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”お兄ちゃんー…

 立派な騎士様に…なってね”


私はー

立派な騎士になれているだろうかー。


リアナー

愛しき我が妹は、

今でも、私を”お兄ちゃん”と慕ってくれるだろうかー。


「----」

餓死した妹の最後の笑顔が、脳裏に浮かぶー。


”お兄ちゃん、お花!”


騎士団長・フェルナンデスは、今でも、

妹・リアナが最後にくれた花をいつも手放さずに持っているー


リアナがくれたー

綺麗な薔薇をー。


フェルナンデス自身のエナジーによって、

枯れないように、今でも大切に持ち続けているー。


”立派な騎士”


幼き妹が夢見たその姿にーー

今、私はなれているだろうかー。


・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。アリシア姫の意思を受け継ぎ、戦う決意を固めた。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)/ダーク将軍

和哉・亜優美の共通の友人。歪んだ嫉妬心から、敵対する。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


皇帝ゼロ

闇の帝国の皇帝。強大なエナジーを持つ。エックスの兄。


カイル

アクア王国隠密部隊長。闇の帝国と内通している。


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


王宮内部にも、既に魔物たちが侵入していたー


「---薔薇よ!」

フェルナンデスが、”エナジー”による能力”ローズ”を発動しー

大量の花びらを飛ばすー。


魔物を蹴散らし、フェルナンデスが「姫様!こちらへ!」と、

和哉を案内するー


「---はい」

和哉は不安そうに、アリシア姫として振舞いながら、

フェルナンデスの後に続くー。


魔物が次々と襲い掛かるー。


「--姫様をお守りしろ!」

フェルナンデスが配下の騎士たちに合図を出すー。


フェルナンデスも、騎士たちに任せきりになるのではなく

自ら率先して、敵の攻撃を防ぎ、そして、和哉の道を切り開くー。


「---姫様、王宮の広間奥に、緊急時に備えて”隠し通路”を

 用意してあります。

 そちらから、”アクア商会”まで、お逃げ下さいー」


フェルナンデスが、薔薇で魔物を蹴散らすと、和哉に近寄ってきて

そう耳打ちしたー。


アクア商会ー

かつて、騎士団長のジークと共に一度だけ、訪れているー。


アクア王国王宮に有事があった際の、第2の本拠地として

指定されているのが、アクア商会なのだという。


「---ま、、待ってください!」

和哉が姫として叫ぶー。


「ーー」

フェルナンデスが振り返るー。

こんな時でも、フェルナンデスは”妹”から貰った

薔薇を鎧の脇にくくりつけるようにして、

肌身から離していないー


「--ユーリスや…ミリア、ジークは…?」

和哉が言うと、

フェルナンデスは「後から必ず姫様のお傍に向かいますー」

と、力強く頷いたー。


「---ユーリス…」

和哉は王宮の入口の方を振り返るー。


ユーリスは、反乱を起こした騎士団長・ジークと王宮前広場で

対決を続けているー。


「--ーー」

そして、和哉は叫んだー。


「ラナ…!」

侍女のラナー


和哉にとって”この世界の支え”でもあったラナー。

ラナも離宮にいるはずだー。


「--ラ、、ラナを…!」

和哉が困り果てた表情で呟くー


「--ラナ?」

フェルナンデスが首を傾げる。


「--……ごめんなさい」

和哉はそれだけ叫ぶと、フェルナンデスが向かおうとしていた方角ではなくー

離宮の方に向かって走り出したー


分かってるー

”姫”として振舞うなら、こんな行動は間違っているってー。


でもーーー

でもーーーーー


ラナの笑顔を思い出す和哉ー

ラナの辛辣な言葉を思い出す和哉ー。


魔物たちをかき分けてーーー

離宮の方に向かって走るー


たとえ、馬鹿と言われてもー

たとえ、姫失格と言われてもー


俺にはーーー

ラナを見捨てることはできないー


「---姫様!」

フェルナンデスが叫ぶー。


配下の騎士たちに、「ここは任せる」と叫ぶと、

そのままフェルナンデスも和哉の後を追い始めるー。


王宮に火が放たれるー。


その様子を見つめていたダーク将軍こと、神崎省吾は笑みを浮かべるー

「--和哉、今日でお別れだなー」

とー。


・・・・・・・・・・・・・


「うおおおおおおおおおおお!」

地面を炎が走るようにして、2方向から

騎士団長のジークを襲うー


ジークは笑みを浮かべると、

鎧から、光のようなものを放ちー、

バリアを発生させたー


「--我が”深淵”を攻略することはー貴公にはできん」

ジークが笑うー


”深淵の毒蜘蛛”

と呼ばれるジークの暗器は、本人以外、誰もその全貌を把握していないー


「---」

ジークが、城下町と王宮を見渡すー。


炎が広がるー

魔物たちが流れ込んでくるー


「--ユーリスよ、そこをどけ。

 偽物の姫を始末して、すぐに王宮の防備に入るぞ!」

ジークが叫ぶー。


「--だめだ!あいつはーー

 あいつは、異世界の見ず知らずの俺たちのために

 ここまで、必死にやってきてくれたんだー。

 そんなあいつを裏切るような真似は、俺にはできない」

ユーリスが叫ぶー。


「--そこをどけ!!!!!これは王国のためだ!」

ジークが怒号をあげるー。


「--友を裏切るようなことは、俺にはできない!

 それに、姫様はあいつに全てを託したんだ!」

ユーリスが大声で叫ぶー


王宮前広場にも炎が広がって来るー。


ジークが舌打ちをすると、

エナジーの力で煙幕を放出するー。


「いつか貴公とは、こうなる気がしたよー。

 

 この世界は冷たい!!!!!!!

 ”地獄”を見ていない貴公になど、何が分かる!」


ジークが馬を走らせるー。


「--ー」

ユーリスは、思うー。


確かに、ユーリスは”地獄”を見ていないー


故郷を失い、地獄のような日々を過ごしたジーク。

飢餓に苦しみ、妹を失い、失意の日々を過ごしたフェルナンデス。

父が裏切り、裏切者の娘として蔑まれてきたミリアー。


他の3人のような地獄を、ユーリスは見ていない。


だがー、

それでもー


「--ー分からないさー…

 でも、、それでも、俺の王国を守りたい気持ちも、、

 仲間を思う気持ちも、全部、本物だ!」


ユーリスが、剣を発火させて馬を走らせるー。


ユーリスとジークが、激突しーー

ユーリスの剣が吹き飛ばされたーーーー


・・・・・・・・・・・・・・


「---はぁ…はぁ…はぁ…」

口から女の声が溢れ出るー


こんな距離ー

もっと早く走れるのにー


こんなぐらいで、

疲れたりしないのにー


和哉は、女体化した自分の身体を、

初めて、強く呪ったー。


”俺の身体なら”

もっと早く走れるのにー。


離宮方面を目指しながら、和哉は、苦しそうに息を吐いて

膝をつくー。


アリシア姫は、運動が得意な方ではなかったー。

その姿に女体化している和哉はー

”本来の自分”との”体力の差”を感じずにはいられなかったー


「ラナ…みんな…」

和哉は、涙を流すー。


次々と兵士が倒されていくー

次々と王宮の大臣たちや、臣下が倒されていくー


圧倒的数の魔物ー。

和哉は剣を握りしめるー。


アリシア姫から受け継いだ光のエナジーで魔物たちを蹴散らし、

離宮を目指すー。


和哉はー

”無事でいてくれー”と念じながら

ようやく離宮にたどり着いたー。


和哉は、離宮の中を必死に走るー


そしてーー


「--!!!」


そこには、魔物に囲まれた

ラナの姿があったー


和哉が、剣を振るい、魔物を蹴散らすー。


「--あんた…どうして…!?」

ラナが、周囲に”蛇”を蠢かせながら言うー。

周囲には、魔物の遺体が転がっているー。


ラナの”エナジー”による能力は”蛇”-。


和哉到着前に、ラナは既に戦いを続けていたのだろうー。


「--どうしてって…?決まってるじゃないか」

和哉がラナの手を掴むー。


「ラナのこと…みんなのこと…

 見捨てることなんか、できるわけないじゃないか…」

和哉が言うと、ラナは首を振ったー。


「--あんた馬鹿?わたしなんか助けてどうするの?

 わたしはただの侍女ー。

 代わりなんていくらでもーーーー」


「---ラナはひとりしかいないだろ!」

和哉の言葉にー

ラナは「あんた…」と呟くー


「---とにかく、話はあとだ!」

そう和哉が言うと、ラナは「うん…」と頷いてから

和哉の手を握ったー。


「---!」

ラナの手が震えているー

気丈に振舞っていても、やっぱり怖いんだ…と和哉は思う。


ラナは、和哉の世界で言えば、現役女子高生ぐらいの年齢だー。

怖くないはずが、ないー。


「----」

和哉は、ラナの手をぎゅっと握ると、そのまま手を引いて

走り出したー。


”動いてくれ…!この身体!”

和哉は必死に走るー。


離宮で見かけた全ての人々を助けー、

魔物を倒していくー。

アリシア姫から受け継いだ光のエナジーが

和哉に魔物を打倒す力を与えてくれるー。


だがー

もう、体力の限界だったー


「はぁ…はぁ…」

離宮から王宮に戻る際に通る広間で、荒い息をして

うずくまってしまう和哉ー


「ちょ、、ちょっと…大丈夫?」

ラナが声をかけるー。


和哉は、離宮で戦っていたラナ以外の使用人や、

臣下たちも助けて回って、ボロボロだったー。


「---…くそっ」

和哉が周囲を見渡すー。


周囲には、魔物が集まってきているー。

炎もさらに広がっているー


「くそっ…」

和哉がラナをかばうようにして前に立つー。


だが、ラナは「バカじゃないの!?どいて!」と叫んで、

和哉の前に立つー。


「あんたは姫…死ぬなら、わたし」

ラナが、蛇を周囲に出現させると、魔物たちとの戦いを始めようとするー。


しかしー


ーーードン!

目の前にいた魔物が突然破裂するー


「--!?」

和哉とラナが、視線を横を向くと、

そこには、死んだ宰相ローディスの後任とした宰相に着任した

宰相ガディウスの姿があったー


「ーガディウス様!」

ラナが叫ぶー。


”切り替え早いなぁ”と和哉は思いながら、

宰相ガディウスの方に近づいていくー。


「--ご無事で何よりでございます」

ガディウスが頭を下げるー。


「あなたこそ…無事でよかった」

和哉が、姫としてそう呟くー。


新たに最初に着任したガディウスとは、

まだ接点もあまりないが、

それでも和哉は、”知ってる人”が命を落とす、なんてことは

許せなかったー


この世界の考えはそうではないのかもしれないー

けれど、和哉の世界では、

”知ってる人”が死ねば、心が痛むー


「--私の後ろへ」

宰相ガディウスがそう言うと、

手から光の球体のようなものを出すー。


”エナジー・ボール”


エナジーの力を用いて、エネルギーの塊である球体を作り出し、

それを飛ばすー。

それが、宰相ガディウスの能力ー


球体が放たれ、魔物たちを砕いていくー。


「--宰相様が戦えるなんて思いませんでした」

ラナが言うと、宰相ガディウスは苦笑いしたー。


宰相ガディウスは決して戦いが得意ではないー

この能力も、下級の魔物には通用してもー

グール伯爵や省吾には通用しないだろうー。


「--エナジーボール!」

ガディウスが、下級の骸骨騎士たちを蹴散らすー。


ようやく王宮に入る3人ー。

途中で出会った兵士や大臣たちに”とにかく逃げるように”伝えー

宰相ガディウスと和哉、ラナは、王宮内を進んでいくー。


「--フェルナンデス殿が、秘密の通路に案内する、と言ったのですな?」

宰相ガディウスが確認するー。


「--はい」

和哉がうなずくと、宰相ガディウスは

「私もその場所は存じております故、案内いたしましょう」と、頷くー


光の玉を飛ばすガディウスー

下級のゴブリンが吹き飛ばされるー。


「---(そろそろ我がエナジーも限界か)」

ガディウスが表情を歪めるー。


宰相ガディウスは元々戦闘要員ではないー

エナジーの総量にも、限界があるー。


「---アクア商会まで避難すればー、

 必ず、助かりますー

 あそこの守りは、堅牢ですからな」


廊下を歩きながら、宰相ガディウスが言うー。

ラナも「そうですね」と頷くー。


和哉以外には”清楚で誠実な感じ”な、ラナー。

和哉は少しだけ苦笑いしながらあとに続くー。


ガディウスが扉を開くー。


和哉とラナに待つように言い、

ガディウスが奥の通路の安全を確認するー。


「---まだこの辺には敵は入ってきていないようですなー。

 早いところ、隠し通路のある場所にご案n---」


パァン!


「----!!」

和哉とラナは目を疑ったーー


目の前でーーー

宰相ガディウスの頭が”破裂”しー

頭を失ったガディウスの身体が、その場に崩れ落ちるー


「きゃあああああああああああ!!」

ラナが叫ぶー


「宰相…!!」

和哉が叫ぶー。


だがー

ガディウスはもう死んでいるー。


「---み~つけた」


「-!!」

和哉が表情を歪めるー。


そこにいたのはー

魔物を引き連れた亜優美ー。

皇帝ゼロに洗脳されてヒルダを名乗る亜優美だったー


「亜優美…!」

和哉が悲しそうに言うー。


「--さぁ、そいつらも、殺ってしまいなさい!」

亜優美が、まるで悪の女王のように、引きつれた魔物たちに

指示を出すー。


和哉が身構えるー。


「-!」

「--!!」


和哉も、亜優美も、何かに気づくー


大量の花びらが、和哉たちのいる通路に流れ込んできたー


「--薔薇の霧(ローズ・ミスト)!」

騎士団長・フェルナンデスの声が聞こえるー


大量の薔薇の花吹雪によりー

視界が遮られるー。


和哉が困惑していると、

力強い手が、和哉の腕をつかむー


「--!」

和哉が驚いていると、

騎士団長のフェルナンデスの声が聞こえたー


「--合流が遅くなって申し訳ありません

 間に合ってよかったー」


とー。


和哉とラナは、フェルナンデスに連れられて

王宮のさらに奥に向かうー


王宮の奥にも魔物は入り込んでいたー

フェルナンデスが、”ローズ”で、あらゆる敵を蹴散らしていくー。


和哉などとはくらべものにならないほどの実力ー


”これが、騎士団長の力ー”

改めてそう思いながらも、和哉は、単独でラナを救いに行ったことを詫びるー。


「---」

立ち止まったフェルナンデスは、和哉のほうを見て少しだけ笑ったー


「---姫様も、きっとそうされたでしょうー」

とー。


「---え」

和哉は思わず変な声を出してしまうー


フェルナンデスは”元々”、貧しい村を支援していることを

打ち明けた際に”気づいて”いたー。

姫が、本物の姫ではない、とー

その上で、和哉を信じ、気づかないふりをしていたー。


「---そんな姫様をお守りするのが、我々騎士団の役目ー。」


そう呟くと、フェルナンデスは、

「隠し通路まであと少しです」と、言いながら、再び王宮内を

歩き始めたー


・・・・・・・・・・・・


薔薇の霧が晴れるーー

亜優美の前には、和哉たちの姿はもうなかったー


「…くそっ!」

亜優美=ヒルダが舌打ちをするー


「--追うのよ!」

ヒルダが怒りの形相で、そう叫んだー


・・・・・・・・・・・・・・・


王宮の炎が強まるー。


「---チッ」

ジークが、肩を押さえながら蹲るー。


ユーリスの剣を弾き飛ばしたジーク。

しかしー、ユーリスの炎が、ジークに直撃しー

ジークにダメージを与えたのだったー。


ユーリスがジークに手を差し伸べるー


「もう、いいだろ?」

とー。


「-----」

ジークが表情を歪めるー。


「姫が偽物だってことは、黙っていてすまないー

 あとで、ちゃんと、全て説明するー。

 黙っていた理由も、全てー。


 だから今は、共に戦ってくれー」


ユーリスが言う。

ジークは「貴公には、分かるまい…俺がどれほど、この王国を

守りたいと願っているのか」と、呟くー。


「--これが、お前の望んだ王国の”姿”か!?」

ユーリスが、燃え盛る王宮と悲鳴の聞こえる城下町を指さすー。


ジークは答えないー。


「---」

騎士団長・ジークは、内通者でもある隠密部隊長のカイルに

そそのかされて、王国の北側を守っていた自身の配下を集結させて

今日、王宮に攻め入ろうとしたー。


だが、その結果、北側から闇の帝国軍に侵入されてー

この惨劇を招いたー。


「-----……」

ジークが、拳を震わせながら何かを口にしようとすると、

ユーリスが背後を振り返ったー


そこにはー

闇の帝国No2のグール伯爵と、側近の仮面の騎士の姿があったー


「---くそっ」

ユーリスは剣を拾い、構えるー。

ジークとの戦いで、既にユーリスは疲弊しているー。


そんなユーリスを見て、グール伯爵は笑みを浮かべたー



㉘へ続く


・・・・・・・・・・・


コメント


思えば連載開始してから、そこそこの時間が経ちましたネ~!

最初はまだ暑い季節だった記憶が…!


今日もお読み下さりありがとうございました~!


明日は「脱げない皮③」の予定デス~!

(Fanbox)


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