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とある山奥に、手のつけられない鬼が棲んでいた。


この山鬼、大地から削り出したような緑色の肌と、岩を固めたような屈強な筋肉をしており、世に産まれたその日から、少しでも気に入らないことがあれば腕力にものを言わせる乱暴者だった。


邪魔なものなら岩でも砕き、食いたいものがあれば近隣の村から掻払い、動物でも人間でも妖怪でも、誰も彼もを見下した。


若いうちはそれでも、ただの厄介者で済んだ。

問題は、齢をいくつも重ね、貫禄と実力、そして傲慢さを身につけてからだった。

なにより酷いのは、人間を矮小と見下しながらも興味関心を持ち出してしまったことだった。


「おい人間。テメエこの山通るってのに、この儂に挨拶もなしか?」


鬼はそう言って山奥から顔を出しては、道を通ろうとする男に勝負を仕掛けるようになった。


命こそ取らないものの、男の尊厳を完膚なきまでに破壊し悦に浸る鬼の悪評はすぐに広まり、やがて国中から力自慢たちが鬼退治に挑むようになった。


これがいけなかった。


『この俺様にかかれば鬼など赤子同然!』

『我こそ神州無敵の剣士!』

『卑怯な鬼め、力士の本当の怪力ってのを見せてやる!』

などと名乗りを上げて討伐に向かった男たちだったが、大言壮語な彼らは見事返り討ちにあい、鬼を一層増長させてしまった。


己の力を測り、溺れる、驕ることで、妖怪の力はさらに強く醜悪なものとなる。

鬼は人間など物の数ではないとすっかり侮り、果たしてその通りの力へと変わってしまったのだ。


山鬼が「そろそろ子でも持つか」という年頃になった頃には、当然のような態度で近隣の村に顔を出すようになっていた。そしてこれまた当然のような態度で、村で一番尻の張った生娘を献上せよと命じてきた。

鬼は土地神を気取るほどにうぬぼれ、そして強くなっていた。


今までは鬼の暴虐に耐えてきた村人も、コレにはさすがに承服しかねた。

あんな巨体の鬼に嫁がされては、とても命はないだろう。

時折見せつけてくる股の間の金棒は、まさに凶器といって差し支えないものだ。


――そんな折、とある高名な寺の修行を終えた若者が村に帰ってきた。

鬼がいずれこのような振る舞いに至ると見越していた彼は、鬼を鎮める方法を学んできたのだという。


彼の語る『鬼退治』はなんとも奇っ怪なものであったが、進退窮まった村人たちはなけなしの勇気を出してその提案を受け入れた。


『山の長である鬼様、今まで我々が悪うございました』

村の男衆は六人ほど連れ立って山を登り、鬼の住処へとたどり着いた途端に手をついて伏した。


要求を直ぐに快諾しなかったことへの謝罪。至らぬ献上品の謝罪。そして、これまでの態度の謝罪だった。

「なんだ、ようやく貴様ら儂の偉大さが身に沁みたか」

村人たちは鬼の言葉に頷き、その上でこう付け加えた。


『山鬼様の要求に応えたいのは我々一同の望みではあります。が、山鬼さまの望むような生娘を無傷で山奥に連れて行かせるなど、卑小な人間めには難しきことでございます』

『そのとおりっす。泥に汚れた姿を赤鬼様に捧げるなど、そのような無礼はできね』


彼らは平身低頭に言いながら、要求だけはしっかりと伝えた。

村の娘を美しい姿のまま捧げるためにも、どうか村のある土地まで山鬼様の御御足を伸ばしていただきたい、と。


右と言えば左へ、左と申せば右に進むような、そんなへそ曲がりな鬼だったが、人間たちが手をつき必死に頼み込む様子に悪い気はしなかった。

それに、村まで迎えに行けば、娘は一人二人と言わずいくらでも献上するというのだ。

なるほど、確かにそれならば、こんな棒のような足をした人間共に任せるより、この巨体で降りていって担ぐ方がよほど早い。


鬼は納得し、のっしのっしと人里に降りてやることとした。

なにより、もし無礼を働いたならば、村ごと壊して別の山にでも行けば良いと考えたのだ。



そうして訪れた村の中で、最初に案内されたのは中心に造られた真新しい露天風呂だった。


「おいおい、なんだぁこのドロッドロのもんは、これが人間どもの水浴びか?」

鬼はせせら笑いながらも、人間共手製の風呂に浸かってやった。

立ち昇る湯気と甘い芳香に包まれ、脇から足裏から腹筋から、どくどくと汗があふれてくる。湯自体も悪くないが、それ以上に村民の怯えた様子が面白くてたまらなかった。


「必死に作ってこれとは、やはり人間ってのはしょうもねえのう」


そんな鬼の様子につい気が緩んだのか、一人の男が不用意に口を滑らせた。

『申し訳有りません山鬼様。しかし、まずこちらで身をお清めくださいませ、娘たちはその後――ということで』

実際、山から降りてきた鬼は汗や草汁にまみれ、人間には比べ物にならない雄の臭気に満ちていた。だが、この指摘はまずかった。


「貴様ッ! 人間風情が、この儂を穢れなどと言いやがったかッ!」

鬼は顔をしかめたかと思うと、たちまちのうちに怒りを沸騰させた。


鬼の浸かっている湯が、突如ボコンボコンと気泡を作った。

緑色の肌に怪しげに輝き、瞳が夜行動物のように白光にギラついた。

ただ一歩足を地面に突き立てただけで、大地が悲鳴のような轟音を上げた。


そこに飛び出したのは、鬼退治を提案してきた若者だった。


『――どうか、どうか父をお許しください山鬼様!』

彼は父をかばいながら、身を小さく丸めて鬼に懇願した。

『父は神に捧げものなどしたことのない、無知な男なのです。

また、清めるというのは決して山様のお体のことではなく、その腹の中でございまする』

今にも噛みつきそうな鬼の前で若者は続ける。

『我々の捧げ物や、山々で採れたもの、そのような俗なものではなく、この度ご用意致しましたこの湯は、神に奉納いたしまする酒を使った、酒湯というものでございます。

これにより、その荘厳で目も眩むようなお身体に相応しいように、内側も満たしていただきたいと、父はそのような申し上げたかったのです……!』


「――ふぅ……む」


さて、神のように振る舞っていた鬼だが、実際に神と崇められたのは初めてのことだった。

グツグツと煮立っていた怒りの熱は、溶けて消えるように静まった。

「まったく、だったらもっとわかりやすく言わねえか、馬鹿な人間共め」


鬼は納得したのか、湯の中へ再び腰を落とした。偉そうに踏ん反り返る様子を見ると、どうやら納得したらしい。その姿を見て、若者と村人たちは安堵し、そして感謝の声を上げた。


『寛大なお心遣い、ありがとうございます……!』

『おおっそれにしてもなんと見事な浴びっぷりでありましょうか』

『酒湯に浸かるなんて、我々がやったらあっという間に酔いつぶれちまうぞ』

『さすが山鬼様だ、あの余裕の表情を見ろよ』


「なんだ、人間ってぇのは――こんなこともできねえのか」


『はい、村一番の酒豪の男であっても、半刻も浴びることはできません』

「ガハハ! そりゃあ難儀なもんだなァ! 貴様らが出来ねえぶん、儂がたっぷり堪能してやるわい!」

鬼はすっかり機嫌を直し、身にまとっていた布を放り出して本格的に湯浴みを始めた。

さらなる歓声が村の男達から上がった。


「おぉ……見ろよ、魔羅の先がちらちら見えているぞ」

「ひええ、同じ男として怖気づいちまう、あんなでけえもん」

「全部見えちまったらどうなるんだあ」


次々に浴びせられる賞賛の声と煮え立つ湯の心地よさ、……鬼は緑のしかめっ面を破顔させた。

少しばかり身体中に力を漲らせて筋肉を見せつけてやると、畏怖とも羨望ともとれる溜息があちこちから上がる。中には両手を合わせて、鬼の屈強な魔羅を拝む者まであらわれた。


良い気分だ。

酒がじんわりと体に染み込んでくる。

祀り上げられるというのも悪くない。これは定期的に人間を集め、自分のために歌や踊りを作らせるのもいいだろう。


鬼の頭の妄想が、ずっしり重たい鬼の金棒を持ち上げた。


「む――おぉ……おぉっとぉ……!!」

ザブンと白い湯をかき分けて、堂々たる見どい色の肉の棒が姿を表した。

全身緑色でありながら、先端だけが内蔵と同じ薄肉色。それは見事な肉の塊であった。

内側からパンパンに膨れ上がり、主の欲望の猛々しさを雄弁に語っている。

長く太い緑の棍棒。それはもう一本の腕のようだ。


「むぅ……なんだあ、どうしたんだぁ……!」

酔いが回りだした頭で、鬼は考えた。

人間どもに見つめられることなどは、些かの恥じらいもない。しかし、自らの意思ではなく、女の前でもないのに隆起したという事実に、誇りは僅かばかりの惑いがあった。

収めるか。湯に沈めるか。


「儂の魔羅が……勝手に、おっぉお……!」

味わったことのない感覚だった。興奮とはまた違う、まるで内側から精が勝手に暴れて、腹の中で煮立っているような――。なにかがおかしかった。


――そこに、村人たちの声が上がった。


『おぉ、見ろあれを!』

『このような白昼で、なんて堂々とした勃起だ!』

『さすが山の鬼殿だ、ぶら下げてるものも、肝っ玉も、我ら人間とは大違いよ!』

『ああ、我々であれば、恥ずかしくて恥ずかしくて。居ても立っても居られず逃げおおせてしまうなあ。だのに鬼様は、そんな軟弱なものは一欠片もないんだなあ……!』

村人たちの声が上がった。

鬼の口角が上がった。


「な、なんだァ、人間ってのはこんなこともできんのかぁ?」

嘲笑い、見下し、鬼は腹筋と下半身にグッと力を込めた。

既に起立していた肉棒が更に力強く、図々しく、空気を犯すかのように固く反り返った。

艶めかしい色の先端からは透明な汁が、口たっぷりに溜めたヨダレのように溢れ出した。

そのうち一滴が濁った湯に垂れて混じった。


「おおぅ、悪くねえ悪くねえ……! へへ、どうだ、お前らにはとても出来んだろう、人間共ォ……!」

鬼は得意満面に顎をしゃくった。

そうだ、何を躊躇うことがあるだろうか。どのみちこの後魔羅を使うのだ、すこし早くデカくなったところで、何ひとつ問題はない。


「ほれどうだどうだ、ありがたいか、恐ろしいか!」

心地よいならば、そのまま味わい尽くしてしまえばいい。

鬼は不思議なほど滑らかに考えを改めた。


『まったくでございます。逃げも隠れもしない堂々たるお姿、見惚れてしまいます』

「へっ、お前みたいな小僧に言われても嬉しくねえわい」

そう言いながらも、鬼の顔は緩み、勃起した魔羅からは汁がどぷりとはみ出た。

気を良くし、酒風呂に浸んだまま体をゆったりと揺らしている。その姿は、どうも酔いの回った中年男のようだった。


その勃起を見つめながら、村人たちの大合唱が始まった。


素晴らしい魔羅です、鬼様ぁ!

「おお、そうだろう!」

なんて美しい男根だ!

「ハハ、あたりまえじゃあ」

あんなに晒しているのに、縮こまるどころか大きくなるぞ!

「おう、そうだ、そうだあ、貴様ら人間とは比べ物になるまい」

ほれ見ろ動いているぞ、びくっびくっっと……すげえなあ

「そ、そこまでわかるかあ……ぬふぅ」

デカい、デカすぎる、なんて魔羅だあ

「あ……んあ…な、なんだ、儂の魔羅が……あっ、ぬあっ!」

手を触れてもいないのに、なんて助平なんだ

「ぬぉ、ぬぉお! は、腹の奥から、なんだこれはぁあ♥」

きっと――精を放つくらい簡単なのだろう!

そうだ、そうにちがいない!

なんと、鬼殿の射精を見れるなんて、眼福だなあ!

「なにを、貴様らなにを――ン……むぉぉ♥」


「おぉぉ、うぉお♥」


なんと驚くことか、鬼は突然、呆気ないほど簡単に、精液を噴き上げてしまった。



甘い酒の香りに混じって、鼻をツンと刺激する酸っぱい雄の臭気。

それはまぎれもなく、鬼の精液の臭いだ。

嗅ぎなれた己の肉棒の臭い。

だが、こんな射精は初めてだった。

「な、なんだぁぁ……儂は、少しばかり酒を浴びすぎた、のかあ……?」

何故逝った?

下半身からジクジクと込み上げた快感。心地よいながら抵抗不可能な異様な快感。

刺激ではなく、漏れ出るように精液が飛び出した。


「ふぅ……ふぅうう……ぬほぅぅ♥」

腹の奥で精液が煮え立っているようだ、湯気が昇るようにして雄魔羅から精液がどろりと勝手に溢れてくる。

快感が収まらない。頭の芯に射精の二文字だけが広がっていく。

おかしい。妙だと、これには流石に豪放な鬼も戸惑った。

自らの意思に関わらぬ射精など、看過できぬ変化である。

女の胎の中以外で精を放り出すなど、浅ましい人間の如き屈辱である。


しかし……。


『おお……ありがたいありがたい……鬼の射精を間近で見られるなんて』

『山鬼様の見事な飛沫、おぉ……こんなに離れているのに、ここ迄臭うてくるぞ』

人間たちがバカバカしく騒いでいる声を聞くと、どうしても隠したり怒鳴ったりができない。そして、止めることができない……。


「おうぅ♥ おぅぅう♥ ま、待てぇぇ……き、貴様ら、黙れ、一度、黙れ、だま、ぬぅぅうぅ♥」


――神のように恭しく扱う。

それこそが、若者が持ち帰った『鬼退治』の手法だった。


これは、祓うこと叶わぬ強靭な妖怪や呪いへの唯一の対抗策である。

力でもって破壊することはできない。捻じ曲げることすら困難だ。

なれど、祝福し、祀り、拝み、褒めそやしたならば、どうなるか。


人間を下等な存在と認知している鬼にとって、それらの言葉はいずれ破ることの出来ない縛りへと変わり始める。

一つ一つは小さなものだが、『驕り』は必ずや『弱点』となる。


そうしてじっくりと、この湯で清めてしまえばいい。

そのために村は少ない備蓄を使い、この祭事を作り上げたのだ。


『黙れということだが、鬼殿はいったいなにを仰っておるのだ?』

『つまり――射精に集中したいからってことだろう』


「な、なに、ぬふうぅぅ……ッッ!!?」


『ああ、あれほどの巨躯だ。まさか一度の射精で打ち止めなんてありえないだろう』

『ありえるわけないだろう、鬼様がそんな軟弱者だとおもうかあ?』

『娘を抱く前からとは、俺たちじゃあとても、もったいなく出てきねぇ』

『おお、なんと豪胆なことか……!』


人間達はずっと、鬼の肉体精神の強さを褒め続けている。

そんな声を聞きながら背くということは、つまり「できない」と語るようなものとなる。負け知らずの鬼にとって、そんな屈辱は死にも等しいことだ。


「おっお! だ、誰が一発っきりだとぉぉ、そんなわけ、ねええ♥♥」


鬼は叫ぶと、激しく腰を振り出した。

体の中をめぐる鬼の血が、筋肉や脳髄より鬼の体を突き動かしてしまう。


「お、オラ、こ、こうだぞ! お前らの娘も、コイツで儂の嫁にしてるぞォッ!!」

恐ろしく、おぞましい科白。だがそれは滑稽な光景であった。


バシャリ、バシャリと波が立ち。

ブルン、ブルンと魔羅が舞う。

ドクン、ドクンと精が漲る。

ただそれだけの一人踊りだ。


「うッ、うぅぅッ♥ ぬぅぅううぅぅう♥」

もっと褒めろ、もっと騒げ、もっと見ろ、と体は叫ぶ。

もうやめろ、もう叫ぶな、もう妙な事を口走るなと頭が唸る。


『さあどうかもう一発と言わず、何 発 で も!!』


「うほぉぉぉお――おっぉぉおおお二発ぅぅうめえええ♥♥♥」

まるで言葉で愛撫されたように、鬼の魔羅から飛沫が上がった。


その射精は豪快であり、そして無様でもあった。

ブルブルと震えながら、唸り、悶え、テカテカの亀頭から大量の種汁を噴く。

征服するような射精ではない。

己の意思ではない射精は、まるで小僧が小便を漏らすような情けなさだ。


「おぉぉお♥ おぉぉお♥ ふごぉぉふぐぉぉぉおぬふぅぅぉぉぉお♥♥」

頭からも精液が出た。射精した。

――そう錯覚するほど口からヨダレが飛び出した。


「おぅぅ、出るぅう♥ なんじゃあこ、これはあああ♥♥」

だがそれでも、止めるわけにはいかない。

この儂は一発や二発の射精で収まるような貧弱な人間とは違う、からだ。


おお見ろ見ろあのくっさい精液、鼻が曲がりそうだ

「な、な、な、なにをぉぉぉぉおおをおぉぉお!?」

こんなにも溜め込んで、人間であればとても我慢できんぞ

「おうぅう、おぅぅうぅ♥♥ そ、それはああ♥♥」

あんなに出し続けれるもんなのか、さすが鬼様の魔羅様だ

「ぐひぃぃいい♥ でる、でるでる、とまらぬぅぅう♥♥ 魔羅がぁあ♥」

なんて大きな声だ、山を轟かせておるぞ!

「ぐ、むぐっぅぅうぉぉおッッッ♥♥ 魔羅ぁ、デカイ魔羅がぁ♥」

あんな顔、人間であれば見られたら恥ずかしっくて死んじまうぞ!

「ふへッ♥ ふへッ♥ 魔羅、儂の魔羅が、儂の頭がぁぁ♥♥」

さあさあもっともっと、この湯の中で魔羅から精をお放ちください

どうぞ何度でも、我々人間にはとてもできませぬから

強靭な鬼の太い魔羅を、我らに誇示してくださいませ、鬼様

ああ、魔羅があんなに喜んでおる山鬼様――いや、魔羅の鬼様か

魔羅鬼様かあ、そりゃあぴったりだ

魔羅、魔羅鬼、ははは、見事な名ですなあ


「うがぁあああ♥♥ わ、儂は、儂は――そ、そのように呼ぶなぁぁああ♥♥♥」


「いぐぅうぅうう魔羅からいぐぅぅう♥♥ まだでるぅうぅぅううう♥♥♥」

『楽しんでいただけているようで、なによりです山鬼様』


自らの吐き出した精液を全身に浴び、緑の鬼はいつしか白い種汁色に変わっていた。

その姿を見上げながら、若者は恭しく語った。


『この酒風呂は山鬼さまのために用意致しましたもの。どうぞご堪能くださいませ、山鬼さまの強靭な胃袋には物足りないかと思いまするが』

「あ、ああがぁがぁぁああ出る出る、入る入る、あがぁぁああ♥♥♥」


――酒とは、魔除けの力を持つ。

だが、鬼ほどの妖怪に対しては本来無力なものだ。一杯、二杯程度ではまるで効き目はないだろう。せいぜい魔除け程度の代物だ。しかし、全身を漬け込み、長々と熱され、体液を交えたとなれば話は別である。


ずっしりと重い糠袋に穴を開けたかの如く、鬼の体からは精液が溢れ続けた。

男が口を滑らした『清める』という言葉の意味を、鬼はもっと訝しむべきであった。今となっては、もう手遅れであった。


『さあ山鬼様、その魔羅をたっぷり――たっぷりとお清めください。我らの酒を、どうぞお受け取りください、魔羅鬼様……』

「あああ、儂はぁぁぁぁ??? 儂はぁぁあ儂は、魔羅の、オニィィィイィッ♥♥♥」



調伏編へ続く


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Comments

khd1649

次の作が楽しみですが今月はこれで終わりですか?

dukekatu

来月の更新予定です もうしばらくお待ちくださいー