー。


「ーーーーーー…必ず、俺は雫を助け出す」

悠馬は、これ以上ここで食い下がっても、リスクの方が高いと

判断して、そのまま店の外に出たー。


しばらくすると、東吾は「俺も帰るわ」とだけ、井上に言い放つと

そのまま店の外に出て”電話”をし始めたー


「ーーわざわざ真実を伝えるなんて、悪趣味だなー」

東吾が”依頼人”に電話を掛けるー。


電話相手は、例のヘルメットを被った人物ー


「ーーあぁ、まぁ、それが”依頼”だからなー

 ちゃんと神里悠馬に全て教えておいたぞ」


東吾はそれだけ伝えると、

電話を切って、そのまま夜の闇に向かって歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」

夜道を歩く悠馬ー


拳をぎゅっと、握りしめるー。


「ーーお兄ちゃん!起きて~!起きて~!起きて~!」

「ーーーそうだ!お兄ちゃん!わたし、生徒会に立候補したの!」


雫が”洗脳”される前ー

その当日の朝のことを思い出すー


「雫ー…くそっー……」

悠馬が悔しそうに歯ぎしりをするー。


家に向かって歩きながらー

悔しそうに何度も何度も雫のことを思い出すー


「ー頼りない兄でごめんなー…

 必ずー、必ず助けるからー」


悠馬がそう呟いたその時だったー


「ーーー!?!?」

悠馬の背後から、突然バイクが突進してきたー


咄嗟にそれを回避する悠馬ー


「ー!?」

悠馬は、激しく動揺しながらも、

その相手を見つめて表情を歪めたー


”ヘルメットの人物ー”

玉城東吾が依頼人だと言っていた人物ー。

雫が洗脳されたときの”映像”にも、この人物が映っていたー


「ーーお前…し、雫をよくもーー!!!!」

悠馬が涙目でそう叫ぶと、ヘルメットの人物は口を開いたー


「ーすべてはお前を”地獄”に落とすためー」

ヘルメットの人物は、機械音声のような声でそう呟くー


「な、なんだってー…?」

月明かりの中、人通りの少ない河川敷周辺に道で、

ヘルメットの人物と向き合う悠馬ー。


「ーーー…俺に…俺に何か恨みでもあるのか!!!」

悠馬はそう叫ぶー。


しかしー

”恨まれるようなことをした覚え”はないー。


いやー、

人間は、本人に自覚が無くてもどこで恨まれているか

分からない生き物だー。


しかし、それでもー

”妹を洗脳される”ようなことをした覚えは全くないー。


「ーーお前は誰だー…!俺のことを知っているのか!?」

悠馬がそう叫ぶと、

ヘルメットの人物は答えたー


「ー”知っている”」

とー。


そして、再びバイクを走らせると、悠馬に向かって再度突進しー

回避した悠馬を無視してそのままバイクで走り去っていったー。


「くそっ…!くっそおおおお!!」

悠馬は一人、地面に拳を叩きつけると、

雫を弄ぶ者たちに激しい怒りを感じながらー、

怒りの声を上げたー



”それでいいーーーー”


とある場所ー。

”全てを仕組んだ人物”が、そう呟くとー

スマホを手に、邪悪な笑みを浮かべたー


”地獄に落ちろーーー”

とー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


停学処分になってしまった雫の元に、

雫の彼氏・九条輝樹がやってきていたー。


「ーーーーー雫が会ってくれるかは分からないけどー」

やってきた輝樹に、悠馬がそう言い放つと

「別に構いませんよ」と、だけ輝樹は言い放ち、

「あ、お邪魔します」と、悠馬の母親・裕子に頭を下げたー。


そのまま2階に向かう悠馬と輝樹ー


「ーー……昨日、会ってきたんだー。

 君に言われた、”雫が正気じゃない”って電話で話してた男とー」

悠馬が言うと、


「へぇ…、意外と大胆なんですねー悠馬さんは」

と、輝樹が涼しい顔で答えるー。


「ーで、どうだったんです?」

輝樹の言葉に、悠馬は、昨日のことを簡単に説明したー。


”洗脳”のことを隠す必要はないー。

輝樹は輝樹で、雫を助けようとしてくれているー。


だから、全てを伝えたー。


「ーーー”洗脳”ーーーー………」

輝樹はそう呟くと、少し驚いた様子で、言葉を詰まらせるー


「ーー何か知ってるのか?」

悠馬が言うと、輝樹は「あ、いやー」と、首を横に振ると、

「まさか本当にそんなことになってるなんて、

 改めて聞くとやっぱ驚きますね」と、困惑した表情を浮かべたー


雫の部屋の前にやってきた二人ー。


雫は、雫本人が聞かなかったようなロックバンドのような曲を

大音量で流しているー


「ーー…雫ー。九条くんが、来たぞー」

悠馬が部屋をノックしながらそう言うと、

雫は”会いたくない”とだけ、答えたー


「ーーーはぁ…」

輝樹は少し残念そうにため息をつくとー

「部屋の外からでいいんで」と、悠馬に言い放ち、

部屋の外から中に向かって言い放ったー。


「雫ー

 俺はお前のことが好きだー。

 お前が豹変したあとでも、それは変わらないー」


兄のいる前で、平気で”好き”宣言をする輝樹ー。

悠馬は少し戸惑いながらも、口を挟まずに続きを待つー。


「ーー雫ー、お前に何を言われても

 俺は雫の味方だからー


 だからーー……必ずー」


悠馬は、いつも冷めた感じの輝樹が

珍しく感情を込めているのを見て、少し意外に思いながらも、

「ー俺もこの前、雫に同じようなこと言ったよ」と、

苦笑いしながら言うー。


雫から返事はないー。

だが、雫に言葉は届いたはずだー。


「ーじゃ、俺は帰りますんでー」

輝樹はそう言うと、その場から立ち去って行こうとするー


「ーーー雫を助けるのは、俺ですー」


前からなぜか悠馬にライバル心むき出しの輝樹は、

そう言い放つと、再び歩き出して、

「お邪魔しましたー」と、家の外へと出て行くー。


残された悠馬は、少し複雑に思いながらも、

2階にある雫の部屋のほうを見つめたー


「ーーーーー必ず、元に戻してやるからなー」


兄の悠馬と、彼氏の輝樹ー

二人は、それぞれの道で雫を助け出すことを

改めて強く、決意したー。



⑫へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初の長編でした~!


ついに”妹が洗脳されている”ことにたどり着いた

お兄ちゃん…!


今後は元に戻すために奔走していきます~!☆


お読み下さりありがとうございました~!

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