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こんなに近くにいるのに、

わたしの手は、奈央子(なおこ)には、届かないー


奈央子は、すぐ隣にいるー

でも、この手が、奈央子に届くことは、ないー。


すぐ近くにー

手を伸ばせばー

きっと、届くのに。

わたしは、奈央子に触れることすらできないー。


”--ーーー奈央子”

せめて、奈央子だけでも助かってほしいー、

そう願うことだけが今のわたしに出来ることー。


奈央子ー

わたしの、大切な妹ー


そしてー

奈央子の向こうには、お父さんがいるー。

お父さんにも、わたしは手を触れることも、

お話をすることもできないー

同じ部屋に、

同じ空間にいるのに。


「---ふふふふふ…大人の女の魅力って、素敵よね」


”今”

唯一自由に行動することができるのがー

わたしのお母さんー。


でも、今、お母さんは

お母さんじゃないー


お母さんが、

チャイナドレスを着て、妖艶に微笑んでいるー

こんなお母さんの姿、見たくなかったー。

太ももをいやらしい目つきで見つめながら、

甘い声を出しているお母さんー


どんなに見たくなくてもー

どんなに辛くても

目を逸らすことはできない。


わたしもー

奈央子もー

お父さんもー


”乗っ取られた”お母さんが、一人、

エッチな声を出しながら、エッチなことをしているのをー

見ることしかできない。

助けることもできなければ、

目を、逸らすこともー


「ふふふふふ」

そうこうしているうちに、色っぽいお母さんが近づいてきたー


そしてー

いやな音が響き渡ってー

おかあさんが”パックリ”と割れたー。


まるで、着ぐるみのように、”脱がれる”お母さんー


中から出てきたのは、

悪魔のような、男ー

私たち家族を、こんな目に遭わせた男ー。


「--へへへへ…次は、お前だー」


この男は、わたしたち4人を”皮”にしたー。

そして、こうして弄び続けているー


「--心配すんなって、俺が飽きたら解放してやるからよ。

 それまで、存分に楽しませてもらうぜぇ」

男はそう言うと、

わたしを掴んだー


”やめて…”

わたしの声は、届かないー


わたしも、お父さんも、お母さんも、奈央子も、

”皮”にされているー

この男に着られている時以外は、

喋ることも、動くことも、何もできないー


まるで、着ぐるみショーの着ぐるみのようにー

何もできないー。


こうしてー

頭の中で考えるのが、やっとー


そしてー

”着られた”ときだけ、喋ったり、動くことが

できるようになるー


さっきの、チャイナドレス姿のお母さんのようにー


”やめてー”


着られてる間は、意識が飛ぶー

意識が飛ぶ瞬間と、戻る瞬間は何よりも、怖いー


「------次は、美代ちゃんになる」


わたしの名前が呼ばれたー


またーー

好き放題されちゃう…


もう、やめてー


わたしはーーーーー


チャックのようなものが、引き下げられる音がしてー

わたしの意識は途切れたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


世良家ー

その家族は

”ごく普通の家族”だったー


3日前までー。


♪~~~


それはー

ごく普通の日曜日の休日ー

来客を知らせるインターホンが、世良家の幸せを打ち砕いたー


「は~い!」

母の里恵(さとえ)が、返事をして、

誰が来たのかを確認しているー


父の小五郎(こごろう)は、読書好きで、

なんだか難しそうな小説を読んでいてー


長女の美代は、スマホで友達とメッセージのやり取りをしている

最中だったー。


二女の奈央子は、お菓子を机の上に並べて

食べよっかな~?太っちゃうかな~?などと

一人で、真剣に考えているー


「--ちょっとお待ちください~!」

来客は、宅急便だったー

”何か注文したかな~?”などと思いつつ、里恵が

玄関の方に向かうー


その時はまだ、誰一人として、

これから起きる”悲劇”のことなど

考えもしていなかったー


「---ふ~」

長女の美代が、友達とのLINEを終えて、

妹の奈央子の方を見る。

奈央子は相変わらず、お菓子とにらめっこしているー。


「--奈央子ってば、まだ迷ってたの?」

美代が言うと、奈央子は

「だって~!お菓子がわたしを誘惑してくるんだもん!」

と、頬を膨らませながら言うー


「--食べたければ食べればいいのに~」

美代が呆れた様子で笑うと、

奈央子は「ダイエット中だもん!」と、呟くー


奈央子は別に全然太ってないし、

むしろ、やせ型な気がするー

この後に及んでダイエットなんて…と、

美代が、苦笑いしていると、

本を読んでいた父の小五郎が呟いたー


「そういえば、母さん、遅くないか?」

とー。


小五郎の言葉に

美代も奈央子も”そういえば”と、

玄関の方を見つめるー


リビングからでは、直接玄関の方は見えないのだー


「--わたし、見て来る!」

好奇心旺盛な奈央子が、お菓子選びをやめて

玄関の方に向かって行くー


だがー

玄関の方に到着した奈央子は、

”恐ろしいもの”を見てしまったー


母・里恵がーーー

”着ぐるみ”のようになってーーー

知らない男が、母・里恵を、

”着よう”としている光景ー


「---!!!」

奈央子が驚いて、悲鳴を上げることもできず、

その場に尻餅をついてしまうー


「あ…あ…」

震えている奈央子ーー


男は、里恵の皮を完全に着終えると、

母・里恵の顔でほほ笑んだー。


母の微笑みー

でもーーー

いつもと、”違う”


「--きゃああああああああああああああ!!!」

奈央子が悲鳴を上げたー


リビングにいた父・小五郎と長女の美代にも

その声が聞こえるー


美代が「奈央子!?」と叫ぶー。


父・小五郎は、美代に対して、”ここで待ってなさい”と

合図をすると、そのまま玄関の方に向かって行くー


父・小五郎が玄関にたどり着いたときにはー

奈央子に”小さな針”のようなものが刺さっていてー


そこから”空気が抜ける”かのようにー

奈央子がしぼんでいくーー

そんな光景が広がっていたー


「おとうさ…たすk…xて…」

声が、かすれていくー


小五郎が、奈央子に手を差し伸べようとしたときにはー

”空気の抜けた風船”のようになって、

奈央子の皮が床に横たわったー


「---な、、何をしてるんだ!?」

小五郎が叫ぶー


その視線の先には、皮にされて乗っ取られた妻・里恵の姿ー。


小五郎は、里恵が皮にされて

”着られる瞬間”を見ていないー

だから、里恵が乗っ取られていることに気付いていないー


吹き矢のようなものを持っている里恵がほほ笑んだー


「---お前が、里恵ちゃんの”夫”かー」

とー。


「---!?」

小五郎が表情を歪めるー


里恵がまるで、自分を他人のことのようにー


戸惑っていると、

里恵が自分の頭を掴んで、

ガムテープがはがれるかのような、ベリッと言う音が聞こえたー


そして、里恵の頭がめくれてー

中から、中年の男の顔が出て来るー


「---俺を裏切って、幸せになるなんて、許せないよなぁ」

里恵の皮を、頭以外の部分、身に着けた状態で、

男は笑ったー


「---な、、なんだお前は…!」

小五郎は、悲鳴を上げたい気持ちになったが、

冷静を装い、そう声を出したー


妻の里恵が、”皮”のようになって、着られているー?

二女の奈央子もー

皮のようにされているー?


「---俺?俺、里恵ちゃんの元彼だよ?

 へへへ、 まぁ、彼氏だったのは10年以上前だけどさ!


 俺、里恵ちゃんに振られてから

 人生、散々だったんだよね。

 ずーっと、ずっと、恨んでた。


 でもさ、里恵ちゃんも俺も、高校卒業後に引っ越しちゃって

 お互い、どこにいるか分からなくなっちゃって、

 それっきりだったんだよなぁ~」


里恵と奈央子を皮にした男が笑うー


「----でも、見つけたー」


男は見つけてしまったー

偶然、この近所に引っ越してきた男はー

”幸せな家庭を築いた 元カノ”を見つけてしまったー


みじめな人生を送る自分とは違うー

幸せな人生を送る元カノをー


男は、激しく怒りー

そして、裏社会から”復讐のための力”を手に入れたー


それが、人を皮にする力を持つ、吹き矢ー。


「---お前たち家族を、滅茶苦茶にしてやる」

里恵の皮を再び被った男が、里恵の声で叫ぶー


「----うあああああああああ!」

父・小五郎が、里恵の方に突進するー。


そして、リビングの方に向かって叫んだー


「---美代!!!!逃げろ!!!!

 逃げて、警察を呼べ!!!!!」


とー。


乗っ取られた里恵が、小五郎をグーで殴りつけるー


「おい!里恵!目を覚ませ!」

小五郎が必死に叫ぶー


だが、里恵は、ボクサーのような動きで、小五郎を

何度も何度も殴りつけたー


小五郎も反撃するー

だが、里恵は笑いながら小五郎をいたぶりー

そして、最後にはーー


「----お土産だ」

リビングに、妹の奈央子が入ってきたー


男に着られた状態でー


母・里恵と、父・小五郎の皮を放り投げる奈央子ー


警察に電話をしようとしていた長女・美代が震えるー。

震える美代に対して「お姉ちゃんも仲間にしてあげる!」と、

妹の奈央子がほほ笑んで、

吹き矢を美代に放ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


「----はっ!」


わたしは、意識を取り戻したー

”また”着られていたー。


着られている間の記憶は、ないー。


「---ふふふ、お姉ちゃんの身体、最高だったよ!」

リビングで、奈央子が煙草を吸いながらほほ笑んでいるー


”奈央子の身体で、そんなことしないで!”

わたしは、そう叫ぶー


でも、喋ることも、

動くこともできないー


わたしは、皮にされてしまったからー


この人は、わたしたちを、どうするつもりなんだろうー。

いつ、飽きてくれるんだろうー。


”飽きたら解放する”

とは、いつなんだろうー。


このままずっと、わたしたちはーー


わたしは、そんな不安を感じながら

胸を触って喘ぎ声を上げ続ける奈央子を見つめるー


きっとー

お母さんもお父さんもなんとかしたいと思ってるー


でもー

動けないし、喋れないー

何も、できないー


男が”着ていない”わたしたちは

物干しざおのようなものにー

まるで、洗濯物のように吊るされているー


吊るされたわたしたちはーー

何もすることができないままー

”乗っ取られた家族”を見続けさせられるー


目を逸らすことも許されないー


「奈央子ー」

イク瞬間の奈央子を見つめながら

わたしは、どうすることもできない自分を呪うー。


洗濯物状態のわたしー

奈央子の番が終われば

また、この人は、わたしか、お母さんか、お父さんの身体を

乗っ取るー


「---ふふふ、おねーちゃん!わたしのエッチな姿、どうだった?」


皮にされたわたしに近づいてきて、

奈央子が笑うー


目の前に奈央子がいるー

でもー

わたしの手はー

言葉はー

奈央子には、届かないー


”奈央子ー

 お願い…奈央子は助けてあげて”


わたしの想いも、届かない-


男と対話することー

説得することもー

命乞いをすることもできないー


”着ぐるみのような状態”に

されてしまったわたしにはー


まさに”生き地獄”


生き地獄が続くー


わたしが乗っ取られたり、

奈央子が乗っ取られているのを見せつけられたりー

お母さんが、乗っ取られてファッションショーをしているのを

見せつけられた李ー

お父さんが、お母さんの皮を犯したりー


”誰か、助けて…”


でもー

誰も来てくれないー


わたしたち家族の幸せを奪った男はー

わたしの皮を着て、わたしの姿で高校に退学届けを出しー

奈央子の皮を着て、奈央子の姿でも退学届けを出しー

お父さんは、退職届を出したー


同時に皮を着ることは出来なくてもー

男は、わたしを含めた4人の姿を巧みに使い分けてー

行動を続けているー


ーーー…


やがてー

わたしは、考えることを、放棄したー。


もう、、、どうにでもーー…


地獄のような日々ー


でもー

やっと”光”が見えたー


「よし。飽きた!」

男が笑うー。


「--俺はもう帰るよ。里恵ちゃんー」

お母さんの皮の方を見て、その男は笑うー


「--お前たち4人を解放してやるよ」

男はそう言うと、

物干しざおに干された状態の

わたしたち4人を見たー


男が、何やら大きなポリタンクを玄関から

持ってくるー


そしてー

ポリタンクからー

何かをー


”このニオイー”

わたしがそう思った直後、男はマッチに火をつけてー

それを放り投げたー


燃え上がるリビングー


嘘ー

こんなことってー


男が笑うー


「---みなさん。散々楽しませてくれてありがとう!」

とー。


「--お礼に、みなさんを恐怖から”解放”してあげましょう!」

男がふざけた様子で笑うー


「---あ、そうそう、ちなみに里恵ちゃんの元彼ってのは嘘です!」

男がさらに笑うー


「--なんとなくそういう設定があったほうが、盛り上がるでしょ!」

男がゲラゲラ笑うー


「誰でもよかった!誰でも!

 たまたまこの家が目に入っただけ!

 幸せな家族を壊して、エッチしまくって、

 こうして、飽きたらぽいぽいする!

 

 すっごい楽しい遊びですよぉ?これ!」


わたしは、男の方を睨むー

なにもできないけどー

声も出せないけどー

動くこともできないけどー


それでも、この男を睨むー


この男はー

お母さんの元彼なんかじゃなくて

ただの”無差別に人をいたぶって楽しむ”

サイコパスー


わたしは、そう思いながらーー

男をー


「--では皆さん。

 ありがとうございましたー

 俺は”次の家族”で遊びますー


 本当に、本当に、

 身体を乗っ取らせてくれてー」


男は、わたしたち4人それぞれの顔を見つめながらー


「ありがとうございましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

と、大馬鹿にした様子で叫んだー


立ち去っていく男ー


やめてー

たすけてー


うそだよねー?

わたしー

死にたくないよー


炎が広がっていくのを

何もできないままーー


すぐ隣には、奈央子がいるー

大切な妹の奈央子がいるー


すっごく近くにー


こんなに近くに、奈央子がいるー


でもー


それなのにー


こんなに近くにいるのにー

この手はー届かないー


こんなに近くにいるのにー

声をかけることもできないー


こんなに近くにいるのにーーー


わたしたち、何もしてないのにー

何も、わるいことなんてしてないのにー


お父さん

お母さん

奈央子ー


あついよー


あついー


ねぇ、あついー


たすけ…


ーーーーーー


・・・・・・・・・・・・・


「-----」

火災現場を見つめながら”男”は、皮を脱いだー


人前に姿を現すときは、必ず”誰かの皮”を着て

姿を現すようにしているー

”放火”でつかまらないためだー。


「---さ~て」

男はほほ笑んだー


「世良家も楽しかったなぁ

 次は、どの家であそぼっかな~!」


笑う男ー


彼の”次”のおもちゃにされてしまうのは、

どの家なのだろうかー。


それは、誰にも分らない


もしかしたらー

あなたの家かもしれないー



おわり


・・・・・・・・・・・・・


コメント


何の救いもないとことんダークな皮モノでした!


後味が悪くなってモヤモヤな気持ちの皆様には

ごめんなさいデス…!


ハッピーエンドとバッドエンドのお話を

上手く織り交ぜながらこれからもいろいろなお話を

書いていきます~!


今日もお読み下さりありがとうございました~!

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