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ノンケ親父が男色の味と羞恥の味と露出の味をたっぷり含味してしまう小説です。Fanboxの投稿数も増えてきたので、短くサクッと読めて使える小説というのもあったほうがいいかなと考えて書きました。

どこだ、一体どこにあるんだ。俺の車は。

見つからない。早く探し出さねば。

身を隠す場所が他のどこにもない。

――このままでは誰かに見られてしまう。こんな男臭い姿をしている俺を見られてしまう。違うんだ、俺には大事な妻も子もいるんだ。はやく。はやく。どこなんだ。

ああ、肉棒が隠れない。収まらない。酷い臭いだ。止まらない。

どこだ、どこにいってしまったんだ。俺の車は。

壁のない迷宮

ようやくたどり着いた駐車場に車を止め、俺は運転席の中で精一杯体を伸ばした。

妻も息子もいない車内は空席だらけだが、だからといって座席が広くなるわけでもない。人一倍大きな肉体を持つ俺の体は、長時間の運転ですっかりガチガチに凝り固まっていた。威厳のために揃えた黒々とした口ひげもしっとり湿ってしまっている。

巷で評判の道の駅とやらに来たが、残念ながらとうに閉店してしまっていた。

名物のクルミの菓子などを会社の部下たちに買っていってやろうと思ったのだが、想定以上に道が混んでいた。

しかし店の明かりは消えているが、駐車場にまばらに光があった。止まったトラックと、タバコをつける運転手の火、ずらりと並んだ自販機の照明、それらがポツポツと闇に浮かんでいる。

今頃子どもたちは寝た頃だろうか。妻の実家から一人、仕事のために急ぎ帰ることにしたのはいいが、ほとほと疲れ果ててしまった。

店は開いていないがしょうがない。俺はここで暫く休憩を取ることにした。車内の冷房が少し弱める。それだけで、むっと夜の空気が肌にまとわりついた。汗が浮かび上がってくる。しかしこれは地球環境のためだ、しょうがない。

外を見ると幾人かのトラック運転手達が談笑していた。随分と薄着だ。

俺のようにシャツを着て、くるぶしまで隠れるズボンを着ている方が非常識に思えた。俺はボタンを上から順に外して服を脱いだ。内側に着ていたタンクトップ姿になると、一気に風通しがよくなった。

こうなると下半身が窮屈だ。

俺はベルトを外してズボンを脱ぎ捨て、代わりに車の収納に押し込めておいた服を取り出した。

………。

ああ、涼しくなった。

タンクトップは胸板にびっちりと張り付いているうえ、広背筋を開放するために背中が殆ど見えている。下半身の短パンは太ももがほとんど露出するほど短いうえ、大腿筋でパンパンだ。

こんなにも小さいものを買うつもりは本当はなかったのだが、ネットでの通販に不慣れなためにこんなものになってしまった。アメフトをやっていたのはもう何年も昔だから、筋肉も多少しぼんでいるものとばかり思っていたが、どうやら俺の体はまだまだ規格外の大きさらしい。

それにしても暑い。気分が悪い。

ああ、そうだ、汗を搔いて気分転換といこう。俺は扉に手を掛けた。

………少しだけ、少し散歩して戻ってこよう。

汗で滑る手を必死に制御し、俺は車の外に出た。

一歩。一歩。

トラックとバンが数台、俺のような自家用車が数台。それ以外はほとんど遮るもののない空間で、俺の分厚い体が歩く。

擦れる。窮屈すぎて、服で体が擦れてしまう。

胸板はほとんど見えているし、背筋など紐のようにしか覆われていない。ろくにムダ毛の処理もしていない男臭い下半身がほぼ丸出しだ。

――目があった。

一人が俺の存在に気が付いている。

短い髪を脱色した荒っぽそうな男だ。俺の体を上から下までジロジロと見つめている。

こちらに向かって歩いてくるのが見える。

彼もこの暑い中散歩だろうか。お互い長距離の運転ご苦労さま、とでも声をかけるべきだろうか。会社で部下を労うように。迷っている間に男は俺の寸前にまで近づいていた。

そしてすれ違いざま、手の甲が俺の股間の膨らみを撫でていった。

あぁ……。ザラザラの男の手の感覚がする。

甘い刺激に腰が揺れた。汗ばんだ体にいっそう大量の汗が噴き上がる。つばが口内でたっぷり溜まった。

俺は足を止めてしまった。それがいけなかった。

通り過ぎたかに思えた男が、背後から俺に声をかけてきた。

「すげえ筋肉っすね」

囁かれた言葉は、純粋な褒め言葉だった。

そうかい。いや、ありがとう。

そんなふうに気さくに返せばよかったものの、俺といったら普段の調子がまるで出ずに、口ごもるばかりだった。

「ここもすげえ、ゴツい胸板っすね」

男がタンクトップの上から俺の胸板を撫でる。いや、揉んでいる。

褒められるのはいい気分だが、それにしても距離が近い。吐息が俺の首筋に、鍛え上げた僧帽筋に掛かっている。

「そんでもって、ハハ、ここもすげっ、こんなの売ってるんだ」

笑うように彼は俺の短パンに手を掛けた。

再びあの刺激が股間に広がっていく。ゴワゴワとしたデニム生地の上から、汗で湿った男の手。男の指。いやらしく蠢く5本の指。

「ハァ……スゲェ、ほら固くなってきた」

それは生理現象だ。まだまだ男盛りを自称している身としては、卑猥に撫でられてしまえば相手が男だったとしても勃起くらいする。しょうがないことだ。それにしても、筋肉を褒めるだけならまだしも、こんなにも触ってくるのは失礼ではないか。

俺は抗議と威嚇の意味を込めて、自分の筋肉をグッと盛り上がらせた。

口ひげをはやした無骨な大男が筋肉を怒らせているのだ、きっと大層迫力のあるものだろう。だが、相手は怯むことなく……それどころかむしろ興奮した面持ちで俺の全身に両腕を絡めてきた。

なんてことだ。つまり彼は……男相手に興奮するタイプの方だったということだ。

それはいけない。これ以上を求めているということだ。

だが責任の一端は俺にもある。生粋のストレートのくせに、こんな男臭い格好をしているから、彼に勘違いをさせてしまった。俺は家庭のある身なんだ。男同士の行為に……別に差別意識はないが、そうではないんだ。

しかし、すぐに伝えるべきかどうかは迷いどころだと思った。

年下のこの男に対して、切り捨てるような強い言葉で拒否してしまったら、彼は自信を喪失し深く傷ついてしまうかもしれない。もう少し、もう少しだけ言葉を考えよう。

「なんだなんだ、おっさんいい格好じゃねえか」

そうこうしているうちに、別のトラック運転手が俺の側に寄ってきた。

合計四本。男達の無骨な手が俺の体を這い始めた。

排気ガスのいやな臭気に混じって、男たちの汗の臭いがきつく鼻の奥に潜り込んでくる。ああ、強い。なんて強いんだ。

薄い生地のタンクトップの上から俺の乳首をまさぐっている。露出した太ももを撫でてくる。デニム生地越しに男の肉棒がぴったりと俺のイチモツにくっついてきた。熱い。なんて熱いんだ。これが男の熱源なのか。

「――窮屈そうだな」

後から入ってきた男が、無礼な言い方で俺の短パンのボタンに手を伸ばした。

一つ、たった一つボタンを外すと、弾けるように俺の肉棒が外に飛び出た。

おぉ……っと、二人の声が重なる。

それに合わせて、俺の肉棒がさらに硬度を増してしまった。

何故だ。おまえたちはなぜ、初対面の人間にこんなことができるんだ。こんな屋外で。いつ誰が来るかもわからない駐車場で。

俺は抗議の声を上げようとした。だがズキズキと痛いほど勃起した肉棒を掴まれている。下手に刺激して、この急所を強く握られでもしたら大変だ。

耐えるしか無い。

ここはどんなに屈辱的でも、耐えて待つしか無いのだ。俺は自分を諌めて、静かに口を紡いだ。口髭がブルブルと震えていた。

引き結んだ俺の口と正反対に、最初の男が口を大きく開いていた。

身をかがめ、短パンからこぼれた俺のイチモツに唇を向ける。

男の生暖かい息が肉棒に掛かった。汁を垂らす俺のデカマラを興奮した男の吐息が包み込む。

音もなく、その瞬間は訪れた。

男の生暖かい口に、俺のガチガチの竿は根本まで飲み込まれていた。

屋外の空気ごと先走りを吸い上げるように、男が舌を使って俺を飲む。

「おお、いい顔になったな」

後ろから俺をまさぐっていた二人めの男が俺の表情を笑う。

この暗闇だ、きっと適当にでまかせを言っているのだ。男に刺激され、男に挟まれ、男に責められ、俺が表情を変えるわけがない。だからきっと、適当を言っているのだ。

暗闇。

その中で光る男たちの肌。

気がつけば、俺達は三人だけではなくなっていた。二人、いや四人ほど、他の男達が俺を見ていた。

タクシーの運転手、トラック乗り、俺のような父親。

みんなが俺を見ている。タンクトップと短パン姿で、男にしゃぶられる俺を見ている。

ああ、暑い。凄まじい熱帯夜だ。汗が止まらないほど暑いのだ。通気性の良い服に絶え間なく湧き上がる汗がじっとりと染み込んでいる。

――それに、硬いものがケツに当たっている。肉棒だ。これは、男のガチガチのチンポだ。尻に擦り付けられている。素股の要領でこすりつけてきている。

入るわけもないのに、俺のケツに入ろうとしてくる男の竿。腰が打ち付けられている。猛々しい雄を、俺は今ケツから感じている。

「たまんねえな、すげえいいぞあんたのケツ」

「うめぇ……デカチンポくっせえっすね」

二人の男が俺を責める。仕方がないことだろう。下半身は学生時代からしっかり鍛え上げているのだ。肉棒は妻の実家にいた2日分溜め込んでいるのだ。

そんな、男の性分を責めてくるなんて。男色家というのは、男の弱点をそれだけ知り尽くしているということだろうか。この世界のことなどまったく門外漢な俺が翻弄されるのは仕方がないことだ。

ああ、それにしてもなんて技術だ。舌の上で肉棒がとろけていく。

おお、とんでもない腰使いだ……現役の男の力強さが体に響いていく。

「あぁぁイク……イッ――ってしまうッ………!!」

俺は声を上げた。

待ってくれ、本当にでてしまう。こんな屋外で。男と男に挟まれて、ホモに誤解されたまま射精してしまう。いや、このまま射精したら、本当にホモそのものだ。 ……俺が? そんな馬鹿なことが有るはずがない。だ、だから止めてくれ、寸止めで勘弁してくれ。ああ、イク、イクイク男の口の中に出す、種付けする、終わる、射精する。この瞬間が終わってしまう。

「うぉ……先に出すぜ」

俺が迷っていると、すぐ後ろの男が俺の腿にグイと肉棒を押し付けるのがわかった。

出す? 出すと言ったのか? この俺の体に、その凶暴なもんを擦り付けて……。

あ、ああ、本当だ。熱い。熱いのが俺のケツの周りに、脚に、玉の裏に飛び散ってきた。臭い。イカ臭い。男の臭いだ。凄まじい。汗と精液と排気ガスの臭いが立ち昇ってくる。酷い、すごい臭いだ。

「あんたもだせよ」

「いっすよ、口ン中で」

「ッ!! ……あっぁ、イク、イクぞォォォ受け止めてくれェ……!!」

我慢などできようがなかった。

生物として、本能を止めることなどできないのだ。俺は目の前の名も知らぬ男の頭を両手でつかみ、腰を落してブルブルと震えた。

ああ、イクぞ、イク……。

それは、過去味わったことのない快感だった。

この俺が、乱暴に腰を振って男の口に雄汁を吐き出している。この俺が。ああ、ついにやってしまった。これが、これが男との―――。

「あぁぁ……ハァァァ………出る、あぁぁあ……あ、あ、ああッ」

口出された男は嫌がるどころか、まるでご馳走のように俺の雄汁を舐め取ってくれた。敏感な肉棒をテロテロと舌先で刺激され、俺は仰け反って唸った。

二人の男は楽しそうに、そんな俺を眺めていた。

「楽しかったぜ」

「またきなよ、おっさん」

二人はスッキリとした顔で、俺を置いて去っていった。ギャラリーも満足したのか三々五々散っていった。

嵐のような時間だった。酷い誤解で、俺はこんなメにあってしまった。射精の余韻が収まらない。肉棒がうまく短パンに収められない。長時間踏ん張っていたせいで、筋肉がパンプアップしているのかもしれない。短パンのボタンが締められず、開いた前から肉棒が飛び出している。竿の奥に詰まっていた種汁が、どくん、どくんと脈打つ度にアスファルトに垂れていた。

ああ、帰らなければ。はやく、帰らなければ。

俺はもと来た道と、自分の車を探した。

――暗い。なんて暗さだ。こんなに暗くては、すぐには見つからないかもしれない。

――俺の車はどこだ

どこだ、一体どこにあるんだ。俺の車は。

見つからない。早く探し出さねば。

身を隠す場所が他のどこにもない。

――このままでは誰かに見られてしまう。こんな男臭い姿をしている俺を見られてしまう。違うんだ、俺には大事な妻も子もいるんだ。はやく。はやく。どこなんだ。

ああ、肉棒が隠れない。収まらない。酷い臭いだ。止まらない。

どこだ、どこにいってしまったんだ。俺の車は。

俺は必死に探した。肉棒を左右にブラブラと揺らしながら、肩で息をして懸命に探した。だが見つからなかった。目に入らなかった。

そうこうしているうちに、肉棒が再び力を取り戻し始めた。

突然、目のくらむような光が俺を差した。

新しいトラックがやってきたのだ。ギラギラと光る二つの眼が俺を中心に捕らえている。

ああ、仕方がないんだ。車が見つからないんだ。そうだ、一緒に探してくれないか。

そんな弁明を口の中でしながら、俺はスポットライトを全身に浴びた。

トラックが止まり、中から男が降りてくるのが見えた。

終わり

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