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「ーーいい加減にして下さい!!」

女子大生の中西 千奈津(なかにし ちなつ)が叫ぶー。


「ーー怒った顔も、また可愛いなぁ…」

千奈津に叫ばれた相手の男がニヤニヤと笑うー。


男は同じ大学に通う先輩・田代 誠人(たしろ まこと)ー。

大学の行事で知り合い、当初でこそ千奈津も

誠人に対して悪い印象は持っていなかったものの、

誠人は、次第にその”本性”を現すようになったー。


執着心や独占欲、妄想癖ー

そういったものを併せ持つ誠人は、

やがて千奈津に対して歪んだ感情を抱くようになり、

”ストーカー”と化したー。


常軌を逸脱した誠人のストーカー行為は続きー

千奈津は日々、そのことに悩まされていたー


「これ以上付き纏うなら、警察にも相談しますから!」

千奈津が叫ぶとー

誠人はニヤニヤしながら「やれるものならやってみろ」と笑うー。


誠人はー

”怒っていても”

”喜んでいても”

常に笑っているー。


怒っていても笑っているためー

今、誠人がどのような感情を抱いているのかもわかりにくいー。


それもまた、誠人の”不気味さ”を際立てていたー。


その日は、諦めたのか立ち去る誠人ー。

ほっとしながらも、千奈津は暗い表情で自分の住む

アパートに戻るのだったー


”こんな時、実家暮らしだったらまだ安心なのに…”

千奈津はそう思いながら、戸締りをしっかりと確認して、

窓のカーテンも閉めて、大学から持ち帰った荷物の整理を始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーまた田代先輩?」

親友の倉崎 彩夢(くらさき あやめ)がため息をつきながら言うー。


千奈津の親友・彩夢は、

穏やかな雰囲気の美人…という感じの女子大生ー。

しかし、正義感が強く、曲がったことは大嫌いで、

困っている人がいると放っておけないー

そんな子だったー


穏やかそうに見えて、言うべきことははっきりと言うー

そんな彩夢を慕う人間は多いー


千奈津にとっては、同い年の親友でありながら

人間として尊敬できるお手本のような存在だったー


「ーー最初は普通な感じの先輩に見えたんだけど…」

千奈津が困り果てた様子で言うー。


千奈津は別に、誠人を勘違いさせるような発言を

したつもりはないし、実際にしていないー。

だが、誠人はストーカー化してしまったのだー。


「何かしてこなければいいけど…」

彩夢が言うと、千奈津は少し不安そうに

「さすがにそこまではしてこないんじゃないかな…」と、呟くー。


だが、誠人のストーカー行為は、日に日にエスカレート

しているのも事実ー

このままいけば、何をされるか分からない”怖さ”があるのも事実だったー


「ーー警察には相談したの?」

彩夢の言葉に、千奈津は首を振るー。

千奈津はできるだけことを荒立てずに済ませようとするタイプでー

誠人の件も、誠人が分かってくれればそれでいい、とそう思っていたー


「ーあんまり無理しちゃダメだからね…

 千奈津の身に危険が及ぶ前に、ちゃんと対応しないとー」

彩夢が言うと、千奈津は「は~い…」と少し恥ずかしそうに呟くー


「同い年なのに、なんだか彩夢がお姉ちゃんみたい…」

千奈津の言葉に、彩夢は「ふふっ」と笑いながら、

スマホを手にするー


「あ、萌々(もも)からだー」

彩夢がそう言いながら、妹・萌々から届いた

メッセージを確認するー


彩夢は実家暮らしで、妹の萌々、そして両親と暮らしているー。

身体が弱く、体調を崩しがちな母親の負担をできるだけ軽くしようと、

家でもとにかく色々手伝っている様子だったー。


「ーーー萌々ちゃんと、最近会ってないなぁ~」

千奈津がほほ笑むー

彩夢は「今度、遊びに来たら?萌々も喜ぶと思うし!」と

優しく微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


だがーー

千奈津の”事を荒立てたくないー”という

判断は失敗だったー。


誠人のストーカー行為は、さらにエスカレートしていきー

やがて、千奈津のアパートの前にも姿を現すようになったー


「ーお願いですから!もうやめて下さい!」

千奈津が叫ぶー。


誠人は微笑みながら言うー。


「ーー俺はただ、千奈津ちゃんが好きなだけなんだー

 どうして、分かってくれないんだ?」


誠人の言葉に、千奈津は困惑しながら

「ーーごめんなさい…本当に、今、彼氏を作ることは

 考えていないのでー

 ごめんなさい」と、頭を下げるー


「ーーそっかー」

誠人は笑いながらうなずくー。

千奈津も”家の目の前まで来られている”という状況に

激しい恐怖心を抱いていたー。


「ーーでも、俺は諦めないよー。

 千奈津ちゃんに振り向いてもらえるまでー。

  

 俺はね、千奈津ちゃんー。

 昔から何でも、”努力”してここまで生きてきたんだー


 受験もそうー。

 この大学に入るために、俺は全ての時間を勉強に費やしたー。


 遊びも、そうー。

 中学時代は卓球で強くなりたくてさー。

 強くなるために、1日1万回はサーブの練習をしたよー。


 ”努力”は、才能を超えるー。


 だから俺は、何事も努力するんだー。

 千奈津ちゃんのことも、俺は諦めないー


 人生は諦めたらそこでゲームオーバーだ。

 だから俺は、千奈津ちゃんに振り向いてもらえるまで、

 告白をやめないー。

 1000回だって、1万回だって告白してみせるー。


 大学の中心で、千奈津ちゃんへの愛を叫んだっていいー。」


誠人が笑いながら言うー。


だが、千奈津は、そんな誠人の言葉を否定したー。


「ーー努力は素敵だと思いますー。

 でも…相手が…相手が嫌がっていることを何度も何度も

 繰り返すのは、違うと思います…!

 先輩は、間違ってます!」


どんな千奈津の言葉に、誠人は笑いながら舌打ちをするー


「まいったなー」


「ーー失礼します」

千奈津は、それだけ言うと、玄関の扉を閉めて、

中から鍵を閉めたー


部屋の中で震える千奈津ー。

だがー、誠人はそれ以上は何もしてこなかったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


誠人のストーカー行為に耐えかねた千奈津は、

ついに大学側にそのことを相談したー。


親友の彩夢も協力してくれたー。

彩夢が証言してくれたことにより、大学側も動き、

誠人に対して、厳重注意が行われたのだー。


それでー

全ては解決するはずだったー。


だがー

千奈津も、いや、親友の彩夢も誠人を甘く見ていたのかもしれないー。


「ーーー!」

翌日ー

大学から帰ろうとしていた千奈津の前に、

誠人が姿を現したー


誠人はいつものように穏やかな笑みを浮かべているー


「やぁ」

誠人が笑うー


「ーー…その…」

千奈津は気まずそうに誠人のほうを見つめるー。


だがー

心のどこかで、大学から怒られたことで、

謝りに来たのではないかー、と

そんな風にも思ってしまっていたー


しかしー


「ーー調子に乗るんじゃねぇよ」

誠人が笑いながら言うー


「え…?」

千奈津は思わず凍り付いたー


「ーーお前のせいで、俺の評判はがた落ちだー。

 俺を勝手にストーカー扱いして大学にチクるなんて、

 どういうつもりなのかな? な???」


誠人はなおも笑いながら言うー。


笑っているー

けれども、怒っているー。


「ーーなぁ?どういうつもりなんだ?なぁ?」

誠人が千奈津の腕を掴むー。


ついにー

誠人が”千奈津の身体に直接触れたー”


誠人が千奈津の腕を握る手に力を込めるー。


”痛い”とさえ感じたー。


「ーや、やめて下さい!」

誠人を振り払って逃げ出す千奈津ー


「ー調子に乗りやがって!」

誠人は笑いながら千奈津を追いかけてくるー。


そしてー

路地で千奈津に追いついた誠人はー

千奈津の頬をビンタしたー


「ー俺は、諦めないぞー

 どんな困難があったとしてもー

 これは愛のビンタだ。暴力じゃないー」


千奈津は涙をこぼしながら「やめて…!」と叫ぶー。


「ーーー俺の彼女になれば、やめてあげるさー」

誠人が笑いながら、千奈津に再びビンタしようとした

その時だったー


パチン!と、音が響き渡りー

誠人の身体が、路地のダンボール箱の山に吹き飛ばされたー


「ーー…あ、、彩夢!」

千奈津が涙を流しながら叫ぶー。


「ーー田代先輩!あなたのしてることは立派なストーカー行為ですよ!」

親友の彩夢が、倒れた誠人に向かってそう叫ぶー


大学でー

誠人に追われるようにして正門を出て行った千奈津の姿を見かけた

彩夢は、ここまで追いかけてきたのだー


「ーー邪魔するなよ…ったくー」

笑いながら誠人が立ち上がるー。


「ーーいこっ!警察に相談するしかないよ!」

彩夢が千奈津の手を引いて、路地から飛び出すー


「待ちやがれ!」

叫ぶ誠人ー


交差点まで逃げてきた千奈津と彩夢は、警察署のほうを目指すー。


その時だったー

背後でクラクションがなりー

衝突音が聞こえたー


千奈津と彩夢が驚いて振り返るとーーー

トラックに跳ね飛ばされてー

血まみれになった誠人の姿があったー


逆上して二人を追いかけることに夢中になるあまりー

赤信号を無視して、誠人はトラックにはねられーー

”即死”したのだったー


「ーーー…あ、、…ぅ…ぅ」

怯えた様子でただ泣きじゃくる千奈津ー。


相手がストーカーとは言え、目の前で無残な姿を

晒している先輩を見るのは、かなりきついものがあったー


「ーーーー…」

普段、取り乱すことのない彩夢も、さすがに険しい表情を

浮かべていたー。


警察が駆け付けー

周囲は騒然とするー


ようやく少し落ち着いてきた千奈津を慰めながら、

彩夢はふと、

少し離れた路上に誠人がつけていたペンダントが落ちているのを

彩夢が見つけるー


「ーーー…」

そのペンダントにー

まるで、吸い込まれるかのように近づいていく彩夢ー


その時だったー


ペンダントが突然、不気味に赤く光るー


”俺はーーー

 俺はーーーーーーー

 千奈津ちゃんを絶対に振り向かせて見せるー”


ペンダントから赤い輝きが放たれてーーー

彩夢の目が一瞬、赤く光るとー

彩夢は静かにそのペンダントを拾いー

自分に身につけたーーー


「ーー彩夢…?どうしたの…?」


「ーー」

彩夢は少しだけ間を置いてから振り返ると

「ううん!なんでもない!」と、千奈津に対して笑みを浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・・


一連の騒動がひとまず終わり、帰宅した彩夢ー


「ーーあ、お姉ちゃん!お帰り~!」

妹の萌々が、姉である彩夢の帰宅に気づき、笑みを浮かべるー


「ーうん ただいま」

彩夢は微笑みながらそう言うと、

ゆらり、ゆらりと、少し不気味な足取りで

自分の部屋の方へと向かっていくー


「ーーーくくくくくくく…」

部屋に戻った彩夢は不気味な笑みを浮かべたー


姿見に映る、自分の姿を見つめながら

口元を歪める彩夢ー


「ーーー」

彩夢はペンダントを掴むと、それを服の外に出して

笑みを浮かべたー


ペンダントの装飾が赤く輝くー。


「ーーククク… ”努力”が超えるのは、

 才能だけじゃなかったんだー」


彩夢の目も不気味に赤く輝くー


「”努力”は限界も超えるー」

彩夢がいつもは出さないような低い声で呟くと、

そのまま不気味な笑い声をあげるー。


誠人は、確かに死んだー。

だが、誠人のあまりにも強い執念はー

怨念として、身につけていたペンダントに宿りー

そのペンダントを拾った彩夢に憑依したー


誠人は、彩夢の身体と心を完全に支配したのだー


「ーーん~~~~~…」

彩夢はニヤニヤしながら部屋を見渡すー


そしてー

机の上に飾られている千奈津との写真を見つけた彩夢は、

可愛らしい写真立てから、乱暴にその写真を取り出して、

写真立てを放り投げるー。


「ーー千奈津ちゃん…♡」

うっとりとした表情で声を出す彩夢ー


写真の千奈津の部分をイヤらしい手つきで触ると、

そのまま千奈津の部分をペロペロと舐めだしたー


彩夢がうっとりとした表情で”親友”の写真を

ペロッ、ペロッと舐めていくー


写真の千奈津に唾液がついたのを確認すると、

彩夢は顔を赤らめながら笑みを浮かべたー


「俺は絶対にー

 千奈津ちゃんを振り向かせて見せるー」


邪悪な狂気がー

親友の身体を奪い、千奈津に迫ろうとしていたー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初のお話は憑依のお話でした~!☆

ストーカーに憑依されてしまった親友から、

逃げ切ることはできるのかどうか、

次回もぜひお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました~!!

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