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”48時間後の17日の17時にー

 お前の身体を完全に乗っ取る”


女子高生の麗菜は男に憑依されてしまったー。


そして、男は宣言したー

48時間後に、お前を完全に乗っ取るー、と。


まるで、余命宣告をするかのようにー

”お前の人生は、あと48時間だー”

と、そう宣言したのだー。


麗菜は泣いたー

激しく動揺し、恐怖し、泣きじゃくったー。


だが、翌日の16日ー

麗菜は、普通に学校に登校し、

いつも通りの生活を送っているー


”-----”

男は麗菜の中で、麗菜の生活を見張っているー。


友人の遊佐子や幼馴染の男子・泰治らと

昼休みも、楽しそうに、いつも通り、話をしているー。


”この女ー

 自分が完全に乗っ取られる実感がないのか?”

男は麗菜の中で思うー。


”余命宣告を受けた祖父”が残した言葉ー

「嘆いても、弱音を吐いても

 残された時間は変わらないー」


その言葉を思い出して、麗菜は吹っ切れていたー。

もし、本当に、明日の17時に完全に乗っ取られるのであればー

そのことを嘆くのではなく

”残された人生”をどう送るか、考えるー。


そして、その結果、麗菜が選んだ道が、これだー。


”いつも通り、仲間たちと楽しく過ごすこと”


「あ、そうだ、麗菜、来週、良ければ一緒に食べに行こうよ!」

遊佐子がふいにそう口にしたー


”来週ー”

麗菜は”わたしには、もう来週がないー”

そう思いながらもー

静かに微笑むと、「うんー」と答えたー。


”くくく…お前に来週はないんだぜ?”

男は麗菜の中で微笑むー。


明日の17時ー

男は、麗菜の身体と人生を完全に支配するー。

最高のJKライフが、始まるのだー。


こうして、”余命宣告”の如く、残り時間を宣告したのには、

いくつかの理由があったー。


ひとつは、男が麗菜にも伝えた通り

”鬼ではない”からー。

いきなり人生を終わらせるのではなく

麗菜にも、最後の時間を過ごさせてあげよう、という情けー。

もちろん、より”残酷”なやり方かもしれないー

だが、男なりの”情け”として、そうしていたー。


もうひとつは”麗菜の様子を把握する”ためー。

麗菜を乗っ取ったあとに、自分が麗菜になり替わるためには、

麗菜の行動パターンをある程度知っておく必要があったー。

落ち込んで麗菜が全く何もしなくなる可能性も十分にあったがー

結果的にはこうして麗菜は、”日常”を見せてくれているー。


「----……ごめん…ごめんね…」

いつの間にか、麗菜は女子トイレに移動していたー。


トイレで、一人、涙を流す麗菜ー


「わたし…来週は、もういないの…」

遊佐子の前では笑顔だった麗菜も、トイレでは

一人、涙を流していたー。


”---…俺が代わりに遊佐子ちゃんとやらと

 一緒にスイーツ食べに行ってやるから、安心しろよ”

男は、麗菜にそう言い放つと、

麗菜は悲しそうに涙を拭きー、

「---そう」とだけ答えたー。


昼休みが終わってからもー

麗菜はいつも通りー。


”どうせ明日には乗っ取られる”

そのはずなのにー

一生懸命勉強している麗菜を見て、

男は”馬鹿なやつだ”と、笑うー。


”俺が逆の立場だったら、今日は精一杯遊ぶがな”

そんな風に思いながら、麗菜を見つめるー。


それでもー麗菜は”いつも通り”

まるで、この先もずっと未来があると信じているかのように、

普通に生活を送っているー。


”----”

男は、ふと不安になる。

麗菜があまりにも”普通”にしているからこその不安。


帰宅した麗菜は、半月後の試験勉強までしているー。


”--ーーー乗っ取られない確信でもあるのか?”

男は、そんな不安に支配されたー。


昨日は確かに泣いていたー。

だが、今日になって麗菜は吹っ切れたかのように、

”普通”に生活を送っているー


その理由は、かつて余命宣告を受けた祖父の振る舞いを見ていたからー、と

言っているし、

学校の女子トイレで泣いていたから、

単に気丈に振舞っているだけだとは思うー


だが、男は、不安に襲われるー


”もしかすると、乗っ取られない方法を見つけたのでは?”

とー。


”おい”

男が麗菜に声をかけるー。


「----なに?」

麗菜が不機嫌そうに言う。


”ちょうど17時ー

 あと24時間しかないってのに、ずいぶん余裕だな?”


男が言うと、

麗菜は「朝も言った通りー…今日は普通に生活したいの」と呟くー


だから、勉強もいつも通りするのだとー。


”---…まさかとは思うが、

 俺を追い払う方法を見つけたとか、そんなんじゃないよな?”


男が麗菜に確認するー。


もしもー

もしも、麗菜がそういう手段をさりげなく見つけようとしているならー

あるいは見つけたならー

今すぐにでも麗菜を完全に乗っ取ってしまうしかないー。


男はー

”自分の身体”を捨てたー


男の使った憑依薬は”劇薬”であり、

身体と魂を分離させるー。

だが、その過程で、身体は激しい副作用に襲われて、

そして、死ぬー。


男の身体は、もう生きていないー。


だから、麗菜の身体を確実に手に入れる必要が、ある。


「-------…最後ぐらい…」

麗菜が涙声で呟いたー


「--最後ぐらい、普通に過ごさせてよ!!」

麗菜が突然泣き叫ぶー


”-----!”

男は、表情を歪めたー


「--わたしだって、怖いよ…!

 でも、もう、どうすることもできないんでしょ…!?


 だったら、、だったら、今日と明日ぐらい、

 普通に過ごさせてよ…!


 わたし、、わたし…何も悪いことしてないのに…

 なんで…」


麗菜が泣きじゃくるー


”…ご、ごめん…”

男は思わず謝罪の言葉を口にしたー。


麗菜は、本当に”明日で終わり”の自分の人生を

噛みしめるようにして、味わっているだけー。


男に憑依される運命ー

まるで”余命宣告”のようなソレを受け入れてー

今日は”最後に普通の1日を過ごしたい”

その一心で、出来るだけそのことを考えないように、

麗菜は必死だったー。


もちろんー

憑依から逃れようともがく方法もあるー


だが、昨日、麗菜が母親に相談しようとしたその瞬間、

乗っ取られて”お仕置き”までされたー。


その経験がー

”もう、逃れることはできない”

と、麗菜から”戦う心”を奪ったー


勝ち目のない戦いをして、今すぐ身体を奪われてしまうー

よりも、

残された時間を精一杯噛みしめるー


そういう道を、麗菜は選んだー


「----……許さない」

麗菜はそう呟くと、再び勉強を始めたー


謝られても、許せるわけがないー


この男はー

”わたしを殺す”んだからー。


麗菜は思うー。


”身体は殺されなくても、奪われたら

 命を取られたのと同じだー

 この男のことは、絶対に許さない”


とー。


”------”

男は、麗菜の強い意志を悟り、

それ以上は何もしゃべらなかったー。


”最後ぐらい…黙っててやるか”


少しだけ、麗菜に同情したのだろうかー。

”身体を奪う”自分が、同情してるなんて

おかしなものだな、と男は麗菜の中で自虐的に笑ったー


・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


麗菜は朝、早起きすると、

何やら紙に色々なことを書き始めたー


”------”

男は黙っているー


麗菜の最後の時間を邪魔してはいけないー

なんとなく、そう思ったからだー


もちろん、初日のように助けを求めようとしたりすれば

乗っ取るつもりだが、そういう素振りもなかったー


「--ねぇ」

麗菜が呟く


「----ねぇ!!!」

麗菜が声をあげたー。


”俺か?”

男は、麗菜から話しかけて来るなんて意外だな、と思いつつ返事をするー


「--そうよ。これ、見える?」

麗菜が、男がどこから自分の様子を見ているのか分からず、

適当に宙に紙をふわふわさせるー


”あぁ、見える”

男は答えたー

麗菜の目を通じて、見ているー。


「---…わたしからのお願い、してほしいこと、全部まとめておいたから」

麗菜が書いていたのは”乗っ取られたあとの自分”に対する

色々な説明やお願い。


”家族や友達に絶対に手を出すな!!!!”とも書かれているー。


「---これだけは、守って」

麗菜が言う。


”-----…”

男は、麗菜の目を通じて、その紙を見つめるー


麗菜の”大切な人を守りたい”という想いが強く伝わってきたー。

そして、紙にはびっしりと、男が麗菜として生きるために必要な

情報も書かれていたー。


「何かあったら、これを見て。

 そしてーーー……

 絶対約束は守って」


麗菜が言うー。


”-------わかった”

男は、迷った末に、そう答えたー


”----……この子は、、強いな…”

男は、内心でそう思うと、麗菜の書いたメモを、静かに麗菜の目を通して、見つめたー


麗菜のもう一つの決意ー。

それは、自分が乗っ取られたあとも、家族や大切な人を

絶対に守る、という”強い”決意ー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


最終日も、麗菜は普通に学校に向かうー


友達の遊佐子と昼休みにいつものように雑談をする麗菜ー

麗菜は、昼休みの終わりに、「ありがとう」と小声でつぶやいたー


「え?」

遊佐子は、首を傾げたー


”---------”

男には、聞こえていたー。


麗菜の”別れの言葉”がー。


そして、下校中ー

幼馴染の男子・泰治と一緒に下校した麗菜は、

最後にこうつぶやいたー


「---これからも、頑張ってね…応援してる」

とー。


夕日に照らされる中ー

泰治は首を傾げるー


「--なんだよ、まるで遺言みたいじゃないか」

笑ながら言う泰治ー。


「----遺言かもよ?」

半分冗談、半分本気で笑う麗菜ー


けれどー

泰治は当然、冗談として受け取ったー


「ははっ!麗菜は将来、俺のお嫁さんになるんだぜ」

泰治は笑いながら、麗菜の肩を叩いたー


幼稚園の頃から、泰治は、ずっと、そう言っているー


麗菜は、泰治に気づかれないように、涙を流しながらー

「うん」と頷いたー


・・・・・・・・・・・・


帰宅するー

16:30


”余時間宣告”まであと30分ー


麗菜は、母親、父親と台所で雑談していたー


父は、土日休みの仕事ではないため、

今日が休日だー。


「--お父さん、お母さん、わたしをここまで育ててくれて、ありがとう」

雑談の最中、麗菜はふとそう呟いたー


母も父も「どうしたの急に?」と言う表情で笑うー。


「--ううん、なんだか急に、そう思って」

麗菜はそう誤魔化すと、ため息をついて、

リビングにいた飼い猫を撫でるー。


”ごめんね”

麗菜はそう呟くと、猫の頭を撫でて、部屋に向かうー


今朝、麗菜が書いたメモにも”猫に手を出さないで”と

書かれていたー


”-----”


16:55-。


麗菜は机を綺麗に片付け終えると、

部屋のベットに座って、目を閉じたー


身体が震えているー

目から涙があふれているー


けれどー

麗菜は、声をあげることもなく、

まるで、死を覚悟したかのように、

目を閉じているー


”--------”


男は、麗菜のそんな強い覚悟を

”美しい”とさえ思ったー。


”---悪かったな”

男は、意を決して呟いたー


麗菜は、答えないー

もう、乗っ取られることを覚悟したのだー。


”-----……この48時間ー

 お前の振る舞いは、なんというか、こう…

 美しかった…


 俺なんかじゃ、足元にも及ばないぐらいに”


男は、そう呟くとメモのほうを、麗菜の目を通じてみるー。


「-------約束、守って」

麗菜は最後にそれだけ呟いた。


メモに書いた約束を守れ、とそういう意味だー。


”-----いや、守らない”

男は呟くー


「---守って」

麗菜は強い口調で言うー


17:00ー


宣告の時間が来たー


”余命宣告はーー

 伸びることも、あるー”


男はそう呟くー


”宣告を受けてもー

 何十年も生きる人も、いるー”


麗菜が目を開くー。


”----すまなかった…”

男はそれだけ呟くと、麗菜の返事を待つー


麗菜が静かに目を開くー


17:01-


まだ、乗っ取られていないー。


”----俺…お前のこと見ていて、考えが変わったよー”

男は、悲しそうに呟いたー


「---え」

麗菜が首を傾げるー


”---お前は、本当に…その、なんというか…

 潔いというか…

 こんな子の人生…奪っていいのかなって…

 そんな風に思えた”


男はそれだけ言うと、呟いたー


”俺の宣告が、間違ってたみたいだ”


「---え…そ、、それじゃ…」

麗菜は瞳を震わせるー

目からうれし涙がこぼれているー


”--怖がらせて、すまなかったーー”

男が、心からの謝罪の言葉を口にするー。


「---…」

麗菜は、目から涙をこぼしながら、

ありがとうございます、と呟いたー


お礼を言うなんて、おかしいのにー

この男の身勝手に振り回されて、怒るべきなのにー

麗菜の口からは安心感からか、感謝の言葉が漏れたー


”じゃあな…”

男は呟いた。


麗菜は、何て言って見送ればいいかわからず、

安堵の表情で頷くと、

そのまま立ち上がったー


「よかったー

 ホントによかっt---


ビクンと麗菜の身体が震えたー


麗菜の意識は、そこで途切れたー

永遠の闇にー


「---くくくく…」

麗菜が笑みを浮かべたー


「ひゃはははははは~~~~!

 感動したぜぇ~~~~!!

 お前の48時間~~~!!


 感動したのはマジさ!

 こんな子の人生を奪っていいのかな?って思ったのはマジさ!」


麗菜が表情を歪めて叫ぶー


「でもさぁ~~~~!

 そう思える女を乗っ取っちまうのが、

 憑依の醍醐味だろ~!

 ひゃははははははは~♡」


乗っ取られた麗菜はそこまで言うと、

机の上のメモをビリビリに破り捨てたー


「---約束なんか、守らなくても、いいですよぉ~」

麗菜のふりをして笑うー。


「--ひゃはははははは!これからは、パラダイスの始まりだぜ!

 

 最後に、助かると勘違いしたお前のツラも最高だったぜぇ~!」


麗菜の声でそう叫ぶと、

麗菜は邪悪な笑みを浮かべたー


「あ、そうそう”俺の宣告間違ってたみたいだ”って言ったのはさ~

 乗っ取るのが、3分遅れちゃったから、さ!へへ」


17:03-。


麗菜は、完全に乗っ取られたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


希望からの絶望に転落…!

バッドエンドでした…!!


今日もお読み下さりありがとうございました~!


明日は「パワハラ入れ替わり上司」の最終回!

こちらもぜひお楽しみください~!

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