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今年最後の更新です。せっかく干支なので牛の初夢ネタ的――って思っていたのですが趣味が混入しまくったので牛ヒーローが息子にモミモミされてウホる小説になりました。2021年もどうぞよろしくおねがいします(開き直り)


冷たい布団に体を滑らせると、疲労が瞬く間に全身を支配した。


ほんの数秒前まで漲っていたものが消える。この重たい牛獣人の体を動かしていた意思の力が、もう限界だと言うようにプツリと途切れた。現場監督を務める牛久山則は、日中無視し続けてきた疲労の逆襲に打ちのめされるように呻いた。

「むぅぅ………」

声を出しながら息を吐くと、脳が眠気でパンパンに満たされる。鳶職のダボダボとした作業着を脱いで、タンクトップ姿のまま眠るのは息子にいい顔をされないのだが、もう着替えるのも困難だ。全身の筋肉が重い。もう起き上がれる気がしなかった。

一日中働き詰めだった手足から眠気がゆっくりと這い上がってくる。


今だけは何も考えない。明日の仕事の事や、気がかりな現場のことも、なにも考えずに明日に備えてまぶたを閉じる。それこそが、今の俺にとって必要なことだ。

現場の管理者として十全に働く。体格ばかりが立派で、不器用で臆病で力仕事しか脳がないこの俺を現場監督の立場にまで育て上げてくれた会社の恩義に報いるのだ。仕事ばかりの人生で、手料理も遊園地もまともにあげられない息子の大学受験費用のためにも働くのだ。


「ああ、明日は……怒鳴らんで……一日過ごしたいもんだ……な」

声を張り上げなくてはならないのは、管理者として二流の証だ。年齢差や種族の違いがある土方達をまとめあげるために、恐怖ではないものを使いたい。そういう監督でありたい。

山則は呟き、下半身をグッと縮めた。

ふいに、下半身がグツグツと燃え上がっている事に気がついた。


(ああ、今日はセンズリをコいてなかったな……)

自覚した途端、むくむくと褌の奥で肉棒が持ち上がり始めてしまった。固い芯が通る。六尺が途端に窮屈になる。

山則は股間に伸びかけた手を、ぐっと力んで抑えこんだ。

明日も早い。今は眠らなければいけないんだ。快感に耽り、体力を使ってしまってはしょうがない。

山則は強引に目を閉じ、欲望を追い払った。


「……………」

幸いにも睡魔は強力なもので、欲望も妄想も追い払ってくれた。意識が真っ黒潰れていく。

じきに、山則の部屋からは静かな寝息が立っていた。




不思議な夢を見た。


山則は見たこともないような崖の上に立ち、太陽を背にして似合いもしない仁王立ちをしていた。

声を張り上げ、肉を盛り上げ、普段しないような立ち振舞いをしていた。

ダボついた作業着ではなく、見慣れない水色の服を身につけていた。

体にピッチリと張り付くような不思議な素材だ。牛の体毛が顔にしか見えないほど全身を覆っている。

「―――」

なにか横文字の言葉を叫んでいる。俺は四角い体をぐっと縮め、遥か高い崖から足を揃えて飛び降りた。

とうっ。

そんな声を出しながら、太い両足でどすんと地面に舞い降りる。

ヤマノマン参上、これ以上貴様らの思い通りにはさせんぞ!

確かにそう叫んだのは、間違いなく山則の顔だった。




「――父さん、朝だよ。ほら、起きて」

………。

誰かに起こされたのは本当に久しぶりのことだった。

どうやら昨日は本当に疲れていたらしい。そういえば目覚ましをセットした記憶もない。

「む、ンン……」

山則は慌てて上体を起こすと、頭を振ってすぐに目を醒ました。

布団を退け、怠惰な気持ちを追い払う。使命感はすぐに足腰へと届き、重たい山則の筋肉を持ち上げた。

「朝ごはん用意しておいたよ、食べてから出られるかな」

「――ああ、おはよう。すまんな、どうやら疲れすぎたようだ」

「新しい現場、大変だって言ってたし……しょうが……な……、え?」

几帳面に布団をたたむ山則を見ながら、兵太は目を丸くしてた。


「なんだ、どうした」

「え、いや、だって父さん」

兵太が指さしたのは他でもない、今しがた布団をたたみ終えた山則だった。

こらこら、人を指差すんじゃない。

注意も言い終わらぬ前に、山則は兵太以上に目を丸くした。

「な、なんだこれは」

山則は小さく叫んだ。


現場仕込みの分厚いガチムチの体が、見事なまでに青く輝いていた。

真っ青な全身タイツだった。体毛をきれいに覆い尽くし、すぐ上に膜でも張るかのように、足の先から首の半ばまでぴっちりとタイトなスーツで覆われている。

逞しい胸板、突き出た腹筋、盛り上がった尻、分厚い太もも、ゴツゴツした足。そしてもっこりと主張する股間。

褌も何もない。すべてが一枚の布でコーティングされていた。


なんだこれは。


山則は唖然として、両手を広げて掌を見つめた。


「俺は、いったい、何をしているんだ」

山則の声は震えていた。そんな山則を息子の兵太は呆然と見ていた。父の着ているそれは、安物のジョークグッズではない。胸にはシンボルマークまでついている。幼い頃日曜日に見ていた番組によく似ている。

固太りの子持ち中年牛獣人が身に付けるようなものではない。断じて。

「父さん、もしかして昨日酔ってた……とか」

「いや、そんな筈はない。昨日の記憶はしっかりあるんだ……」

山則はブツブツと唸るように言った。

「そうか……」

そして思い当たったのか、顔をはっと上げた。


「俺は……溜まりすぎた疲労を癒すために、変身を解除せずに眠っていたんだったな!」


「…………。え、なに、と、父さん?」

力強く、逞しく、堂々たる声で語る父に、息子は仰天してどもった。

「ど、どうしたの、つ、疲れてるとか……」

「ああそうだ、昨日は悪の組織デスファクトリーの基地に潜入したんだがな、幹部が二人、いや三人はいたからな。無敵のパワーを持つヤマノマンも、さすがに必殺技の三連発は体に響いてしまってなあ」

兵太の困惑を無視し、父はさらなる迷走を続ける。

「ううむ、強敵だった。まさかこの俺、いや、私がヒーローヒーリングに頼らねばならいとは、な。しかしデスファクトリーは私以上に大打撃を受けたに違いない。また一歩、平和に近づいたというわけだな」

マズルを歪めて、白い歯を見せて笑う山則の顔は真剣そのものだ。爽やかさすらある。普段の穏やかな表情より幾分男を感じさせる。だが、紛れも無く牛久山則そのものの老け顔だ。

全身タイツ姿はお世辞にも似合ってはいない。


「え、父さん……ええっと……」

「なあに、もう心配いらないぞ、ヒーロースーツのまま眠ったことで、エナジーを利用し急速に体力を回復したんだ。ほれ、この通り、ヤマノマンは元気ビンビンだ」

そう言って、山則は逞しい二の腕をムキムキと強調させた。全身タイツに覆われた水色のボディがキラキラと朝日を反射する。

持ち上げた腕の下、腋がうっすらと湿っているのが見えた。目を凝らせば、一晩分の汗がぐっしょりと全身タイツの中に溜まっているのが分かった。

足の先から苦い臭いがむんむんと込み上げ、肌とスーツの唯一の境目である首元から込み上げている。


「現場監督とは仮の姿。本当の私は、正義のヒーローヤマノマンなのだ。いやしかし、こんな正体がバレるような場所でヒーロースリープを使わざるをえないとは、私もまだまだな、うむ、精進せねば」

ヒーロー。そう言いながら、山則は白いシーツをこれまた几帳面にたたんでいる。真面目なその振る舞いは、紛れもなく普段の牛久山則そのままだ。


「うむ、気持ちのいい朝だな」

折った布団を部屋の隅に持っていった山則は、何を思ってか窓辺に向かって仁王立ちをした。腰に手を当て胸を張り、日の出に自分を見せ付けるかのように腰まで反らす。

低い窓枠に片足を乗せて、まるでキザな船乗りのようなポーズだ。胸にあるカラータイマーのような部分に光が当たると、キラキラと特別強く光っていた。随分と誇らしげだ。


「あの、朝ごはん」

「まあ待たないか、兵太君」

「へ、へいたくん!?」

「いま私は、ソーラーパワーをチャージしているのだよ。ヒーローにはヒーローの食事が必要だからな、うーん、良い気持ちだあなあ、はあー」

山則はやけに形式張った口調で息子に語りかけると、今度は風呂に浸かる親父のように間延びした声を出した。

ソーラーパワーと設定は大仰だが、その姿はコスプレ姿を窓の外に晒して悦に浸っているようにしか見えない。


「おぉー、いいー、気持ちいいなぁーー」

背後で息子が動揺していることなど気にもとめず、山則はソーラーパワーをチャージする心地よさを全身で表していた。

体に力がみなぎってくる。昨日の夜の疲れが嘘のようだ。腰を回すととろけるような穏やかな快感が広がり、尻尾の芯にジィンと響く。


「父さん、どうしちゃったんだよ」

「……さっきから一体何を言っているんだ、兵太君」

山則は怪訝な顔で振り返った。現場で見せるような、監督としての厳しい表情だ。眉間にシワを寄せた真剣な顔で、作業着姿であれば渋い親父牛……といった顔。てかてかと胸板が光っていなければ、渋いお父さんらしい顔立ちだ。

「それに、父さんはやめなさい。ヤマノマンと呼ぶんだ。変身しているヒーローをそんな呼び方していたらいかんぞ。素性がバレたら、お前たちにも被害が及ぶかもしれないんだ。デスファクトリーの悪辣なる作戦は、いつ誰がその毒牙に掛かるか分からないのだからな」

肩に手を当てて滾々と語られるものの、存在しない悪の組織に何をどう警戒しろというのだろうか。

「お前のことは何よりも大事だ、だが、私は世界のヒーローヤマノマンだからな。使命の為に、時には父としての情を抑えなければならないのだよ、分かってくれるかな、兵太君」

歯を輝かせて笑う顔に、兵太は強引に頷かされた。


「それでこそ父さんの息子だ。うむ。さあて、朝飯にするか」

山則は満足気にそう言うと、ずんずんと大股で襖へと歩いて行った。

「ちょ、ちょちょ、ちょっとまって、と……ヤマノマン!」

兵太はいよいよ慌てて父親を呼び止めた。

「ん、どうした」

「いや、どうしたもこうしたも、その……」

まさかその格好で?

とはさすがに言えず、兵太は口ごもった。


「ン?……あ、あぁ、これは失態だ、いや、うっかり」

山則はぐるりと振り返り、恥ずかしげに後頭部を掻いた。

「いやあ、元気すぎるのも考えものだなあ、ハッハッハ!」

腰を突き出し豪快に笑った山則は、兵太が思うよりはるかに『恥ずかしい』姿に変わっていた。

ヤマノマンの重量感たっぷりの股間の膨らみが、いつのまにか固く半分ほど勃起した『肉棒』へと変わっていた。太く立派な牛の一物が、青くギラギラ輝いている。


「………」

「昨日抜かずに眠ってしまったからな、いやうっかり、これはさすがに、ちょっぴり恥ずかしいなあ」

スーツが完全に密着したチンポは、もはや公然わいせつそのものだ。皮がどの程度剥けているかまで分かる。立派な変質者だ。しかしヒーロー姿の中年親父牛久山則は、仕方がないことのように笑うばかりだ。ヒク、ヒクと、青色のチンポが上下している。

実の父のその迫力に、兵太は生唾を飲み込んだ。

「ヒーローというのは雄のエネルギーの塊だからな、恥ずかしながらこういうこともあるのだよ、兵太君。まあしばらく待っていれば収まるさ、正義感と使命感によって、ヒーローは性欲を完全にコントロールできるのだか、ら、んほ、むぉぉ……」

爽やかに笑っていた山則、ヤマノマンは、突如いやらしい声を上げた。


「こ、こら、いきなりなんてところを触るんだ!」

さっきまで見せびらかしていた姿から一転、山則は狼狽えて後ずさった。

「いくらヒーローのもっこりが、あ、あー……た、逞しくって、雄々しくて、おぉ、に、ニギニギッ、ニギニギッしやすい太さだからといって、そ、そんな、男のチンポを触るなんて、父さんはおまえをそんな風に育てた覚えはない! ないぞ、ぞお、おー……」


根本をぎゅっと握ると、山則の肉棒はあっというまにガチガチのフルボッキになった。ヒーローのタイツを突き破らんばかりの雄々しさだ。


「ど、どうしてしまったんだ、兵太っクンッ、父さんのチンポをそんな、ああー……ああー……」

ツルツルスベスベの摩擦熱と、ニギニギガチガチの握力に山則の欲求不満の下半身がグツグツに煮えたぎる。

「あ、こ、こら、もういい加減に、や、やめるんだ、兵太くん、やめたまえ! ああ、ヒーローのチンポを、そんな、おぉー! な、なぜこんな事をするんだ、ヒーローチンポをなぜ、ああ、どうしてだあ……!」

息子に勃起チンポを触られる全身タイツヒーロー牛獣人は、混濁した言葉遣いで腰を振った。

「ま、まさか」

山則は愕然として、目を見開いた。


「デスファクトリーの、し、しわざか」

そして大声で、山則が語る悪の組織の名を読んだ。


「こ、兵太くん、そうなんだな、キミは邪悪組織デスファクトリーに操られて、わ、私のエナジーを、奪おうとしているんだな!」

股間にエナジーがある、操られる。

突如として語られる新設定を肯定する間もなく、山則は両腕を高く万歳の高さに上げた。

「くっ、こ、これでは、手が出せないではないか!!」

そのまま、その腕を頭の後ろでがっしりと組んだ。逞しい筋肉を強調する格好を、無抵抗を主張するポーズへと変えた。


「ああー……、ど、どうりでえ、気持ちよすぎる、は、はずだあ、ああヒーローの無敵の防護壁を突破するなんてえ、ああ、おかしいと思ったんだあ、ああ……ああー……」

ヒーロースーツの山則はそう言うと、股を開いて下品なガニ股へと変わった。


「お、おのれえええデスファクトリーめええ、よ、よりにもよって、私の愛する息子を、その手に掛けるとはぁぁ……! ああ、はあ、はあ、気持ちよすぎる、ああ、もっと、もっと早くされたら、さしものヤマノマンも、ああノックアウトされてしまう、かも……しれない、はあー……」

山則は腰をガクガクと前後させながら、脂汗をだくだくに滲ませて太い眉を歪めた。

「ああ、こ、これでは、力が使えない、無敵のヒーローとして、ああ、無敵の、や、ヤマトパワーが使えない、はぁ、はぁ、本気さえだせばあ、あ、あ、本気にさえなれれば、あ、あ、あー」

そんな言い訳をしながら、山則はセックスのまね事のように腰を振るばかりだ。

腰はどんどん沈み、足の感覚は股を擦るごとに開いていく。


「父さん、ヤマノマン……ヒーローなのに、現場監督なのに、父さんなのに、そんなにチンポ気持ちいいんだ」

「あああ、あ、先っちょが特に……、ハっ、な、なんてことをきくんだ、おのれ、頼む、はやく正気に戻ってくれ! しっかりするんだ、兵太君! 悪に負けてはいけない! 根本をギュッギュしたりして気持よくさせてはいけない! ンホッ、ンホッ、そ、それそれェ……」

「ヤマノマンは何処が弱いの」

「お、おのれ、弱点を聞き出そうとは! しかし! ここで黙っていては愛する息子の命が危うい! ヤマノマンは無敵だが、唯一タマを揉まれながら先っちょを摩擦でグリグリされると弱いんだ! クッ、隠し通してきた秘密がッ! はあ、はあ……はあああん!!」

言われた通りに掌を高速で回転させると、山則は限界まで腰を落として仰け反った。まさに弱点。効果てきめん。ヒーロースーツのガチムチ中年牛は、息子の愛撫で丸出しの顔をどろどろのアホ顔に変えて喘いだ。

「はあー! はあー! こ、これはあ、ヤマノマンの正義のパワーが、正義のパワーがああ! おぉお、おのれ、おのれ、デスファクトリーめえ、卑怯な、ああ、正々堂々と、ああ、も、もうこれ、これ気持ちよすぎて、ああ、ず、ずるすぎるぅぅうチンポが気持ちよすぎるうー!」

山則は臭い立つ足でつま先立ちになると、ピクピクと射精寸前の痙攣をしていた。カタカタと家族の写真が倒れ、真面目一筋の男の部屋が崩れていく。

山則は痙攣したまま、自分から姿見の前に移動した。


「はああああ、こんなに格好いい正義の味方が、あ、あ、愛する息子の手で射精してしまううう、く、そ、そうだ、マッスルポージングヒーリングで、キミの洗脳を解いてあげるぞ! 兵太君! ほぉお、ぬほっ!」

唐突な新技を解説すると、山則は腕を組んだり、胸を強調したりと、雄々しいポージングを次々と鏡に写した。ヒーロースーツを着込んだ髭面牛親父のポージングショーが、畳張りの部屋の中で繰り広げられる。観客は息子と、当のヒーロー本人だけだ。


「はっ、はっ、はあん、あ、本当にまずい、あ、もうでる、出そうだ、カッチョイイヒーローのチンポの先からッ! も、もう我慢もできん、あ、あ、金玉ぐんぐん上がってきたッ! 精子が、私のヒーローエナジーが出そうだ、ん、ん、は、は……あ、そうだッ、ヒーロースーツのまま射精したら、ああッ、変態に、変態になってしまうんだ、いけない、これはいけない!」

「え、そうなの?」

「そ,そうだ、正義の味方は機密保持のため、敗北したら、頭が馬鹿になるんだッ! 一発射精したら、も、もう何発も何発もイきまくってもイィ……じゃなくって、ああ、と、とにかく、もう、父さん、チンポでイきまくりになってしまうんだ……ああ、まずい、これはまずいぞお」

焦るような口調だが、山則の顔は見るからにスケベ丸出しだ。ヒクヒクと鼻の穴をふくらませ、目尻はいまにも蕩けそうだった。

「……へえー」

今更新しくコメントする気にも慣れず、兵太は無言で掌を動かした。ぐりぐりと。

「あーッ! あーッ! もう、もうあああああ! お、おのれえデスファクトリーめえ、ああ、ああ、おのれえ、正義の! 無敵の! 最強の! ヤマノマンが、ヤマノマンが! ヤマノマンが! イッてしまう! イッてしまうー!」

山則は思いきりポージングを決め、四股を踏むようにがっぷりと腰を開き、ガチンガチンの勃起チンポを何度も何度もスーツの中で上下させ、ついにヒーロースーツの中に精子をぶちまけた。


「おー! おー! おぉぉっ、おっ、おっ、オッー!!」

『オ』を発音する度に腰を突き出し、山則はコスプレ姿で何発も何発も精子を吹き上げた。息子の掌の中で、太い山則のチンポがドクンドクンと脈打つのが分かる。先端が滲み、イカ臭さがこみ上げる。

その顔に普段の堅物親父の面影はなく、山則自身がいうように「馬鹿になって」いくそのものだった。


「えへ? えへへ……」

山則は肩を震わせるように笑い出した。腹の中から出すような、低い男の声で、子供のように笑い出した。

「でへへへ~❤ きもちいいぞおもっとやってくれえ❤ へへ、スーパーおバカヒーローヤマノマン、チンポが大好きでぇーーーありますッ❤」

山則はニヤニヤとアホ面で笑うと、ビシリと敬礼を決めてポージングをした。

馬鹿になった。という設定の通り、もう縛るものなにもなし。チンポが欲しがるように豪快に腰を振った。


「チンポ最高❤ 射精最強❤ 今日から私はチンポコォ~ヤマトマァン❤」

腰に手を当てながら前後、前後と腰を振り、ヤマノマンはテカテカの胸板と腹筋を撫で回した。

「デスファクトリー様の策略にまんまと負けてぇ、あほあほ射精してしまいましたあん❤」

山則は息子の手を振りほどくと、勃起チンポを自らの掌でコスコスとさすり始めた。

「そーれどっこいしょぉよっこらせえ❤ヒーローチンポコさーすさすー❤はあええ気持ちぃのチンポコポー❤」

訳の分からない歌を歌いながら、山則は足を上げ下げしたり、コマネチをしたり、ポージングをしたり、全身タイツのアホ男になりきって笑った。

「それでヤマノマン、この後はどうなるの?」

「ん? ンー、どうだったかなあ❤」

射精してすっかり満足してしまったからか、ヤマノマンの設定はここらへんで打ち止めらしい。


山則は気持ちよさそうにチンポとケツをコスりながら、ああだこうだとヒーローであるヤマノマンの無敵っぷりを語り続けるばかりだ。

そのうち二度、三度と射精の痙攣を繰り返すと、ぷつんと糸が切れたように倒れこんだ。


「と、父さん……?」


最後にそう呼ばれるのを聞いて、山則は真っ黒な眠りについた。




「ま、まったく、なんだったんだ」


目を覚ました山則は、なんとも奇妙で、恥ずかしい、複雑な気持ちで呟いた。

ぼんやりとしか思い出せないが、随分幸せなような、馬鹿げたような、妙ちくりんなような、屈辱的な夢を見た。そんな気がしていた。

「ふう……いかんな、まったく、欲求不満なのか俺は」

山則は掛け布団を押し上げて、重たい体を持ち上げた。タンクトップが汗でぐっしょり濡れている。布団にも随分汗を書いてしまったに違いない。こんなとき、ヒーロースーツだったらば……。


ヒーロースーツ? いったいなんだ、何を考えている。スーツとはなんだ。

「ううむ、妙……だな。妙だ。………待て時間は!」

長々と夢を見た日というのは大抵時間を掛けてしまっている。山則は大慌てで時計と持ち上げた。


「な、なんだ――」

時刻は息子に朝食を用意できるくらいには余裕があった。

山則は安堵し、のっそりと立ち上がった。現場の管理のために十全に働く。そのためにたっぷりと睡眠はとれた。次は栄養だ。息子にも自分にも、たっぷりしっかり朝食を用意しよう。コツコツとやること、それがヒーローでもない俺にとっては大切なのだ。


「………? うん、なんだ、まあいいか」

頭の奥に何かがあるような、そんな奇妙なシコリを感じながら山則は無視して部屋を出た。

今日も朝から現場で仕事だ。

だが私は頑張れる。会社のため。家族のため。息子のため。平和のため。そして時折見る気持ちのいい夢のため。


「ム――むぅ、その前に、洗濯が必要だったな」

汗だく、そして汁だくの体を自覚し山則は頭を掻いた。


夢を見る頻度が高まっている。

自分の中に植え付けられた欲望がニョキニョキと育っていることなど、まだヒーローではない山則には気がつけるはずもなかった。


「しかし、ヤマノマンが負けることなど、夢だとしても縁起でもないな」

目覚めるたび、徐々に夢の自分が残り続けていることにも、山則は気がついていなかった。




終わり…?

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