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「恵(めぐみ)にイマイチ嫌われてる気がするんだよなぁ~」

男子高校生・丸岡 義之(まるおか よしゆき)は、愚痴を呟いたー。


同じクラスの彼女・西城 恵(さいじょう めぐみ)と付き合ってから半年ー


最近は、恵からぞんざいに扱われているような気がするし、

付き合い始めたころに比べると、

明らかに恵が”義之に対して飽きている”と、そう感じることが

多くなったー。


「---ふぅん~まぁ、そういうこともあるよね~」

友人の岸川 修(きしかわ おさむ)は、適当な返事をしたー


修は、クラス2位の成績を持つ優等生だが、

同時にユーモアも併せ持っていて、

何でも知っているおもしろい男子だ。


義之は、そんな修とは中学時代からの付き合いで、

親友と言える間柄だった。


「--お前…相変わらず、興味なさそうだな」

義之が言う。


修は、人の恋愛話にほとんど興味を示さないー。

本当に全く興味がないのか

何を話しても、恋愛系の話は絶対に他人に広めないし、

すぐに忘れてしまうから、

こうして愚痴りやすいのも事実ではあるのだが…。


「---ま、恋愛なんて、ただの娯楽のひとつだしね」

修の言葉に、

義之は「お前もその気になれば彼女とか作れそうだけどなぁ」と呟くー。


少し間を置いてから義之は、

「ま、とりあえず愚痴らせてくれよ」と、一言呟いてから、

彼女・恵との距離感について愚痴を言い始めたー。


恵から”好き”という感情を感じなくなったし、

このままじゃ、恵に捨てられてしまうー、という不安。

義之はそのすべてを吐き出したー。


「----じゃあさ、好きになってもらえばいいじゃん」

修が、興味無さそうにスマホをいじりながら言う。


「はぁ?」

義之が首を傾げる。


「あのなぁ~…それができたらだれも恋愛で苦労なんかしないぜ?

 どんなに頑張っても、相手に気持ちがなけりゃ、

 それでおしまいなんだし…」

義之が悲しそうにそう呟くと、

修がスマホの画面を見せてきたー


「--あ?」

義之が思わず首を傾げるー。


両手で♡のマークを作ったいかついおっさんが

スマホの画面に写っているー。


「なにこれ?」

義之が、”このおっさん、♡マークなんか作って何やってんだ?”と

思いながら、修に尋ねると、

修は答えたー


「--知らないの?」

修が小ばかにしたように呟く。


「--何を!?」と、反射的に呟いたあとに

義之は、「あ、このハートマークつくってるおっさん、有名人?」と、

修のほうを見つめながら言ったー


「--違うよ」

修はクスッと笑うと、続けたー


「知らないの?”好き好き洗脳”」

とー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


”好き好き洗脳”

修は、”普通の人が知らないようなこと”をたくさん知っているー


とにかく”知識欲”が強く、

本当に何でも知っているのだー。


昼休みに聞いた”好き好き洗脳”のことが忘れられない。


「---ーーー」

「------」

彼女の恵と久しぶりに一緒に下校していても、

会話が弾まなないー


正直、義之は”いつ、別れを切り出されるか”

ビクビクしていたー。


恵の気持ちが冷めているのを、

強く感じるー。


義之が悪いことをしたわけではないし、

恵が浮気しているわけでもないと思うのだがー。


「------そ、それでさ~!」

義之が場を盛り上げようとして、

恵に対して、適当な会話を振るー


恵は”クールな美少女”という感じで、

あまり感情を表に出さないー。


だが、とてもやさしくー

気配りのできる性格で、

時々、ちょっと儚い感じを見せる恵が好きで、

義之から告白、

恵がOKを出して半年前に付き合い始めた感じだ。


告白した時に、

真っ赤になって「ありがとう…」と呟いていた

恵のことを、今でも忘れられないー。


最初の頃のデートでは

学校のクールなイメージが壊れるぐらいに

楽しそうにしていた恵を見て、

本当にドキドキしたし、

恵の笑顔を守っていきたいーと、

そう決意もしたぐらいだった。


だがー。

最近はーー


「---ふぅん」

恵が、義之の話に興味無さそうに呟くー


「---ご、、ごめん、つまんなかったかな」

義之が、”自分の話がつまらない”と思われていると感じ、

謝罪の言葉を口にするー。


「……そんなことないよ」

恵はそれだけ言うと、そのまま沈黙したー


「---------…」

気まずい空気ー。



義之は帰宅すると、LINEで親友の修に連絡を取ったー。


”好き好き洗脳”

相手に”好き”の気持ちを植え付ける洗脳術なのだと言う。

その洗脳をすると、相手は洗脳者のことが好きになり、

文字通り”好き好き”の状態になってしまうのだとかー。


「--催眠術で好きになる、みたいなやつだな」

義之はそんな風に呟きながら

修からの返信を待つー。


”洗脳して意のままに操りたい”とか、そういうことではない。

ただー、

恵にもう一度自分を好きになってもらいたいー。

そのために、”好き好き洗脳”なんてことが、

本当にできるのならばー


「--!」

義之は修からの返事を見つめるー


アドレスだけが貼られているー。


”好き好き洗脳って、俺も使うことができるのか?”

と、LINEで確認したところ、

返信はアドレスだけー。


修らしい反応だー。


「--ったく、使えるのか使えないのか

 分からねぇじゃねぇか」

義之はそんな風に呟きながら

アドレスのサイトに飛ぶー。


怪しいアドレスは押さないべきだが、

修のことを信用していたしー

修はウイルスサイトに友達を飛ばさせるような

やつじゃない。


そのサイトに飛ぶと、動画が再生されたー


”はぁ~い!こんばんは!好き好き!”

ハートマークを両手で作った、いかついおっさんが

笑みを浮かべるー


「---…」

義之は白い目でその動画を見つめているー


このおっさん、よく恥ずかしくもなく、

ハートマークを両手で作ったりできるなぁ~

と、義之はあきれ顔だ。


”方法は簡単”


好き好き洗脳のやり方をいかついおっさんが

説明し始めるー


”洗脳したい相手の目の前で、ハートマークを作って”

おっさんが、♡マークを両手で作るー。


”洗脳したい相手を見つめて、満面の笑みで

 ステップを踏みながらー”


”元気な声でー”好き好き””


「---…」

義之は、白い目でおっさんの動画を見続けているー


”これだけです。

 これで、相手はあなたのことが好きになります”


「んなわけあるか!」

義之は叫んだー


”下らねぇもん見てしまった”と、

動画の再生をやめて、

修に”好き好き洗脳とか、マジであり得ないっしょ?”と

メッセージを送ったー


すると修から

”効果は僕が保証するからさ、彼女に捨てられたくなかったら、やりなよ”

と、返信が来たー


”効果は僕が保証って…お前も女子に好き好き洗脳かけたのか?”

と、返事を送る義之ー


”いや”

修の返事はそれだけだったー


「くだらねー!ないわー!」

義之は、そう呟きながらスマホをベットに放り投げると

そのまま寝転んだー


天井を見上げるー

ため息しか出ないー

彼女との関係は、もうすぐ終わってしまう気がするー


自分は、今でも恵のことが大好きだー。

でも、相手が嫌いになってしまったのならばーー


「--いやいやいや」

義之は叫ぶ。


せっかくー

せっかく、彼女ができたのだから、ここで

”手放す”わけにはいかないー

絶対にー

絶対に、彼女の心をつなぎとめて見せるー。


・・・・・・・・・・・・


「-----ごめん。」


翌日の昼休みー

恵から呼び出されて、

空き教室にやってきた義之は、

恵の言葉に、放心状態になっていたー


”嫌な予感”が

的中してしまったのだー


「---ど、、どうして…

 お、、、俺に何か至らないところがあったのかな…?」

義之は泣きそうになりながら恵のほうを見るー


恵は、少しだけ考えたあとに、呟いたー


「---”重い”のー」

とー。


「--え」


”重い”


義之はー

恵を大切にしようとするあまり、なんでも、恵に配慮して

恵に”重い”と思われるような行為を

繰り返してしまっていたー


恵を支えてあげたいー

恵にもっと好かれたいー


そういう思いが、結果的に空回りしてしまったことにより、

恵が義之のことを”重く”感じてしまったー

それが、お別れの理由だったー


「---義之のこと…嫌いになったわけじゃないけど…

 その、重くて…ごめんなさい」

恵がそれだけ言うと、立ち去ろうとするー


「ま、、待って!」

義之が叫ぶー


「-重いって思われるようなことして、ごめん!

 で、でも俺、恵に負担かけないように頑張るから!だから!」

義之が叫ぶと、

恵が振り返って呟いたー


「そういうのが、重いのー。ごめん」

とー。


義之は、大好きな恵と彼氏彼女の関係じゃなくなってしまう!と

考えただけで、パニックになりかけていたー


そしてー


「-----!

パニックになった義之は、空き教室の出口に向かう恵を追いかけてー

立ちはだかるようにして、その前に立ったー


「…なに?」

恵が少し驚いた様子で言う。


義之は、とっさに、両手で♡マークを


恵は、無表情だー。

これは、いつもそんな感じなので、

驚くことではないー。


義之は、♡マークを両手で作りながら

ステップを踏み始めて

そして、満面の笑みで、元気よく

「好き好き!」と叫んだー


恥ずかしい行為を恥ずかしいと感じないぐらいに

義之はパニックになっていて、

咄嗟に好き好き洗脳をかけてしまったー


「-----」

「-----」

ハートマークを両手で作って笑みを浮かべたままの義之と

表情を崩さない恵ー


「------………で?」

恵の反応は、クールすぎた。


「-----え」

義之は、好き好き洗脳をPRしていた

いかついおっさんを恨んだー

あのおっさんが目の前にいたら、

きっと、今頃あのおっさんをスクランブルエッグにしてやっている

ところだったー


”効果ねーじゃねぇか!!!!!”

義之は、そう思った瞬間に顔を真っ赤にするー。


恵はそのまま「もう行くね」とだけ言って

空き教室から外へと出て行ったー


絶望的な恥ー

いや、屈辱ー


義之は顔を真っ赤にしたまま叫んだー


「命拾いしたな!好き好きおっさん!!!!」

とー。


奴がこの場にいたら、

本当にやつをボコボコにしているところだったー


とんでもない恥をかいたー。


「--修ぅ!」

義之は教室に戻ると修に、鬼のような形相で迫った。


「---?」

修が首を傾げる。


周囲に他の同級生がいることを確認すると、

義之は修に耳打ちした。


「-好き好き洗脳、効果ないじゃんかよ!」

とー。


「---はは」

修は笑うー。


「---そいつはどうかな?」

とー。


・・・・・・・・・・・・


夜ー

下校して、自宅の部屋で

好き好き洗脳の説明動画に出ていたおっさんを

印刷して、壁に貼り付けて

画鋲でおっさんの顔に穴を開けていた。


このわけのわからないおっさんのせいで、

彼女ー

いや、もう元カノか?

の前で、大恥をかいたー。


その仕返しだー。


画鋲を、印刷したいかついおっさんの顔に刺していくー。


その時だったー


♪~

スマホが鳴る。

画面を確認する義之ー。


恵からのLINE-


「---!!」

慌ててLINEの画面を開くとー


”今更こんなこと言うのも変だけど…

 やっぱり、、あの、その…

 義之のこと、わたし、好きみたいー


 もう彼氏じゃないって考えたら

 涙が止まらなくてー”


と、メッセージが届いていたー


「えっ…これって」

義之は、好き好き洗脳のことを思い出すー


もしやー

好き好き洗脳の効果ー!?!?!?


「---俺も好きだよ」

そう返事を送るー


別れを告げられてからわずか半日ー

義之は、恵と復縁したのだったー


「よっしゃああああああああ!」

大声で叫ぶ義之ー。


そしてー


「--あっ!!!」

義之は、とっさに印刷した、いかついおっさんの顔から、

画鋲を全て取り除いて、

目の前で土下座したー。


「師匠ぉぉぉぉぉぉぉぉ!ありがとうございますぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

好き好き洗脳の効果を確信した義之は、

いかついおっさんを神のように崇め始めたー。


だがー

この”好き好き洗脳”がもたらす結末をー

恐ろしい未来を、彼はまだ知らなかったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


好き好き☆!


私はいつも読んでくださっている皆様のことが

大好きデス☆

ありがとうございます~!


…洗脳されているわけじゃないですよ~?笑

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