<寄生>ラーメン・パラサイト①~麺に潜む寄生虫~ (Pixiv Fanbox)
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「-ーーここ、美味しいんですよぉ」
OLがラーメン屋を指さすー。
寂れた路地の一角に存在しているラーメン店・麺魔界(めんまかい)ー。
「--まさか、久美ちゃんに誘われるとは思わなかったなぁ~」
久美と呼ばれたOLの上司である部長が、
ニヤニヤしながら、麺魔界の看板を見つめるー。
「--ふふふ、部長と一度お食事したいと思ってましたし、
ここ、本当に美味しいので!」
久美は、若くて綺麗なOL-。
部長は、久美に何度も何度もアプローチを仕掛けていたが、
無視されていた挙句、セクハラで問題にもなっていたー。
だが、今日、突然その久美に、ラーメン屋に誘われたのだった。
「-----」
店に入ると、店主が、不愛想な感じで、部長と久美を見つめるー
正直、店主の愛想は悪い。
いかにも、隠れた名店、と言う感じだろうか。
「-----」
メニューを見つめる部長。
メニューは”ラーメン”ひとつだった。
他には何もないー。
「--お店の人が、その日その日のおすすめラーメンを作ってくれるんですよ!」
久美が小声で部長に伝えるー。
「-そ、そうなのか」
ラーメンをお願いします、と部長が言うと、店主は返事もせずに
ラーメンを作り出すー
お店は正直、小汚いし
店主の愛想も悪いー。
他に客もいないし、
本当に美味しいのだろうか。
そんな風に思いながら、
部長はラーメンの完成を見るー。
久美もラーメンも一つ注文したー。
「----」
部長は、久美を横目で見つめるー。
”もしやー”
セクハラ上司に対する復讐なのではないか。
部長はそんな風に思ったー。
久美には、今まで何度も食事に誘ったりしているが
その都度断られてきたー
それが、今日になって急にー
一体、何故だろうか。
「---お待たせしました」
店主の男が、ラーメンを目の前に置くー。
今日は、もやしの多いラーメンのようだー。
「--いただきます」
部長はそう呟くと、ラーメンを食べ始めるー。
「---……」
部長は表情を歪めたー。
正直、そこまで美味しくないー
これなら、同期といつも飲みに行く
居酒屋の締めのラーメンのほうがおいしい。
「----」
部長は久美の方をチラリとみるー
久美が、とても美味しそうにラーメンを
食べているー
可愛い女性とは思えないぐらいに
ガツガツとー。
「--!」
部長がある異変に気付いたー。
麺の中に、普通の麺より少し太い、麺がーー
「---!!!!!」
部長は驚くー
自分が口に運んでいた麺の中にー
麺より少し太い、ニョロニョロとした
グロテスクな虫のようなものがーーー
「--むぐっ!?」
ラーメンと一緒に、その虫のようなものが
部長の口に入り込むー。
「が、、うっ!?え、、」
部長は咄嗟に吐きだそうとしたが、
吐き出すことはできず、虫のようなものを
飲み込んでしまうー
「う、、、うえ、、気持ちわりぃ…
お、、おい…!虫が入ってたぞ!」
部長が、店主に向かって声をあげるー
だがー
「---え」
部長は恐怖を感じたー
店主が口を開きー、
今、部長の中に入り込んでいった
ニョロニョロした虫のようなものがー
店主の口から、顔を見せているー。
グロテスクな、寄生虫のような、虫ー
「---ククク」
ー!?
部長が戸惑っていると、となりにいたOLの久美が笑ったー
「え…久美ちゃん…?」
部長が首を傾げると、
久美のーー
久美の耳から、店主と同じ寄生虫のようなものがーーー
「-え‥!?ひっ!?」
部長が尻餅をついてしまうー
「--ご苦労…」
店主が、ごぼごぼ言いながら呟くー。
久美が微笑むー。
「--我々はどんどん”仲間”を増やしー
人間社会を乗っ取るのだ」
確かに久美の声ー
だがー
久美の目は虚ろでー
久美の耳から飛び出した寄生虫が生き生きと動いているー
「---…な、、何を言ってー
…ぐぁっ!?!?!?!?」
部長が突然激しい頭痛を感じるー
”身体の中に入り込んだ虫”が、
部長の全てを奪っていく感覚を覚えるー
「ひっ…あ、、、え、、、やめ、、やめろぉぉぉぉぉぉ!」
悲鳴を上げてもがく部長ー
やがてー
部長は大人しくなると、
静かにイスに座って、
ラーメンを食べ始めたー
「---ふふ…美味しいよね」
久美が呟くー
「”我々”にとってはー」
久美の耳から寄生虫が再び顔を出し、
久美は頭を横に傾けて、寄生虫が、ラーメンを直接
おいしそうに食べ始めたー。
久美の目は虚ろなままー
店主も、ラーメンを口から食べてー
体内にいる寄生虫が嬉しそうにラーメンを食べるー。
「----あぁ…最高だ」
部長は虚ろな目でそう呟いたー
”人間を乗っ取る謎の寄生虫”の
侵略は、既に始まっていたー
・・・・・・・・・・・・・・・
男子大学生・森原 治(もりはら おさむ)が
昼休みに食堂でラーメンを食べていたー。
そこに、彼女の辻野 紗愛(つじの さら)がやって来るー。
「あ、治!今日もラーメン?」
紗愛が笑いながら、治の前に座ると、
「--俺にとって、ラーメンは人生だからな」と笑うー。
「ふふ、またそんなこと言って…
野菜もちゃんと食べなきゃだめだよ~?」
紗愛が言うと、
治は「分かってるって!」と笑みを浮かべたー
紗愛はとても優しく、控えめな性格だが、
付き合い始めてからは、時々お姉さんのような
そんな面も見えてくるようになったー。
「あ、そういえば」
紗愛がスマホを手にして、ラーメンを食べている最中の治に
何かを見せるー
「このラーメン屋、美味しいみたいだよ?
今度一緒に行ってみない?」
紗愛が見せて来たスマホの画面には
”麺魔界”という名前のラーメン屋が表示されている
「麺魔界?知らないなぁ。個人経営のお店かな?」
治が言うと、
紗愛は「ここにしかないみたいだから、そうみたいだね~」と笑う。
「--なんか、すっごく美味しいんだって。
でも、わたしはホラ、こういうお店に一人で行くのも
ちょーっと、緊張しちゃうから…」
と、紗愛が言うと、
治は「はは、いいよいいよ。今度都合が合う時に行こう」と、
紗愛と約束するー
紗愛は「うん!楽しみにしてる」と呟くと、
そのまま「あ、教授に呼ばれてるから、わたし、先に行くね」と
微笑みかけて、そのまま立ち去って行ったー
「麺魔界かぁ~ あいつに聞いてみるか」
治はそんな風に一人、呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・
「麺魔界?」
ラーメン好きの友達で、ラーメン博士と勝手に治が
呼んでいる男子大学生・熊田 武五郎(くまだ たけごろう)に
麺魔界の話をしてみると、武五郎は首を傾げたー
「あそこクソまずいって、評判だったし
マジで不味かったぜ
とっくに潰れたかと思ってたけど」
と、バカにしたように笑ったー
「は?マジ?紗愛が美味しいって評判だって言ってたけど」
治が首を傾げながら言うと、
武五郎は、「ないない」と手を振ったー。
「-俺たちが入学したころー
そうだなぁ、ちょうど2年前ぐらいにオープンした
個人経営の店なんだけどさ、
俺も入学直後に行ったんだよ。
そしたらさぁ、クッソ不味くて、
これなら、スーパーの袋のやつ食ってたほうがうまいや
って感じだったと思うけどなぁ
俺と一緒に行ったやつらもそう言ってたし」
武五郎の言葉に、
治は「--それからは行ってないのか?」と尋ねるー
「まぁな。あんなクソまずいところ行くぐらいなら
他のところ行くぜ」
武五郎は笑いながらー
「まぁ~2年前だから、紗愛ちゃんが美味しいって評判だ!って
言ってたなら、今は味も違うのかもなぁ」
と、呟くー。
「--ま、今度、紗愛と行ってみるよ。ありがとな」
治が言うと、武五郎は「へへへ、ラーメン屋でデートなんて
羨ましいなぁ」と笑みを浮かべたー。
「--お前だって彼女、いるだろ?」
「--まぁな。天然すぎてビビるけど」
武五郎の言葉に、
治は「天然だって可愛いじゃないか」と揶揄いながら
そのまま立ち去って行ったー。
武五郎は、「--っかし、麺魔界がまだあったなんてなぁ」と
呟くー。
麺魔界は本当にまずかったー。
店主もやる気を感じられなかったし、
2年経過した今も、お店が残っているなんてー。
「--立地も悪いし、店主は愛想悪いしーー
マジで行く価値ねぇからな」
一人、そう呟くと、武五郎は
少しだけ考えたあとに、
「ま…行ってみるか」と呟き、
スマホを手にしたー
”わりぃ!今日、ラーメン食ってくから、一緒に帰れない”
と、彼女にLINEを送った武五郎は、
”ラーメン博士の血が騒ぐぜ”と、大学が終わったら
麺魔界に向かう決意をしたー
・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
「武五郎の様子がおかしい?」
治は、表情を歪めたー
武五郎の彼女・野本 優季(のもと ゆき)に呼び出された治ー。
優季から、「武五郎の様子が数日前からおかしい」と相談されたのだ。
「--おかしいってどんな感じに?」
治が聞き返すと、優季は
大袈裟なジェスチャーを繰り返しながら
「なんかこう、、ぶわーっ どっかーん!みたいな感じ!」と
意味不明な表現をしたー。
「-……野本さん…それじゃ分からないよ」
治が苦笑いしながら言うと、
「え、、え、っと、、えーっとね」と、優季が頭の中で
言葉を整理して、口にしたー
「--武五郎くん、なんか最近毎日ラーメン屋に通ってて」
「--ラーメン屋?いつものことじゃないか。
だからラーメン博士なんて呼ばれるんだし」
「違うの」
優季が、謎のジェスチャーを交えながら言うー。
”相変わらず大袈裟な身振り手振りだなぁ”などと思いながら
優季の言葉の続きを聞くー
「--麺魔界ってお店に毎日通ってて、
なんか、わたしに麺魔界に行こう、行こう、ばっか
言ってくるようになっちゃってー
なんか、頭の中ラーメンになっちゃってる感じ」
優季の言葉に、
治は笑ったー
「頭の中ラーメンなのは、いつもだぜ、あいつは」
とー。
けれどー
少しだけ気になるー
”クソまずいとか言ってたよな、あいつ…”
恐らくー
あの会話をした日に、あいつのことだから
麺魔界がおいしくなったのかどうか、
確認しに食べに行ったのだろうー。
それで、麺魔界にはまったということかー?
「--ま、わかった。俺もあいつに聞いてみるよ」
治がそう言うと、優季は安心した様子で頷いたー
・・・・・・・・・・
その日のうちに、治は武五郎と話をしたー
武五郎はー
”麺魔界”のことをまるで神のように褒めたー
そしてー
「お前も行こうぜ!一緒に!」
と、治を誘うー。
治は「いや、ほら、俺、紗愛から誘われてるし」と
苦笑いすると、
武五郎は一瞬ぽかん、と口を開いたまま宙を見つめて
それから「あぁ、そうだったな」と笑みを浮かべたー
一見普通だがー
なんだか変な気がするー
そう思った治は、大学帰りに、武五郎を尾行したー。
武五郎は、彼女の優季と合流すると
麺魔界の方に向かっていくー
優季が「-わたし、ラーメンとかあんまり好きじゃないなぁ」と
呟いているが、武五郎が強引に麺魔界に連れて行っているようだー。
「----」
治がその様子を見つめるー
麺魔界に入っていくふたりー。
とても、繁盛している様子ではないし、
建物も汚いー
”紗愛と来るにはあんまり向いてないかなぁ”
と思いながら店内の様子を見つめているとー
優季がビクンビクンと震えているのが見えたー
そしてーー
「--え」
治は目を疑ったー
優季の口に、麺よりちょっと太い、虫のようなものがーー
飛び込んでいったー
優季が、激しく苦しみだすー。
武五郎はそれを笑いながら見つめているー
やがてー
優季が起き上がると、
武五郎と優季の口それぞれから、寄生虫のようなものが飛び出しー
二人は満面の笑みでーー
寄生虫同士がキスをしたー
「--!?!??!?!」
えっ…
治は、そう思いながら、
優季と武五郎の”異様な光景”を、目にしー
唖然としていたー
②へ続く
・・・・・・・・・・
コメント
謎のラーメン屋から拡散していく謎の寄生虫…
続きはまた次回デス~!