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紀明の必死の説得でも、結花里の心を取り戻すことはできなかったー

”洗脳”の影響は、”洗脳されたとわかっていても”

元の自分に戻ることを拒んでしまうぐらいに大きいー。


しかし、結花里の親友・静穂は紀明とは”別のアプローチ”で、

結花里を元に戻そうとするー。

それは、”あえて結花里を挑発することー”


そして、その効果はあったのかー

洗脳された結花里は”大悟がまだ洗脳薬を持っている”ことを

静穂に告げた上で

”わたしをさらに上から洗脳すれば、元に戻れるかもしれない”と、

攻撃的ながらも”元に戻るための方法”を提案してくれたのだったー。


静穂は、紀明にそのことを伝え、共に大悟から

洗脳薬を盗み出そうと考えるー。

その先に待つ、未来はー…?


☆前回はこちら↓☆

<MC>洗脳されたとわかっていても④~想い~

洗脳された幼馴染の結花里をなんとか助けたいー。 そう思い、結花里を洗脳した不良・大悟と直接対峙した紀明。 しかし、大悟は目の前で”わざと”一度結花里の洗脳を解除し、 苦しむ結花里を見せつけたあとに、再び結花里を洗脳しー、 紀明を精神的に追い詰めていくー。 結花里は、紀明に敵意をむき出しにし、 大悟は”結花...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「月森さんが、そんなことをー?」

紀明が、驚いた様子で静穂のほうを見ると、

静穂は「うんー」と頷くー。


「ーわたしなりに、考えたのー。

 わたしのことを”誰かが”上からさらに洗脳してくれればー

 ”元通りのわたしになるように”洗脳してくれればー

 昔のわたしみたいに、戻れるんじゃないかってー」


静穂は、昨日、洗脳された結花里と話した際に

結花里が言っていた言葉を、そのまま紀明に伝えたー。


そして、その”洗脳薬”を不良生徒の大悟がまだ、

持っているー、という話も、紀明に伝えるー。


「ーーーーー…」

紀明は、廊下の少し離れた場所で、大悟と笑いながら歩いている

結花里の姿をふと見つめるー


「ーえ~、そんな奴、殴ってやりなよ~!だって、ウザくない?」

そう言いながらA組の教室に入って行く結花里ー。


”あんな月森さんー僕はこれ以上、見たくないー”


拳を握りしめる紀明ー。


洗脳薬を大悟から奪い、結花里を”上から”さらに洗脳することによってー

結花里を元通りに戻すことができるー。


だがー

問題はー


「ー手元に持っているのかも、どこに保管してあるのかも

 分からないものを取るなんてー…難しいよね」


静穂が困惑した表情で言うー。

だが、紀明はその言葉にすぐに反応したー。


「ーいやー

 もしかしたら、力を貸してくれる人がいるかもしれないー。」


紀明がそう呟くと、静穂は「え?」と、少し不思議そうに

首を傾げたー。


そしてー

その日の昼休み、紀明は密かに”力を貸してくれるかもしれない人”に

接触したー。


「ーーーーあんたが調べてる子ー…

 ”大悟に洗脳されてる”」


結花里が豹変後、戸惑いながら色々情報を探っていた

紀明に”結花里が洗脳されている”と教えてくれた生徒ー


大悟の仲間のギャルな女子生徒に、紀明は再び接触したー。


「ーー言っとくけど、あたし、大悟たちを裏切る気はないからね」

その女子はうんざりした様子で呟きながら

「ーでも、”洗脳”とかヤバすぎでしょ。だからそれは反対ー」と、

紀明に”協力したことは一切言わないことを条件”に、

「ーーー大悟は、洗脳薬を自分のロッカーに入れてる」と、

小声で教えてくれたー。


「ロッカーに…?」


「ーー間違いないよ。前にあたしに自慢してたから」

ギャルな女子生徒はそう言うと、

少し困惑した様子の紀明を見て言葉を続けたー。


「ーあたしが協力できるのはここまでー。

 ロッカーの中から洗脳薬を入手する方法は、

 自分で考えなさい」


それだけ言うと、彼女はそのまま立ち去っていくー。


「ーーーーーーー」

紀明は、”やるしかないー”と洗脳された結花里のことを

思い出しながら、大悟のクラスの時間割表を、大悟と同じクラスの

友人から聞き出した上で、

”洗脳薬を奪う”のは、この時間しかないー、と、

”明日の3時間目の体育の授業”を見つめるー。


ロッカーの鍵を”肌身離さず持ち歩くタイプ”だったら無理だー。


だがー、鞄か、教室内に”ロッカーの鍵”を置いていればー

体育の授業で大悟のクラスが外にいるタイミングが、

そのチャンスだー。


放課後ー

紀明は洗脳された結花里に声を掛けられたー


「ー今日も必死こいて、コソコソやってるの?」

腕組みしながら、あざ笑うような態度の結花里ー


「ーーーー」

紀明は、結花里の態度に心を痛めながらも、

結花里のほうをまっすぐと見つめたー


「ーー月森さんー。必ず、助けるからー」

とー。


「ー頼んでない」

結花里が舌打ちしながら言うー。


「ーうん。頼まれてないよー」

紀明はそう言うと、結花里のほうを見つめながら微笑んだー


「ーでも、人助けって頼まれてなくたって、するものだからさー」

紀明のそんな言葉に、

結花里は「チッ」と露骨に不機嫌そうに舌打ちすると、

そのまま「ウザすぎ」とだけ吐き捨てて

立ち去って行ったー。


「ーーー……」


必ずー

助けるからー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


3時間目が始まると、大悟たちのクラスが体育の授業で

移動するのを確認したー


だが、当然防犯上、大悟らのクラスの教室の鍵は

閉ざされるー


そこで、大悟と同じクラスの友人に無理を言って、

鍵をこっそりと借りー、

そしてーー


「ーーあ、わたし…保健室に連れていきますー」

保健委員の静穂が、紀明たちのクラスの授業ー

”3時間目の美術”から抜け出すために、

紀明が”貧血を起こした”演技をして、

静穂が”保健室に連れていく”と申し出たー。


美術の先生は穏やかな性格で、

真面目な静穂と紀明なら、必ず許可してくれると

そう思っての作戦だー。


自分たちの授業から抜け出した紀明と静穂は、

慌てて大悟の教室に行きー、

預かっていた鍵を使い、大悟の机や、鞄を漁り始めたー。


廊下を見張る紀明ー。

漁るのは静穂ー。


”もし”誰かに見つかった際に、教室の外に立っている

紀明一人だけが罪を被るつもりでー

静穂に中を探してもらっているー。


「ーーーー」

紀明がソワソワしながらスマホで時間を確認するー。


”お願いだから、ロッカーの鍵…教室に置いたままにしておいてくれー”

そう、何度も何度も心の中で願ったー


しかしー

大悟のクラスの教室内を探している静穂から声はかからずー、

”そろそろ時間的に限界だ”と、紀明は、”ロッカーの鍵”の捜索を

打ち切ろうとするー。


その時だったー


「ーあった!矢吹くん!あったよ!」

教室の中から静穂の声が響き渡るー。


「ーーえっ!?」

紀明が絶望から希望を見出したかのような明るい表情を

浮かべながら教室の中を覗き込むー。


静穂は、嬉しそうに”ロッカーの南京錠の鍵”を

手にしてそれを紀明に見せると、

「ーこれで結花里を救えるね!」と、紀明に対して微笑んだー。


紀明は静穂に対して微笑みながら頷くと、”もう先に戻ってて”と、

美術の授業が”サボり”になってしまうことを心配して、

静穂に言い放つとー

静穂は「でもー!」と心配そうに呟くー。


「ーどうせロッカー、二人で漁ることはできないしー」

紀明の言葉に、静穂は、紀明の配慮にも感謝しながら

「ーわかったー…無理しないでね」と、頷くー。


静穂が立ち去ったあとー

ようやく”目的のモノ”を見つけた紀明は

洗脳薬の入った容器をぎゅっと握りしめて、

そのままロッカーを閉じ、さらには教室の状態も元に戻し、

鍵を閉めー、大悟のクラスにいる友人と事前に打ち合わせた場所に鍵を

置いておくと、紀明はそのまま立ち去って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”僕たちに、もう手を出すなー”


紀明は、静かにそう呟いたー。


夜ー。

紀明は、自宅に帰宅すると、静穂と連絡を取り合い、

静穂に明日の朝、結花里を呼び出してもらうことにしたー。


洗脳の影響によって

紀明を目の敵にしている結花里ー。

静穂に対してのほうが、”まだ”話を聞いてくれる感じなので、

静穂にお願いしたー。


「ーーーーー」

紀明は、洗脳薬を握りしめながら、

「ー月森さんー」と、心配そうに呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌朝ー。


学校の登校時間よりも、30分早くやってきた

結花里は、不機嫌そうに派手な色の髪を揺らしながら

「話って?」と、呟くー。


「ーーーー…結花里ー」

紀明の隣に立っていた静穂が、そう呟くと、

洗脳薬を手に、それを結花里に見せつけたー


「それはー…」

結花里が表情を歪めるー。


「ー結花里の言う通り、取ってきたよー…

 洗脳の薬ー…」

静穂が悲しそうに言うと、

「ーこれで結花里ー前みたいに、元に戻れるね」と、微笑むー。


結花里は険しい表情のままー

「ーー……あんたー」と、呟くー。


そしてー

少しだけ、深呼吸をするとー

「ーーーー今もあんたたちのこと、ウザくて仕方ないからー

 早く、わたしを上から洗脳して」

と、うんざりした様子で紀明たちを見つめるー。


だがー


紀明は「しないよ」と、声を出したー


「ーは?」

「ーえ?」

結花里と静穂が戸惑いの声を上げるー。


「ー僕は、月森さんを洗脳するために、これを取ってきたんじゃない」

紀明が言うと、静穂は「え…どういうこと?」と、

困惑しながら紀明のほうを見つめるー


紀明は「ごめん」とだけ呟いて静穂のほうを見つめると、

洗脳薬を教室の床に叩きつけて、それを踏みつぶしたー


「ー人を操るなんて、こんなもの、あっちゃいけないんだー」

紀明は”これ以上洗脳薬を大悟が持っていないこと”そして、

”大悟がどこから洗脳薬を入手したのか”を確認、

さらには”大悟がもう洗脳薬を入手する手段を失っている”ことも

確認済みだったー。


「ーーー………あんた、バカ?」

結花里が吐き捨てるようにして言うー。


「ーー…だってーー

 月森さんをここで”洗脳”して、元の月森さんみたいにしたって、

 それは月森さんじゃないよー」


紀明は言うー。


「洗脳に、洗脳を重ねたって、それは元の月森さんじゃないー!

 余計に、元の月森さんから遠ざかってしまうだけだよ!」


とー。


”元の結花里風”にしても、それは”元の結花里”ではないー。

ここで自分たちが結花里を洗脳して”元の結花里風”にすることはできるー

けど、それじゃ、大悟たちとやってることが同じだとー。

”自分たちの都合の良い結花里”にしようとしているだけだとー


「だから、僕は月森さんを洗脳しないー。

 ”2重の洗脳”よりも”1重の洗脳”の方が、正気に戻ってくれる可能性も

 高いからー」


紀明はそこまで言うと、

「月森さんー僕は、月森さんを信じてるー。

 元の月森さんに戻ってくれるまで、僕はずっとずっと、諦めないー」

と、結花里に言い放ったー


「ーーーーー」

結花里は無言で紀明の方に近付いてくると、

紀明のほうをしばらく睨みつけてから、

紀明の頬を思いっきりビンタしたー


「ーそういうところが、死ぬほどウザい!」

結花里はそう言い捨てると、そのまま教室の出口に向かっていくー


「ーーー………でも」

教室の出口で立ち止まった結花里は、そう呟くと、

紀明のほうを振り返ってから、

「ーーーー……なんでもない」と、その先は言うことなく、

立ち去って行ったー。


「ーーちょっと………」

残された静穂は戸惑っているー


「ーごめんー…でも、僕にはどうしてもー

 どうしても、できなくてー…」


紀明が申し訳なさそうに言うー。

紀明の言い分も分かるー。

”洗脳の上書き”をしても”元通り風の結花里”であり、

元に戻ったわけではないー。


「ーー………やっぱり矢吹くんはー優しすぎるよー」

静穂は、少し寂しそうにそう呟いたー。


”ーーそうでもないよー”

紀明は心の中でそう呟いたー


昨日ー

放課後に紀明は、大悟が帰ろうとしている際に声をかけてー


”大悟を洗脳”したー。


”僕たちに、もう手を出すなー”

そう、洗脳した上で、

洗脳薬をまだ持っているのか、入手ルートはどこか、

まだ手に入れるつもりはあるのか、そういったことを白状させたー


”2度と”大悟が結花里に手出しできないようにするためー

そして、今後被害者が出ないようにするためー。



「ーーーー…」

紀明は、教室の窓の外を見つめながら、

”相手が不良生徒とは言え、僕も人を洗脳したんだから、あいつと同じだよー”

と、心の中で呟くー。


しばらく外を見つめたあとに、深呼吸すると、

紀明は悲しそうに、けれども前向きな表情で静穂のほうを振り返って、

優しく呟いたー。


「ー僕、必ず月森さんの心を取り戻して見せるからー」

とー。


「ーーーーーー…お人よしすぎー」

静穂は、苦笑いするかのように、そう返事をすると、


「でもー

 そういう優しさが、”洗脳”に打ち勝つのかもねー」


と、優しく微笑んだー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


「洗脳されたとわかっていても」の最終回でした~!☆

(打ち切りエンドに見えちゃうかもですが、最初からこの予定で

 お話を考えていたので、打ち切りではありません~!☆)


いつかきっと元に戻ると信じて…!エンドデス!


お読み下さりありがとうございました~!

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