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「あっ……ああッ…………ぬあぁ…………」


海のように青いスーツを身にまとった、山のように大きな男の口から力ない声が漏れていた。

つい先程まで正義を謳っていた言葉は消え、声に抑揚がなくなり、体はヒクヒクと痙攣を続けている。

正義のヒーローノーチラス。彼は今、絶体絶命の窮地に立たされていた。




『いかに困難なことであろうとも、我々ヒーローは諦めはしない……! この失態……敗北、屈辱など……さしたる問題では……ないッ……!』

『そして、このノーチラス……貴様らの思い通りになるものなど一つたりとも持ち合わせていない……! 耐えてみせよう、救援がくるまで……!』

『正義は不滅――! 我らの繋がりは強く、人々の信頼は厚く、魂の大海はどこまでもッッ――』


かつて吠え猛っていた言葉は虚しく響くばかりだ。

洗脳バイザーによる脳への直接ハッキング。

脳に直接投影されるのは、卑猥と欲望の世界。

ノーチラスのようなヒーローが拒み続けてきた、堕落の世界だ。


(声が……出ないっ、頭が、は、働かないぃ…………ッ)

正義のヒーローノーチラス。

(頭から、消えていく、正義が、自我が、記憶がッ…………『ノーチラス』が……!)

彼は必死に自らの脳を奮い立たせていた。




ノーチラスはギリシア人の母と日本人の父の元、比較的裕福な家庭の元に生を受けた。

ごく一般的な教育を受け、友人も多く、明るく朗らかな性格であったという。40年前に起こった大災害により、母を失うまでは。


そこから先のことは、詳細な記録は残っていない。

妻を失った彼の父が、息子一人を連れて日本の孤島に移り住み、文明や他者と断然した生活を送り始めたからだ。

ノーチラスによれば、父は無口で無骨、重度の人間不信に陥り、そしてテクノロジーに対する怒りのようなものを抱えていたのだという。

海と山ばかりの島の中で、修験者や仙人のような生活を続け、幼かったノーチラスはすっかり鍛えられた。体は岩のように逞しくなり、肌は太陽を染み込ませたように褐色に染まり、全身から海のような磯の匂いを常に発し続ける男へと変わった。

だが同時に、彼自身もまた人間や文明に対する不信不満を抱くようになった。


彼自身が人を憎んだわけではなかったが、父をこれ程に変えてしまった世界を信ずることは若き青年にとっては不可能だった。父と二人、苛烈な修行の日々はノーチラス自身の心にも暗い影を作ったが、それはそれで満ち足りたものでもあった。


父はその頑なさによって、人々から傷つけられることはなかったが、同時に病に臥せった彼を救うものもいなかった。

折しも嵐の夜であった。孤島は完全に世界から隔絶され、雨と風が逞しい父から最期の命を奪おうとしていた。


父自身は己の選択に後悔はしていなかった。だが、まだ青年といっていい年齢のノーチラスはそれほど達観していなかった。


彼はその日、数年ぶりに声を張り上げ、そして父との約束を反故にした。


彼は島を出る唯一残っていた1隻のボロ船に乗り込んだ。

嵐は容赦なく若きノーチラスを襲い、そして船を破壊した。


そこでも彼は諦めなかった。引き返すのではなく、先へ。

島を離れて人々に救いを求めに泳ぎ続けた。


彼が港にたどり着けたのは、皮肉にも父の苛烈な修行の成果でもあった。


嵐で何もかもがかき消える中、変声期を迎えて間もないノーチラスはその声を枯らして叫び続けた。

助けてれ。

どうか父を、俺を、助けてください。


果たして天は、努力する若者を見捨てなかった。


ノーチラスを見つけたのは、その港町唯一の医者だった。


ヒーローとしての彼は、その夜覚醒した。

嵐の海を泳ぎきった肉体の頑強さ――ではない。

彼の中にヒーローとしての火を灯したのは、救いを求める人の心細さと、それを助ける尊さ。

人間の優しさこそが、正義のヒーロー・ノーチラスを作り上げた。





「…………そ、そう…………だ、負けるわけにはいかん。父の教え……師の教え、そして……ああこのノーチラスを作り上げた、皆の……優しさに報いるため、にも…………あぁぁ…………正義、正義、正義ぃぃ…………」


ノーチラスは己の中の旅を続けていた。

己のルーツ。正義の炎が燃え上がったあの日。思い出せば力がみなぎるあの記憶。

そうだ、彼は助けを求めるものであれば、どんな相手にも手を差し伸べてきた。

今ではもう当時の父を超える年齢となった。父より逞しく雄々しくなった彼は、髭の生えた口で静かに強く呟いた。


「…………Invitusはまもなく、こ、この……ノーチラスの……窮地を知るだろうッ…………そして……救援が訪れる…………!」


「い、いかに困難なことであろうとも、我々ヒーローは諦めはしな……! ぬひぃっ、この、こ、この逞しい体で、必ず勝利を、手に入れて、みせ、る…………必ず、この、この逞しい、逞しい、マッチョなヒーロー………逞しい、盛り上がった、この、筋肉でえええ…………!」


彼は気づいているのだろうか。

真っすぐ立っていた膝が折れ、肉棒を強調するような卑猥な格好になっていることを。

スーツに食い込む巨大な肉棒が、ビンビンに勃起していることを。

尻の穴がヒクつき、口からヨダレが垂れ、わずかに露出した肌から男臭い汗が発散されているのを。


「見よ、こ、この体を、この不敗の体……無敵の、ヒーローの…………❤ おぉぉ、み、み、見られて…………いるぅぅう❤❤」

ビクン……。

心臓が跳ねるようにノーチラスの肉棒が激しく上下に動いた。

その瞬間ノーチラスのスーツが急速に光を失った。

彼の心の中心にあった海を思わせる正義の色が失せていく。


「な、なんだ……か、体が締め付けられているッ❤ ぬおぉぉち、力がみなぎる、締め付けが、こ、この体にぃい❤」


「み、見られている、正義の筋肉が、輝くさまを見られている。ノーチラスが、ノーチラスでなくなっていくのが、見られているぅぅう❤❤」


青緑の色が黒く、濁り、そして輝いていく。

光沢ある黒だ。悪の象徴たる色。そして卑猥な輝きが正義の肉体を覆い尽くす。



「ハァハァ❤ なんだ、なんだこれは、この…………このパワーは…………!ああぁ体が、体が勝手に、ポーズを…………してしまう❤ とまらぬ❤ 止まらぬ❤ み、見よこのたくましい体を、こんなものがお前たちに支配できるはずがない……ぃぃ❤」


「この太ましい腕を見よ! 厳しい脚を見よ……! この男らしい肉棒を見よ、見よ、み、見るがいぃいい❤❤」


ノーチラスがポージングをした場所から凄まじい勢いで黒く染まっていく。

膨れ上がった上腕。

鍛え抜かれた大腿。

脇から足の裏に至るまで、全てが黒く染まっていく。


「あ、あ、負ける訳にはいかない❤ だが、だが止められぬぅうう❤❤」


まだ染まり切っていないのはただ一箇所、彼の脳だけだった。そんな最期の理性が悲鳴を上げる。

ヒーローとして負けてはならない。男として堕落してはならない。ノーチラスとしてすべてを捨ててはいけない。


「そうだ、そうだ、正義を穢されてなるものか……! ヒーローは、ヒーローは助けを求める声に応えるもの、ヒーロー、ノーチラスは…………この、この肉体はぁぁああ❤❤」


ノーチラスは吠え、そして最後の力を振り絞った。



強烈な輝きが彼を包み込んだ。



「性義のヒーロー、ブラックノーチラス参上!」


光の中から現れたのは、漆黒の輝きと…………青く……海のように輝くペニスのヒーローだった。


「どんなピンチにも即参上ッ❤ 苦しむ声は見逃さぬ、雄々しく優しいヒーロー参上ぅぅ❤」


チンポから汁が溢れ、てらてらと輝くスーツに垂れる。

全身余すところなく黒くなった体の中で、ペニスだけが異様な色で輝いている。


「さあ君の悩みを私に打ち明けたまえ、ちんぽがムラムラして苦しいのか、尻が疼いて仕方がないのか、どのような苦しみでも、このノーチラスが『助けて』やろう❤」


彼は肉棒をぶんぶんと上下に振りながら、得意げに笑みを浮かべた。


「ヒーローは決して人々を見捨てないぃぃい❤ そして、どんな声にも応じるのだあ❤ このノーチラスの本質は変わっていない、何も変わっていない、常にまっすぐ、そうこのペニスのように強く太くまっすぐなのだあ❤❤❤」


ノーチラスの頭の中に、コレまでの活躍が再生されていた。

だがその思い出はすべてが穢れきったものへと変わり果てていた。


鍛錬の日々はいかに肉棒を弄ってきたかの歴史に。

助けられてきた思い出はセックスの日々に。

そしてヒーローとしての活躍は市民に奉仕し続けた退廃的で卑猥な活動に。


すべてが変わり果てていた。


「さあ君もこのノーチラスのペニスで救われるのだ❤ その快感こそが、ヒーローの使命、私の生きる理由なのだ、さあ、君も、このデカマラと一緒に楽しもう❤ さあ、さあ❤❤」

ヒーローは完全に洗脳に屈し、もはや戻ることなど不可能なほどに幸せそうに微笑むのだった。




END

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Comments

tanzer

根底にある思いから改変してしまうの大変エッチですね...反抗しながらも身体はいやらしく腰を突き出してるのが凄く好きです!!