＜皮＞ダレ (Pixiv Fanbox)

「－－おはよ～！」

女子高生の咲（さき）がほほ笑むー。

ごく普通の女子高生ー

だが、最近、咲はおしゃれになったー

「－－あ、咲ちゃんおはよ～！」

咲の友人で、大人しい眼鏡の少女・克美（かつみ）が、

咲の方を見てほほ笑むー。

咲は、そんな克美の方をじーっと見つめるー。

”克美ちゃんのほうが、かわいいかなぁ”

イヤらしい笑みを浮かべてー

克美の方をじーっと見つめる咲ー。

「－－？」

克美がそんな視線に気づいて咲の方を見るー

”咲になってから2週間”－

早くも”目移り”してしまったー。

咲は、咲であって、咲ではないー

「－－わたしは、咲…ふふふふ」

女子トイレで、咲は、自分の姿を鏡で見つめながら、

イヤらしい笑みを浮かべるー。

咲には姉がいるー

だが、咲の姉・李里奈（りりな）は２週間前に失踪しているー

李里奈と咲はとても仲良しだった。

その李里奈が失踪してしまったことで、

友人たちは、咲が落ち込んでいるのではないかと

考えていたがー

友人たちや先生たちの心配をよそに、

咲はとても”あっさり”としていたー。

姉の李里奈が消息を絶ったことなど

”まったく気にしていない”とー

そういう感じだ。

「－－ふふ…心配するわけないじゃない」

咲はほほ笑んだー

クスリと笑うー。

自分の頬を指でなぞりながらー

「－－だってーーー」

咲の後頭部がペリっと割れるー。

そしてー

中からは、失踪したはずの咲の姉・李里奈の姿がー。

「－－ふふふふふふふ」

咲の中から出てきた李里奈が笑うー

”わたしには、いつの間にか”他人を皮にする力”があったー”

李里奈は笑うー。

咲の顔が、うつろな表情でぱっくりと割れた状態のまま

虚空を見つめているー。

そうー

彼女には、他人を皮にする力があったー。

普通の人間には、成し得ない力ー

他人を着ぐるみのような皮にして、

それを着こむことで

その人物自身になることができるのだー

そして、

不思議なことにーー

咲の中から出てきた李里奈の後頭部もパックリと割れるー

その中から、

陰険そうな目つきの女が出て来るー

いじわるな性格のお嬢様ー・茉莉（まり）－。

不思議なことにー

”上からどんなに着重ねても

　膨らんだりすることなく、自然な形で

　その人間になることができる”

「－－ふふふ…わたしは、誰にだってなることができるー」

茉莉が笑うー。

李里奈も

咲もー

半分脱がれた状態で虚ろな目になっているー

「－－ふふふふふ…」

”茉莉”も、彼女ではないー

大量の皮を着こんでいる彼女の本当の名前はー

小野田　晴美（おのだ　はるみ）ー

晴美は、生まれた時から孤独だったー。

両親を幼いころに交通事故で失いー、

それから親戚の元をたらいまわしにされて、

愛情というものを知らずに育ったー

寂しかったー

辛かったー

でもー

その絶望のような日々を耐え抜いた先にー

彼女は、光を手に入れたー

それがー

”人を皮にする力”

彼女は、人を皮にする力を使ってー

”なりたい自分”になったー。

それからは、手当たり次第ー

気に入った身体を皮にしてはー

その子としての生活を続けていたー

「だって…だって寂しいんだもん」

晴美は、そんな風に自分に言い聞かせたー

大学に入学しても友達からも、親族からも

疎んじられていた

”可愛そうな女の子”

晴美は、自分のことをそう思っていたー

でも、今は違うー

いろんな子になることができるー

２週間前までは、李里奈ー

２週間前からは、李里奈の妹・咲ー。

皮にして、着込んでしまえば

どんなにかわいい子であろうと、

どんなに恵まれた子であろうと、

自分のものー

「んふふふっ♡」

胸を揉む咲ー。

李里奈と咲の皮を再びちゃんと着こんで、咲は笑うー

「あぁぁぁ…きもちいい♡」

晴美は、咲の身体でゾクゾクを味わって

不気味な笑みを浮かべるー

自分の身体ではこんなことはできなかったー

でも、咲の身体なら、たっぷりできるー

「うふふふふ♡　ふふふふふふ♡」

咲が笑いながら嬉しそうに胸を揉んでいると

背後の扉が開いたー

「－－－あ」

胸を揉んでいた咲ー

そこに、大人しい友人・克美が入ってきてしまい、

咲が胸を揉んでいたのを見てしまったー

「－－さ、、咲…？」

克美が戸惑うー

咲は「ふふ、ちょっとかゆくて」と誤魔化すー

誤魔化して、トイレの外に出ながら、

咲は”今日の放課後、克美ちゃんになろっ”とほほ笑むー

大人しい女子として高校生活を送るのも悪くないー。

「－－－……」

晴美はー

”脱がない”

一度着込んだ皮は、脱がないー

上から、また別の皮を着るー

既に、１０人以上は着こんでいるー

もはや、前に着ていた皮のことなど、忘れてしまうー

友達が増えれば増えるほど、印象薄い友達が

その中に出て来るような、そんな感覚だろうか。

最初の頃に着ていた皮のことなんて忘れてしまうし、

めったなことでは脱がないー

脱がないほうが、晴美にとって、都合もいい。

過去に着ていた皮のことなんて、どうでもいいー

昔の自分など、覚えておく必要もないー

今日の放課後ー

克美を皮にするときも、そうだー。

今、着ている咲の皮は脱がずー

そのまま、克美を上から着るー。

どういう仕組みになっているのかは

分からないが、とにかく何枚重ね着をしても

問題ないのだー。

”重ね着”すれば、

その人間は”行方不明”になるー

例えば、今、一番上に着ている咲は、

乗っ取られてはいても、周囲からすれば咲にしか見えないー。

だが、咲の前に着ていた先の姉・李里奈は、

周囲から見れば”失踪”と同じようなものだー。

咲の皮の下にいるー

つまり、誰からも、どこにいるのか

分からないのだからー。

脱ぎ捨てても、皮は元には戻らないー

そうなると、怪奇現象扱いされて騒がれるかもしれないし、

”人を皮にする能力”に誰かが気付く可能性もあるー

だから、上から着こんで、失踪扱いにしてしまうのが

もっとも手早いのだー

”わたしが着ている”限り、

他の人から見つかることなんて、ありえないからだー

「－－－－－」

周囲を見渡す。

咲は笑うー

何故か”男子”には興味がないー

いつも、女子、あるいは女性ばかりー

今度のターゲットは咲の友人・克美だー。

放課後ー

咲は、克美を呼び出したー

克美を、”着る”ためにー

「－－－ふふふふふ…克美」

咲がニヤニヤしながら克美の方を見るー

呼び出された克美は

”ここ最近の咲”の様子がおかしいことに

気付いていて、違和感を感じていたー

「さ、最近、咲ちゃん…なんか、変じゃない？」

克美が尋ねるー

咲は、不気味な笑みを浮かべたー

「ーーーふふふふふ…♡　バレちゃった」

咲が笑うー

「でもね、克美ー

　きみもこれから、わたしと同じになるのー」

咲がパックリと割れるー

中から、咲の姉・李里奈が姿を現すー

「－－わたしたちと、同じにーー！

　わたしに着られて、わたしになるのー！！！」

李里奈が、咲を半分脱いだ状態で笑うー

「きゃあああああああああああ！！！！」

克美が悲鳴を上げたー

”化け物”

克美が慌てて逃げようとするー

だが、李里奈は逃がさないわ！と呟くと、

咲の皮を着こんで、克美を乱暴に取り押さえた。

「おら！わたしにその身体、よこせよー」

もがく克美ー

悲鳴をあげる克美ー

克美は、目から涙を流しながらー

後頭部がパックリと割れてー

そのまま”皮”になったー

「ふふふ…ふふふふふふ」

咲は、着ぐるみのような状態になった克美を掴むと、

そのまま克美を着こんでいくー

そしてーー

咲は、克美になったー

「んふふふふふ♡　わたし、克美！」

可愛らしく呟く克美ー

この瞬間ー

咲は”行方不明”となるー。

克美の皮の下に着こまれている咲はー

人を皮にする力を持つ晴美以外には、

誰にも見つからないのだからー。

「－－－んっふふふふ♡」

克美がスキップしながら、歩き出すー

家に帰ったらどうしようかー。

まずは”新しい身体”のボディチェックからだー。

同じ女の子とはいえ、超興奮するー。

とってもゾクゾクするー。

克美になった晴美は、

克美としての生活を始めるー

咲のように２週間程度で次の子を皮にすることもあれば、

その前の李里奈のように、数か月間を過ごすこともあるー

全ては、晴美の”気分次第”なのだー。

克美になってから１か月ー

友人の”咲”は失踪したことになりー

咲と姉の李里奈を失った両親は戸惑っていたー

当然、学校側も相次ぐ失踪に戸惑っていたがー

それでもーー

みつかるはずはなかったー

咲と李里奈は

”わたしの中”にいるのだからー

克美は邪悪な笑みを浮かべながらほほ笑んだー

バイトで貯金していたお金を使って

買い漁ったおしゃれな格好をして

部屋でくつろぐ克美ー

大人しかった克美が

メイクだけはほどほどな、格好がとても派手な

ギャルのような状態でー

部屋で足を組んでいるー

「んふふふふ♡　着ている子を

　自分好みに変えるのも楽しい～！」

克美が笑顔で笑うー

大人しい克美を

派手な子に変えてしまうー

これも、また、ゾクゾクするー

♪～～～

「－－！」

克美が、”ここ数年”鳴らなかったスマホを確認するー

「－－－」

克美は表情を歪めたー

それはー

”晴美のスマホ”だー。

晴美は天涯孤独だったからか、

捜索願すら出されないまま、

親族たちも”どっかにいるんでしょ”みたいな扱いを

受けていたー

それゆえ、たくさんの皮を着こんで

誰とも会わず、連絡も取れない状況でも

探されることすらなかったー

そんな”晴美のスマホ”に連絡が入ったー

”養母の危篤”を知らせる内容だったー

晴美は、義理の母を思い出すー。

あまり世話になった気はしないが、

それでも母は母…

「－－－－－」

晴美は思うー

”久しぶりに”

自分の姿に戻るかー。

とー

”晴美”としての隠れ家に移動する克美ー

晴美名義でマンションを借りていて、毎月支払いもしている

”隠れ家”があるー

そこでー

全ての皮を脱いでいくー

克美ー

咲ー

李里奈ー

茉莉ー

これまで乗っ取った女たちを、脱いでいくー

園子ー

円香ー

純恋ー

真凛ー

萌愛ー

花子ー

シンディー

富治子ー

多恵ー

……

皮がどんどん部屋にたまっていくー

「ははっ！すっご～い！」

笑う晴美ー

確か、あと”数枚だー

もう名前も覚えてない数人の皮を脱いでー

晴美は長い黒髪をなびかせるー

「ふ～～～～！久しぶりのわたしって感じ」

薄幸そうな美少女・晴美が出て来るー

「さて～、お義母さんのこと、身に行きますかぁ～」

晴美はそう呟いて、ふと後頭部に手を触れたー

ーーー！？

晴美が表情を歪めるー

「え…」

後頭部に、ファスナーのような感覚があるー

「え…？？？？？」

晴美は戸惑うー

これは”皮”にされた人間にできる特有の現象ー

外からは見えないが、チャックのようなものが

そこには存在するー

だがー

晴美は、晴美だー

「－－え……？」

晴美は混乱したー

わたしは晴美のはずだー。

なんで、チャックが？

他の女たちと同じようにー

そう思って、チャックを引っ張るとー

晴美の身体がパックリと割れたー

「ひゃああああああああああああああああああ！？！？！？」

晴美の中から出てきた、ショートヘアーの女が悲鳴を上げるー

”晴美”の皮が、地面に横たわるー

「え…？？？え…？」

ショートヘアーの女が戸惑うー

わたしは…晴美…じゃない？

ショートヘアーの女がそう呟きながら

後頭部を触るとー

そこにも、チャックがーー

「え…嘘…？」

彼女は、チャックを引いたー

その下からは、化粧の濃い女がー。

化粧の濃い女にもチャックがー

その下からは、ＯＬ風の女ー

ちょっとふっくらした女ー

脱いでもー

脱いでもー

脱いでもー

別の身体が出て来るー

そしてー

男まで出て来るー

「－－うそ…！？わ、、わたし、晴美だよね？」

混乱する男ー

男の皮を脱ぐとー

その下からは、可愛らしいツインテールの少女。

「え…なに…なにこれ…？」

脱いでもー

脱いでもー

脱いでもーーー

そうー

彼女は、晴美などではないー

晴美も”皮にした女”のひとりー

もはや、前に着ていた皮のことなど、忘れてしまうー

友達が増えれば増えるほど、印象薄い友達が

その中に出て来るような、そんな感覚だろうか。

最初の頃に着ていた皮のことなんて忘れてしまうし、

めったなことでは脱がないー

過去に着ていた皮のことなんて、どうでもいいー

昔の自分など、覚えておく必要もないー

”彼”は

”着すぎて”いたー。

自分を見失うほどに、何人も何人も皮にしてー

着てきたー

いつしか、彼はー

自分のことすらも忘れてしまったー

１年以上を過ごしていた”晴美”が強く印象に残ったのだろうー。

いつしか、彼は

自分が晴美だと思い込んでしまっていたー

だが、違うー

本当の彼はー

晴美の皮の１３７枚下に存在するーーー

晴美を着るまでに、彼は１３７人もの人間を

着こんでいるのだからーー

「－－だれ…？？？」

美人モデルのような女の姿になっていた”彼”が

後頭部を触りながら悲鳴をあげるー

「だれ…！？！？わたしはだれなの…！？！？！？

　だれ…！？！？！？！？！

　うわああああああああああああああああああ！！！！」

発狂した女の悲鳴がー

部屋に響き渡ったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・

コメント

皮を大量に着こんでしまった人物のお話でした～！

皆様も、重ね着には注意してくださいネ～笑

お読み下さりありがとうございました！！