<皮>モルティング~人を着る凶悪犯~㉑”雨” (Pixiv Fanbox)
Content
夜道ー
治夫と女子大生の萌恵が向き合うー。
治夫は険しい表情を浮かべているー。
「---ククク…そんな顔すんなって」
女子大生・萌恵は笑いながらそう呟くと、
周囲の人通りを見渡しながら「話がある」と、
治夫についてくるように促したー。
治夫は険しい表情を歪めながらも、
黒崎陣矢に乗っ取られた女子大生・萌恵のあとを追い、
河川敷までやってきたー。
「ーーー」
治夫が黒崎陣矢に乗っ取られた萌恵を睨みつけるー。
知らない子だがー
彼女が”黒崎陣矢”の被害者であることはすぐに理解出来たー
「---くくく 俺に似合う”洋服”だろー?」
萌恵の頬を触りながら、ペロリと唇を舐めると、
萌恵は、歪んだ笑みを浮かべながら呟いたー
「長瀬治夫ー
俺と手を組まねぇか?」
とー。
・・・・・・・・・・・・・
登場人物
長瀬 治夫(ながせ はるお)
若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく
松永 亜香里(まつなが あかり)
治夫の彼女。現在同居中。
長瀬 聡美(ながせ さとみ)
治夫の妹。亜香里に激しいライバル心を燃やしている。
目黒 圭吾(めぐろ けいご)
警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。
堂林 幸成 / 三枝 真綾 / 剛
目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。
黒崎 陣矢(くろさき じんや)
指名手配中の凶悪犯罪者。”モルティング”のひとり。
中曽根 佳純/春山 正義/ジェームズ・結城
”人を皮にする凶悪犯”通称・モルティングたち。
泉谷 聖一(いずみや せいいち)
治夫の中学時代の恩師。モルティングたちに”皮にする力”を与えた黒幕。
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★あらすじ★
矢神明信の遺した”対策班のやつらに気をつけろ”という言葉ー
モルティング対策本部内に侵入していた中曽根佳純ー
不穏な気配が漂う対策本部ー。
目黒警視正への疑念が治夫の中で強まる中、
治夫は、同じ対策班に所属するギャル風の女性刑事・三枝真綾から、
”目黒警視正におかしな部分があったら報告してほしい”とお願いされるー。
一方、治夫の恩師・泉谷聖一が率いる
人を皮にする凶悪犯”モルティング”たちは
”天誅”を実行に移したー。
新たに人を皮にする力を与えられた裏社会のヒットマン、
ジェームズ・結城が警察組織の闇を司る西園寺警察庁長官の娘、
梓を皮にして支配ー
梓の姿で、警察の暗部に関わる人間を一人一人、狙撃し始めたのだったー。
そんな中、治夫の前に姿を現した
凶悪犯・黒崎陣矢は治夫にある話を持ち掛けて来た…
☆前回はこちら↓☆
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「--何だって?」
治夫が表情を歪めるー
「”取引”さー。
お前は泉谷さんの”教え子”なんだろ?」
黒崎陣矢に乗っ取られた萌恵が、ニヤニヤしながら
治夫の周りを歩くー。
髪の毛の一部だけを赤く染めている萌恵ー。
黒崎陣矢が”自分流の好み”に、身体をカスタマイズしているー。
「---…それがどうした?」
治夫が言うと、萌恵は立ち止まって笑みを浮かべたー
「-俺と泉谷さんはー、
いいや、死んだ臼井も、あの喪服女狐もー、
”利害の一致”で手を組んでいるだけだー。
泉谷さんも、俺も、他の奴らもー
”相手に利用価値があればそう簡単には裏切らない”
からなー。
泉谷さんは、その辺、よく分かってるー」
萌恵はそう言うと、河川敷の橋の柱に寄り掛かって
笑みを浮かべるー。
「--俺たちは泉谷さんからそれぞれ”1セットずつ”
人を皮にする注射器を渡されているー」
萌恵がニヤリと笑いながら、2本の注射器を示すー
人を皮にする注射器と、元に戻す注射器だろうー。
「--でもさー、俺は”欲しい”んだよー」
注射器の先端をペロリと舐める萌恵ー。
「---ぜ・ん・ぶー」
狂気の笑みを浮かべる萌恵ー。
「--つまり、泉谷先生や、他のモルティングたちから
人を皮にする力を奪って、
独占したいってことかー」
治夫が呆れた様子で言うと、
黒崎陣矢に乗っ取られている萌恵は「へへっ」と笑みを浮かべながら
立ち上がったー
耳のピアスを輝かせながら
「ーーあらゆる”身体”を着て、俺好みに染めたいんだよー
このピアス、この”洋服”に似合うだろ?」
と、萌恵は、耳元を触るー。
「--ふざけたことを…」
治夫が怒りの形相で、萌恵を見つめると、
萌恵は続けたー
「-ーお前が仲間になれば、泉谷さんのことも
色々分かるだろうし、警察内部のことも分かるー。
俺は皮の力を独占してー
世界中の女どもを俺の芸術品にするのさー
くくくくくっ」
黒崎陣矢は、治夫を仲間に引き入れて
モルティングの親玉である泉谷の弱みを探ると共にー
警察内部の動きも探るつもりでいたー。
「--…泉谷先生を甘く見ないほうがいいぞ?」
治夫が言うー。
中学時代、教え子だった治夫にはよく分かるー
泉谷聖一という人間は、想像以上に計算高くー
そして、いざという時の行動力もあるー。
泉谷先生が、凶悪犯を仲間に引き入れて利用している、
ということは、当然、黒崎のような人間が出て来ることも
想定しているはずなのだー。
「--お前こそー」
萌恵は、笑みを浮かべながら治夫に近づくと、
「俺を甘く見ない方がいいぞ?」と、無気味な笑みを浮かべたー。
「--ー…」
治夫は萌恵に向かって銃を構えるー。
「ーー俺がお前と手を組む?笑わせるな」
治夫が言うー
そうー
黒崎陣矢と手を組むわけがないー
治夫にとって”最初に遭遇した”モルティングであり、
因縁の相手でありー、
同時に交番の先輩たちや、かつて助けた女子高生・由愛の
仇でもある黒崎陣矢と手を組むはずなどないのだー。
「--へへへへ…俺もお前がすんなり首を縦にふるとは
思ってねぇよ」
萌恵がそう言うとー
ニヤリと笑ったー
「-お前の彼女、亜香里ちゃん、だったかー?
超かわいいじゃねぇか…」
ペロリと唇を舐める萌恵ー
「--!」
治夫が表情を歪めるー
「--亜香里ちゃんを”俺好みにカスタマイズ”
してやるのも、いいかも、、なぁ♡」
舌を出して狂気的な笑みを浮かべる萌恵ー
「--お前…亜香里を…!
亜香里に指一本でも触れてみろ…!俺はお前をーー」
治夫が激怒して叫ぶー。
黒崎陣矢に乗っ取られている萌恵は、笑みを浮かべながらー
「俺と手を組めば、お前の彼女の安全は保障してやるよー
さぁ、どうするー?
別に断ってもいいぜ?
お前の彼女を”俺のお・洋・服”にするだけさーー」
と、続けたー
そして、さらに萌恵が邪悪な笑みを浮かべて
何かを口にしようとしたその時だったー
河川敷に、突然黒い車が突っ込んできて、停車したー
「-!?」
黒崎陣矢に乗っ取られた萌恵が振り返るー
治夫も驚くー
車から降りて来たのはーー
フルフェイスヘルメットを被り、顔を隠した男だったー。
「--なんだぁ、テメェは?」
萌恵が表情を歪めながら言うー。
治夫も身構えるー。
だがー
突然、ヘルメットの男は、萌恵に向かって発砲したー
「がっ!?」
突然のことに、驚き、その場に倒れる萌恵ー。
「--!?!?」
治夫が驚いて、その男の方を見て叫ぶー
「-お、、お前は!?」
銃を構える治夫ー
ヘルメットの男は、車のエンジンをかけて、
ライトでこちらを照らしたまま、車の前で呟いたー
「------”剛”-------」
とー。
”剛”
治夫は目を見開いたー。
”剛は、私としか会いません”
目黒警視正の言葉を思い出すー。
モルティング対策班メンバーの一人で、
目黒警視正としか会わない謎の人物”剛”
しかも、泉谷によれば
”警察は”剛”を使って、明るみに出来ないことを処理している”
のだと言うー。
「--あ、あなたが」
治夫は、表情を歪めながら銃を下ろすー。
黒崎陣矢に乗っ取られた萌恵を銃撃した剛ー
目黒警視正の指示で助けに来たのだろうかー。
そのまま近づいてくる剛ー。
「--…あ、、な、長瀬ですー
長瀬治夫ー
お会いできてーーー」
治夫は、一応”初対面”である剛に対して
そう言いかけたー
しかしー
突然、剛が、治夫の腕を掴み、投げ飛ばしたー
「--なっ!?」
驚く治夫ー
剛が、容赦なく治夫に向かって銃を放つー。
「--な、なにをする!」
銃弾は治夫の腕をかすめたー。
剛はヘルメットで顔を隠したまま、
治夫に近づいてくるー。
「--悪く思うなー
お前は”深淵”を覗き過ぎたー」
”剛”は、治夫に再び銃を向けるー
”殺される”
治夫はそう思ったー
一体なんなんだこいつはー
「--まさか!目黒警視正の指示で、俺をーーー!」
治夫はそう叫んだー
目黒警視正のことを探るような真似をしたからー
警視正が”剛”を送り込んで来たのではないかとー。
「--ーーー死ね」
”剛”が、質問に答えずに銃を放とうとしたその時だったー。
「--っうらあああああああああ!」
背後から、剛が思いきり蹴り飛ばされて吹き飛ぶー。
先程撃たれた黒崎陣矢ー
女子大生・萌恵の皮を着た黒崎陣矢が、背後から
剛を蹴り飛ばしたのだったー
治夫を助けたわけではないー
やられたままでは気に入らないー
それとーー
「--長瀬治夫ー
お前をバラすのは、俺だァ…」
笑う萌恵ー
剛が立ち上がり、銃を萌恵に向かって放つー。
萌恵は肩を撃たれながらも、笑いながらナイフを振り回すー
”剛”と萌恵の激しい戦闘ー
治夫は怪我した腕を押さえながら立ち上がるー。
「---チッー」
黒崎陣矢の”邪魔”が入り、”処理”に時間がかかり過ぎたと
判断した”剛”は、萌恵を蹴り飛ばすと、そのまま無言で
黒い車の方に向かったー。
”目撃”されると、都合が悪いー。
車に乗り込んだ”剛”は、舌打ちしながら
車を走らせようとしたー。
その時だったー
「------!!!!」
激しい光と衝撃を感じた直後ーーー
”剛”は、全ての感覚を失ったー
車が”爆発”を起こしたのだったー
「--何だよあいつ、急に爆発してー
くくくく 芸術的な”花火”だぜー」
萌恵が笑みを浮かべるー
”天誅”
剛の乗る車は、ここに来る前に既に細工されていたー。
泉谷の指示を受けて
”警察の暗部に関わる人間”を一人一人始末して回っている
ジェームズ・結城の手によって、爆弾が仕掛けられていたのだー
炎上する剛の車ー
「--ーお、、おい…!」
治夫が唖然としながら車に駆け寄るも、
どう見ても、既に剛は、車ごと炎上していたー。
「---!!!」
治夫が振り返ると、既に黒崎陣矢に乗っ取られた萌恵も
姿を消していたー
治夫は直ちに、警察に通報しー
そのままモルティング対策班本部へと歩き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「目黒警視正!」
治夫は、警視正の部屋に飛び込むー
そして、険しい表情で警視正を見つめたー
「---えぇ、長官ー。
すぐに身を隠されてくださいー
茂木警視監に続き、先ほど1名、奴らに始末されましたー」
目黒警視正は誰かに電話をかけていたー
治夫を確認すると、「えぇ、ではまたー」と、目黒警視正は
相手との話を切り上げ、受話器を置くー。
目黒警視正は、
治夫の方を見て、いつものように穏やかな笑みを浮かべたー。
「鬼のような形相ですね。
治夫くんー。
どうかしましたか?」
目黒警視正の言葉に、治夫は「--まだとぼけるんですか!」と
銃を目黒警視正に向けたー
それでも、余裕の笑みを浮かべたままの目黒警視正ー
「さっき”剛”に襲われましたー。」
治夫が、冷たい口調で言うー。
「あなたが、命令したんですよね?」
怒りを込めた口調ー。
「それにーー
今の電話の相手は
西園寺警察庁長官ですか?」
治夫は怒りの形相で叫ぶー。
人を皮にする力を作りー、
警察に都合の悪い者を始末しー、
上層部の人間の不祥事はもみ消すー
目黒警視正も、そんな”暗部”の手先なのだとー、
治夫は確信したー。
目黒警視正は、動じぬまま立ち上がるー。
「---…私が、どうして治夫くんを始末するのですか?」
目黒警視正の言葉に、治夫は「俺が、西園寺警察庁長官のことを
調べているから、ですよね?」と、目黒警視正を睨むー。
「------」
目黒警視正は穏やかに微笑んだー。
「--治夫くんー
じきに全てを話せるときが来ますー。
ですが、”今”は、話せないー。」
それだけ言うと、目黒警視正は小声で囁いたー。
「---私に、治夫くんを始末するメリットはありませんー」
とー。
「--!」
治夫は、立ち去ろうとする目黒警視正に、
「警視正!だったら教えてください!剛は、誰の指示で俺をーー」
と、叫ぶー
目黒警視正は振り返ってー
「--モルティングたちがいよいよ本格的に動き出しましたー
私もじきに”狙われる”でしょうー。
この先、何があっても、治夫くんー
君は、モルティングたちを追いなさいー」
と、呟くと、そのまま部屋から立ち去って行ったー
そしてーーーー
モルティング対策本部に、
”目黒警視正の乗る車が爆破された”
と、連絡が入ったのは、その2時間後のことだったー
「-----ー」
沈黙する好青年風の堂林幸成ー。
ギャル風の三枝真綾は、調査に出ているため、不在ー。
「---目黒警視正がー」
治夫は、困惑の表情を浮かべたー
”モルティング側”の仕業だろうかー。
警視監に続き、”剛”も始末されー、
そして、目黒警視正までー?
治夫は戸惑いの表情を浮かべたまま、
「堂林さん…俺、現場に向かいます!」と、
そのまま、目黒警視正の車が爆破されたという現場に向かって走り出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「----」
双眼鏡で、目黒警視正の車の爆破を確認した
ジェームズ結城は、警察庁長官・梓の皮を着たまま、
立ち上がったー
警察庁長官・西園寺の娘、梓は
大学の帰りに、ジェームズ結城に皮にされて乗っ取られてしまったー
それ以降、冷徹な殺人鬼として、
モルティングの親玉・泉谷からの依頼通りー
警察の暗部に関係する人物を始末して回っているー
裏社会のヒットマンであるジェームズ・結城にとっては造作もないことー。
さらには、梓の身体を使っていることによってー、
父である西園寺が娘を守ろうとしているのか、全く警察側が
手出しをしてこない状態だったー
「-目黒警視正を始末」
車の中に、確実に目黒警視正が乗っていたことを確認した
梓は、車を爆破したー。
目黒警視正は死んだー
いつもの穏やかで、少し世間知らずな梓の面影にはそこにはなくー
ラバースーツを身にまとい、冷徹な殺人マシーンと化した梓は
無表情のまま、その場から立ち去ったー
名前がリストアップされたメモを手に、梓は
”目黒圭吾”と書かれた部分に線を引くー。
そして、そのまま夜の闇に姿を消したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「------」
雨が降って来たー。
帰宅した治夫は、疲れた様子で亜香里の方を見るー。
黒崎陣矢は”亜香里を着る”と言っていたー。
そんなこと、絶対にさせないー
「--亜香里…」
治夫は、亜香里に意を決して、全てを口にしたー。
”部外者に言うべきではないー”
そう思いながらも、目黒警視正が死亡した今ー
亜香里の身を守るために、どうしても話しておきたかったー。
「---そんな… 人を着るって……え…なにそれ…?」
亜香里が心底驚いたような表情で言うー。
「---聡美も、この前、奴らの一人に”乗っ取られたー”
幸い、無事だったけどー」
治夫が険しい表情で言うと、亜香里は表情を曇らせたー。
治夫は、亜香里に避難を提案しようとするー。
”安全な場所など、あるのだろうかー”
そんな風に思いながらー
亜香里に「-いったん、どこかに避難したほうがーー」と、
言葉を口にしかけたー。
その時だったー
ガン!
玄関の扉で、異様な物音がしたー。
「----!」
治夫は、室内にあった棒を手に、玄関の方に向かうー
「な、、、何なの…!?」
亜香里が怯えた表情で言うー。
雨がさらに強まるー。
「--大丈夫…ここにいて」
治夫は亜香里に優しくそう言い放つと、
警戒しながら、玄関の扉を開くー。
「--!」
階段を降りていく人影が見えるー
アパートの階段の方に向かって「待て!」と叫ぶ治夫ー。
治夫は「絶対俺が戻ってくるまで玄関の扉、開けないで!」と、
室内の亜香里に向かって叫びー
鍵を閉めさせると、そのまま階段の方に向かったー
大雨の中、傘もささずに
”レインコートの男”を追いかける治夫ー
その男が、墓場の方に向かって行くー
既に勤務時間外で、銃を持っていない治夫は、
警戒しながらー
その男を追いかけるとー
ようやく、男は立ち止まったー
夜の墓地ー
「---幽霊には、お似合いの場所です」
そう、呟いた男は、レインコートのフードの部分を取るー。
「---!!」
表情を歪める治夫ー。
その男はー
先ほど、車ごと爆破されたはずの、目黒警視正だったー
「---あれは”ダミー”です。私ではありませんー」
目黒警視正は、先ほど爆破されたのは、自分のダミーなのだと
淡々と告げたー。
まるで身を隠すように、姿を現した目黒警視正を前に、
治夫は「ダミーって……?い、、いったい、何をー」と、
戸惑うー。
「私は、常に”監視”されていましたー」
目黒警視正が言うー。
「監視…?モルティングたちにですか?」
治夫が言うと、警視正は首を振るー
「いいえ、あなたが言う、警察の闇ー
西園寺警察庁長官の手の者に、ですー
私が真実を話せば、治夫くん、あなたが消されるー。
だから、真実を話すことができなかったー。
こうして、真実を話すためにはー
私が自由に行動するためには
”死”を演出して、私が死んだことにするしかありませんでした」
警視正の言葉に、治夫は「じゃあ、あなたはモルティングと
手を組んでいるってことですか?」と聞き返すー。
「いいえ」
目黒警視正は首を振ったー
「-モルティングたちは私を本当に始末するつもりでしたし、
実際に今も始末したと思っていますー。」
目黒警視正は、そこまで言うと、治夫の方を見たー
「-あなたに、全てをお話しましょう」
いつものように、感情をあまり感じさせない笑みを浮かべると、
目黒警視正は静かに口を開いたー。
「-私の目的は
”モルティングの殲滅” そしてー
”剛の殲滅”
人を皮にする凶悪犯たちを全て始末すると同時にー
警察内部の”闇”も排除するー。
それが、私の目的ですー。
秩序を保つためには、どちらも、存在してはいけない者共ですー」
その言葉に、
治夫は、表情を歪めるー
「”剛”の殲滅とはー?」
治夫が言うと、目黒警視正は笑みを浮かべたー。
「--”剛”は、個人を示す名前ではありませんー。
警察内で使われている”隠語”です。
都合の悪い事案を闇に葬る際に、それを実行する人間が”剛”ですー。
”剛”は、警察内にいくらでもいますー。」
目黒警視正が言うー。
”剛”は個人名ではなく”隠語”なのだとー。
「-じゃあ、さっき俺の命を狙ったのはー」
「-あれは”剛”の一部。西園寺警察庁長官らの指示で、
あなたの命を狙う全ての人間が”剛”を名乗りますー」
「---」
治夫は、”剛”の正体を知り、警視正の方を見るー
「--…聞かせてくださいー。
さっき、俺を殺そうと”剛”を送り込んだのはー
あなたではないのですか?」
治夫が尋ねるー。
大雨の中、目黒警視正はほほ笑むー
「--西園寺警察庁長官を、治夫君が調べていることを
知る人間が、あなたを始末しようと、送り込んだのでしょう」
「---」
治夫は沈黙するー
「-------!!!」
そして、目を見開いたー。
目黒警視正以外にー
”西園寺警察庁長官を調べている”ことを少し話した人物がいることを
思い出したのだー。
治夫の様子から、治夫が事実にたどり着いたことを悟った
目黒警視正は笑みを浮かべたー
「--三枝真綾」
ギャル風の真綾の名前を呟く目黒警視正ー
「-彼女は、西園寺警察庁長官直属の凄腕潜入捜査官ですー。
私の側で、モルティングの動向を探ると同時に、
私のことを”監視”していましたー。
あなたに”剛”を差し向けたのはー
彼女ー
三枝真綾ですー」
目黒警視正の言葉に、治夫は、
”ハルくん!”と、フレンドリーに接してきていた
真綾の姿を思い浮かべてー
震えることしかできなかったー
㉒へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今月最初の長編皮モノでした~!
人を皮にする凶悪犯たちとの激闘を今月もお楽しみくださいネ~!
今日もお読み下さり、ありがとうございました!