<MC>ハート・コントロール①~好き好き~ (Pixiv Fanbox)
Content
「恵(めぐみ)にイマイチ嫌われてる気がするんだよなぁ~」
男子高校生・丸岡 義之(まるおか よしゆき)は、愚痴を呟いたー。
同じクラスの彼女・西城 恵(さいじょう めぐみ)と付き合ってから半年ー
最近は、恵からぞんざいに扱われているような気がするし、
付き合い始めたころに比べると、
明らかに恵が”義之に対して飽きている”と、そう感じることが
多くなったー。
「---ふぅん~まぁ、そういうこともあるよね~」
友人の岸川 修(きしかわ おさむ)は、適当な返事をしたー
修は、クラス2位の成績を持つ優等生だが、
同時にユーモアも併せ持っていて、
何でも知っているおもしろい男子だ。
義之は、そんな修とは中学時代からの付き合いで、
親友と言える間柄だった。
「--お前…相変わらず、興味なさそうだな」
義之が言う。
修は、人の恋愛話にほとんど興味を示さないー。
本当に全く興味がないのか
何を話しても、恋愛系の話は絶対に他人に広めないし、
すぐに忘れてしまうから、
こうして愚痴りやすいのも事実ではあるのだが…。
「---ま、恋愛なんて、ただの娯楽のひとつだしね」
修の言葉に、
義之は「お前もその気になれば彼女とか作れそうだけどなぁ」と呟くー。
少し間を置いてから義之は、
「ま、とりあえず愚痴らせてくれよ」と、一言呟いてから、
彼女・恵との距離感について愚痴を言い始めたー。
恵から”好き”という感情を感じなくなったし、
このままじゃ、恵に捨てられてしまうー、という不安。
義之はそのすべてを吐き出したー。
「----じゃあさ、好きになってもらえばいいじゃん」
修が、興味無さそうにスマホをいじりながら言う。
「はぁ?」
義之が首を傾げる。
「あのなぁ~…それができたらだれも恋愛で苦労なんかしないぜ?
どんなに頑張っても、相手に気持ちがなけりゃ、
それでおしまいなんだし…」
義之が悲しそうにそう呟くと、
修がスマホの画面を見せてきたー
「--あ?」
義之が思わず首を傾げるー。
両手で♡のマークを作ったいかついおっさんが
スマホの画面に写っているー。
「なにこれ?」
義之が、”このおっさん、♡マークなんか作って何やってんだ?”と
思いながら、修に尋ねると、
修は答えたー
「--知らないの?」
修が小ばかにしたように呟く。
「--何を!?」と、反射的に呟いたあとに
義之は、「あ、このハートマークつくってるおっさん、有名人?」と、
修のほうを見つめながら言ったー
「--違うよ」
修はクスッと笑うと、続けたー
「知らないの?”好き好き洗脳”」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
”好き好き洗脳”
修は、”普通の人が知らないようなこと”をたくさん知っているー
とにかく”知識欲”が強く、
本当に何でも知っているのだー。
昼休みに聞いた”好き好き洗脳”のことが忘れられない。
「---ーーー」
「------」
彼女の恵と久しぶりに一緒に下校していても、
会話が弾まなないー
正直、義之は”いつ、別れを切り出されるか”
ビクビクしていたー。
恵の気持ちが冷めているのを、
強く感じるー。
義之が悪いことをしたわけではないし、
恵が浮気しているわけでもないと思うのだがー。
「------そ、それでさ~!」
義之が場を盛り上げようとして、
恵に対して、適当な会話を振るー
恵は”クールな美少女”という感じで、
あまり感情を表に出さないー。
だが、とてもやさしくー
気配りのできる性格で、
時々、ちょっと儚い感じを見せる恵が好きで、
義之から告白、
恵がOKを出して半年前に付き合い始めた感じだ。
告白した時に、
真っ赤になって「ありがとう…」と呟いていた
恵のことを、今でも忘れられないー。
最初の頃のデートでは
学校のクールなイメージが壊れるぐらいに
楽しそうにしていた恵を見て、
本当にドキドキしたし、
恵の笑顔を守っていきたいーと、
そう決意もしたぐらいだった。
だがー。
最近はーー
「---ふぅん」
恵が、義之の話に興味無さそうに呟くー
「---ご、、ごめん、つまんなかったかな」
義之が、”自分の話がつまらない”と思われていると感じ、
謝罪の言葉を口にするー。
「……そんなことないよ」
恵はそれだけ言うと、そのまま沈黙したー
「---------…」
気まずい空気ー。
義之は帰宅すると、LINEで親友の修に連絡を取ったー。
”好き好き洗脳”
相手に”好き”の気持ちを植え付ける洗脳術なのだと言う。
その洗脳をすると、相手は洗脳者のことが好きになり、
文字通り”好き好き”の状態になってしまうのだとかー。
「--催眠術で好きになる、みたいなやつだな」
義之はそんな風に呟きながら
修からの返信を待つー。
”洗脳して意のままに操りたい”とか、そういうことではない。
ただー、
恵にもう一度自分を好きになってもらいたいー。
そのために、”好き好き洗脳”なんてことが、
本当にできるのならばー
「--!」
義之は修からの返事を見つめるー
アドレスだけが貼られているー。
”好き好き洗脳って、俺も使うことができるのか?”
と、LINEで確認したところ、
返信はアドレスだけー。
修らしい反応だー。
「--ったく、使えるのか使えないのか
分からねぇじゃねぇか」
義之はそんな風に呟きながら
アドレスのサイトに飛ぶー。
怪しいアドレスは押さないべきだが、
修のことを信用していたしー
修はウイルスサイトに友達を飛ばさせるような
やつじゃない。
そのサイトに飛ぶと、動画が再生されたー
”はぁ~い!こんばんは!好き好き!”
ハートマークを両手で作った、いかついおっさんが
笑みを浮かべるー
「---…」
義之は白い目でその動画を見つめているー
このおっさん、よく恥ずかしくもなく、
ハートマークを両手で作ったりできるなぁ~
と、義之はあきれ顔だ。
”方法は簡単”
好き好き洗脳のやり方をいかついおっさんが
説明し始めるー
”洗脳したい相手の目の前で、ハートマークを作って”
おっさんが、♡マークを両手で作るー。
”洗脳したい相手を見つめて、満面の笑みで
ステップを踏みながらー”
”元気な声でー”好き好き””
「---…」
義之は、白い目でおっさんの動画を見続けているー
”これだけです。
これで、相手はあなたのことが好きになります”
「んなわけあるか!」
義之は叫んだー
”下らねぇもん見てしまった”と、
動画の再生をやめて、
修に”好き好き洗脳とか、マジであり得ないっしょ?”と
メッセージを送ったー
すると修から
”効果は僕が保証するからさ、彼女に捨てられたくなかったら、やりなよ”
と、返信が来たー
”効果は僕が保証って…お前も女子に好き好き洗脳かけたのか?”
と、返事を送る義之ー
”いや”
修の返事はそれだけだったー
「くだらねー!ないわー!」
義之は、そう呟きながらスマホをベットに放り投げると
そのまま寝転んだー
天井を見上げるー
ため息しか出ないー
彼女との関係は、もうすぐ終わってしまう気がするー
自分は、今でも恵のことが大好きだー。
でも、相手が嫌いになってしまったのならばーー
「--いやいやいや」
義之は叫ぶ。
せっかくー
せっかく、彼女ができたのだから、ここで
”手放す”わけにはいかないー
絶対にー
絶対に、彼女の心をつなぎとめて見せるー。
・・・・・・・・・・・・
「-----ごめん。」
翌日の昼休みー
恵から呼び出されて、
空き教室にやってきた義之は、
恵の言葉に、放心状態になっていたー
”嫌な予感”が
的中してしまったのだー
「---ど、、どうして…
お、、、俺に何か至らないところがあったのかな…?」
義之は泣きそうになりながら恵のほうを見るー
恵は、少しだけ考えたあとに、呟いたー
「---”重い”のー」
とー。
「--え」
”重い”
義之はー
恵を大切にしようとするあまり、なんでも、恵に配慮して
恵に”重い”と思われるような行為を
繰り返してしまっていたー
恵を支えてあげたいー
恵にもっと好かれたいー
そういう思いが、結果的に空回りしてしまったことにより、
恵が義之のことを”重く”感じてしまったー
それが、お別れの理由だったー
「---義之のこと…嫌いになったわけじゃないけど…
その、重くて…ごめんなさい」
恵がそれだけ言うと、立ち去ろうとするー
「ま、、待って!」
義之が叫ぶー
「-重いって思われるようなことして、ごめん!
で、でも俺、恵に負担かけないように頑張るから!だから!」
義之が叫ぶと、
恵が振り返って呟いたー
「そういうのが、重いのー。ごめん」
とー。
義之は、大好きな恵と彼氏彼女の関係じゃなくなってしまう!と
考えただけで、パニックになりかけていたー
そしてー
「-----!
」
パニックになった義之は、空き教室の出口に向かう恵を追いかけてー
立ちはだかるようにして、その前に立ったー
「…なに?」
恵が少し驚いた様子で言う。
義之は、とっさに、両手で♡マークを
恵は、無表情だー。
これは、いつもそんな感じなので、
驚くことではないー。
義之は、♡マークを両手で作りながら
ステップを踏み始めて
そして、満面の笑みで、元気よく
「好き好き!」と叫んだー
恥ずかしい行為を恥ずかしいと感じないぐらいに
義之はパニックになっていて、
咄嗟に好き好き洗脳をかけてしまったー
「-----」
「-----」
ハートマークを両手で作って笑みを浮かべたままの義之と
表情を崩さない恵ー
「------………で?」
恵の反応は、クールすぎた。
「-----え」
義之は、好き好き洗脳をPRしていた
いかついおっさんを恨んだー
あのおっさんが目の前にいたら、
きっと、今頃あのおっさんをスクランブルエッグにしてやっている
ところだったー
”効果ねーじゃねぇか!!!!!”
義之は、そう思った瞬間に顔を真っ赤にするー。
恵はそのまま「もう行くね」とだけ言って
空き教室から外へと出て行ったー
絶望的な恥ー
いや、屈辱ー
義之は顔を真っ赤にしたまま叫んだー
「命拾いしたな!好き好きおっさん!!!!」
とー。
奴がこの場にいたら、
本当にやつをボコボコにしているところだったー
とんでもない恥をかいたー。
「--修ぅ!」
義之は教室に戻ると修に、鬼のような形相で迫った。
「---?」
修が首を傾げる。
周囲に他の同級生がいることを確認すると、
義之は修に耳打ちした。
「-好き好き洗脳、効果ないじゃんかよ!」
とー。
「---はは」
修は笑うー。
「---そいつはどうかな?」
とー。
・・・・・・・・・・・・
夜ー
下校して、自宅の部屋で
好き好き洗脳の説明動画に出ていたおっさんを
印刷して、壁に貼り付けて
画鋲でおっさんの顔に穴を開けていた。
このわけのわからないおっさんのせいで、
彼女ー
いや、もう元カノか?
の前で、大恥をかいたー。
その仕返しだー。
画鋲を、印刷したいかついおっさんの顔に刺していくー。
その時だったー
♪~
スマホが鳴る。
画面を確認する義之ー。
恵からのLINE-
「---!!」
慌ててLINEの画面を開くとー
”今更こんなこと言うのも変だけど…
やっぱり、、あの、その…
義之のこと、わたし、好きみたいー
もう彼氏じゃないって考えたら
涙が止まらなくてー”
と、メッセージが届いていたー
「えっ…これって」
義之は、好き好き洗脳のことを思い出すー
もしやー
好き好き洗脳の効果ー!?!?!?
「---俺も好きだよ」
そう返事を送るー
別れを告げられてからわずか半日ー
義之は、恵と復縁したのだったー
「よっしゃああああああああ!」
大声で叫ぶ義之ー。
そしてー
「--あっ!!!」
義之は、とっさに印刷した、いかついおっさんの顔から、
画鋲を全て取り除いて、
目の前で土下座したー。
「師匠ぉぉぉぉぉぉぉぉ!ありがとうございますぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
好き好き洗脳の効果を確信した義之は、
いかついおっさんを神のように崇め始めたー。
だがー
この”好き好き洗脳”がもたらす結末をー
恐ろしい未来を、彼はまだ知らなかったー
②へ続く
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コメント
好き好き☆!
私はいつも読んでくださっている皆様のことが
大好きデス☆
ありがとうございます~!
…洗脳されているわけじゃないですよ~?笑