<入れ替わり>失恋少女①~自暴自棄になった後輩~ (Pixiv Fanbox)
Content
「ーーーーえ…」
男子高校生の盛田 茂(もりた しげる)は、
顔を赤らめながら、そう言葉を口にしたー。
「ーーー…す…す…好きですー」
”告白ー”
1学年下の後輩、水島 紀香(みずしま のりか)に、
茂はたった今、告白されていたのだー
「きーー…急に驚かせてごめんなさいー
でも…わたしー…先輩のことが…好きで
どうしても伝えたくてー」
大人しい性格の紀香ー。
そんな紀香が告白してくるとは、夢にも思っていなかった茂は、
只々、驚きの表情を隠せずにいたー。
二人は、同じ図書委員として活動し、よく一緒に図書当番をしていたことから、
紀香はいつしか、優しい茂に好意を抱くようになり、
こうして告白したのだったー。
「ーえ…え~…え、、ははっ…
お、俺は恋愛とか、そういうのは、ちょっと、な~」
茂は顔を赤らめながらそう呟くー。
茂には、恋愛経験がないー。
容姿はよくいる感じの普通なタイプで、性格も悪くないー。
ただ、同性の友達が多く、趣味が充実しているタイプなことから、
今まで恋愛関係に発展したことは一度もなく、
それ故に、茂は一度も”恋愛”というものを経験したことがなかったー。
”経験したことがなかった”だけではなくー、
”女子と仲良く話しているのを他の人に揶揄われるとすぐに
恥ずかしくなってしまう”
そんなタイプの男子高校生だったー。
「ーーー……へ…返事は…後日でも大丈夫なのでー」
大人しい性格の紀香が、顔を真っ赤にしながら言うー。
放課後の図書室でー
今まで一度も告白なんてしたことがない紀香がー
今まで一度も告白なんてされたことのない茂に告白したー
茂はゴクリと唾を飲み込みながらー
口を開こうとしたその時だったー
「ーーーおっ!?」
聞き覚えのある声がして、顔を真っ赤にしながら茂が
図書室の入口のほうを見るとー、
そこには茂のクラスメイトで友人の、
丸山 大夢(まるやま ひろむ)の姿があったー。
「ま、丸山ー!」
茂が思わず叫ぶと、大夢は笑みを浮かべながら
「ーーん~なんだなんだ~?」と、笑うー。
告白した紀香が恥ずかしそうに目を伏せると、
大夢は「今日までが返却期限の本、返し忘れててさ~」と、
本を手に、「ギリギリセーフ!」と、安堵の表情を浮かべるー
「ーお…お前…!ちゃんと余裕を持って返しておけよな~」
茂はそんなことを言いながら、大夢の本の返却手続きの処理を
終えるー。
「ーで、告白の返事はー?」
揶揄うように小声で呟く大夢ー。
チラッと、図書室の少し離れた場所にいる後輩・紀香のほうを
見つめながら、茂は「き…聞いてたのかよ!」と
小声で言い返すー。
「ーひゅ~ひゅ~!あんな可愛い後輩に告白されるなんて!
ひゅ~!」
よく人を揶揄う癖がある大夢の言葉に、
恋愛経験のない茂は急に恥ずかしくなって、
「バ…バカ!あんな後輩、好きなわけないだろ!」と、
小声で大夢に言い返すー
「ーーおぉっ!?マジかよー
カップルになってラブラブになっちまえよ~!」
大夢が、さらに揶揄うと、茂は顔を真っ赤にしながら、
「俺は恋愛になんて興味ないの!」と叫ぶと、
「ー大体、水島さんみたいな子は、俺の好みじゃないし!」と、
恥ずかしさから、心にもない言葉を口にしてしまうー。
恥ずかしさのあまり、
”とにかくこの恥ずかしい状態を切り抜けたい”という
考えで、頭の中がいっぱいになってしまっていたー。
「ーーと、とにかく!帰れ!もう図書室の開放時間終わってるぞ!」
茂が顔を真っ赤にしながら言うと、
大夢が「本当は好きなんだろ~?」と、なおも揶揄うー。
「ないない!絶対ない!真面目すぎてつまらなそうだし、
俺のタイプじゃないし、むしろ嫌いなタイプだし!」
と、小声で茂が返事をすると、大夢は「ちぇっ!つまんないの!」と
言いながら、そのまま立ち去って行ったー。
「ーーあ~…急にごめんー」
大夢が立ち去って行ったのを確認すると、
茂は気まずそうに、”俺が戸締りしておくから”と、
紀香に優しく微笑むー。
「ーーーはい…」
紀香は、それだけ言うと、そのままそそくさと立ち去ってしまったー。
”小声で話しているつもり”だったー。
だが、紀香には、
大夢と茂の会話が”全部”聞こえてしまっていたー
”嫌い”
”好みじゃない”
”真面目すぎてつまらないー”
そんな、茂の言葉が、全部ーーー。
「ーーーーーー」
勇気を振り絞って告白した紀香はー
”わたし…全否定されちゃったー”と、
目に涙を浮かべながら、そのまま下校していくー。
そんなことに気付かず、茂は暢気に
図書室の戸締りを終えると、
「あ、そういえばー…」と、言葉を口にするー。
「ー水島さんに、告白の返事、いつ言うか
言い忘れちゃったなー」
顔を真っ赤にしながら呟く茂ー。
さっき、大夢に揶揄われた際には、
恥ずかしさで頭がいっぱいになってしまって、
咄嗟に紀香のことを否定する言葉を連発してしまったが、
茂は、紀香のことが好きだったー。
まさか告白されるとは思っていなかったしー、
”女子と話すことを揶揄われると恥ずかしい”という
思春期真っ最中な考えをしている茂はー
どう返事をしていいのかも、分からなかったー。
「ーーとりあえずー…考えるかー」
帰宅しながら、茂はそう呟くと、
その日はずっと、後輩の紀香のことを考えながら
1日を過ごしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
帰宅した紀香は、ずっと一人で泣いていたー。
告白を断られる覚悟は、当然していたー。
けれどー
あんな風に思われていたなんてー…と、
一人、泣き続ける紀香ー。
初めての告白だったからー…
だろうかー
余計にそのショックは大きく、
”放心状態”と言うのがしっくり来るようなー、
そんな、状態になってしまっていたー。
「ーーーーー真面目すぎてつまんない…
真面目すぎてつまらないー」
ブツブツとそんな風に呟きながら
”自分を変えたい”
”違う自分になりたい”
”変身したい”
そんな、キーワードを無意識のうちに検索し続けていたー。
そしてー
「ーーーーーー!」
”違う自分に出会える”
”自分を変えたいあなたに”
”自分の違う可能性を発見!”
そんな風に書かれた”バイト”の求人を見つけたー。
”他人と身体を入れ替えてレンタルするバイト”
そんな、バイトを見つけた紀香は、
失恋のショックから立ち直れないまま、
そのバイトの詳細情報を見つめ始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー水島さん、いるー?」
昼休みー。
今日は図書当番ではないため、
紀香と会う機会がなかったー。
そのため、昼休みに2年生の教室にまで足を運び、
昨日の告白の返事をいつするか、という部分も
含めて話をするつもりだったー。
「ーーあ、先輩ー…水島さんなら今日は欠席ですー」
茂と面識のある後輩男子がそう呟くー。
「ーーえ?あ、そうなんだー…
ありがとう」
茂は、教えてくれたことにお礼を言うと、
「ーー何か悪いことしちゃったかなー」と、戸惑いの表情を浮かべるー。
茂の答えはもう決まっているー。
昨日、一晩考えて思ったー。
水島さんから告白されて、嬉しいと思ったことは事実だし、
好意的な感情も持っているー。
恥ずかしい、という気持ちは当然あるけれど、
自問自答して、気づいたー。
”俺は告白に前向きな返事をしたいと思っている”ということにー。
「ーーー…は~…昨日の俺の振る舞いじゃ、明らかに振りそうな
感じだったもんなぁ…」
茂はそんな風に呟きながら、自分の教室へと戻っていくー。
だが、茂はまだ、友人の大夢と小声で喋った内容まで、
紀香に聞こえていたとは夢にも思っていなかったー
”聞こえていない”
そう思いながら会話していても、
人間、案外聞こえているものだー、ということに、茂は気づいていないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーへぇ…可愛いじゃんー…採用ー」
優しそうな雰囲気の女性が微笑むー。
かなり若そうに見えるが、
この”バイト先”の責任者なのだと言うー。
”入れ替わりカフェ”
失恋して自暴自棄になった紀香は、
そこの”バイト”に応募していたー。
”違う自分に出会える”
”自分を変えたいあなたに”
”自分の違う可能性を発見!”
そんな募集要項に惹かれてー
いつの間にか、紀香はここにやってきたのだー。
このカフェでは、
お客さんが”1時間”カフェの店員と身体を入れ替えて、
その身体で過ごせる、というお店ー。
来店したら”好きな子”を選びー
その子と入れ替わって、その子の身体で
飲食したり、コスプレしたり、色々な遊びを
”お店の中で”楽しめる、というお店だー。
”入れ替わり専門”のスタッフは、
お客さんに指名されたら、入れ替わって、
お客さんが帰るまで、別室で待機するー…
あるいは、店内で”自分と入れ替わったお客さん”の
接客をするー
そんな、仕事だー。
お客さんには入れ替わり後のルールが決められていて
”入れ替わっている最中の写真撮影やネットへの投稿禁止”
”お店の外に出ることの禁止”
”入れ替わった身体を傷付けることの禁止”などの
ルールが定められているー。
”好きな子と入れ替わって、その子の身体で1時間過ごす”
それが、この入れ帰りカフェだー。
お客さんが楽しくなった場合、時間をさらに1時間延長することもできるー。
「ーーでも、あなた、ちゃんと分かってるー?
このお店には、正直ー…そうねー
その、エロ親父とかも来るけどー
そういうお客さんにも身体を貸さないといけない。
その覚悟はできてるの?」
店長の女性の言葉に、紀香は「わたし…つまんない女なのでー」と、
呟きながら頷くー
「ーーーー…そ。じゃあ早速、今日からお願いしていい?」
店長の言葉に、紀香は静かに頷いたー。
そしてー
紀香を指名した最初のお客さんがやってくるー。
お客さんは、店に所属している男女から、好きな子を選び
”入れ替わる”のだー。
「ーーじゃ…互いに手を握り合ってくださいー」
冴えないおじさんー…
そんな感じのお客さんと、紀香が手を握るー。
するとー
「ーー!?!?!?!?」
おじさんになった紀香は驚いた様子で
周囲を見渡すー。
紀香になったおじさんは
「うわっ…マ…マジかー?」
と、紀香の身体で嬉しそうに笑みを浮かべているー。
「ーーお客様ー
時間は今から1時間になりますのでー」
店長が、店内の方に案内するー。
入れ替わった状態で1時間過ごすスペースには、
コスプレを楽しむための部屋や、鏡張りの部屋、
バーのようになっている飲食スペースなど、
色々なスペースが存在するー。
「ーーーじゃ、あなたはあのお客さんの時間が終わるまで、
この部屋で待機していてー」
入れ替わって、身体を”レンタル”している状態のスタッフは
楽屋のような部屋で待機するー。
お客さんと店員が同意すれば、”入れ替わった状態”で
お互いに、お客さんがいるスペースで遊んだり、会話を
することもできるシステムー
おじさんになった紀香は控室で、
”店内の様子”が見れるモニターを見つめるー
紀香の身体になったおじさんは、
紀香の身体でニヤニヤしながら胸を触っているー。
そんな”自分”の姿を見ても、おじさんになった紀香は
「ーー真面目すぎて…つまらないわたしも…少しは変われるかなー」
と、寂しそうに呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
週明けー。
茂はある噂を聞いたー。
「ーーそういや、この前お前に告白してた水島さんー
最近、変な店に出入りしてるらしいぜー?」
友人の大夢の言葉に、「変な店ー?」と、首を傾げるー。
「ーそれになんかーほら」
SNSの画面を見せてくる大夢ー。
そこには、派手な格好で街中を歩く”紀香”によく似ている女が
写っていたー
「ーお前が振ったから、ショックうけて自暴自棄になっちゃったんじゃね?」
笑いながら言う大夢にー
茂は少し不安になりー、
放課後ー、紀香のいる教室を訪れたー。
しかしー
紀香は最近、すぐに帰ってしまうようになって、
今日も、授業が終わってすぐに帰宅したのだというー。
心配になった茂は、翌日、紀香が出入りしているという
”怪しいお店”に行ってみることにしたー。
「ーーーーー」
確かに、怪しいー。
バーのような雰囲気のお店ー。
女子高生が来るような店には思えないー。
「ーーーーふぅ」
茂は深呼吸して店内に入るー
するとー
バニーガールのような格好をして、
太ももをニヤニヤしながら触っている紀香ー…
”入れ替わって”下心丸出しのおじさんに身体を
預けている状態の紀香が目に入ったー。
”入れ替わりカフェ”なんてことを全く知らない茂は、
中身が別人とも知らず、
学校とはまるで違う紀香の姿にー
只々驚いて、店の入り口付近で、呆然と
太ももを触る紀香(おじさん)の姿を見つめたー。
②へ続く
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コメント
3月最初のお話は「失恋少女」でした~!
失恋して自暴自棄になってしまった少女が
危険な入れ替わりバイトを始めてしまって…
…あとがきであらすじみたいなことを書いても
意味がないですネ~笑
続きはまた次回デス!
今日もありがとうございました~!