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容姿のことでいじめを受け続けてきた

風原 紀子は、笑みを浮かべていたー


「わたしは、もう誰にもいじめられないー」


紀子はー

手に入れたー


”美貌”をー。


女子トイレの鏡の前でー

不気味な笑みを浮かべるのはー

生徒会副会長の上梨 雫ー。


入れ替わり薬ー

それを使い”ゾンビ”などといじめを受けてきた紀子は、

クラス一の美少女で、誰にでも優しく、明るく、友達も多い

”自分とは正反対”の雫の身体を奪ったー


「わたしはもうゾンビじゃないー」

雫(紀子)は、表情を歪めながらクスッと笑うー。

雫が、絶対に浮かべることのない悪い笑みー


「わたしは、上梨 雫ー

 かわいいかわいい…上梨 雫…

 うふ…うふふふふふっ!あはははははははっ♡」


狂ったように笑いながらトイレから出る雫(紀子)-


トイレから出るとー

紀子の身体になった雫が、悲しそうな表情で目の前に立っていたー。


「---紀子ちゃん…どうして?」

悲しそうな表情を浮かべる紀子(雫)ー


雫は、心から、いじめを受けている紀子のことを助けたいと思っていたし、

心から、大切な友達だと思っていたー

それなのにー


「--ふふ、ブッサ」

雫(紀子)が、馬鹿にするような笑みを浮かべるー。


自分の身体を躊躇なく”ブス”と言い放つ雫になった紀子ー


「---……そんなこと言わないで」

紀子(雫)が、ものすごく悲しそうな顔で言う。


「だって、本当のことじゃない」

雫(紀子)が笑うー

さっきまで自分の身体だった紀子の身体を見て、

完全にバカにしたような笑みを浮かべるー


「--そんなこと、言っちゃだめ!」

紀子(雫)が目に涙を浮かべるー


「--自分の身体でしょ!?

 どうしてそんな、、そんなことが言えるの!?」

心底悲しそうに、紀子になった雫が言うと、

「--もうわたしじゃない!そんなゾンビみたいな身体いらない!」と、

雫になった紀子が叫んだー。


「--ーーねぇ、紀子ちゃん!お願いだから落ち着いて!

 わたしは、あなたのこと、見下したことなんてないし、

 あなたのこと、本気で友達だって、、、」

紀子(雫)の言葉に、

雫(紀子)は「ブス」と冷たく言い放ったー


優しい顔立ちの雫のから投げかけられる

冷たい言葉ー


「---紀子ちゃん…」

紀子(雫)は、泣きそうになりながら

雫(紀子)の方を見るー


「--ブス!ブス!ブーーース!!!!」

感情的になって叫ぶ雫(紀子)


自分の身体に対して、まるで容赦のない言葉ー


「--ひ、、、ひどい…

 ひどい…

 この身体…紀子ちゃんの身体なんだよ!?!?

 どうしてそんなことが言えるの!?」

紀子(雫)は、いろいろな意味で心を痛めるー


紀子はーー

こんなにも、”歪んで”しまっていたのか、とー


過酷ないじめを受け続けるうちに、

紀子の人格は、歪んでしまったー。

雫の想像以上にー。


「ーーー」

ニヤニヤしながら、紀子になった雫を無視して

教室に向かおうとする雫(紀子)


「--紀子ちゃん!」

紀子(雫)が背後から叫ぶー


「----」

雫(紀子)は立ち止まって振り返ると、

笑みを浮かべたー


「--あんたみたいなブスが、

 わたしに気安く話しかけないでくれるかしら?」


そう、呟きながらー


紀子(雫)は、思わず涙を流してしまうー


「--自分のこと、、、そんな風に言うなんて…」


「---わたしは雫。あんたはーー紀子。

 

 今までわたしがどれだけつらい思いをしてきたか…

 思い知れ!この偽善者!」


雫になった紀子は、そう言い放つー。


”偽善者”


紀子になった雫の心を、

抉る、残酷な言葉ー


「わたしは…本当に…紀子ちゃんのことをー」

紀子(雫)が泣き崩れるー。


雫(紀子)は、その姿を見つめると、満足そうに

自分の教室へと戻っていったー。

5時間目の授業を受けるためにー。


いじめ男子のリーダー各・平八ー

クラスのおしゃれ女子・千代ー


その二人の方を見つめると、雫(紀子)はクスクスと笑うー


この美貌ー

この頭脳ー

この人気ー

全部を利用して、お前たちを地獄に落としてやるー


そう思いながら、悪魔のような笑みを浮かべる雫(紀子)


遅れて教室に戻ってきた紀子(雫)は、

”入れ替わり”のことを、誰にも口にしなかったー


ただ、悲しそうに雫(紀子)の方を見つめているー


”なに、憐みのつもり?”

雫(紀子)は激しい怒りを感じたー


”入れ替えられちゃった!助けて!って言えよ!?”

雫(紀子)はイライラしながら、自分の座席で貧乏ゆすりを始めるー。


紀子(雫)は、なおも悲しそうに雫(紀子)の方を見つめているー


「--そうやって…いつもわたしを見下して」

歯ぎしりすると、机を叩いて雫(紀子)が立ち上がるー


「ねぇ!さっきからずーっと、わたしのこと見つめてるけど、何なの?」

雫(紀子)が苛立ちを隠そうともせずに言うー


いじめの中心的人物の平八や千代も驚いて振り返るー


「---何か用があるなら、言ってごらんなさいよ」

雫(紀子)が高飛車な雰囲気で、紀子(雫)に言うー


紀子(雫)は「…言わなくても、分かるでしょ」と悲しそうに言うー


あくまで”入れ替わり”のことをみんなには言わないつもりのようだー。

この後に及んで、紀子のため、とか、そんな風に思ってるのかもしれないー


「-----…何その態度」

雫(紀子)はイライラしながら、言葉を口にするー


「--ほらほら!上梨さん怒らせるとか、最低だぞ~!ゾンビ!」

生徒会書記でもある平八が笑いながら近づいてくるー。


平八は密かに副会長でもある雫に好意も抱いているー。

しかも、学校生活は真面目で、先生からの評判は、

困ったことに”良い”-。


「----……」

悲しそうな表情で紀子になった雫は平八の方を見つめるー。


「---そういうの…やめようよ!」

紀子(雫)が言うー


紀子に対するいじめをやめさせるには、ちょうどいい機会かもしれないー


いつも、強く言い返せずに委縮してしまう紀子ー

でも、今は違うー

紀子の身体になった自分が、強く言い返せばー


「--は~~?生意気なゾンビめ~!」

平八が笑いながら、紀子(雫)の机をドンドン叩き始めるー


我儘お嬢様の千代も近づいてきて、「ほんと、生意気ね!」と、

紀子(雫)の髪を引っ張り始めるー。


「--そんなことしたら痛いよ!同じクラスの仲間なのに、

 なんでそんなことするの!?」

紀子(雫)は声を上げて反論したー


普段の紀子は、ここまで反論しないー


雫は、紀子の身体で、紀子へのいじめをやめさせよう、と

そう思ったー


だがー

みんなが言うことを聞いていたのはー

自分が”人気者の上梨 雫”だったからー

”紀子の身体の雫”の言葉はーー

届かない。


「--は~~~???今日はなんかうぜぇゾンビだな~!」


「--同じクラスの仲間~?調子乗るんじゃないわよ!」

千代が紀子(雫)をビンタするー


その様子を少し離れた場所から笑みを浮かべながら

見つめる雫(紀子)-


”どう?わたしが今までどんな思いをしてきたか、分かった?上梨さん

 わたしのこと、見下して”いじめられてる子を助ける優しいわたし”に

 酔ってたんでしょ???”


歪んだ考えで雫になった紀子はー

いじめを受けている紀子になった雫を見つめるー


雫は、本当に紀子のことを心配していたし、

本当に思いやっていたー


けれど、いじめで歪んでしまっていた紀子には

そんな雫の思いは、”ちゃんと”届いていなかったー

歪んだ形で解釈しー

憎しみを増幅させていたー


「---やめてよ!ねぇってば!」

紀子(雫)が声をあげればあげるほどー

平八と千代はエスカレートしていくー


「--ふふふふふふふ」

座席に戻った雫(紀子)は身体を震わせながら笑みを浮かべるー


わたしは人気者の上梨雫ー


あんたは、ゾンビー。


「---くくくくくく…ふふふふふふふふふ」

小声で身体を震わせながら笑い続ける雫(紀子)-


あなたみたいな、苦労もしてこなかった良い子ちゃんにはー

わたしの気持ちなんて、分からないー


・・・・・・・・・・・・・・・


家に帰宅すると、

暖かい家族が雫(紀子)を出迎えたー


恵まれた家庭ー


雫の家族と適当に言葉を交わすと、

雫(紀子)は自分の部屋に入っていくー


「----かわいい……ふふふ…かわいすぎるでしょ…”わたし”」

笑みを浮かべる雫(紀子)-


わたしは可愛くなったー

もう、ゾンビなんかじゃないー


鏡の前でポーズを決めて、雫(紀子)は笑みを浮かべるー


「--わたし、、かわいい…ふふふふ…

 かわいい…可愛すぎる…!!!

 ふふ、、、綺麗なわたし…!うふふふふふふふふふ」


雫(紀子)は、歪んだ笑みを浮かべてー

ひとり、自分の美貌に酔い始めたー


・・・・・・・・・・・・・


紀子(雫)が帰宅するー


紀子の家族中は悪いー。

冷え切った家庭ー


「---紀子ちゃん」

紀子(雫)は、悲しそうな表情を浮かべるー


自分はーー

紀子ちゃんのことを、理解してあげられてなかったのかもしれないー


そんな罪悪感に襲われる。


助けてあげたい!という気持ちは本気だし、

本気で、心配していたー


でもー

その気持ちは届かなかったー


”---さよなら”

”あの時”のことを思い出すー

雫が、高校で初めて知り合った紀子に手を差し伸べ続けていたのはー

”あの時”のことがあるからー


もう、あんな思い、したくないからー

そう、なってほしくないからー。


「---紀子ちゃんの言う通り…

 わたしは…偽善者だったのかな…」


部屋に戻った紀子(雫)は悲しそうに呟くー


「------」

目から涙があふれだすー。


もちろん、入れ替えられてしまったことに対する

ショックもあるー


でも、それ以上に、紀子からは、自分は何とも思われていなかったことー

”偽善者”と思われていたことー


そしてーーー

何よりー


「ブス」


さっきまで自分の身体だった、この身体に、

雫になった紀子は、何の迷いもなくそう言い放ったことがー

雫にとっては、何より悲しかったー


「--自分のことをそんな風に言うなんて…

 ………そんな…悲しいこと、、言わないでよ…」


歪み切った紀子の心を思いー

紀子になった雫は、涙を流し続けたー


・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「--それでさ~~~!そう、マジでかわいいよね~!

 あ、そうだ、上梨さんも今度いっしょに見に行く?

 もっともっと攻めれば、超かわいくなるよ絶対!」


我儘お嬢様の千代が、雫(紀子)にそう話しかけているー


「え~~~!ホントに~~?きゃ~~!かわいい!」

千代が見せてきた何かの雑誌を見ながら、雫(紀子)が

嬉しそうに笑うー


夢にまで見た”おしゃれ”


自分がおしゃれをすれば、

”自分の姿を鏡で見てみろよ”などと笑われるー


でも、今は違うー

今の自分はかわいいー。


「--わたし、もっと可愛くなれるかな?」

雫(紀子)が千代に聞くー


「ふふ、どうしたの今日は?妙に自信満々じゃないー。

 上梨さんなら、もっともっと可愛くなれるに決まってるでしょ」

千代の言葉に、雫(紀子)はゾクゾクしながら、喜びをかみしめるー


座席に戻ると、平八が顔を赤らめながら、近づいてくるー。


生徒会関係の話ー


でも、雫(紀子)には分かるー

”こいつ、わたしのこと、好きなのね?ふふ”


”愉悦”-。

他人から好かれることにも快感を感じながら

平八と話をする雫(紀子)


入れ替わってー

”自分を見下していた”雫の身体を奪いー

その身体で平八と千代にも復讐するー


そう思っていたー


でもー


”---楽しい…最高!!!”


そんな、復讐心は、もはや消えていたー

この身体ならー

”かわいいわたし”ならー

千代も平八も仲良くしてくれるー


そうーーー

わたしはかわいいんだもん!


雫(紀子)は笑みを浮かべながら

紀子(雫)の方を見たー


「---あ!ゾンビちゃん!おっはよ~♡」

雫(紀子)が声を上げるー


自分も”いじめ”に加担したーーー


この日ー

雫になった紀子はー

”元・自分”をいじめはじめたのだったー



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


歪んだドロドロとした入れ替わりデス!

続きもドロドロ…!

ぜひお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました!


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Comments

飛龍

自分からいじめはじめちゃったか~ どんどんダークな方向に進んでますね。結末が楽しみ!

無名

ありがとうございます~!★ どんどん悪い方向に進んでる感じですネ~! 次回もドロドロと…★!