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森原 啓太郎(もりはら けいたろう)は、

今日もオタク仲間の、冬川 敦也(ふゆかわ あつや)と共に

夜遅くまでオタクトークで盛り上がっていたー。


啓太郎と敦也は、大学時代からの友人ー。

二人とも共通の趣味を持ち、話もよく合うことから

大学卒業後、社会人となった今でも、

こうして時間さえあれば通話したり、直接会ったり、

オンラインゲームを楽しんだりしているー。


”ーそういやさ~この前、会社のやつらに

 彼女はいないのか~?とか言われてさ~”


敦也が笑いながらそう呟くー


「ーははは、未だにそんなこと聞くやついるんだな~?」

敦也とオンライン対戦をしながら、啓太郎はそんな言葉を口走るー


”まぁ、適当に”いますけど”って答えておいたけどな~”

敦也の言葉に、啓太郎は思わず笑うー


「ーははははは、あれだろ?画面の向こうから出て来てくれない

 彼女だろ?」

啓太郎が言うと、


”そうー、ご名答!”と、嬉しそうに敦也は声を上げたー。


「ー彼女とか、いるだけジャマだし、

 俺たちには趣味があれば十分だもんなー。」


啓太郎の言葉に、

敦也は”ちげぇねぇ”と、答えると、

”俺は趣味道を貫くぜ!”と、嬉しそうに叫んだー。


一生の親友ー。

結婚できなかろうとー

家庭を持つことができなかろうとー

生涯独身であろうと、

生涯童貞であろうと、

”俺たち”には関係ないー。


啓太郎は、そんな風に思っていたー。


敦也も、啓太郎も恋愛になど、微塵も興味がないー。

恋愛に時間を掛けるぐらいならー

恋愛にお金を掛けるぐらいならー


”俺たち”は、

推しにお金を掛けるー。

推しキャラのために、時間も費やすし、お金も費やすー。


恋愛など、している暇はないのだー。


「ーー敦也、お前がいて、本当によかったー。

 これからも、趣味道を貫こうな!」


”ー急に気持ちわりぃな!まぁー俺の方こそよろしくな!

 間違ってもー

 急に”俺、結婚することになったんだ!”とか

 やめてくれよな?”


「ーははは、するわけねぇだろ!」


そんな会話をしながらー

その日も、楽しい仕事後の時間を過ごしたー。


だがー

その翌日ー。

敦也は”女”になったー。


「ーーは?今、何て言った?」

啓太郎はスマホを手に、思わず聞き返すー


”だから…俺、目が覚めたら女になってたんだって!”


その言葉に、啓太郎は困惑した表情を浮かべながら

スマホを自分の耳元から離して

通話相手の名前をもう一度確認するー。


そこには確かに”敦也”と書かれているー。


「ーーーー」

「ーーーーー」


「ーーーどちら様ですか?

 俺の友達のスマホ、拾ったってことですか?」


”だから~!敦也なんだってば!”


電話の向こうから聞こえてくるのは、

ちょっとアニメ声っぽい感じの可愛らしい女の声ー。


「ーーいやいやいや、さすがに無理がありますよ」

”相手が敦也”だとは夢にも思っていない

啓太郎はハッとした様子で叫んだー


「って、まさか敦也の彼女さん!?」


昨日の夜ー

お互いに一生このまま、と改めて約束したはずだー

それなのに、まさかもう彼女をー…


”違うってば!俺に彼女なんてできるわけねぇだろ!”


声とは裏腹に、乱暴な言葉遣いをする女ー。


「ーーーー」

啓太郎は困惑した末に、

「ほ、本当に敦也だって言うなら、アイドルコレクターズの

 全アイドルの名前、言ってみろよ!」と、

そう、スマホの向こうの女に向かって言い放ったー。


”アイドルコレクターズ”とは、

豪華声優陣が出演している”アイドルをコレクションして育てる”

という内容のスマホ向けゲームで、

敦也も啓太郎も、二人そろってその作品を楽しんでいるー。


電話相手の女が、本物の敦也なのであれば、

間違いなく”全アイドルの名前を言えるはず”なのだー


”なんだ…そんなんでいいのかー

 じゃあ、少し長くなるけど、聞いてろよー”


電話相手の敦也を名乗る女は、それだけ言うと、

すらすらとアイドルコレクターズに登場するアイドルの名前を

”ゲーム内の番号順”に言い始めたー。

しかも、声優の名前を言え、とまでは言っていないのに、

敦也を名乗る女は、一人ひとりのアイドル名と、

担当声優の名前をフルネームで言い始めたー


「~~~~~~~~」

その声を、黙って聞きながら困惑の表情を浮かべる啓太郎ー


やがてー

敦也を名乗る女は、作中に登場するアイドルの名前と

担当声優を全て言い終えたー。


”どうだ?これで満足か?”


その言葉にー


「満足だ。間違いなく敦也だな」

と、あっさりと啓太郎は見つめたー。


敦也以外の人間に、ここまでのことが言えるはずがないー。

間違いなく、電話相手の女は敦也だー。


「ーーえ…じ、じゃあ、マジでお前、女になってるってことー?」

呆然としながら啓太郎が言うと、

敦也は”だから、さっきからそう言ってるじゃねぇか”と、

声を上げるー


「ど、ど、ど、ど、どういうことだー!?」

今になって”親友が女になった”ということに対する

驚きがこみ上げてくる啓太郎ー


”し、しらねぇよー俺だって困ってるんだよー”


その言葉に、

啓太郎は「と、とりあえず、今から俺の家に来い!

ちゃんと、話し合おう」と、

敦也に自分の家に来るように提案したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


女体化した敦也と啓太郎の家はそう遠くはないー。

1時間もしないうちに、インターホンが鳴り、

応答すると、そこには見知らぬ美少女が立っていたー。


”あ…あの…俺だけどー”

急に恥ずかしそうにしている敦也を見て、

啓太郎まで恥ずかしくなってくると

「ちょ、ちょっと待ってろー」と、

すぐに玄関の扉を開けて、美少女になってしまった敦也を

招き入れたー。


「ーほ…ほ、ほ、本当に敦也なのか?」

啓太郎が言うと、敦也は「ほ、本当だよ!」と言いながら

家の中に入って来るー。


敦也がいつも着ているジャージ姿で、

”今の敦也”のような美少女にはふさわしくないような

格好を見て、啓太郎は「ーその格好でよく街を歩けたな」と、呟くと、

「ー別にいいだろ」と、敦也は恥ずかしそうに答えたー。


「ーーー……」

イスに座る敦也ー。


啓太郎はソワソワした様子で、「と、とりあえず飲み物」と、

冷蔵庫の方に向かうー。


「ーーーーー」

敦也自身も、そわそわした様子で、

自分の髪や、胸を意識してしまっているのか、

落ち着かない様子だー。


「ーー…………で……な、なにがあったんだよ…?」

啓太郎はコップに飲み物を入れて持ってくると、

そう呟いたー


敦也は「…わかんねぇ…」と、うつむきながら呟くー。


「ーい…いや…わかんねぇって…?

 急に女になるなんておかしいだろー?

 な、なんかしたのか?

 それとも女装?」


啓太郎の言葉に、敦也は「女装じゃねぇよ!ほら!」と、

ジャージのチャックを下ろして、突然、胸を平然と見せつけたー


「ーうわっ!?や、やめろよ!」

顔を赤らめながら啓太郎が目を逸らすー


敦也は顔を赤らめながら

「お、お前が女装なんて言うから!」と、

可愛らしい声で反論すると、

「ーーわ、分かったから、ふ、服を元に戻せ!」と、

啓太郎は慌てた様子で呟いたー。


啓太郎も敦也も、彼女なんていたことがないし、

生身の女性の身体など、見たことがないー。

二次元専門で、三次元のエッチな動画なども

ほとんど見ないー。


全く耐性のない二人にとって、

今のこの状況は、戸惑い以外の感情が

浮かんでこないー

そんな、状況だったー


「ーって、ていうか、アレ…アレつけないで外出したのかよ!」

下着のことを指摘する啓太郎ー


「ーあ、アホか!?俺がブラなんて持ってるわけないだろ!」

敦也が顔を真っ赤にしながら言うと、

想像以上の可愛さに、啓太郎は恥ずかしくなって目を逸らしたー


「お、おい!そういう反応はやめろって!」

敦也の言葉に、啓太郎は「そ、そうだよなー…」と、

何とか気持ちを落ち着かせると

「じ、じゃあ、改めてー」と、敦也から事情を聞いたー。


しかし、敦也にも全く”女体化”の心当たりがなく、

昨日、普通に寝て、今日、普通に起きたら

女になっていたのだと言うー。


「ーーーーー元に戻れるのか?それ?」

啓太郎の言葉に、敦也は首を横に振りながら

「分かんねぇ」と、呟くー。


「ーーーー」

「ーーーー」

沈黙する二人ー。

気まずい空気が流れるー。


だが、啓太郎は親友の敦也が困っている様子を見て、

深呼吸をすると、

”敦也がどんな姿になろうと、敦也は敦也だ”と

心の中で決意するー。


”親友の俺が、こんな戸惑っていてどうする?

 男とか、女とか関係ねぇー

 今まで通り、俺は敦也と趣味を楽しめばいいんだ”


「ーーまぁ、あれだ、最初は戸惑ったけど、俺は気にしないから」

啓太郎の言葉に、敦也は「啓太郎…」と、少しだけ

安心したように呟くー


「ーー元に戻れなくても、俺は今まで通りだ! な!」

啓太郎が言うと、敦也は「お前がいて、本当によかったよー」と、

嬉しそうに微笑んだー。


翌日になれば、元に戻るんじゃないかー。

そんな風にも期待したものの、敦也は翌日も”女”のままで、

仕方がなく会社は有給消化でしばらく休むようにしたー。


啓太郎は信じてくれたものの、さすがに会社の人間に

”すみません 女になってました”は、信じてもらえないだろうー。


「ーーー俺、このまま元に戻れなかったら、

 会社、クビになるのかな?」

不安そうに呟く敦也ー。


啓太郎は、そんな敦也と一緒に歩きながら、

「ーー…まぁ……その時は、俺も力を貸すよ」と、呟くー


敦也は、啓太郎の前でこそ、よく喋るが、

本来は大人しい性格で、人見知りも激しいー。


そんな敦也を見つめながら

啓太郎は”親友として、守ってやらなくちゃな”と、

心の中で決意するー。


”できる限り、いつも通りにー”


そう考えている啓太郎は、今日は敦也と一緒に

”いつものお店”に遊びに来ていたー。


いつものお店とは、アニメグッズやゲームなどが売られている

啓太郎たち行きつけのお店だー。


「ーーお~!これ売ってんじゃん!すげぇ!」

美少女になった敦也が嬉しそうに、

推しキャラの欲しがってたグッズを見つけて

喜んでいるー。


「ーーお、マジだ!やったな」

敦也が女体化したことにも、だんだんと慣れて来た啓太郎は、

”いつものように”買い物を堪能していたー。


だがー

啓太郎は、”敦也の女体化”を受け入れることができても、

世の中、そう甘くはなかったー。


「ーあの子、誰だよ?」

「可愛くねー?」


常連客たちが、美少女になった敦也を指さしながら呟くー。


「ーー…ーーあ、敦也!あっちも見てみようぜ!」

そんなヒソヒソ話が聞こえた啓太郎は、敦也にそれが聞こえないようにと、

店内の人が少ないコーナーの方に、敦也を呼んで

移動させるー。


しかしー


そこに、お店の店長がちょうどいて、

店長は「お!いらっしゃい!」と、啓太郎を見て、

笑みを浮かべたー


啓太郎や敦也は、学生時代からこのお店の常連のため、

店長とも顔見知りだー


「ーお!まさか彼女さん?」

店長の何気のない一言ー。


敦也は、顔を真っ赤にして「いや…そ、そのー」と、

困ったような表情を浮かべているー


啓太郎もー

”どう答えていいかー”

分からなかったー。


そうこうしているうちに、店長は他のお客さんに呼ばれて

レジの方に向かっていくー。


”あの子マジで可愛いじゃん”

”ーもしかして、あの子も好きなのかなぁアニメとか”


「ーーーーー」

敦也は顔を赤らめながら、下を俯いているー。


「ーーーー…悪い…こんなつもりじゃ」

啓太郎が呟くー。

女体化した敦也を、いつものお店に連れて来たのは

”いつも通りの日常”を少しでも楽しませてあげようとしたからー。


だがー…

結果的にー、

それはできなかったー。


「ーーいやー…大丈夫だよー」

けれどー、敦也は思いのほか、気にしていなかったのか、

顔を赤らめながらも、明るい笑顔でそう答えたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーじゃあ、今日は悪かったなー」

「いや、ありがとうー」


そんな会話をしながら、

お互いの家に向かって帰り始める二人ー。


”申し訳ないことしちゃったなー”

啓太郎は、女体化した敦也に対して

極力普通に接しようとしていたが、

これからは連れていく場所も考えないとな、と、

そんなことを考えながら家への道を歩くー。


だがーーー


”ーーー俺が…かわいいー…?”


啓太郎の想いとは裏腹に、

啓太郎と別れて家に向かう敦也はー

”かわいい”と言われたことで、

これまでにない感情が、自分の中で

芽生え始めていたー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


美少女になった親友…!


次第に二人の間に生まれるすれ違い…★

それはまた次回のお楽しみデス~!


今日もお読み下さりありがとうございました~!

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