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暴走族のたまり場となっている

ゲームセンターに乗り込んだ兄の悠馬は、

暴走族のリーダー・修から、

”雫の豹変”に関係していると思われる男・玉城東吾の情報を

聞き出すことに成功したー。


東吾と会う際には、いつも

スターダストイリュージョンという店で会っていたのだと、

修は言うー。


”妹の雫の豹変”の謎に次第に近付いていく兄の悠馬とその仲間たち。


一方、そんな中、洗脳された雫は、学校内で

同級生の女子生徒・西園寺美桜を階段から突き飛ばしてしまいー…?


★前回はこちら↓★

<MC>歪められた絆⑨~暴走族~

豹変した妹の雫は”正気”ではないー? その周囲で暗躍する謎のオールバックにトレンチコートの男ー。 雫の豹変の原因に近付くことができると感じた悠馬は、 豹変した雫が、最近仲良くしている暴走族らのたまり場である ゲームセンター”エンジェル・エデン”へと再度足を踏み入れたー。 暴走族のリーダー・修と再び対峙する...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★主な登場人物★


・神里 悠馬(かみさと ゆうま)

大学生。妹の雫が豹変したことに困惑する。


・神里 雫(かみさと しずく)

高校生。兄の悠馬のことが大好き。少しイタズラっ子な一面も。


・森永 愛梨沙(もりなが ありさ)

大学生。悠馬の彼女。成績優秀な優等生。コスプレ趣味がある。


・藤嶋 亮介(ふじしま りょうすけ) 

大学生。高校時代からの親友。困った時には頼りになる存在。


・西園寺 美桜(さいおんじ みお)

高校生。妹・雫の親友。表裏が非常に激しい。


・九条 輝樹(くじょう てるき)

高校生。妹・雫の幼馴染で悠馬とも小さいころから面識がある。


・玉城 東吾(たまき とうご)

裏社会の便利屋。ヘルメットの人物と共に雫を洗脳した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー何で、西園寺さんを突き飛ばしたりしたの?」

雫の担任教師・弓原(ゆみはら)が、表情を歪めながら言うー。


弓原先生は、少しヒステリックな一面があるものの、

普段は穏やかな性格の先生だー。


「ーーウザかったからー」

”洗脳された雫”は、先生に対する態度も、明らかに悪くなっていたー。


弓原先生は少しイライラした様子で長い黒髪を掻きむしると、

「ーーあのね、神里さんー。

 最近、他の先生たちからも言われてるんだけどー

 生活態度とか、授業態度、ほんっとうに悪くなってるけどー、

 どうしちゃったの?」と、雫を見つめながら呟くー


「ー別に」

雫は面倒臭そうに弓原先生から目を逸らすー。


その態度にカチンと来た弓原先生は

「そういう態度!今までそんなことするような子じゃなかったでしょ!」と、

机を叩くー。


「ーーふん」

それでも、雫は先生に対する態度を改めようとはしないー。


「ーーーーーそんなに気に入らないなら、

 停学にでも、退学にでもすればいいじゃないですか」


雫はそう言いながら、弓原先生を睨みつけるー。

今までの雫が”絶対に見せないであろう”目ー。


弓原先生も、一瞬気圧されそうになりながら、

「ーー…ホントに、停学にするわよ」と、

怒りの形相で雫を見つめ返すー。


雫は、そんな弓原先生を鼻で笑ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーおい…雫ー 停学になったって本当かー?」

雫の彼氏・九条輝樹が、その話を聞きつけて、

生徒指導室付近に駆け付けたー。


雫は悪い笑みを浮かべながら

「3日間サボれるし、せいせいする」と、輝樹に対して答えるー。


「ーーー……雫ー…

 自分のしてることが、本当に分かってるのか?」


輝樹が困惑した様子で雫に言い放つー。


雫の兄・悠馬とは違い、どこか冷めている感じの

男子ではあるものの、

雫を思う気持ちはホンモノで、

最近の雫の振る舞いには、心を痛めていたし、

”神里雫は正気ではない”と言っていた、あの

オールバックの男のことを、悠馬とは別のルートで

輝樹も独自に調べていたー。


「ーー自分でもおかしいと思わないのか?雫ー。

 少し前の雫と、今の雫、明らかにやってることが矛盾してるー」


輝樹が単刀直入にそう指摘するー。


「ー言ってることも、振る舞いも、何もかも

 まるで別人になってるー。


 雫ー…自分でもそう思うだろ?」


輝樹が”正気じゃないかもしれない”雫に、そう言い放つと、

雫は少し挙動不審に視線を動かしながら

「ー…人は…変わるものでしょ!

 何もかもイヤになっただけ!」と、キツイ口調で言い放つー


「ーイヤになったきっかけは?」

輝樹がなおも問い詰めるー。


もちろん、”普段は”こんなことはしないー。

彼女である雫を束縛するようなことは絶対にしないし、

輝樹はそういう人間ではないー。


だが、”今”は、あえてそうしていたー。


「ーーきっかけー……」

雫が、自分の中で何かを考えようとするー。


しかし”頭の中に霧がかかっているかのように”

その考えは、まとまらず、ただ怒りの感情と、

”何か”の意のままに動くことだけを考えてしまうー


「ーうるさい!何なのさっきから!」

雫が怒りを露わにして立ち去ろうとするー。


しかしー


ガッ、と輝樹が雫の腕を掴むー。


「ー雫!!!!!

 今のお前は、絶対おかしいー!

 普通じゃない!」


輝樹が、珍しく感情的になって叫ぶー。


「停学になってもニヤニヤしてるなんて、

 雫はー、俺の知ってる雫はーそんなやつじゃない!!」


雫は一瞬、瞳を震わせるような反応を見せたものの、

すぐに輝樹の手を振り払って、

「ーわたしがどう生きるかはわたしが決めるー。

 誰にも口出しする資格なんてない!」と、

強い口調で言い放つー。


皮肉にもー

”洗脳されて”自分の意思とは関係なく、

行動させられている雫はー

”わたしがどう生きるかはわたしが決める!”と叫んだのだー。


そのまま不機嫌そうなオーラを振りまきながら

足早に立ち去っていく雫ー。


「ーーー雫ー」

輝樹は、そんな雫の後ろ姿を見つめながらも

「ーーーー…やっぱ、普通じゃねぇよー…今の雫はー」

と、困惑の表情を浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「え…て、停学…?」


帰宅した雫から”停学になった”ことを告げられた

母の裕子は困惑の表情を浮かべたー。


悠馬も、「停学ってー…」と、雫のことを心配そうに呟くー。


今日は早く仕事が終わり、帰宅していた父・茂雄も

困惑した様子だー。


「ーうざい子を突き落としたのー 

 ふふっー

 今思い出しても笑っちゃうー」


雫はそれだけ言うと、そのまま階段を登って

自分の部屋に向かおうとするー。


「ー雫!待ちなさいー」

普段は穏やかな母・裕子が珍しく声を荒げるー


ビクッとする父の茂雄ー


「ーー父さんー…何びびってんだよー」

隣にいた悠馬が小声で言うと、

茂雄は「い、いや、びびってないぞ」と

虚勢を張って小声で返事をするー。


「ーーーなに?」

雫が不満そうに母・裕子のほうを見つめるとー、

裕子は「どうしてそんなことばっかりするの」と、

怒りの口調で、娘の雫に問いただすー。


悠馬は、雫が”正気じゃないかもしれないー”という件を

まだ両親には伝えていないー。


両親の身を危険に晒したくないー、という気持ちも当然あったし、

”話したところで信じてもらえるかどうか”という気持ちや、

事態がよりややこしくなるのではないか、という不安もあったー。


色々、総合的に判断した結果ー、

まだ、雫の豹変に関わったかもしれない

オールバックにトレンチコートの男・玉城東吾のことは

両親には話していない状態だったー


「ーーーなに?文句あるのー?」

雫が反抗的な態度を取るー。


”洗脳”によって、雫は性格も、何もかも捻じ曲げられてー

別人のような振る舞いを続けているー。


「ーー文句…とかじゃなくて!!

 なんで、なんで悪いことばっかりするの!!」

母・裕子は、最近の雫の振る舞いに困惑し、

そして、疲れ果てていたー。


声を荒げて、そう雫に言い放つと、

雫は「ーいつまでもわたしを子供扱いしないで」と、

きつい口調で言い放つー


「ーーおい、雫ー」

悠馬は、雫と母・裕子の言い合いがエスカレートしないようにと

口を挟もうとするー


しかしー


「ーうるさい!あんたは黙ってて!」

雫が声を荒げて、悠馬を睨みつけるー。


「ーいつからそんな風になっちゃったの!」

雫の兄に対する言葉に、声を上げる母・裕子ー。


「ー最近の雫、おかしいよ!

 何があったの?

 何かあったなら、わたしでもお父さんでもいいから、

 ちゃんと言ってくれないと分からないでしょ!」


涙目でそう言い放つ裕子ー


「ーーおかしいー?」

その言葉に、反応を示す雫ー


「ーーーどいつもこいつもー…

 わたしのこと正気じゃないとか!おかしいとか!!

 何なの!?!?!?」


雫が声を荒げるー。


学校でー、輝樹にも自分の最近の行動を指摘された雫ー。


しかし、雫に施された洗脳は完璧ー。

雫からしてみれば、周囲の言っていることこそ間違いであり、

不愉快でしかなかったー


「ーーー…雫ー…

 父さんも、最近の雫は変だと思うぞー


 何か…何かあったならー話を聞くからー」


父・茂雄がようやく、そう口を挟むと、

雫は「あ~~~~!はいはい」と、不貞腐れた態度を取り始めるー


「どうせわたしは頭のおかしい娘ですよーだ!」

敵意をむき出しにする雫ー


「何なのその言い方!」

母・裕子の苛立ちが頂点に達して、

反射的に、雫の頬をビンタしてしまうー


「ー母さん!」

悠馬は、咄嗟に声を上げたがー、

既に時は遅く、母・裕子のビンタが、雫の頬を直撃したー


雫は、これまで見たこともないような目で

母親を睨むと、「うざい!!!!!」と大声で叫んで、

そのまま2階に駆け上がってしまったー。


その場で泣き崩れてしまう母・裕子ー


「ーーはぁぁぁ…」

どうしていいか分からず、頭を抱えてしまう父・茂雄ー。


両親ともに、悪い人間じゃないー。

これまで、悠馬・雫のことをしっかり育てて来てくれたし、

悠馬も、雫も、そんな両親に感謝をしていたー。


けどー

母・裕子も、父・茂雄も

”娘が洗脳される”という未曽有の事態に、

対応しきれずにいたー。


”平時では優秀な親”も、”非常事態”に適応できるとは、限らないー。


娘を叩いてしまった罪悪感と

どうすることもできない無力感に泣き崩れている裕子ー。

やっと立ち上がって頼りなく慰めようとする茂雄ー。


悠馬は、”今まで平和だった家族の絆”が

音を立てて崩壊していく光景を見たー…気がした。


2階に駆け上がる悠馬ー。


「ふざけんな!ふざけんな!!ふざけんな!!ふざけんな!!!」


雫が、自分の部屋の中で暴れているー。


教科書を投げつけてー

部屋中のものを投げて、蹴って、

部屋は、酷い有様ー


「雫…」

悠馬は、部屋で暴れている妹の姿を見つめながら、

困惑の表情を浮かべるー。


”ーーーー雫ーーー…ごめんなーーー…”

悠馬は”雫を助けてあげられない”ことに

悲しそうな表情を浮かべながら、雫の方に近付いていくー。


暴れている雫ー。


そんな雫を、悠馬は静かに、優しく抱きしめたー。


「ーーーは…?何なの!離して!

 うざい!!うざい!!消えろ!!!」


怒鳴り声を上げる雫ー。


だが、悠馬は雫を離さなかったー


「ーー雫ー…今は、何を言っても無駄かもしれないー。

 でも、これだけは言っておくー」


悠馬の言葉にー

なおも罵声を浴びせてくる雫ー。


それでも、悠馬はーーー

優しい口調で、雫のほうをまっすぐ見つめたー


「何を言われても…俺は雫の味方だからー」

とー。


雫からの心ない言葉に、悠馬の心は痛むー。


でもー

例え、心に千本の針を刺されようともーーー


”俺は、必ず雫を助けるー”


悠馬は、雫が”正気じゃない”と改めて確信しーー

雫を絶対に助け出すことを心に誓うのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”もしもし悠馬ー?”


しばらくしてー

彼女の愛梨沙からの電話に出た悠馬ー


「お、愛梨沙ー。こんな時間にどうしたんだ?」

悠馬が極力”いつものような元気”振りまきながら

そう返事をすると、

愛梨沙は言葉を続けたー。


”今、スターダストイリュージョンの近くにいるんだけどー

 例のー…

 オールバックの男の人が、さっきお店の中に入って行ったからー”


その言葉に、悠馬は「えっ!?」と声を上げるー。


スターダストイリュージョンとは、

暴走族のリーダー・修と繋がっていて、

豹変した雫の周囲に度々姿を現している

謎の人物・玉城東吾が時々出入りしているバーだ。


先日、修からその話を聞かされた悠馬は、

スターダストイリュージョンの周辺を確認しに行こうと

考えていたがー、

それよりも早く、悠馬に頼まれる前にー、

愛梨沙は自分の意思で、スターダストイリュージョンを探っていたー。


「ーーあ、亜理紗ー

 お、俺のためにそんなー

 危険もあるし、愛梨沙だって忙しいだろ?」


悠馬が、感謝しながらも困惑の言葉を口にすると、

愛梨沙は

”いいのいいのー。好きでやってるんだからー”と言うと、

悠馬はすぐに「今から行くよー。20分ぐらいでつくと思うー」と

答えるー。


愛梨沙は”うん!じゃあ、近くで待ってるー”とだけ、答えてそのまま

電話を切ったー。


悠馬はすぐに出かける準備をしてー

妹・雫の豹変の元凶ー…かもしれない玉城東吾と会うため、

走り出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー」

スターダスト・イリュージョンのすぐ側までやってきた悠馬ー。


しかし、愛梨沙の姿が見当たらず、悠馬は少し不安そうな

表情を浮かべるー。


「ーーあの~~~~」

背後から声がして、悠馬が振り返ると、

そこには、サングラスをかけた派手な風貌の女が立っていたー


「ーーお兄さん、ちょっとイケメンねー…

 どう?わたしと遊ばないー?」


悠馬は「え!?」と、困惑しながら、

茶髪の女のほうを見て、「えっ!?」ともう一度声を上げるー


周囲を少しキョロキョロしながら、

”愛梨沙、どこに行ったんだー?

 それにー、早くスターダストイリュージョンに入らないと

 玉城がー”

と、心の中で呟きながら、怪しい女のほうを見て、


「ーあ、遊ぶってー…な、何のことですか?」

と、答えるー。


だがー


「ーーぷっ…ふふふ…あはははは!」

目の前のサングラスに茶髪の女が突然笑い出すと、

「悠馬ってば、そんな顔を赤くしちゃってー」と、

”いつもの声色”に戻して、その女がサングラスを外したー


「って…!愛梨沙じゃん!」

悠馬が、そう叫ぶと、愛梨沙は「そうそう、わたしだよ~」と、

笑いながら、サングラスをしまったー


「ーー…すぐバレると思ったのに~」

愛梨沙は苦笑いしながら、そう呟くー


この前と同じように、コスプレ趣味を生かして”変装”して、

玉城東吾の周囲を探っていたのだったー


「ーー雫ちゃんも、この店に急に来たりするかもしれないし、

 念のため、変装しておこうかな~って」


愛梨沙はそう言いながら笑うー。


いつもとは別人のような派手な風貌に、

悠馬は「そこまでやるか…?」と、顔を赤らめながら笑うと、

愛梨沙は「そういえば、悠馬ー、今、わたしのこと知らないお姉さん

だと思って、ドキドキしてたよね?」と、ニヤニヤしながら言うー。


「え…!?あ、いや、そのー」

悠馬に浮気するつもりなどないー。

だが、一方で、変装している愛梨沙を

”知らないお姉さん”だと思ってドキドキしてしまったのは事実だったー


「ーーー”遊び”に行くつもりだったの~?」

愛梨沙がニヤニヤしながら続けるー


「い、い、い、いかないよ!断ろうとしてたし!

 本当に知らない女の人だったら、怪しすぎるしついていくわけ

 ないだろ?」


悠馬が真っ赤になりながらそう反論すると、

「ごめんごめんー」と、揶揄ったことを謝りながら、

悠馬のほうを、心底好き、と言わんばかりに微笑みながら

見つめる愛梨沙ー。


そしてー

話を本題に戻すー。


「ーーー例のオールバックの人ー、さっきあのお店に

 入って行ったからー」


愛梨沙が”スターダスト・イリュージョン”という名のバーを

指差しながら言うー。


「ーーー本当にごめんなー。こんなことに巻き込んで」

悠馬が申し訳なさそうに言うと、愛梨沙は

「いいのいいの!雫ちゃんは未来の義妹さんだし!」と笑うー


「はははー

 今のはプロポーズってことでいいのかー?」

悠馬は冗談を返すと、

「まぁ、とにかくー。ありがとうー」と、お礼の言葉を口にするー


愛梨沙が「わたしも一緒に行く?」と提案してきたものの、

悠馬は「いやー…危ないし、もう遅いから大丈夫」と、返事をすると、

愛梨沙は心配そうにしていたものの、やがて頷いて

「気を付けて」とだけ呟いたー


「ーーあぁ」

悠馬はそう返事をすると、愛梨沙に今一度お礼の言葉を口にして、

そのまま玉城東吾が入って行ったという

バー・スターダストイリュージョンの方に向かって歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


個人経営のバーだろうかー。


予想していたよりも小さなその店の扉を開くー。


するとー

カウンター席に、オールバックの髪型にトレンチコートの男ー

雫を”洗脳”した時にヘルメットの人物と一緒にいた

玉城東吾の姿があったー。


当然、悠馬はそこまでは知らないー。

ただ、雫の彼氏・輝樹や、大学の友人・我妻、彼女の愛梨沙の

話から、”雫の豹変”に関わりがある人物であることは

ほぼ確実と言えたー。


「ーいらっしゃい」

顔に傷のあるバーのマスターが、そう呟くー。


「ーーーーお?」

オールバックにトレンチコートの男が、悠馬を見て露骨に

反応を示したー


「ーー神里悠馬、だな?待ってたぜ」

東吾のその言葉に、悠馬は「えっ?」と、声を上げるー


「へへ、そう驚くなよー。

 暴走族のリーダーから聞いたぜ?

 あいつ、俺のこと喋っちまったんだろ?


 だから、お前がここに来ることは予想してたぜ」


東吾はそれだけ言うと、

「まぁ座れよ」と、カウンター席の隣の席に

座るように促してきたー。


「ーー…俺の妹のことー、知ってますか?」

悠馬は、それだけ呟くー。


いきなり”何をした?”とは聞かなかったー。


だが、東吾はそれを無視して、バーのマスターに向かって

「井上、オレンジジュースでも入れてやれ」と、言葉を呟くー


「おう」

井上と呼ばれたバーのマスターがその言葉に従い、

オレンジジュースを注ぎ始めるー。


「ーー…雫のことをー」

悠馬がさらに言葉を続けようとすると、

東吾は、悠馬の腕を強引に掴んで

「まぁ座れ、って言ってんだろ?座れ!」と、無理やり

悠馬を隣の座席に座らせたー。


悠馬を隣に座らせると、しばらくおつまみのからあげを

一人、美味しそうに食べる東吾ー。


「ーーうめぇなこれー 井上、どこの冷凍食品使ってるんだ?」

笑いながら東吾が、バーのマスター・井上に向かってそう呟くと、

井上は「冷凍食品と決めつけるな」と、不快そうに言い返すー


「でも、冷凍食品なんだろ?」

笑う東吾ー


「まぁな」

ふん、と言いながら返事をする井上ー。


悠馬のことを全く無視して、一人バーでの食事を楽しむ東吾ー。


「ーーー”雫が正気じゃない”とは、どういうことですかー」

悠馬は、単刀直入に、そんな東吾に対して言葉を口にしたー。


東吾は、その言葉を聞くと、

自分の目の前に置かれていた皿のから揚げに向かって

突然拳を叩きつけたー。


ぐしゃっと、潰れて油を飛び散らせるから揚げー。


「ーーーあの、パンチングマシン野郎ー」

東吾はそう呟くと、

「この、からあげと同じになっちまったー」と、

ニヤニヤしながら呟くー


「ーーー!!」

悠馬は表情を歪めるー。


パンチングマシン野郎とは、

恐らく暴走族のリーダー・倉田修のことだろうー。


そして、このからあげと同じになっちまったー、とはー…


悠馬が潰れたから揚げを見ながら、表情を歪めるー


「ーーお前も、このから揚げみたいにならないように気をつけな」


笑いながら、潰したから揚げを口に放り込んだ東吾はー

「別に脅しじゃないー忠告だー」と、笑みを浮かべたまま言うと、

悠馬のほうを見つめたー。


「ーーー…」

悠馬は気圧されながらも、東吾のほうをまっすぐ見つめながら

言葉を再び口にするー


「ーーー”雫が正気じゃない”とは、どういうことですかー

 答えて下さいー」


とー。


その言葉に、東吾は、ふっ、と笑うと

静かに口を開いたー



⑪へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今回の長編ももう10話ですネ~!

ついこの間始まった気がしますが、あっという間でした~!☆


まだまだ物語自体は長い道のりなので、

これからも頑張ります~!☆


今日もありがとうございました~!

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