Home Artists Posts Import Register

Content

「ーー淳也(じゅんや)って本当に恋愛とか興味なさそうだよなぁ~」


とある高校の昼休みー。

友達と話しながら退屈そうにしていた

男子高校生・藤岡 淳也(ふじおか じゅんや)に友達の一人が

ふとそんな言葉を投げかけたー。


「ーーん?うん。興味ないな」

淳也が隠す気もない、という様子で即答するー


「ーーはは…でもそれじゃ~彼女とかできないんじゃね?」

彼女持ちの友人・剛(つよし)の言葉に、

「ーーあぁ…いいんだ、俺はー」と、淳也は

笑いながら答えるー。


「ーー俺は生涯独身って決めてるし、

 彼女は別にいらないからさ」

淳也のそんな返事に、淳也と話していた剛を含む三人の

友達が苦笑いするー。


「ーー生涯独身、決めるの早くね?」

剛が思わずそう言葉を口にすると、

淳也は「ー俺は11歳の時から生涯独身って決めてるけど?」と、

真顔で返事をしたー。


剛を含む他の三人は、何となくこれ以上聞いてはいけないような

気がして、そのまま別の話題へと話を切り替えるー。


淳也はー

昔から恋愛に興味がなく、異性にも興味がなかったー。

特別な理由はないー。


単純に、そういう意欲が湧かず、

誰かを好きになったこともないため、

”何が楽しいのか分からない”という状態だー。


”興味がないこと”を話題に出されても、

興味がないから盛り上がらないー。

興味がないから、欲しいとも思わないー。

欲しいとも思わないから、何のアクションも起こさないー。


プライベートの時間を何も興味がない恋愛に

費やしたくないー。

ただ、それだけだったー。


「ーーあ~!あれマジで笑えるよな~!」

恋愛の話題から別の話題に変わるとすぐに、

淳也も剛たちの会話に入って盛り上がり始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーお疲れ様でした~!」


ふぅ、とため息をついた入社2年目のOL・

川崎 麻莉奈(かわさき まりな)は

疲れた様子で、夜の街を歩いていたー


会社では”天然キャラ”として通っている麻莉奈ー。

いや、小さいころから、よく天然と言われていた気がするー。


そんな彼女は、”今日も”ため息をついていたー。


”社会人”ー

いつかは、自分もそんな立場になる…

そんなことは分かっていたー


けれど、実際になってみると思うー。


部活帰りだろうかー。

コンビニから楽しそうに話をしながら出て来た

三人組の女子高生を見つめると、

麻莉奈は”いいなぁ…”と、心の中で思うー


小さいころー

20代の大人は、とても大人に見えたー


けど、自分が実際にこの年齢になってみて思うー


”大人って、案外、中身は子供のまま”ー


そんなことに、気づいたー


今でも、会社のおじさんおばさん達と話をするよりも、

きっとコンビニから出て来た三人組の女子高生たちと

喋っていた方が話も合うだろうし

”あっち側”にいたいー。


”わたしのいるべき場所は、こっちじゃないー

 精神年齢が学生のままのわたしがOLの格好して

 何をするつもりなのー?”


と、心の中で首を傾げてしまうー。


けれどー

現実はそう甘くはないー。

大学を卒業して、社会人になった麻莉奈が

あの子たちと一緒に楽しい時間を過ごすことはできないし、

明日もまた、会社に向かうことになるー。


会社でパワハラを受けたりしているわけではないものの、

学生時代の自由が今でも恋しくなるし、

働いて帰って、休日に学生時代の友達と少し遊ぶー

そんな、同じ日々の繰り返しにため息を出さずにはいられないー。


「ーーなんか、おじさんみたいー」

とほほ、と思いながら女子高生たちが出て来たコンビニとは

別のコンビニで購入したコンビニの袋をぶら下げながら

”わたしはこのままおばあさんになって~…”と、

ついネガティブな考えが頭の中に浮かんでしまうー。


”は~~…あと3日~”

麻莉奈は暗くなった直後の夜道を歩きながら

そんな”カウント”を頭の中で呟くー


”土曜日”までのカウントだー。

今日は火曜日ー。

あと水曜日と木曜日と金曜日を頑張れば、

麻莉奈の今の生きがいである”お休み”にたどり着くことができるー。


家までのバスに乗り、

麻莉奈がウトウトしていたその時だったー


前を走っていた乗用車が急にブレーキを踏んだため、

バスが急ブレーキを踏むー。


「きゃっ!?」

ウトウトしていた麻莉奈は急激に現実に引き戻されー

ちょうど、麻莉奈の近くに立っていた男子高校生が

吹き飛ばされたのに巻き込まれる形で、

そのまま転倒してしまったー。


「ーーーす、すみません…!大丈夫ですか?」

男子高校生と一緒に転倒してしまった

麻莉奈ー。

そんな麻莉奈に、親切な女性がすぐに声をかけてくれて、

そのまま立ち上がるー。


転倒したのは、幸い麻莉奈と男子高校生の二人だけだったようで、

親切な女性が「大丈夫です!」と、運転手の方に向かって言うと、

バスは再び走り出したー


前の車が急停車した理由は不明だったが、

”高齢者が運転していることを知らせるマーク”がついていたため、

操作を誤ったのだと思うー。


事故が起きなかっただけよかったー。


そんな風に思いながらも、

麻莉奈は”わたしと男の子だけ転ぶなんて…”と、

己の運の悪さを呪うー。


「ーーーー」

”でも、倒れたわたしにすぐに手を差し伸べてくれるなんて

 優しい人だなぁ”

と、自分に救いの手を差し伸べてくれた女性のほうを見つめるー。


「ーーー(わぁ、わたしにそっくりー)」

なんと、転倒した麻莉奈に手を差し伸べてくれた人は、

自分にそっくりな女性だったー。


だがーーー

隣に立つその女性は、麻莉奈と同じようなことを考えていたー


”俺とかなり似てるけどー…

 こんなやつ、同級生にいたっけなぁ…”


隣に立つ女性は、”自分がぶつかったせいで倒れた男子高校生”を

横目で見つめながら表情を歪めるー。

自分そっくりで、自分と同じ高校の制服を着ているー。


こんなそっくりなやつ、いただろうかー。


「ーーーーー」

「ーーーーー」


二人は、しばらくバスに揺られながら、

数十秒後に、ほぼ同時に叫んだー


「ってー俺じゃんー!?」

「ーーえぇっ!?わたし!?」


隣に立っていた女性と、麻莉奈が同時に叫ぶー。


しかも、隣に立っていた女性が、驚いたように

自分の口のあたりに手を動かしているー。


麻莉奈には、その理由が良く分かったー


”えー…?何この声ー…!?”


自分の口から”知らない声”が、出ているのだー。

知らない声どころかー

男の声がー!?


麻莉奈と、隣にいた麻莉奈そっくりの女性は

ほぼ同時に自分の身体を見つめたー。


「ーーえぇっ!?」


「ーー何でわたしが制服着てるの!?」


周囲の乗客が戸惑うー。


麻莉奈が自分の身体を見下ろすと、

そこには制服のブレザーとズボンー。

そして、自分の手とは違う手ー

やけに平らな胴体が見えたー。


「ーー”男の子になってる!?”」

男子高校生になってしまった麻莉奈が驚いて

横にいる”自分そっくりの女性”を見つめると


「ーわたしじゃん!」

と、思わず叫んだー。


麻莉奈の姿をした女性が困惑しているー


”え…なに?どういうことー?

 わたしが男の子になってて、

 隣にわたしがいるー!?”


全く意味が分からないー

そう思いながらも、ちょうどバス停についたのに気づいた

男子高校生になった麻莉奈は

”自分”の腕を掴んで、慌ててバスから降りようとするー


「え…俺、まだ、降りる場所じゃー…」

麻莉奈の姿をした人物が”俺”と言うー。


その言葉に、”もしかして、わたしたち…”と、

表情を歪めながらも

「わたしだって降りる場所じゃないけど!」と、

言いながら、そのまま”自分”を引っ張ってバスから

降りようとするー。


「ーあ、バス代はわたしのおごりね!」と、言いながら

そのまま男子高校生の身体で支払いを済ませると、

「え…」と、麻莉奈の姿になった男子高校生が

表情を歪めたー。


バスから降りた二人ー。

近くの公園のような場所までようやく向かうとー


「あ…あの…もしかして、あなたはー…」

と、言いながら男子高校生になった自分を指さす麻莉奈ー。


「ーーあ…は、はいー…

 ふ、藤岡淳也ですー」

と、麻莉奈になった淳也が自己紹介したー。


麻莉奈(淳也)は”大人のお姉さん”と入れ替わったことで、

意識していなくても、ドキドキしていたー。


生涯独身宣言を友達の前でしていた淳也ー。

しかし実際にこうして自分がOLになってしまうと

ドキドキが止まらないー。


「ー……じ、じゃあ、わたしたち、入れ替わっちゃったってことー…?」

淳也(麻莉奈)が言うと、

麻莉奈(淳也)は「お…恐らくー」と、困惑しながら呟いたー。


「ーーー」

きっと、バスで転倒した際に、何らかのはずみで

身体が入れ替わってしまったのかもしれないー。


そんな風に思いながら、淳也(麻莉奈)は

「じ…じゃあー」と、

声を上げたー。


「とりあえず、元に戻ろ!」

淳也(麻莉奈)が言うー。


「ーーあ、あの…」

細かいことに拘る性格でもある淳也は、

あることが引っ掛かっていたー


それはー

”わたしのおごりね!”と、バスから降りる際に

言っておきながら、

淳也の身体で二人分の支払いを済ませた麻莉奈のことだー。


「ーあ…あの…さっきのバス代ー…

 お、俺の身体で支払いましたよねー…?」


”それじゃ、俺のおごりじゃないですか?”と

言おうとしたものの、淳也(麻莉奈)がとんでもない発言をしたー


「ーキスしよ!」


「ーーへ?」


「ーーキス!」


「ーーー??????」


淳也(麻莉奈)が満面の笑みで言うー。


友達からも、会社でも”天然”などと言われている

麻莉奈の天然ぶりが、こんなところで発揮されてしまったー。


「ーき、き、き、き、キスー?お姉さんとー?」

麻莉奈(淳也)は混乱しながら叫ぶー。


「ーーん?あ~~…君、キスしたことないの?」

淳也(麻莉奈)が笑いながら言うー


”何なんだこのお姉さんー”と、思いながらも

ドキドキしながら「な、ないですー…」と、呟くー。


「ーーあ~そう、大丈夫!わたしもないから!

 あ、お父さんと小さいころキスしたかもだけど!」


そう言いながら、淳也(麻莉奈)は

”入れ替わった時にキスをして元に戻る漫画、読んだことあるから”と、

キスを提案した理由を説明したー


「そ、それ、漫画の話ですよね?」

麻莉奈(淳也)の言葉に、淳也(麻莉奈)は、

「とにかくキス~!」と、無理やりキスをしてきたー。


「ちょっ!?俺が、高校生の俺がお姉さんを襲ってるみたいに

 見られるじゃないですか!ちょ!」


そう叫びながらもー

キスをしてしまう結果になりー


…元にーーー


戻ることはなかったー


「ーーあれ…」

淳也(麻莉奈)が唖然としているー


「だ、だから、言ったじゃないですかー。

 漫画通りに上手くいくわけがないってー」


麻莉奈(淳也)はそこまで言うと

「ーって…ていうか…お、お姉さんは誰なんですかー?」と、

”自分だけが自己紹介させられたこの状況”を

少し不満そうにしながら確認したー。


淳也(麻莉奈)は「あ、え~っと、」と

ようやく自己紹介をすると、

色々と元に戻れそうなことを確かめてみたものの、

元に戻ることはできなかったー。


「ーー………と、とりあえず…どうしよっかー…

 わたしは一人暮らしだけど、君は、高校生だからー

 実家だよね?」


淳也(麻莉奈)の言葉に、

麻莉奈(淳也)は頷くー。


「ーじ、じゃあ…とりあえず、一緒に淳也くんの家に行ってー

 淳也くんのご両親に事情を説明しよっかー」


淳也(麻莉奈)の提案に、

麻莉奈(淳也)は「あ、はいー」と頷くー。


一瞬”お互いに成りすまして”とか、提案されるのかと思ったが

淳也になった麻莉奈の提案は”逆”の方向だったー。


確かに隠しても仕方がないー。

両親に事情を説明して、助けてもらおうー。


「ーーあ!」

淳也の家に向かおうと歩き出した淳也(麻莉奈)が

立ち止まると、振り返って麻莉奈(淳也)のほうを見つめたー。


「ーわたしの胸とか、触らないでね!」

淳也(麻莉奈)の言葉に、

麻莉奈(淳也)はドキッとしながらも

「さ、触りませんよ!俺は生涯独身って決めてるんで!」と、

即答で答えたー。


「ーーえ…そ、そうなの?決めるの早くない?

 それにー生涯独身でもわたしの胸、揉めるでしょ??」


イマイチ的外れな答えをしてくるような淳也(麻莉奈)に戸惑いながらも

麻莉奈(淳也)は「え…ま、まぁ…大丈夫です。触らないんで…」と、

そのまま歩き出したー


二人はまだ知らないー

”入れ替わったこと”を誰にも信じてもらえない”


そんな状況が、この先、待ち受けていることをー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


男子高校生とOLの入れ替わり…!

意外と私が書く作品の中では

珍しい組み合わせな気がします~笑


次回からはタイトル通り”誰にも信じてもらえない”

状況が始まっていきますので、

楽しみにしていてくださいネ~!


お読み下さりありがとうございました~!

Files

Comments

No comments found for this post.