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AV女優として活動する”あゆみ”はー、

妹の姫奈なのではないかー。


そう思った兄・剛志はこっそりと実家に向かいー、

バイトに出かける妹の姫奈の様子を確認したー。


そしてー、その先に待ち受けていた現実はー

剛志にとって、とてもつらく、過酷なものだったー。


やはり、AV女優の”あゆみ”は、女子大生の妹・姫奈だったのだー。


妹が憑依されていることも知らず、

愕然とする剛志ー。

兄と妹の絆の行方はー…?


☆前回はこちら↓☆

<憑依>妹がAVに出てた③~嘘~

大学生の妹・姫奈がAVに出演していたー。 兄・剛志は困惑しながら、飛ぶようにして実家に帰り、 妹の姫奈にそのことを確認するー。 しかし、その結果、”他人の空似”であることが判明したー。 一安心する剛志ー。 だがー…実際には妹の姫奈は何者かに憑依されていて、 ”本人も無自覚のまま”AVに出演していることを、 剛志...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー憑依薬ー?」


数か月前ー。

スタッフ数名が、”監督”の男に対してそう呟いたー


「あぁ、偶然海外の怪しいサイトで手に入れたんだー」


そう言いながら数本の憑依薬をスタッフたちに見せつける監督ー。


「ーー憑依ってあのー…つまりあれですか?」

スタッフの一人が言うー。


AV業界の人間たちー、というだけあって、

このあたりの理解力は流石、というべきだろうかー。

監督からの言葉に、その場にいたスタッフたちはすぐに

”その言葉が何を意味するのか”を理解したー。


「ーー知っての通り、うちの資金は底をついているー

 既に、新しいAVを撮影するためにAV女優に出演を依頼する金もないー」


”監督”であり、この小さな事務所の社長でもある男はそう呟くー。


「だが、それがあればー

 俺たちの思い通りにできるAV女優たちが、誕生するー」


監督が笑みを浮かべながらそう呟くー。


「ーえ?え?いやいや、ちょっと待ってくださいよ監督ー」

スタッフの一人は思わずそう口を挟んだー


「ー監督、うちの事務所が倒産しそうだからって

 ついに頭おかしくなったんですか?

 急に憑依薬なんてー


 いやまぁ、そりゃ、憑依薬なんてモンが実際にあるなら

 どんな女だって、AVデビューさせることできちゃいますけど、

 そんなこと実際にできるわけないでしょ?」


軽そうな口調で言うスタッフー


「ーーいや、これはホンモノだー」

監督はそう呟くー。

この場で証明することはできないが、

監督は”確実にこれが本物であるという確証を既に得ている”の

だと言うー。


「ーーこの憑依薬を使って、お前たちが女に憑依してー

 そして、この事務所専属のAV女優になってほしいー。


 もちろん、事務所が安定したら給料も払うし、

 乗っ取った身体は、撮影の時以外は好き放題してもらって構わないー」


その日がー

全ての始まりだったー。


数名のスタッフが憑依薬を使い、己の身体を捨てて、

”自分の好みの身体”を街中で見つけてー

”AV女優”としてその身体を利用するためー

そして、”己の新しい身体とするため”ー

憑依したのだー。


そうして憑依された人間の一人がー、

剛志の妹で、女子大生の姫奈だったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”あぁ、あのシスコンは帰ったよ”


小さな事務所の建物の前にやってきていた剛志は、

妹・姫奈が入って行った建物が

”AVの事務所”であることを確認して、

険しい表情を浮かべていたー。


中から聞こえて来た姫奈の声ー

姫奈に”あのシスコン”と言われたことにも、

剛志は強いショックを受けてしまう。


「そ…そんなー…」

剛志はしばらく事務所の扉の前で

放心状態になっていたー。


姫奈に”後輩の身体は俺のモノ”のAVを見せて

確認した際に、

姫奈は”これはわたしじゃないよ”とハッキリ断言したー。

嘘をついている素振りもなかったー


でも、その姫奈はバイトに行くと嘘をついて

こうしてAVの撮影現場に足を運びー、

AV女優として活動していたのだー


「ーー姫奈ー…」

悲しそうにそう呟く剛志ー。


もちろん、姫奈本人が望んでAV女優として活動しているのであれば、

それはそれで、妹の自由にさせてあげたいー


剛志の本音としては”とてもショック”だが、

けれども、AV女優として活動することは別に違法行為ではないし、

犯罪でもないー。

姫奈は既に成人済みの大学生だ。

そこに、何の問題もないー


けどー


”ーー何で…ウソをついたんだよー…姫奈ー”

剛志は、”姫奈に平気で嘘をつかれた”ことに強いショックを受けていたー。


言葉では言い表せないような、とても強いショックをー。


そしてー

剛志は、気づいた時には、自分でも無意識のうちに、

そのAVの事務所の入り口の扉を開きー、

中へと足を運んでしまっていたー。


自分でも、その行動が正しいのか分からないままー

AV女優としての”裏の顔”を見せている姫奈と、

事務所のスタッフたちの前に、姿を晒したー


「ーおや、ここは部外者は立ち入り禁止ですがー?

 どのようなご用件でしょうか?」


監督が言うと、近くにいた姫奈が表情を歪めたー


「おまーー…いや、お、お兄ちゃんー」

姫奈の言葉に、監督や周囲のスタッフは

「こいつが例のシスコン!?」と、声を上げるー。


「ーーー姫奈ーーー……」

剛志は”例のシスコン”と言われたことに

更に強いショックを受けながらも

姫奈のほうを心底悲しそうな表情で見つめるー。


「ーーおい、どうするんだよ?」

監督が小声で呟くと、姫奈は「大丈夫ですよ」と

小声で呟いてから、剛志のほうを見つめたー


「ーーな~んだぁ お兄ちゃんー バレちゃったー てへっ」

悪びれる様子もなく”姫奈のフリ”をしてそう呟くー


「ーーーやっぱー…あれは姫奈だったんだなー」

剛志が悲しそうにそう呟くと、

姫奈は「ふふ そうだよ」と、笑顔で答えるー。


本当はー

”嘘”をついていたわけではないー。


姫奈には憑依されている間の記憶がなくー、

憑依されている間の”空白部分”は、

憑依している男によって”うまく調整”されているー。


姫奈本人は、本当に”自分じゃない”と思っていたし、

自分は、スイーツ店でバイトをして帰ってきた、と思っているー。


”仲良しなお兄ちゃん”に、嘘をつくつもりなんて全くないし、

嘘をついている自覚も全くないのだー。


「ーーーーーわたしが、AVに出ちゃいけないの?」

姫奈がクスッと笑うー。


「ーい…いや…そ、そうじゃないけどー…

 そうじゃないけどさー」

剛志は、震えながら姫奈のほうを見つめるー


「ーどうしてー…

 どうして、嘘ついたのかなってー」


悲しみに満ちた目で剛志が、姫奈を見つめるー。


もちろん、”兄としては”姫奈がAVに出演していることは

ショックだったがー、

それ以上に”嘘をつかれたこと”がショックだったー


そしてー、姫奈が”あゆみ”を名乗ってAV女優として

活動しているということはー

”あゆみ”が出演している作品内のことを

”姫奈がやった”ということになるー。


それもショックだったし、

もう、何もかもがショックで、頭の中が破裂しそうな、

そんな状態だったー。


「ーーお兄ちゃんが、わたしを束縛しようとするからでしょ?」

姫奈はいつもよりキツイ口調でそう言い放つー


「ーそ…束縛ー?」

剛志が、悲しそうに呟くー


「ーそうー。

 わたし、もう女子大生なんだよ?

 それなのにお兄ちゃんはいつもいつもいつもー、

 わたしの邪魔ばっかりするしー。


 このお仕事だってそうー

 わたしは誇りを持ってAV女優としてお仕事してるのー


 それなのに、わたしを尾行したりしてさー。

 なんかこうー 正直、お兄ちゃん、キモイよ?」


姫奈の言葉に、剛志はこの場で倒れ込んでしまいそうなほどの

強いショックを受けるー。

自分で自分のことを”女子大生”と言ったり、少し違和感が

あっても、剛志はそんなことには気づかないー。


”姫奈本人”がそう思っているわけでもないのにー

”憑依”なんてこと、夢にも思っていない剛志は、

本当に姫奈にそう思われていると思ってしまうー。


「ーー(クククー シスコン野郎には刺激が強すぎたか?)」

姫奈に憑依している男がそう呟くー。


周囲の監督やスタッフは笑いながらその様子を見つめているー。


「ーーー……そっかー……」

剛志はしばらく放心状態だったが、やがてそう呟くと

姫奈のほうを見つめたー。


その目は、今にも泣きだしそうなー

そんな雰囲気すらあったー。


「ーごめんなー……そうだよなー…

 姫奈が…この仕事……好きでやってるならー

 俺がとやかく言うことじゃないよなー


 姫奈に嘘をつかせるようなことになっちゃったのもー

 俺のせいなんだよなー」


剛志は少し拗ねたような口調で、そう呟いたー。


「ーーよく分かってんじゃん!」

姫奈はからかう様にして言うと、

「あ、そうだ!お兄ちゃん!そんなに妹のことが

 大好きなら、わたしと一緒にAVに出る?」

と、笑いながら言うー。


そして、監督に対して

「監督~!お兄ちゃんが男優として出演したいって~!」と、

ケラケラ笑いながら言うー。


「ーーふはっ!妹とヤル気か?」

監督も笑い出すー


「ーーー…で、出ないよ! 出ない!

 俺は、そういうことーしないから!」


剛志は顔を赤くしながら言うと、

「ーーー…もうー姫奈の邪魔はしないよー

 今まで本当に、ごめん」

と、やっとの思いで口から振り絞って

そのまま事務所の外に向かって、飛び出したー。


「ーーははははっ!バカなやつ!」

姫奈はそう叫ぶと、監督のほうを見て、

「ーこれでもうあのシスコン、俺たちには近付きませんよ」と、

嬉しそうに言い放ったー


「ーははははは!だな!

 でもーー…その女、どうするんだよ?」

監督が少し不安そうに呟くー


「ーん~…まぁ、いつも通り、記憶をいじくっておきますよー」

姫奈は笑いながら言うー。


兄と妹の仲を引き裂いてしまったー

いつも以上に色々調整しないといけないがー

まぁ、なんとかなるだろうー。


「ーそれにしてもー

 ずっと”支配”できないってのは、なかなか面倒ですよねぇ」

姫奈がドサッと椅子に座りながら煙草を吸い始めると、

監督のほうを見て呟くー


「仕方ないだろー。

 お前だって”消えたく”はないはずだー」


監督の言葉に、姫奈は「ま、事前に説明された上で憑依したんで

別に納得はしてますけどね」と、笑うー。


監督が用意した”憑依薬”は、

使った人間の身体は消滅するー。

姫奈に憑依している男を始め、他数名のスタッフも、

憑依薬を使った際に”霊体”となって、身体は消滅したー


そしてーーー

”憑依した相手”の身体をずっと乗っ取っていることはできないー

という欠点があったー。


”乗っ取られた人間と、真逆の思考を常にしていると、脳に負担がかかり、

 最終的には身体が、”憑依した側の意識”を、外敵と察知してしまい、

 まるで、人間の身体がウイルスに対する免疫を働かせるかのように、

 憑依した側の意識が駆除されてしまい、消えてしまうー”


と、いう欠点だー。


長期、身体を支配し続けていると、やがて頭痛が生じてきて、

最後には、憑依した側が免疫力のようなもので、消されてしまうー。


そのため、”身体を完全に支配”している時間と、

”乗っ取られた側に意識を返す”時間を交互に用意しなくてはならずー、

姫奈に憑依した男も、AVの撮影中は姫奈を支配しー

それ以外は、姫奈の意識を元に戻しているー。


「ーーまぁでも、支配を繰り返しているうちに、

 その身体の”脳”がだんだんお前の考え=わたしの考えって

 認識するようになってきて、

 そのうちずっと支配してられるようになるらしいけどな」


監督がそこまで言うと、

姫奈は「へへ、この身体がババアになる前に、完全に支配したいですね」と、

笑いながら呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ガチャー


一人、自宅に帰宅した剛志は、

放心状態で家の中で座り込んでいたー


「ーーーーー……ごめんな 姫奈」


姫奈に言われたきつい言葉の数々が

頭の中で何度も再生されるー。


妹を大事にしてきたつもりだったー


けど、それが姫奈にとっては

イヤで、嫌でたまらなかったのかもしれないー。


「ーもう…俺ー…姫奈の邪魔はしないからー…」


姫奈が憑依されているーそんなことに気付けないまま、

剛志は、静かにそう呟いて、

一晩中、この世の終わりかのような表情を浮かべながら

呆然と、夜を過ごしたー



⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回デス~!

放心状態のお兄ちゃんが立ち直れる日は

来るのでしょうか~?


今日もお読み下さりありがとうございました~!

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