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作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。

苦手な方は、ご注意ください!

作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーえぇ。申し訳ありませんー。

 ”取引”は、1週間ほど延期していただけますかー?」


神代主任が笑みを浮かべながら、電話を手に、

そう言葉を口にしているー。


「ーーまさか、取引を目前にして地震が発生するとは

 思わなかったのでー。

 ですが、”試薬”は無事です。

 あなた達”ガルフ”にとってもお役に立つと思いますよー」


神代主任は”人と人を入れ替える”力を持つ試薬を売る相手ー

”国際犯罪組織ガルフ”と、電話でやり取りをしていたー。


会話を終えた神代主任は笑みを浮かべるー。


「ー私の”夢”は誰にも邪魔させませんー。

 誰にもー」


そのためにもー

入れ替わりの秘密を知っている

日向俊樹と、俊樹と入れ替わった女子高生・彩香を

始末してしまわなくてはならないー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


主な登場人物


月森 彩香(つきもり あやか)

高校3年生。修学旅行中に地震に巻き込まれる。俊樹と入れ替わっている。


日向 俊樹(ひゅうが としき) 

彩香を助けた男。彩香と入れ替わっている。とある会社に勤務していた。


的場 聡(まとば さとし) 

高校3年生。彩香の彼氏。不穏な行動を被災地で取り続けている。


木下 響子(きのした きょうこ)

高校3年生。彩香の親友。地震発生後は消息不明。


早乙女 美穂(さおとめ みほ)

高校3年生。大人しいタイプの子。赤岩と入れ替わってしまう。


赤岩 紀夫(あかいわ のりお)

危険な風貌の男。美穂と身体を入れ替えて、その身体を奪ってしまう。


神代主任(かみしろしゅにん)

製薬企業・宮尾製薬の研究主任。入れ替わりの原因の”試薬”の開発者。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★あらすじ


彩香の身体を元に戻し、無事に家族の元に帰すためにはー。

危険を承知の上で神代主任から、入れ替わりの原因となった

試薬を入手して、元に戻るしかないー。


そう考えた彩香(俊樹)は、俊樹(彩香)と共に

今夜、神代主任が訪れるという”建設中の工場”に向かうことを

決意するー。


一方、蒼月第3小学校には、

美穂の身体を奪った赤岩が姿を現していたー。

彩香と俊樹の行方を聞き出そうとする美穂(赤岩)ー


そこに、美穂の兄・秀一がやってきて、美穂の無事を喜ぶー


”中身”が、自分の妹ではないーー

などということは、夢にも思わずにー。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>崩壊都市⑳~決心~

作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。 苦手な方は、ご注意ください! 作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「先ほど、公島総理大臣が現地の視察を行いましたー」 ニュースでは 総理大臣・公島が、蒼月市の避難所を訪れている映像が 映し出され...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5日目 13:20ー


「美穂ー…無事でよかったー」

彩香のクラスメイトで同じ行動班だった美穂の兄・秀一が、

避難所となっている蒼月第3小学校の体育館で

美穂の姿を見つけて、安堵の溜息をつくー。


「ーーあ?」


美穂はー

兄の秀一のことが、小さいころからずっと大好きで、

高校生になった今でも、秀一のことを”お兄”と呼び、

家でも、とにかく一緒にいる時間が多かったー。

髪型がいつもツインテールなのも、

兄の秀一がツインテール好きだからー、と、言われているー。


兄の秀一自身も、そんな美穂のことをとても可愛がっていてー、

蒼月市北部を震源とする地震が発生したあとに、

飛ぶようにして、蒼月市内へとやってきたのだー。


だがー


今の美穂はー

美穂であって、美穂ではないー


身体は美穂でもー

中身は、赤岩紀夫という凶悪な男なのだからー。


「ーーーーー本当に、無事でよかったー」

美穂(赤岩)を抱きしめる秀一。


「ーーチッー」

美穂(赤岩)は思わず舌打ちをすると、

「ーーお兄ちゃん?」と、そう、呟いたー


兄がいることは既に知っているー。

美穂になったあとに、スマホを確認して、

兄の姿を見ているからだー。


「ーーー大丈夫かー?」

秀一は、”お兄ちゃん”と呼ばれたことに少し違和感を感じながらも、

”他の子の前だしなー”と、思いながら、

「ー…本当によく頑張ったなー」と、美穂(赤岩)の頭を優しくなでるー。


「ーーー……」

美穂(赤岩)は、少しだけ笑みを浮かべるー。


”こいつ、妹のこと、本当に可愛がってるみたいだなぁ…

 ちょうどいいー”


美穂(赤岩)はそんな風に考えると

「ーお兄ちゃんさ、スマホ持ってる?」と、笑みを浮かべるー。


「ーーん?あぁ、持ってるよ」

秀一が言うと、美穂(赤岩)は「貸して」と、いつもより

強気な口調で言い放つー


「ーーえ?あぁー…そっか、こんな状況じゃ、充電もできないもんなー」


そう言うと、秀一が美穂(赤岩)にスマホを手渡すー。


美穂(赤岩)は、乱暴に秀一からスマホを取り上げるようにして

手に取ると、そのまま少し離れた場所に向かって電話をし始めたー。


「ーーーーー……」

秀一は、そんな美穂(赤岩)の後ろ姿を見つめながら、

”いつもと違う雰囲気”をすぐに感じ取っていたー。


「ーーー…修学旅行先で地震に巻き込まれたんだからー

 ピリピリしてて、当然かー」


妹が、心の傷を負っているー

そんな風に思い、秀一が立っていると

「ーあの…」と、背後から美穂のクラスメイトの

生徒会長・晴美と、裕梨が声を掛けて来たー。


「ーーん?あ、美穂の同級生のー…

 みんなも無事でよかったー」

秀一が穏やかな笑顔を浮かべながらそう呟くー。


秀一も、学校行事で美穂の高校を訪れた際などに

顔を合わせていて、

”顔は見たことがあったかもしれない”ぐらいの面識はあるー。


「ーー早乙女さんー…

 なんだか、様子がおかしい気がするんですー」

晴美が不安そうに言うと、

秀一は「ーまぁ…こんなことがあったからねー」と、

周囲の荒れ果てた光景を見つめながら言うー。


しかし、晴美の横にいた裕梨が、

「ーーーそれだけじゃない気がするんですー」と、

不安そうな表情を浮かべたー。


地震発生後、最初の数日は

確かに”いつもの美穂”だったー、と。

だが、今日、ここに姿を現した美穂はなんだか乱暴な感じがするー、と。


”何だかわからないけど、得体の知れない違和感を感じる”と、

裕梨は、美穂の兄・秀一に不安を伝えたー。


そうこうしているうちに、美穂(赤岩)が電話を終えて、

体育館の外に出て行こうとするー


「美穂!どこに行くんだ?」

秀一が美穂(赤岩)を呼び止めると、

「ーーあ?ちょっと用事があるだけだから、気にしないで」と、

美穂(赤岩)は引きつった笑顔を浮かべたー。


「ーーよ、用事ー…?

 まだ余震も多いみたいだし、あまり動くとー」


秀一が言うと、美穂(赤岩)はー

「ーお兄ちゃんさぁ…」と、イライラした様子で、

いつもより少しキツめの口調で続けたー


「ー妹を束縛するのって、良くないんじゃない?」

とー。


「ーー……み、美穂ー…?」

秀一は、美穂(赤岩)に強い違和感を感じるー


「ーーわ、分かった…分かったよー」

それでも、秀一は、被災した妹が精神的にダメージを受けているのだと

解釈して、美穂(赤岩)を刺激するような反応は避けたー。


「ー…だ、だったら、俺も一緒に行くから…

 それでいいだろ?」

秀一が言うー。


「美穂に何かあったら、心配だしー、

 美穂の用事がなんだか知らないけど、俺も手伝うからー」


秀一がそう言うと、美穂(赤岩)は険しい表情を浮かべながらー


”邪魔な兄貴だなー…ぶち殺すぞ?”

と、心の中で思いながらも、満面の笑みで呟いたー。


「ーお兄ちゃんー…いい加減に、ウザいよ?」

とー。


「ーみ…美穂ー…? ど…どうしちゃったんだよー?」

震災のストレスなのかー?

秀一は、そう思いながら美穂(赤岩)を見つめるー。


「ーーやることやったら、戻ってくるから、

 ここで大人しく待ってろーー!


 ……ーーーーって、気持ちになっちゃうよ?」


美穂(赤岩)は、素の自分の口調のあとに言葉を付け加えて

何とか苛立ちを押さえるー。


「ーーみ…美穂!」

秀一は、美穂(赤岩)の手を掴むー。


だがー


「ーうるせぇって言ってんだよ!」

美穂(赤岩)が突然怒鳴り声を上げると、

秀一を思いっきり突き飛ばしたー


「ちょっ!?」

「ーーな、何やってるの!?」

突き飛ばされて倒れた秀一の前に

晴美と裕梨が、駆け寄りー、

美穂(赤岩)のほうを見つめながら言うー。


「ーーもうさ、わたし、高校生だから、

 子供扱いしないで貰える?」

美穂(赤岩)が見下すような目で秀一たちのほうを見つめるー


「ーみ……美穂ーーーー…?」

信じられないという様子の秀一。


「ー早乙女さん!どうしちゃったの!?」

「ーーお、お兄さんのこと、いつもあんなにー」

晴美と裕梨の言葉にも、美穂(赤岩)はまるで耳を貸さず

鼻で笑うとー

「ーースマホは借りてくからー」

と、兄のスマホを持ったまま、美穂(赤岩)は

そのまま体育館の出口に向かっていくー。


「美穂!」

後を追いかけようとする秀一。


「ーーーあ~~~~~~~~~~~~!!!!!」

美穂(赤岩)は激しく髪を掻きむしりながら、

振り返ると、

「うるせぇ!ぶち殺すぞ!」

と、美穂とは思えないような鬼の形相で叫びー

秀一は思わずその場に立ち尽くしてしまったー。


秀一がようやく我を取り戻した時には、

もう美穂(赤岩)の姿は消えていたー


・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー誰からだったの?」

俊樹(彩香)が、彩香(俊樹)に確認するとー、

彩香(俊樹)は「君の同級生ー…赤岩に身体を奪われてる子からだったー」と、

答えるー。


「ーえ~っと、それはつまりー」

俊樹(彩香)が戸惑いながら、そう呟くと、

彩香(俊樹)は「入れ替わってると色々ややこしいよな」と、言いながら

「ーーえっと…君の友達の身体の赤岩ー…つまり、赤岩から電話って

 言ったほうが分かりやすいかな」と、説明したー


「ーーー…早乙女さんー」

俊樹(彩香)は悲しそうな表情を浮かべるー。


美穂が、あんな凶悪で乱暴な雰囲気になってしまうなんてー…


”中身が違う”と、分かっていても、

ショックを隠し切れないー。


「ーー…あいつも、今夜、神代主任が視察に訪れる

 蒼月市内の建設中の工場に来るって言ってたー」

彩香(俊樹)が言うと、

俊樹(彩香)は、さらに不安げに表情を曇らせるー。


「ーでもー」

と、彩香(俊樹)は、

”危険だけど、赤岩も来るなら、全部一気に解決するチャンスだ”

とも、言葉を口にしたー。


神代主任から”試薬”を手に入れてー

彩香と俊樹が元通りになるだけではなくー、

そこで美穂の身体になった赤岩を捕まえて、赤岩の身体になった美穂の

居場所を吐かせてー

美穂と赤岩も元通りにするー。


そうなれば、彩香も、美穂も家に帰れるー。


「ーーそんなに、うまくいくかなー?」

俊樹(彩香)の、不安そうな呟きー。


”正直、わからないー”


神代主任は、一筋縄ではいかない人物なのは

俊樹が一番よく分かっているし、

赤岩が何をしでかすか分からない人物であることも、当然理解しているー。


そんな中で、

神代主任の試薬を手に入れて、

俊樹と彩香の身体を元に戻し、なおかつ美穂の身体が死んでしまうような

ことなく、美穂になった赤岩を確保し、

美穂と赤岩の身体も元に戻すー。


それが、そんなにうまく行くとは思えないー。


けれどー

彩香(俊樹)は”ある光景”をまるで、予知夢のように見ているー


あれが、何を意味するのかは分からないー

どうして、そんなものを見るのか分からないー


でもー


3つ見た光景のうちの2つは、既に実現しているー

もし、3つ目も実現するのであればー…


そしてー

彩香(俊樹)は、その”3つ目の光景”を見たからこそー

危険を承知で、神代主任の待つ場所へと向かおうとしているー


”あの光景が、前の2つと同じように実現するのであればー”


「ーー(君は必ず、元の家に帰れるー)」

彩香(俊樹)はそう確信していたー。


その先にーーーーーー

あの光景通りの未来が待っていたとしてもー。


ピキッ、と周囲の建物が音を立てて、

余震が来たことを感じ取るー。

その余震が、彩香(俊樹)を現実に引き戻すとー


「ーいつまでも、女子高生の身体、借りてるわけにはいかないだろ?

 レンタル料、高そうだし」


彩香(俊樹)が冗談を口にするとー

「ーふふー、そろそろ返却期限過ぎちゃうかもね!」と、

俊樹(彩香)は笑いながら返したー。


元の身体に戻ることー

美穂を元に戻すことー

そして、未だ行方不明の親友・響子を見つけ出し、

この蒼月市から離れることー


そんなにうまく行くかは分からないー


けど、地震発生から5日ー

今までこうやって生き延びて来たんだー


「ーーわたしは…絶対に諦めないー」

俊樹(彩香)が言うと、

彩香(俊樹)は「必ず君は守るー身体も中身もー」と、力強く

決意を口にしたー。


神代主任が今夜視察に訪れる”建設中の工場”の方に向かう二人ー

蒼月市内のその場所では、神代主任が主導で、

宮尾製薬の新たな工場が建設されている最中だったー。


病床に伏した宮尾会長から会社を奪い取り、その技術を奪い、

創り出した”新薬”で、海外の犯罪組織などを中心に

悪どい商売を企てている神代主任ー。


小さい頃の地震で家族を失った俊樹を、まるで親のように

育ててくれた宮尾会長に恩を返すためにもー

俊樹は、そんな神代主任を止めよう、とも考えていたー。


たとえー

神代主任と刺し違えることになったとしてもー


「ーー彩香!」

背後から声がしたー


「ーー!?」

彩香(俊樹)と俊樹(彩香)が振り返ると、

そこには彩香の彼氏・聡の姿があったー。


震災後から、震災を楽しむような言動をしたり、

彩香に辛辣な言葉を言い放ち、彩香を遠ざけたりー

理解しがたい行動を繰り返している聡ー


俊樹(彩香)が「聡ー?」と、困惑の表情を浮かべると、

聡は俊樹(彩香)の方に近付いてきたー。


「ーなんで、”彩香たちだけ”って思ってたけどー…」

聡は、そう呟くと、

彩香(俊樹)のほうをじっと見つめる聡ー。


「ーーー…”そういうこと”なんだろうなー」

聡はそれだけ言うと、

俊樹(彩香)のほうを見つめたー。


「ー元の身体に戻るために、ヤバい奴らのところに行くんだろ?」

聡の言葉に、

俊樹(彩香)が頷くー。


「ーーーーいいよーー。俺も手伝うよー」

聡の言葉に、彩香(俊樹)は表情を歪めるー。


「ー君は一体ー…?」

聡が何をしたいのか分からないー。


だが、俊樹(彩香)は、

少し嬉しそうにもしていたー


「ーー聡ー…ありがとうー」

俊樹(彩香)が聡の手を握ろうとするー。


だが、聡は相変わらず、俊樹(彩香)の手を跳ね除けるような仕草を

すると、「そういうのは、いい」と、冷たく言い放ったー。


「ーーー聡…」

俊樹(彩香)は再び暗い表情を浮かべるー。


「ーーーーーーー……ごめんな、彩香ー

 でも、その代わり、彩香が元に戻れるように、

 俺もできる限りのことはするからー。


 たぶん、そのために、俺はこうしてるからー」


聡の言葉に、俊樹(彩香)は

表情を曇らせたー


聡はいったい、何をしようとしているのだろうー。

生徒会長の晴美のように、震災へのストレスから

いつもと違う行動を取っている可能性もあるー


けれどー

それともまた違う気がするー


「ーーー」

俊樹(彩香)が不安そうに、彩香(俊樹)のほうを見つめると、

彩香(俊樹)は静かに頷いたー


彩香の彼氏・聡が何を考えているのかは分からないが、

彩香(俊樹)も聡を一緒に連れていくことを決意してー、

そのまま三人で神代主任の待つ建設現場へと向かったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5日目 19:45ー


神代主任が、笑みを浮かべながら

宮尾製薬の建設中の工場にやってきていたー


まだ建設中の場所が多く、

鉄骨による不安定な足場や骨組みも目立つー


地震により、損傷している個所もあるー。


「ーーこれはこれは」

神代主任はそう呟きながらも、

背後にいる車いすの宮尾会長のほうに目を向けるー。


”工場の視察”

そんな情報を流せばー

神代主任が始末したい彩香と俊樹ー

そして裏切った赤岩ー

全員をおびき寄せることができるー。


そう、考えていたー


”日向俊樹も、入れ替わった小娘もー

 裏切った赤岩もー

 そして、宮尾会長ー、あなたもー”


「ーーーーー」

神代主任は手を背後で交差させながら、

工場のほうを見つめると、静かに笑みを浮かべたー


”蒼月市の震災の露となりてー、消えたまえー”


我が野望のため、ここで全てを消すー。

神代主任は、そう決意して、口元を不気味に歪めたー。



㉒へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


無事に家に帰ることができるのかどうか…!

ラストスパートもぜひ見届けて下さいネ~!


今日もありがとうございました~!☆

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