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3月14日ー

男子高校生の川坂 富孝(かわさか とみたか)は

焦っていたー


「--おい!マジかよ!」

富孝は、放課後ー

何としても”あること”を阻止しようとしていたー。


それはー

”友人の、ホワイトデーのお返し”だー。


富孝の親友である山瀬 学(やませ まなぶ)-。

その学が、

バレンタインデーの日に、学に本命チョコレートを渡した

クラス一の美少女・浅野 紗奈恵(あさの さなえ)に、

今日、ホワイトデーのお返しをするー。


そして、紗奈恵に対して、

”バレンタインデーの返事”をしようしていたのだー。


だがー

”ある事情”から、富孝はその”返事”を阻止しようとしていたー。


学は、紗奈恵に”Yes”の返事をするつもりだったー

しかし、それをされてしまっては大変なことになるー

なんとか、なんとか阻止しなくてはー


「--浅野さん!」

富孝は、学に呼び出された空き教室に向かう紗奈恵を見つけて

慌てて呼び止めたー。


「--え?」

紗奈恵が振り返るー。


富孝は慌てた様子で、”あ、学から伝言!”と叫ぶと、

学から呼び出された理由を知らない紗奈恵に対して

”実は来週の文化祭の話があったみたいだけど、

 学、急用で帰ったから、俺が代わりに伝言をー”

と、うまく話を作りー

そのまま紗奈恵を誤魔化したー


「--わかった。ありがと!」

紗奈恵が微笑みながら、立ち去っていくー


そんな紗奈恵の後ろ姿をじーっと見つめながら

富孝は「-----」と、頭の中で”変身”と念じたー


富孝の姿が急激に変化していくー

そしてーあっという間に髪・顔立ち・胸ー

あらゆる部分が変化しー

最終的には制服までも女子のものに変化ー


そのまま、富孝は紗奈恵の姿になったー


富孝は、小さいころから

”他人に変身する力”を持っていたー

根は真面目な富孝は、その力を”人の人生を狂わせるような悪いこと”に

使ったりすることはなかったもののー

時々、ちょっとしたイタズラをするようなことがあったー


今回のトラブルも、それが原因だー。


「よしー」

手鏡で、自分が紗奈恵の姿になったことを確認した富孝はー、

学が待つ空き教室へと向かうー。


”1か月前”の軽い気持ちでのイタズラを、深く反省しながらー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


約1か月前ー

バレンタインデーの前日ー


富孝は親友である学と”翌日のバレンタインデー”の話をしていたー。


だがー学は、鼻でバレンタインデーを笑ったー


「-別に…興味はないな」

とー。


学の言葉は”負け惜しみ”ではないー

親友である富孝にはわかるー。


学は、”本当に興味がない”のだー。

昔から学はそういうやつだったー。


超がつくほど、真面目で堅物な性格で、

エッチなことに全く興味を示さないー。

一つの物事に対して、超がつくほど真剣に考え、

そして、何事に対しても真面目に答えを示すー。


一方で”メリット・デメリット”で物事を考えるのが基本であり、

学は”恋愛をデメリット”と考えていたー。

恋愛から得られるメリットよりもデメリットが上回るー

だから、僕は恋愛しない、と、そう断言していたー。

”メリットを感じることがあれば、話は別。

 けど、自分から動くメリットは一切ない”と、

言い切っていたのだー。


学は、そういう人間だー。


富孝は学の真面目な一面のことを尊敬していたし、

真面目であるが故に”友情”に対してもとても真剣である

学のことを、心の底から信頼していたー


”一度信じた友を裏切ることは、デメリットでしかない”

学は、そうも断言していたからー

一度仲良くなれば絶対の信頼を置ける相手とも言えた。


だが、同時にー

ちょっとしたイタズラ心が浮かんできたー


”クラスで一番人気の浅野さんから本命チョコを

 渡されたら、学のやつ、どんな反応するんだろうな?”


とー。


2月13日ー

富孝は、笑みを浮かべたー。


そして、帰宅すると、”本命チョコ”を作り始めたー

”学に対する本命チョコ”だー。


だがー

渡すのは、富孝ではない。

クラス一の人気者・紗奈恵だー。


紗奈恵には、彼氏がいないー。

友達との会話で、それは確認済みだー。


”紗奈恵から本命チョコを渡されたら、あいつはどう反応するのだろうか”

そんな風に、富孝は考えたー


妹から”お兄ちゃん、なんでチョコ作ってるの?”と笑われたもののー

富孝はネットで調べながら、

必死に、チョコを完成させたー


”紗奈恵から学への本命チョコもどき”

をー。


「--へへへ…浅野さんから本命チョコもらえたら、

 クールな学もデレたりしてなー」


そして翌日ー

2月14日のバレンタインデーの日にー

富孝は、登校してきた紗奈恵を物影から見つめー

紗奈恵に変身したー。

紗奈恵は、毎週2回ほど、部活で朝早く登校しているー

それを知っていた富孝は、まず、紗奈恵に変身を済ませたー。


変身完了後に、校舎の脇にすぐに隠れるー

”本物の紗奈恵”に見つかったら

”わたしがもう一人いる!?”と大騒ぎになるだろうから

見つかるわけにはいかないー。


「---」

学は”いつも”20分前に登校するー


少し早いがー学曰はく

”トラブルがあっても遅刻せず、家に居られるギリギリの時間がこの時間だ”

とのことだったー。


紗奈恵の姿に変身した富孝は、笑みを浮かべながら校舎脇で

登校してくる生徒たちをこっそりと見つめるー


”他の生徒に見られると面倒だからなー

 万が一”浅野さんが二人いる!”なんてなっちゃうと大変だし”


紗奈恵に変身した富孝は、そう思いながら

学の到着を待つー。


「---さっみ~…」

2月14日ー

普段履き慣れていないスカートを履いていることもあり、

とても寒く感じられたー


「-女子って寒くね~…?」

紗奈恵の声でそう呟く富孝ー


「--冬はズボンが最強だな…」

スカートと靴下の隙間から覗く生足を触りながら

「さみっ!さみっ!」と呟くー。


「---」

そうこうしているうちに、学が登校する時間になったー


学がやってくるー。


紗奈恵の姿をした富孝は、ゴクリと唾を飲み込むと

校舎脇の物影から飛び出してー


「あの…!まな、、、や、、山瀬くん!」

と、学を呼び止めたー


「-え?」

学が紗奈恵の姿をした富孝を見つめるー。


学に

”川坂くんだろ?”とあっさり見破られる可能性も考えられたがー

さすがに富孝の変身能力は完ぺきだったのか、

見破られることはなかったー。


「---ちょっと、話が」

紗奈恵のふりをしながら、校舎裏に学を呼び出すー。


学は、照れる様子もなく「わかった」とだけ返事をすると

そのまま紗奈恵の姿をした富孝についてきたー。


そしてー

紗奈恵の姿をした富孝を見つめながら「話って?」と

優しく呟いたー


「----あ、、あの…」

紗奈恵の姿をした富孝は、

自分は紗奈恵じゃないのにも関わらず、

まるで、自分が紗奈恵で、大好きな学に告白するような

気分になって、ドキドキしてしまうー


”あぁぁ、やべぇ…浅野さんの姿でドキドキしちゃうとか、やべぇ…”


そんな風に思いながらも

”はっ!本来の目的!”と、慌てた様子で、

紗奈恵として、学にチョコを差し出したー


「あ、、あの、、お、、わ、、わたし…

 山瀬くんのことが、ずっと、、ずっと、大好きでした」

”浅野さんがこんな声を出せるなんて”と

紗奈恵に変身している富孝は思いながらー

学にチョコを渡したー


「--あ、、あの……

 え、、えっと、急に、ごめんね?」


紗奈恵のフリをして、学に対してそう言い放つと、

学は「まずは、チョコをありがとう」とお礼の言葉を口にしたー。


紗奈恵の姿をした富孝は

「だ、誰にもこの話は言わないでね?」と言うと、

学は頷いたー。


「-わかった。1か月後に返事をするよ」


「へ?」

紗奈恵の姿をした富孝は、思わず変な声を出してしまったー。

てっきり、”今すぐ”返事を貰えると思っていたのだが

貰えなかったー。


「---い、一か月後!?」

紗奈恵の姿をした富孝がそう叫ぶと、

学は「うん」と頷いたー


「--じっくり、真剣に考えたいんだ。

 ホワイトデーの日に、答えを出すよ」


「---え…あ、、、え…?」


”何で返事が1か月後なんだよ…”と

内心で、少し不満そうに呟くー。


どうせー

学のことだから、即答で「ごめん」と言ってくるか、

案外照れ照れしてしまうか、そのどちらかだと思っていたー


とにかく、学のリアクションを見たかったー


しかしー

学は予想外に”1か月間塾考する”という返事を返してきたー。


”---…つか、やばくね…?”

紗奈恵の姿をした富孝は一人、考え込むー


”クラス一の美少女に告白された時の学の反応が、見たかっただけ”


てっきりこの場で答えを出してもらえると思っていたしー

その答えは99パーセント「No」だと思っていたー。

万が一、紗奈恵の告白を学が受けたとしても

その時は「ごめん!罰ゲームだった」で済ませようとしていたー。


だがー

学の反応は、富孝の予想外の反応ー

”返事を保留”にされてしまったー。


”誰にも言わないで”と言っておいたし、学の性格上、

”紗奈恵に告白された”と言いふらされる心配はないー


けれどー


”3月14日に返事”を

本物の紗奈恵にされてしまっては

富孝のイタズラがバレる可能性があるー


咄嗟に紗奈恵の姿をした富孝が口を開くー


「あ!じゃあ、振られるのはつらいから、

 3月14日にOKならお話、

 ダメなら何にもなし、って感じにしてもらえるかな?


 ほら、バイトの面接みたいに!」


紗奈恵の姿をした富孝の提案ー


これならー

学が”振る”場合は、何の返事もしない、ということになるから

本物の紗奈恵に何か伝わる心配もないー


学は「そっか、わかった」と、

「じゃあ、ごめんなさいする場合は、何も言わないことにするからー

 3月14日に僕が何も言わなかったら、

 ごめんってことで…」と、頷いたー


それだけ言うと、学が少し雑談してから立ち去っていくー


放心状態の紗奈恵の姿をした富孝ー


「---ふ~~~」

ため息をつくー。


「--なんか、ホントに告白してるみたいに緊張しちゃったなぁ」

そう呟いた直後にー


「って、あいつ、浅野さんに告白されても

 リアクション薄ッ!」


紗奈恵の姿をしたまま富孝は

「俺だったら絶対赤面しちゃうのにな」と呟いたー


結局、学の薄いリアクションしか見れなかったがー

”女子から告白されたときの学”を見ることができてー

富孝は、自分のイタズラに満足していたー。


・・・・・・・・・・・・・・・


しかしー

”事態”は変わったー


3月14日放課後ー


”学が紗奈恵を呼び出した”という噂を

他の友人たちから聞いたのだー


「えっ!?」

富孝はお茶を吹き出してしまうー


学は99.9パーセント、告白を断ると思っていたー


だから、もう、”あの日のイタズラ”は終わったものと考えていたー


しかしー

学が紗奈恵を呼び出したということはー


”ま、、まさか、あいつ、告白OKするのか?!”


バレンタインデーの日にー

”ごめんなさい”ならそのまま何も言わないでーと

約束したはずー


学の性格上、それは絶対に守ってくれるはずー


しかし、その紗奈恵を呼び出したということはーー


「や…やっべぇ…!」

富孝は、慌てて走り出したー


”何も知らない本物の紗奈恵”に、

”偽物の紗奈恵から告白された返事”を

学がしてしまうー


「--やべえやべえ…!!!」

富孝は、凍り付くような焦りを感じながら

廊下を走ったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


明日はホワイトデーなので、

ホワイトデーモノを書いてみました!

明日は②を書きます~!


今日もありがとうございました!



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