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「…おいミヤコ、いやRABBIT1、あれはいい加減無視できる問題じゃなくなってきてるぞ。早く手を討つべきじゃないか…?」

「このままだと、せっかく集めた食糧がすぐになくなっちゃいそう……。うぅ…そのうち何も食べられなくなったらどうしよう…」

「…そう、ですね…。各自の個人的事情に口を出すのは良くないと思い、今まで全く干渉することはありませんでしたが…。二人の言うとおり、流石に私たちでなんとかしなければいけないでしょう。…昨日も、訓練を中断するきっかけになっていましたし」

キヴォトス内のD.U.地域に広がる穏やかな緑。比較的治安のいい分類に入るそこら一帯は駅や商業施設、シャーレのオフィスも点在しており、休日ともなればどこからともなく子供たちの声が聞こえてくる。

特に、SRT特殊学園のRABBIT小隊員たちが生活の基盤としている子ウサギ公園周辺はのどかな空気が漂っていた。

だが反面、小隊4人のうちミヤコ・サキ・ミユの3人が集まり小声で話し合っているその表情は曇り模様といって差し支えない。

理由は明白だ。もう一人の小隊員、風倉モエの佇まいを見れば誰もが予想がつくものだった…。


「んっ…ぷふぅ…あれ、三人で何の話?お昼なら残った弁当、全部食べといたから安心して~、っげぶ」

子ウサギ公園での野宿生活が板につき、日中は決まってSRT仕込みのハードな訓練をこなす彼女たちだが、何も朝から晩まで連続で動き続けているわけではない。そこらのキヴォトス人同様、決まって昼には休息は取る。ただその順番や人数は交代制。一人が食事をしている間には、他のメンバーは外で見回りをしたり、訓練を続けて行ったりすることが多くなっていた。

そしてこの日、最初に共有テントへ戻り20分ほどかけて昼食を食べたのは他の誰でもない、モエその人であった。

「…その様子、残ったお弁当……。まさかRABBIT3…廃棄予定のものを引き取って保存していたお惣菜を…全部…?」

共有テントから姿を現し、秋の日光に照らされている3人のもとへ戻ってきたモエの様子は満腹そのもの。言動からもわかるように、明らかに胃袋が膨らんだポッコリお腹に、不意にこぼれるげっぷ。小隊員のなかでは先生に対してもフランクさが目立つモエだが、ここまでくるともはや「だらしのない」の一言に尽きる。

たわわに実った両胸が衣服を押し上げ、カーテンのようになりひらひらと風に靡く布の隙間から見えたそのお腹は、サキの目にはぽっちゃりの域に達したと捉えて間違いないほどの肉が備わっていた。

即ち、スカートには脇腹の贅肉が乗っかっているわ、前方には膨らんだお腹が突き出し、妊婦さながらに腹部がこんもりと膨らんでいたのである。


「あ、うぅ…私、まだ食べてなくて、どんな味か楽しみにしてたのに…うぅ…」

子ウサギ公園周辺は治安がいいといった通り、近くにはコンビニなどの食品を扱う店が多い。となるとついて回るのが食品の賞味期限の問題だ。フードロスを避けたい店側、食料不足が深刻な野宿生活を送るRABBIT小隊。両者の需要と供給が一致した結果、小隊員の彼女たちはときどきコンビニなどから廃棄予定の弁当や総菜を引き取って食事の足しにしていた。

だが、この日はどうだろうか。モエの様子に唖然とした表情を浮かべるも次第に眉間にシワが寄っていくサキ。初めて食べる総菜の味を楽しみに、午前の訓練を乗り越えたはいいが、肝心の総菜はすでにモエの腹の中へ落とされたことに嘆くミユ。そして3人の様子を傍から見てどうしたものかと考えるミヤコ。

前々からモエがぽっちゃりしてきたことは、共に風呂に浸かったり顔を見たりしていればメンバー間で分かっていたことだが、遂に問題が顕在化してきたと見ていいだろう。

「モエ!い、今まで指摘するのもなんだと思って見て見ぬふりをしてきたが……。なんだその腹は!?」

「え…なに、サキ、別に普通でしょ?」

こういう時のRABBIT小隊でまず先陣を切るのはだいたいサキである。しかも今回は半ば食べ物の恨みが含まれるから恐ろしい。ムッとした表情でモエに詰め寄る彼女は、ぽっちゃりの域に両足を突っ込んだと見て間違いないRABBIT3の腹に目を下ろしながら、そこめがけて手を伸ばす。

だが肝心のモエが自身の身に起きている変化を大して意識していないのは一目瞭然。くびれの消えた体重80kgと目算できる図体をしてもなお、それが日々の変化の中で徐々に形成されてきたボディならば当人は気にならないのかもしれない。


「普通なはずあるか!スカートはパツパツではち切れそうだし縁に乗ってるこれはなんだ!贅肉じゃないか!」

RABBIT3のスカートの縁からもっこりと溢れ出した脇腹の駄肉をサキががっしりと両手で両脇から掴む。今にもブニュっという効果音が鳴ってもおかしくないそれは少女の手一杯に掴まれた。

「ちょっ…!ちょっとサキ、何するの!やめっ、んっ...///」

「へ、変な声を出すな!?こんな肉を付けて太ったお前が悪いんじゃないか…!私だってたまにしか手に入らないお惣菜を楽しみに午前の訓練を耐え抜いたのに…!」

一揉み、二揉み、そして三揉み。上下左右にたっぷりと掴んだ駄肉を揺らし、モエの身体を刺激する。細身の身体では絶対に得られない不思議な感覚。他人の手で自分の身体がめちゃくちゃにされる感触は一歩間違えば新たな趣味の扉を開けかねない。

一方、サキもまた、これまで周囲に太った人がいなかったこともあり、初めて触れる贅肉の弾力にいつしか半分夢中になりながらモエの腹肉を揉みしだいていた。


「も、揉まないで…!はぁ、はぁ…げぷっ!せっかく食べた唐揚げとメンチカツが出てきちゃうでしょ…!…ちょっと太っただけで大袈裟…ふぅ…」

「なっ!?唐揚げだけならまだしも、メンチカツまで…!?モエ、お前ってやつは…!もっと揉んでやる!」

次第に苛烈さを増していくサキ&モエのやり取り。他方、2人から少しばかり距離を置いて、普段の言葉でのじゃれ合いとは違った肉体同士のサキモエの交流に目新しさを感じるミユとミヤコがそこにはいた。

「サキちゃん、最初は本気で怒ってたのに、今はなんだか…」

「はい、どこかモエのお腹の弾力に吸い寄せられているような…」

「私も、ちょっとだけモエちゃんのお腹、触りたい、かも…」

「柔らかそうですからね。ですが…それはそれとして、一人で食糧の大半を食べたり、息切れで訓練に着いていけなかったりする身体になってしまったのは深刻な問題です。何か良い方法は……」

RABBIT2の手から逃げるように小走りするRABBIT3の様子を傍から見て、より一層揺れるそのムチムチボディを視界に捉えたことで肉への関心を強めるミユとミヤコだったが、事態はそう甘くはない。

SRTの生徒ということはシャーレの先生との関係上、なにかあれば先生の依頼を聞くこともあるわけで。となると時には悪徳企業への潜入作戦や、銃撃戦に巻き込まれることも十分考えられる。

その為の訓練を彼女たちは日夜行っているのだが、深刻なことに、贅肉をブヨブヨと身体に蓄えたモエはここ数日の訓練を途中で休憩を挟まねばならぬほど体力が落ちていた。

以前できていた動きができなくなったのである。

それもそのはず、今のRABBIT3の姿はむちむちの権化といってもおかしくない。脚はまっすぐ立っても両脚の間に隙間ができないほど太くなり、タイツは伝線寸前。スカートは誰が見ても分かるほど腹部のシルエットをくっきり見せるほど小さくなっており、一方で胸や腹が盛大に膨らんだことで走ればバルンバルンと肉が揺れる。そして80㎏近いモエの体力を奪い、すぐに息切れを引き起こすのだ。当然他の部位、顔や二の腕なども肉がついて柔らかくなった印象は強い。


「やあ、ミヤコ、ミユ。暫く来れてなかったけど、二人とも元気にしてた?」

そんなところへ、RABBIT小隊にとっては久々の邂逅となる”彼”が訪れた。なんとタイミングがいいのだろう。

「ひっ…あ、せ、先生…!すみません、私は元気、です」

「ご無沙汰しております先生。先生の下さる補給品もあって、私たちは元気です。今日はどんな用件で…?」

聞き馴染みのある声だが一瞬驚き仰け反るミユと、第一声ですぐさま誰か気づき、笑顔で歩み寄るミヤコ。そう彼女たちの前に現れたのは、これまでRABBIT小隊と様々な思い出を築き上げてきたシャーレの先生であった。


「良かった!あぁ、用件ってほどの用件じゃないんだけど…この前頂きものでもらったお菓子がたくさん余ってて、良かったら皆にも食べて欲しいな、って」

そういう彼の手元には大きな紙袋が二つぶら下がっており、背後には何やら段ボールが積み重なっている。

「ありがとうございます!チョコ菓子に果物に、アイスクリームまで…!」

「あぁ、アイスは夏が過ぎて売れ行きが落ちたからって、シャーレに出張販売が来てたから全部買い取ったんだよ。確かに夏は終わったけど、訓練してる4人ならまだアイスの需要もあるかなってね」

「…ひんやり冷たい…!先生、ありがとうございます」

良ければ…といって彼が紙袋の口を開いてみせれば、その中にはいかにも年頃の少女たちが食べそうなお菓子がたくさん。ものによっては有名店のマカロンなども入っている。また紙袋の一角には買ってすぐなのだろうか、束になった棒状のアイスもいくつか備わっており、夏は過ぎたとはいえ秋のまだ温かい気候の中でハードな訓練を積んでいるRABBIT小隊の面々にはオアシスさながらにそれらが映っていた。


「ミユにも喜んでもらえて嬉しいよ。あっ、そうだ、この前頼まれていた目薬、手に入ったからね。あとモエにも頼まれてたものがあったんだけど……」

「…あっ、モエちゃんは…あそこに…」

狙撃手としての腕は各校の腕利きを集めても群を抜いているミユに先生は以前頼まれていた目薬を手渡す。予備も含めて二個。視力や集中力をかなり用いたミユの戦闘スタイルでは疲れも溜まりやすい。それもあって日ごろからの気遣いや手入れとして彼女は目薬を使用する事もあったのだが、野宿生活を続けるうちにそれも手に入りづらくなったのだろう。そこでシャーレの先生に頼ったというわけだ。

と、そんな任務やSRTの生徒として必要なものを揃えようと試みていたミユとは反して、次に先生の口から上がった名前の少女は何やらよからぬものを頼んでいたようで…。


「おーい、モエー!」

「ひぃ…ひぃ…!もう勘弁してよサキ!あんた足速すぎ……って今の声、先生…?」

大声でミユに指示された方向にいるモエに呼びかけると、サキと追いかけっこをしていた彼女は気づいた様子で周囲を見渡す。

「こっちこっち!」

「ふぅ…!ぜぇ…!せ、先生じゃん!もしかして例のアレ、手に入った?」

「待てモエ!まだ揉み教育が足りていないぞ…!」

手招きする先生に駆け寄るモエと、その後ろから追いかけてきたサキ。1人の先生のもとに兎たち4人が揃った。

「そうそう、それをモエに渡すのもあって今日は来たんだよ。はい、これ」

例のアレと言いながら次第ににやついていくモエの表情から察せられる通り、彼女が先生に頼んだものにはかなりの期待が込められているようで、その大きさは先生の背後で段ボールを何段も乗せたミレニアム製の追尾型配送ロボットを見れば分かる。

「1,2,3...10箱も…!くひひ…♥️これだけあれば…♥️」

平べったい箱が10段重なりながら、その箱の側面に書かれた文字はどれも同じ。しかもそれはモエがしょっちゅう携帯しているものだとミヤコ・サキ・ミユの三人は理解した。

「これはもしかして…?」

「んっ、これ?モエがどうしてもって言うから工場に問い合わせて箱で仕入れることができた”飴”だよ」

「あ、飴!?これ全部が…!?」

「見たところによると段ボール1箱でも100本以上の飴菓子が入っていそうですが…」

並のスーパーでもここまでの発注はしないであろう大量の飴菓子が終結し、モエの手中へ収められていく。これだけの量を一気に買い揃えられたのもある意味ではシャーレの特権なのかもしれない。


「くひひ…♥️こんだけの山の飴…1日10本、いや20本食べても無くならない…♥️早速一本食べよっと…♥️」

そう言って少女は早速一番上の段ボールを開くと、中から一箱新品のパッケージを取り出し、包装を解いて糖質の塊を口に運ぶ。

「あむっ…♥️」

食後だというのに、まるで空腹状態かのような勢いでしゃぶりつくが如く飴を頬張るモエ。その表情はまさにとろけきっていた。

「お、おい…!全く…!どうするんだ先生!モエがこれ以上太ったら!」

「太ったら…って、モエってそんなにぽっちゃりしてた?」

一瞬の出来事に止める隙もなくまたカロリーを摂取したRABBIT3を横目に、サキは先生にも注意する。当然だ。先生のやった行為はサキやミヤコたちの目には「ぽっちゃりぎみの小学生に間食を与える祖父母」に近く見えているのだから。

しかし当の先生は出会って数分のモエの変化にまだ気づいていないようで。


「シルエットで分からないのか、ならこの腹を見たら分かるだろ!」

「んむっ…!ひょ、ひょっと、ひゃき…!捲らないれ…!バリバリッ…ごくん。生徒のお腹を見て先生が興奮したらどうすんの!」

「いや、ナイだろ…こんなだらしない腹じゃ…。だろ?先生。こんなに太ったモエに飴なんて与えたら、もっとブクブク太るに違いない!」

飴に夢中になっているモエのスキを突き、サキがばっとその制服を捲ると、スカートの上にこんもりとのったたっぷりの贅肉が露わになる。街行く人に問い尋ねれば皆が皆、ぽっちゃりやデブだのと回答するだろうモエのだらしないお腹が先生の目にしっかりと映った。

咥えたばかりの飴を不意の出来事にバリバリと噛んで飲み込むモエ。そんな彼女の姿を見て先生は「やってしまった」感を強く募らせる。だが彼の内に生じた感情はそれだけではなかった。


「そ、そう、だね…!モエがいつの間にこんなぽっちゃり……」

「先生?顔が赤いですが…お身体に不調でも…?」

「えっ、いや!そんなことないよ!……そ、そうだ、サキもモエも、お菓子とかアイスとか持ってきたから食べてよ…!たくさんあるから!」

言えない、これまで他校の生徒で数人、かなりの肥満化を遂げて300kgを超えるほどの巨体となった子たちがいる事を。

言えない、そんな生徒たちに内心、先生という立場ながら内心興奮を覚えてしまっていることを。

「おい先生、私の話を聞いていたか…?これ以上モエに食べさせたらブクブクに……ってもしや先生、そっちの趣味でもある、のか…?」

「い、いやないよ!ないない!ほら、サキもどうぞ!」

「あ、ああ、まあいいか…ありがたく受け取るぞ…」

兎に餌を与える要領でなんとか誤魔化すが、正直これ以上掘り下げられれば彼の内のドキドキが表に出てしまっていてもおかしくなかった。


「あむっ…♥️こっちのアイスも甘くて蕩けそう…♥️チョコと合わせるともっと美味しい…♥️んむっ、はむっ♥️」

「も、モエちゃんが……あ、アイスとチョコで…」

と、サキと先生がいくつか言葉を交わしている内に、先ほど飴を一本食したばかりのモエが食後のデザートの言わんばかりにアイスを頬張っていた。しかも、おまけなのか、先生が持ち寄ったお菓子の中から掘り当てたチョコレートとセットで。

糖分とカロリーの過剰摂取。ここに脂質が少しでも加わればたちまち激太りの王道ルート一直線だ。

…既に昼食で弁当と総菜を平らげているのだから、もう太る道を爆走中なのだが…。

「モエ、皆の食糧ですし、折角先生が下さった補給物資なんですから、分け前は守ってくださいね」

「わ、分かってるよ…お昼の惣菜ももう賞味期限が切れて時間が経ってたから食べただけだけど……気を付ける」

ミヤコの諭すような忠告に素直に従うモエ。明らかにサキに対する付き合い方とは異なる。どちらも彼女にとっては大事な友人かつチームメイトだが、付き合い方のベクトルが異なるのだろう。

「なんだ、そうだったのか。てっきり食欲が暴走したのかと思っていたが」

「そんなわけないでしょ!でも…私が愛して止まないのは甘いものだから…♥️飴、もう一個だけ食べちゃお…♥️この罪悪感が堪らない♥️あむっ!」

賞味期限を気にして自分が食べて処理しておいたというモエの言い分がどれほどの正当性をもつのかはさておき、彼女にも一つの理由があって食事をしたのだと知り、サキも見直したような表情を浮かべる。

だがすぐさま、アイスを食べ終わると飴を手に持ちまた頬張るモエの様子に雲行きが怪しくなっていった。


「……先生、もしモエが肉団子みたいな身体になったらちゃんと責任、取るんだよな…?」

「は、はい…(なんだか凄く大きな分岐で選択を間違えた感がする)」

ここでNoと答えたらただじゃすまされないと動物的本能が囁き、小さく肯定を示した先生はどこかこの先起こる展開を予期したように、観念する。


「あっ…もうこんな時間ですね。そろそろ午後の訓練を始めないと…」

「そっか、もう昼過ぎだもんね。皆には時間を取らせちゃったね、午後の訓練も頑張って!」

スーツの袖から垣間見える腕時計は、短針が既に2時近くを示しており、昼食時というには些か過ぎた時刻となっていた。楽しい時間はあっという間というが、諸々話しているうちにこうも体感より早く時間が過ぎてしまうあたり、先生も小兎たちも互いに良好な関係を築けていると言ってもいいだろう。

「良かったら先生も見学されていっては……い、いえ、先生にもお仕事があります、よね。すみません」

自分から時間の話題を切り出したものの、あっけなく帰ってしまいそうな先生の反応に呼び止めたくなる気持ちが湧いて出たミヤコだったが、冷静に判断して、彼に伸ばしかけた手を自ら徐に下ろした。


「ううん、私も仕事頑張るから!4人の元気な姿を見れてパワーも貰ったし!…あっ、そうだ!いけないいけない、大事なこと伝え忘れてた!」

「…大事なこと、ですか…?なんだろう…もしかして公園からの退去命令だったりして…」

「え、縁起でもないことを言うなよミユ!そんなはず…」

だいたい重大発表は最後に回すのがバラエティ番組やエンタメ関連の情報ではありがちなパターンだが、先生がいう場合の”大事なこと”について、悲観的妄想を膨らませるミユと若干それに引っ張られながらもそんなはずないと信じたがっているサキ。

そんな彼女たちの緊張をほぐすように、先生は穏やかな声色で告げた。

「あぁ、全然そんなことないよ!むしろグッドニュース!皆にある人たちから招待状が来てたんだ。来月、4人で行っておいで。じゃあ、私はこれで!」

と、一通の封筒をリーダーであるミヤコに手渡すと先生はロボットと共に帰路につく。

「は、はい!ありがとうございます先生!」

「ありがとうな先生」

「ありがとう、ございます…!」

「んむっ♥️ちゅぱっ…♥️ありがと先生!」

一人だけものを食べながら手を振る生徒がいるものの、揃って彼の背中を見送るRABBIT小隊の面々。残されたのは大量の差し入れと飴の山と、先の一通の手紙だった。


「さて、招待って誰からなんだ…?」

「私たちに縁のある人たちなのは確かだよね…」

「招待状を開けてみましょう…えっと差出人と中身は…」

ミヤコの両脇にサキとミユがくっつくと、ゆっくり小隊長がその封筒から中身を取り出す。

先生によって一度封を切られた手紙は、新しく別の封筒に入っており差出人は中を見るまで不明。だがその折り目やうっすら透ける字体を見る限り、相手はかなりの几帳面もしくは彼女たちを大切に思っている人なのはすぐに察せられた。その差出人とは…。

「……夜戸浦村、あの夜戸浦村からの招待状です!」

かれこれ1年前の猛暑の中、冷凍エビを巡る一件で結果的にRABBIT小隊が貢献を果たしたシラトリ区郊外にある小さな漁村。水着を新調し体験したその村での一連の出来事は彼女たちにとって強く思い出として残っている上に、今では漁村自体が観光スポットとしても注目されており、どうやら観光客がよく訪れているのだとか。それが、夜戸浦村である―


§§§


「「「かんぱ~い!!!」」」

「ごくっ…んはぁ~…だがまさか1年かかって念願の異動が決まったとは、私たちが帰ってからも相当な貢献を重ねてきたんだろう?」

漁船も多くが引き上げ、観光客もそれぞれの宿へと向かい、本来の静かな漁村の姿が徐々に夜闇の下、現れ始めた頃。羽虫が街灯に集り、影がちらつくその明かりの下で、場所が場所なら花見をする支度と思われても遜色ない形で用意された仮設の机とビニールシート。そこに腰を下ろすのはおよそ1年ぶりに再会したばかりのRABBIT小隊の面々と夜戸浦村の村民+αたち。

互いに見知った顔に久々の対面ができて盛り上がったところに、漁師にはお酒、生徒たちには缶ジュースが手渡され、乾杯の合図がかかる。


「いやぁ、えへへ…SRTの皆さんにもこうして祝って頂けるとなんだか照れますね…!頑張ってきた甲斐がありました!」

勢いよく缶ジュースを喉に流し込んでは、隣に座った生徒へ声をかけるサキ。その相手はかつて小兎たちが夜戸浦村を訪ねた際に何度も交流を重ねてきたヴァルキューレ警察学校の生徒だった。

以前は散々なまでに夜戸浦村の状況や村民のことで愚痴を垂れていた彼女だったが、例の冷凍エビの一件でSRTの精神に触れて以降、心機一転。今ではヴァルキューレの名に恥じぬ仕事を、観光客も増えて治安が悪化してもおかしくない今の夜戸浦村でこなし、この地域で安全に生活できる縁の下の力持ちとなっている。

「おう、そうだな。お前さんの働きは夜戸浦村の皆が知っとる。勿論ワシもな。あの一件以降、観光客が増えたこの村が今でもなお治安を保てているのはヴァルキューレの生徒として信念をもって働くお前さんのおかげだ。ありがとう」

「えっ、うぅ…!まさかこんな日が来るなんて、夢にも、おもっでまぜんでじだぁ…ぐすんっ」

「なんで主役が泣いとるんだ。ほれ、熊谷、すまんがティッシュを取ってくれ。さ、鼻をかんで、食事の席だ腕によりをかけて作った新鮮素材の海鮮料理を食べなさい。SRTの皆さんも遠慮せずどんどん食べてくれ」

以前は険悪だった村民との関係もどこへやら、今や彼女は村民からも頼りにされる立派なヴァルキューレ生。

実のところ、RABBIT小隊が今回夜戸浦村へ招待されたのは、そんな彼女の異動が決定したからであった。

もとより早く異動したいと言っていたのだ、その願いがこうして積み上げた実績により成就したのだから最高の気分…と思いきや、彼女も様々な体験を経て、どこか夜戸浦村への愛着も芽生えていた。しかし結局のところ、本来の目標や彼女の夢を鑑みた結果、村民の後押しもあって村を出る事が決まったのだという。

…と、そんなやりとりもあって、漁師の言葉に涙ぐむヴァルキューレ生を隣にしつつ、勧めもあって、この宴会の為に用意された料理の数々(くさやもあり)を各自の皿へと小兎たちは取り分けていった。


「で、では遠慮せず…」

「「「いただきます!」」」

「あむっ!はむぅ、ごくんっ、いただいてまぁふ♥️このエビうまぁ♥️いくらでも食べられそう♥️くさやもクセになって…はぁはぁ♥️たまんなぁい♥️あむっ…♥️」

ゆっくりとトングを使い、大皿に盛られた海鮮料理の数々を各々の皿に分けていくミヤコや、それを享受し慎ましやかな笑みを溢すミユを他所に、一人爆食いする生徒。

バランスボールのように膨らんだ尻の肉で座高が高くなったのか、他の生徒と比べてまるで2,3倍の体積はありそうなほど巨体に仕上がったその身体は、まごうことなく甘いものの過剰摂取で出来上がっていた。

『女の子はお砂糖からできているの』と少女漫画のキャラクターはいうが、実際に砂糖で作り上げたボディというのが、それである。

全身贅肉まみれで、太ももは膝を埋めるほど皮下脂肪を巻き付かせており、水着は腹肉と腰の贅肉に埋もれて一目見ただけではちゃんと履いているのか身につけているのかも定かではない。

その腹肉というのも招待状を受けてから約束の日までのものの1か月で急激に蓄えた脂肪なだけあって、パンパンに膨れた重量級の重りのような張りと質感。更にその上には、元よりたわわだった乳が一層発達して、腹肉の上に鎮座する形で垂れているが、大きさも増している分、パーカーを押し上げて危うく胸部を晒しかねない。

他にもだるんだるんの脂肪を振袖のように垂らした二の腕や、すっかり丸顔と二重顎になった表情はもはや細身のころの面影を肉が覆い隠すかのように、デブそのもの。

体重こそ測っていないが、おそらくその場にいる誰も今のモエ以上の巨体を見た事はないだろう。いや、もはや村民が彼女をモエと認識しているのかすら怪しい。


「あ、あのぅ…」

「ん、どうしたんだ?何か私に聞きたいことでもあるのか?」

「あっ…そんなに大したことではないんですが……」

案の定、ヴァルキューレ生がサキに耳打ちする形でバツが悪そうにしてモエの方をちらちらと見ながら尋ねる。

「なんだ遠慮せず言ってくれ」

「はい…その、先程から誰よりもたくさん食べながら鼻息を荒くしているあの方はもしかして…」

「あ、あぁ…そうだな…1年ぶりに会うとなると驚かれても仕方ないと思うが、正真正銘あれはモエだよ」

「モエさんってあの…!?い、以前お会いした時はあんなにスタイルも良くてスレンダーな方だったのに…!?どうしてこんなにデb...ふ、太ってしまったんでしょうか!?」

まさかとは思っていたが、劇的なビフォーアフターの事実を聞き、思わず彼女の口から大声での驚嘆の叫びが零れる。

「しっ、静かにしろ!あんまり大きい声を出したらモエに聞こえるだろ…!」

「んごくんっ…げぶふぅ♥️聞こえてるけど…?私の身体が気になる?くひひ…♥️いいよぉ…お腹触ってみる…?おもたぁ…♥️げふぅ…」

「あっ、えっと……」

咄嗟にサキが口を塞ごうとするが、時すでに遅し。ヴァルキューレ生の驚いた表情はモエにもしっかりと伝わっていた。そしてそのままモエは自身の巨腹に手をかけ、肉を揉みしだく。

己の腹を己の手で。プクプクに膨れた指が、贅肉の山に沈みこむと力いっぱい指を動かして脂肪の感触を楽しむ彼女はその愉悦の瞬間をヴァルキューレ生にも共有しようと誘うが、当のヴァルキューレ生は困惑するしかない。なにせまだあの細身のモエが、こんなにも太り、そしてまるで自分の贅肉の感触を楽しんでいるように見える現実を受け入れきれていないからだ。


「お、おい!気を確かに持て!モエもあんまり変な誘いをするなよな!」

「ちぇっ、サキってばあんた真面目すぎ~、ふぅ…♥️このお腹の感触…♥️はぁはぁ…!も、もう我慢できない…!私ちょっとテントに戻ってくる…♥️よいしょっと…ふぅ、んふぅ……」

ヴァルキューレ生の堕天を阻止するかのようにサキが彼女の肩を揺さぶる。肉の虜を増やすべきではないのだ。そんな同期の様子に一方でモエは堅物だと言いのけるが、それはそれ。一緒に肉感を楽しめないなら仕方ないと、今度は割り切って、両手で己のブヨブヨの腹肉をいじり、セルフマッサージの感触に病みつきになりながら、次第に我慢の限界に達したのか、荒ぶる息のままのっそりと立ち上がり自身のテントへ向かう。

ペンギンのようなよちよち歩きで左右に身体を揺さぶらせながら歩くその身体は、一歩踏み出すたびにぶふぅ…ぶふぅ…という重い吐息と、だっぷんだっぷんと波打つ脂肪が特徴的で、SRTの訓練を以前のように行えているとは到底思えないものとなっていた。

「んっ?お前さんはもういいのか?まだまだ料理はたくさんあるが」

「ぜぇ…!ふぅ…!戻ってきたら、まだ食べるつもり…♥️」

漁師の声掛けにとぎれとぎれの声で返すモエの胃袋はまだまだ満腹には程遠い。それでも彼女が満腹より優先するものが自身のテントにはあった。


「にしても、SRTでもあんな訓練をする生徒がおるのかぁ…。重り付きのボディスーツまであるなんてのも驚きだが、そんなのを耐えながら生活をするとは大したもんだ」

「そ、そうですね…(あれがモエだということも本当に太ったんだということも気づかれていないまでありますね…)」

そんな相撲取りも顔負けの肉団子ボディを遠目に眺めながら呟く漁師の口ぶりは、まるで現実にこれまでの激太りをしたものが史上存在しなかったのだと思わせるほど。贅肉の山を着ぐるみだと認識しているその発想はまったく漁師にあるまじきお茶目さで、それを聞いていたミヤコも苦笑いを浮かべていた。


§§§


「はぁ…!はぁ…♥️あむっ…♥️あまぁ♥️むちゅ…ぷはぁ、今日はもう舐めないつもりだったけど、食間に食べる飴も最高…♥️この甘さがやめられないぃ…♥️げふぅ…あむっ…♥️」

一心不乱にテント内で腰を下ろしながら何かを頬張る巨大な肉。その仮設の室内には甘い香りとロクに入浴もできていないことで発せられる彼女の独特な体臭が混じった異様な空気が充満していた。

彼女、モエはひたすら飴にしゃぶりつき、舌先で甘味を受け止めながら、だらだらと滝のような汗を溢しつつ興奮を隠す気配もなく食と快楽を貪る。

その姿に痩せる見込みなどない。


「一人でテントに戻ったのが怪しいと思って来てみれば……人目につかない場所でそんな…」

まさかと思いながら彼女の後を着いてきたサキがモエのテントを開けると、案の定、飴に夢中になって糖分を必死に摂取する巨デブの姿。

だが当の本人は食べることに夢中でRABBIT2の存在になど気づいてもいなかった。




「今日一日、人の視線がぜんぶこの身体に吸い寄せられてた…♥️く、くひひ…♥️太れば太るほど、なんだか凄い背徳感で…♥️あむっ…」

これ以上太ってどうするのかというレベルまで全身に肉を蓄えた彼女はこれでもまだ満足していないのか、もはや太る事自体を快楽の源泉にしているかのように恍惚の笑みを浮かべながら飴と己の腹で戯れる。

「おい、モエ!いい加減痩せないと、今後何かあったときに任務にならないだろう!毎日何本その飴を食べれば気が済むんだ…?」

つい黙ってみているだけのはずが、我慢ができずに声をかけてしまうサキに、モエは大して驚くような表情は見せない。いや、驚くことすら飴や快楽を前にしたら面倒なのだろう。

「あむっ…んぅ…?なんだぁサキか、くひひ…♥️何本かって決まってんじゃん。食べたいだけ食べるんだよ…♥️あむっ♥️…あんたも一緒に飴食べない…?この甘さ最高だよ…♥️ちゅばっ…♥️」

「食べない…!(まさに病み付きになってるな…成分に問題があってもおかしくないとすら思うくらいに…)」

「なんだ…じゃあ分けてあげない。あむっ…♥️」

食べたいものは好きなだけ食べるという、自制心のかけらもないモエからの誘惑をきっぱりと断ったサキ。その応答にモエは残念そうな表情を一瞬見せたと思いきや、ならばいいと再び飴を甘味を口内で楽しむ方へと戻っていった。

そんな時、サキはある事に気づく。

「ん…?まさか…。お前、ちゃんと水着は着てるんだろうな…?わ、私の目がおかしくないならその下は…そ、そんな…」

そう戸惑いを隠せなくなりながら指摘するサキは、ピンク色の輪っかが両胸からどんどん露わになってきているモエの上半身を指して問う。

その輪は間違いなく水着を着用しているのであれば現れるはずがないものだ。

それが見えてしまっているということはモエが身につけているパーカーの下というのは全くの”フリー”であると簡単に想像がつくのであって…。


「くひひ…♥️バレちゃったかぁ…♥️身体がおっきくなるほど服が小さくなって、そのうち全部曝け出されちゃうと思うと…はぁ…!はぁ…♥️♥️もっと食べないと…♥️」

もはや彼女は食の虜どころか激太りの末の露出や羞恥すらも快楽へと転ずるほどに愉悦に溺れており、「危険な一線を超えるかどうか」という境界線のギリギリを楽しんでいた過去の彼女は、思い切りデブへの道を直進した挙句一線も何も踏み越えていた。

…本人にしてみれば「前のラインを超えてしまったのなら、次は新しい一線を改めて築けばいい」というスタンスなのかもしれないが…。

だがそんな在り方を天下のRABBIT2が認めるはずもなく…。


「モエ…お前って奴は…!もう見過ごせないぞ!明日からは私がきっちりみっちり、ダイエット作戦を実行してやる…!!」

「痩せる気なんて私にはないけどね…!後方支援もオペレーターも、太ってて困ることなんてないし、むしろ…♥️自分がどこまで太れるのかって考えたら…くひひ…♥️はぁはぁ…!んあむっ…♥️」

対照的な言動を繰り広げる両者は一歩も譲らず、太っていても問題ないし太る事自体が快楽の理由になっているモエと、なんとしてもチームメイトを痩せさせたいサキの間に火花が散る。

だがふと思い返せば、いくらモエが大の甘党だといっても、短期間でここまで太るのはおかしい。1か月で約80kg前後の体型が300kgほどまで爆発的に増量したなんて。

「決めたぞ、まずお前を痩せさせる以前に、その飴が食品偽装や危険なものである可能性がないか確かめるべきだな!…そうとなれば明日すぐにでも製造工場に潜入捜査へ行かねば…」

そして、小兎たちは翌日、村での宴会を終えてまもなくしてすぐに次なる任務、飴製造工場への潜入捜査へと向かうのであった。

ちなみに、宴会ではモエが会場へ戻ると、残っていた海鮮料理の山が一気に片付き、一人爆発しそうなほど膨らんだ腹を抱えながら、またもや体重増量に繋がりかねない習慣を重ねたのだとか…。


ーーーーーーーーー

風倉モエ

Height:163.2cm

Weight:289.3kg

B:231.9

W:254.1

H:240.4


§§§


「今回の任務はあくまでも潜入調査です。まだ物的証拠があるわけでもないですし、先生に無理を言って実行して頂いたシャーレの特権を行使した調査になります」

「…ってことは、あんまり実弾で戦闘をすることも、狙撃自体することもないってことだよね…ミヤコちゃん…?」

D.U.から暫く東に進んだ工業地帯の一角、住居などは全くなく街の景色は子ウサギ公園の周辺とは真逆で無機質なモノクロの世界が広がっていた。辺りは工場だらけ。そんな地域にRABBIT小隊の4人は足を運んでいた。目的は一つ、飴菓子工場の潜入調査。

「はい、なのであくまでも装備は軽く、何かあった際のやむを得ない戦闘は除いて、基本、問題を視認した時はシャーレに報告をして相手に悟られずに退却としましょう」

「それもそうだな、ただのお菓子工場の可能性も高いわけだし、もし私たちの潜入がバレたとしても抜き打ち検査と言って誤魔化せないわけでもないが、トラブルは少ないに越したことはないだろう。

…たぶんモエ個人の問題であってここのお菓子が悪いわけじゃないと思うが」

ただ単にモエの食べ過ぎが原因であくまで個人的範疇の問題として彼女の激太りが起こっているのか、それとも工場側に何かしらの企みがあり、キヴォトス人全体の激太りを狙った新種の化学兵器実験なのか…。ほとんどの者がきっと前者だろうと思いながらも、万が一があってはならないのもあってシャーレの先生経由で極秘任務という形になったのだ。

極秘任務、ゆえに飴菓子工場を秘密裏に訪れているのはRABBIT小隊の4人だけ。そしてその任務の詳細とは…。


「あむっ…♥️ごくんっ、ふぅ…あんたは何が言いたいのさ…私はただ好きで甘いものを楽しんでるっていうのに、事を大きくしてまったく…。でも、この飴の製造工場が結構おっきいなんて知らなかった…♥️ここにミサイルをぶちこんだら良い感じの花火が見れるのかな…♥️」

すっかり声も太くなるほど喉周りにも肉をつけ、すでに本日何本目かの飴を食べながらサキの小言に苦言を呈すモエ。その身体は水着でなくても水着のように肌が露出され、既にでっぷりと膨らんで満腹状態にも見える二段腹は曝け出されていた。体重およそ300kg、誰に強制されるわけでもなく、食の快楽に浸りきって肥えに肥えたその身体は球体のように曲線まみれで、全ての部位が膨らんでいる。

そんな図体を支えるのも疲れるのか、ミヤコ・サキ・ミユの3人が中腰で工場の塀裏に隠れながら作戦趣旨を共有している間も、モエだけはまるで巨大ぬいぐるみのように地面に尻をつけ、どっしりと座り込んでいた。

当然、スカートからおもいきり溢れた脇腹の肉は存在を主張しているし、下半身の肉に至ってはブヨブヨの太ももから埋もれかけの膝、はち切れそうなふくらはぎまで全て地面についてぼってりと広がっている。おまけにモエ愛用のタイツは内側からの肉圧と地面に腰を下ろしたことで触れた小石による小さな傷から盛大に破れはじめ、「ビリビリのタイツを着用した汗だく快楽混じりの巨デブ」という見るも無残な姿となっていた。そんな中でも飴を食しながら工場を爆撃したらどうなるのか…と、お得意の破滅妄想を繰り広げ彼女は悦に浸る。


「縁起でもないことを言わないでください。RABBIT3はいつもと同じように、現場には潜入せず待機をお願いします。絶対にこの場を動かないでくださいね」

「大丈夫、冗談だって…♥️でも今回ばかりは工場見学もかねて中が見たかったかも…もしかしたら新製品にも会えたり…♥️」

ミヤコの冷静な返しに対して、冗談だというモエだが、隠す素振りもなく待機命令が下されたことを嘆く。特に今回は彼女も潜入したかったのだろう。なんといっても彼女の大好物である飴が目の前の工場の中で作られているのだ。もしかしたらどこかで新作を試食出来たり、盗み食いができたりするかもしれない。そんな想像がひとりでに膨らみながら、仕方なく待機命令に従うことになった。


「そういう事態になったらお前が余計に太るだけだから、待機させるんじゃないか。そんな…肉団子みたいにブクブク太って…はぁ…。いいか!モエは何があっても建物に入るなよ!今回は後方支援も無用だ、じっと待ってろ!」

「待つだけってそれはそれで大変そうだけど……私たちの帰りを待ってて、ほしいな…」

「仕方ないなぁ…たぶん杞憂だと思うけど、あむっ…♥️三人とも気をつけて」

ミヤコに便乗する形で釘をさすサキとミユ。普段あまり忠告するようなことはないミユですらモエに待っているように頼むのだから、やはりモエの激太りは原因はなんであれ異常に違いない。そんな待機の指示が下されている最中も、RABBIT3は餌に夢中になっていた。


「はい。では工場も決して小さいわけではないので、RABBIT4個人と、私とRABBIT2のペアで二手に別れて調査をしましょう。おそらくRABBIT4の方がこと潜入においては私たちより能力が高いことが間違いないので」

「ああ了解だ!」

「…りょ、了解…!」

「ではこれより、作戦名……いえ、今回はそこまで力まなくていいですね、では調査開始です」

「じゃ、3人とも、いってらっしゃ~い♥️」

まるでアサシンのように自身の存在感を薄められるミユが単独で前進、まず彼女は見つかる事はないだろう。そして別れたミヤコとサキが互いに死角をカバーしながらミユとは別ルートで工場内へ進行。万が一従業員に彼女たちの潜入がバレても、臨機応変な対応を取れるリーダーのミヤコとサキならいくらでも誤魔化しが効く。最悪、シャーレによる抜き打ちテストといって押し切ればあとは先生がなんとかしてくれるだろう。

そういった任務の趣旨で工場の塀裏から行動を開始した3人の背中を、再三によるお願いを聞き入れて待機するモエは送り出した。

だが暫くして…。

「…とは言ったものの、待ってるだけって凄く退屈…はむっ♥️…ってこれ最後の一本じゃん!くひひ…あんなにたくさん持ってきたのに、もう私全部食べちゃったの…♥️

糖分とカロリーが余すことなくこのお腹の中…♥️はぁはぁ…!も、もっと太っちゃうなぁ…♥️」

ぶにゅ、ぶよっ、ぶよっ♥️

ものの10分前後のうちであっという間に持参してきた飴菓子をほぼ全て胃袋に収めたモエは、本格的な退屈との闘いに嫌気を指していた。いつもの任務であればセキュリティの突破や後方支援などの作業を要しただろうが、今回はアナログチックな街のお菓子工場、セキュリティなんてものはほとんどないし、あくまで潜入調査である為もちろん爆撃も必要ない。むしろ何もしないでいることが彼女の仕事となっているほどだ。

大量のカロリーと糖分が日中にして既に蓄えられた巨腹を彼女は両手で揉み始める。日に日に重くなるばかりのお腹は食後は張りがあって指の沈み込みは浅く、空腹時はブヨブヨとした感触で腹単体で別の生物かのように揉めば縦横無尽に動く。おまけに空腹時はギュルルルルと鳴き声を上げるのがこの腹だ。

己の太りきった腹肉を、極太の腕と指で弄り興奮を覚える。その様子は他人から見れば変態そのものだが、そんな自身の姿を第三者目線で想像するだけでモエの中の昂りはヒートアップしていた。


だが何もやることがないというのはそれだけで興ざめの原因となるし気が落ち着かない。

「でももう飴もこれだけとなると、本格的に暇~……あっ、くひひ…♥️飴ならあるじゃん、すぐそこに♥️

…ダメって言われるとやりたくなっちゃうのが人のサガだよねぇ…♥️

ちょっとだけ、ちょっとだけ…♥️」

そんな彼女が悪い笑みを溢しながら向かうのは、持参した飴なんかより大量のお菓子が保存及び製造されている目の前の地、工場の中。ダメと言われればやりたくなる、禁止と書かれれば試してみたくなるのが好奇心というシステムを内蔵されたヒトの定め。

待っていろと言われればどうしても動きたくなってしまうものだ。お腹の虫もそういっている。


ノシッ…ドシッ…ぶふぅ…ふはぁ…♥️

むふぅ…んはぁ…♥️ぜぇ、こひゅぅ…♥️

「たぶんミヤコたちは従業員の様子から工場の環境とか状況とかを知ろうとするだろうから……製造工程までは見ても判断できなくてスルーするはず…。バレないように慎重に…♥️」

一歩一歩がずっしりとした足取りで、波打つ脂肪に身体の軸から揺さぶられながら、両胸の肉塊から巨腹、その下の内腿の肉や逆に顔に蓄えられたパンパンの頬肉まで、全ての身体の肉をゆっさゆっさと動かしながら、脂っこい吐息と共に彼女は進む。その手には最後の一本となった飴が大事に握られていた。

長く一緒にいる隊員たちの思考パターンや癖からなんとなく彼女たちの進んだ方向を予想して、出くわすことのないようにゆっくりと巨体を動かす。

ただでさえ目立つ身体だ、3人にバレないことも当然だが、従業員にもバレてはいけない。

「ふぅ…ふひゅぅ…んっ…?この匂いって…もしかして♥️♥️」

吐息だけがひたすら彼女の聴覚を刺激する環境で、いつしか今度は嗅覚が刺激される。鼻の奥を指すような強烈な香り。甘ったるくていつまでも嗅いでいると頭痛を引き起こしそうなそれは、モエにとって嗅ぎ馴染みのある匂いだった。その発生源につられ向かう先は工場内の一室、半開きになった鉄の扉の先には人の気配がなく、まるで「もっと太りたければ入ってこい」と誘っているかのようにモエを室内へと、その甘い香りは誘惑した。


むふぅ…♥️はぁ、はぁ…ぶふぅ…♥️

どぷっ、どすん、のしっ…

「やっぱり!くひひ…♥️型に流していく直前の飴が入った鍋…♥️すぅ…はぁ…!身体を駆け巡る甘い匂いが…♥️さいこぉ…♥️」

匂いの通り、そこに広がるのは大の大人が数人がかりでも抱えきらないほどの大鍋と、おそらくその中いっぱいに溶けた飴の海。

原料が均等に混ざり合うように専用の棒で混ぜ続けられているその大鍋は、300kgという巨体を有したモエでも余裕で嵌るような大きさのもので、高所に設置されている為全貌まではモエの目では確認し得ないが、立ち込めている湯気から察するに、固まらない温度でじっくりと鍋いっぱいの飴が混ぜ続けられているのだろう。

そしてその大鍋の下にはチューブが伸びており、鍋から少しずつ抽出されている飴はチューブを通って別室へと流れているよう。きっとこの先で飴を一個一個型に流し込んで製品としてものにしているに違いない。

一方、それでも大鍋の中身がなくならないのは、大鍋の更に上から常に新しい飴の素が溶けた状態で継ぎ足し続けられているからだ。

つまりモエが忍び込んだ一室は、飴製造における心臓部分、溶けた飴を固めさせる前の工程が行なわれている部屋だったのである。

…となれば、身も心もすっかり肉まみれで堕落しきったモエの取る行動は一つ。

空腹を訴える腹と、より甘いものを欲する脳、そしてモエ自身の意志の三者が全員一致で一つのアクションを起こさせた。

「ちょっとだけ、舐めてもいい、よね…♥️くひひ…♥️チューブを外して……あむっ…♥️」

カチッ!!ガコンッ!!

大鍋の下から垂れ下がったチューブのジョイント部分の連結を、金具をいじって力づくにも外し、どぼどぼと零れ落ちる濃厚な溶けた飴の液をもったいなさそうに思いながらすぐさま、チューブの先端を口に咥える。

もう後のことなど考える余地はなかった。

はぁ…♥️はぁ!!!あむっ!んぐっ…♥️へぁ…あ、あむぅ…♥️

「んんんぶぅ…♥️ごくっごくっごくんっ、あまぁ…♥️はむっ、むぐっ、んむっ♥️もっと、もっとぉ…♥️」

とろんと垂れた目元は、あまりの甘さと念願の出会いに刺激されており、瞳の奥は虚ろだ。何も考えずひたすらに飲み続ける。


むふぅ♥️♥️むぐっ、ごくっ、んぐんっ…♥️

ブクッ!!どぷどぷどぷぅ…ブヨッ…

んむふぅ♥️♥️からだがっ、ぶぐらむぅぅぅ♥️♥️♥️

電力制御室でもない為、停止の為のスイッチなど彼女の近くには探してもない。喉を通り続けるソレを止める手立てはなく、飲み続ける以外に道はないのだ。さもなければ、彼女がチューブを口から離した途端、貴重かつ愛してやまない飴がドバドバと床へ流れだしてしまう。それだけはできない。そして、そんなことをする必要もなく、彼女はただ己の胃袋と欲望を満たすために高熱量の糖塊の摂取を続けた。

熱い。湯気が上がるほどのホットな飴を飲んでいるからなのか、それとも別の理由からなのか、身体の内側から燃えるような熱を感じると、彼女の身体はブクブクと音を立てるかの如き勢いで巨大化を進めた。


ぶくっ!ぶくん!ブヨブヨブヨ……

んぶふぅ!?ぶ、ぶぐらんでぐぅ…♥️♥️♥️も、もっどふどっぢゃう♥️♥️♥️ごぐっ、んぐっ、ごっくん…♥️もっとのみだい…のまなきゃ…♥️♥️♥️

ブクンッ!!!!どぷどぷどぷぅ…ぶよっぶよっ、ぶよよよんっ!!

「ごくんっ、んぶっ、むふぅ…♥️からだが、あっづい…あむっ…♥️もっと、もっとぉ…ぶひひぃ…♥️」


ぶくっ!ブチブチ、ブチブチブチィ!!!

「も、もう立ってるのもげんかぁい…あむっ…♥️ごくんっ、ごくっ、ぶふぅ、んむぶぅ…♥️からだが、ぶぐらむぅ…♥️♥️も、もっどデブになっぢゃうぅ♥️♥️♥️…ぶ、ぶひひ♥️」

どぷんっ!ドシンッ!ブヨブヨ、ブヨブヨ……

初めは立ちながら飴を食していたモエも、膨らみ続ける腹部の重さと、そこから連鎖的に厚みを増していく全身の贅肉の負担に耐え切れず、体勢を変えていく。

立ちながら手でチューブを握っていたところから、ブヨブヨの贅肉が溜まり重くなったのか腕を上げ続けられなくなり口だけでチューブを咥えるようになり。

次に立っていた状態から増え続ける体重とお腹の重みに耐えきれなくなったのか、山盛りの下半身の肉を床に着ける形で座りこむようになり。

そして、重くなり続ける腹肉にどんどんと身体は前傾姿勢となって、ぶくぶくと膨らみ続けるその図体はもっとも楽な姿勢、すなわち寝転んだ状態で飴を食するように。

…その頃には、もはや工場に忍び込んだ時のモエの「痩せていた」姿はどこにもなくなっていた…。

「むふぅ♥️♥️♥️あまぐでさいごぉ♥️♥️♥️ごくっ、ごくんっ、んぶぅっ!まだぶぐらんでぐぅ♥️♥️ぶひひ…♥️んぶふぅ…♥️」


§§§


「作業員の様子を見るに、あまり違法性のある環境には思えませんね。むしろ子供たちの好きなお菓子を日々作っていることに誇りを抱いている方ばかりのようです」

「ああ、私の考えすぎだったみたいだ、すまん」

一方、潜入調査を始めて1時間弱。工場の中枢ほどまで進んだRABBIT1と2は自分たちの心配は無駄足だったとそれまで見てきた状況から判断していた。

『こちらRABBIT4、異常なし、かな……。あんまり気にしないで…サキちゃんの予想も外れることがあるんだね…』

「すまないRABBIT4。……ということは、この製造工場から悪事の匂いがしないなら、つまりは…」

無線で連絡を取り合う別ルートのRABBIT4とのやり取りからも、この工場で悪事が行なわれているとは考えにくい。彼女たちが見てきた工場の実情は、仕事熱心な従業員の姿と古いながらも勤勉に動き続ける製造マシーンの勇姿。どこぞの悪徳企業のように武器の密輸入や製造、化学実験などをしている痕跡はまったくない。ということは即ち。

「…RABBIT3の激太りは他ならない彼女自身の問題、食べ過ぎによるカロリーと糖質の過剰摂取が原因とみて間違いないでしょう」

「まったく……こんなことが公になったらSRTの名が余計に転落しかねんぞ」

「私たちで責任をもってRABBIT3の減量を図る必要がありますね。…では、作業員の方々にバレないうちに退散しましょう」

『わかった……!』

工場に問題がないとなると、RABBIT3の激太りは彼女の体質的問題と、だらけ癖つまり怠惰とその他もろもろ(主に先生の寄越した大量の飴菓子)の影響が大きかったのであり、外部からの作用ではなく彼女自身の問題であるということで早急に運動して痩せさせる必要が浮上する。

万が一にも「あのSRTの生徒が実はこんなに太っていた!」なんてスクープが流れたら、遂にSRTの閉鎖を解く希望も潰えてしまおう。それだけは避けねばならない。

となれば、すぐさま帰還してモエに運動を…。そう彼女たちが帰路に着こうとした瞬間。


【非常事態発生!非常事態発生!製造過程で機械の故障あり!機械の故障あり!至急係員は『冷却前調整室』に向かってください!】

爆音の警告音声と不安を喚起させるブザーが工場内に鳴り響く。すぐさま理解する。これはかなり重大な部類の緊急事態だ。これにはRABBIT小隊が影から見守っていた工場の作業員たちも慌てふためく。

「なにがあった!」

「どうやらさっきから全然製品が出来上がってこないらしい!」

「冷却前ってことは型流しが上手くいってないのか!?」

「いや、最悪の場合、飴がどっかの工程で詰まったり、うまく作れなくなったりして、その結果過熱…もしくは工場内で既に溢れ出していたり…」

「なんだって!?そんなことになったら発火や回線のショートなんかで大火災になりかねないんじゃないか!?!?」

「「えええ!?!?」」


「んっ…どういうことだ、このタイミングでトラブル?」

「先程のアナウンスから察するに飴を型に流し込んで固める、製造の後半段階で何か問題が生じたのでしょうか…」

従業員たちのパニックになっている様子を脇に、サキとミヤコは比較的事態のあらましを掴むべく慌てない。徐々に従業員たちの口や警告音声から得られる情報を整理し、思考を巡らしていく。

「固まる前の飴……製品ができてこない……なあRABBIT1、もしかして…」

「はい、私も今、最悪の想像をしていたところです…。この際、万が一の事を鑑みて現場に向かうべきでしょう。もしも私たちの早とちりで作業員の方々に潜入がバレたら…その時はその時ということで…!」

「よし、向かおう…!」

ここはRABBIT3の大好物である飴の工場。食欲のままに食べ続けて肥え太ったモエと、彼女を外で待機させているはずの現状。そんな中で飴の製造過程でエラーが発生し、それまで何の異変もなかった工場内が一瞬にして混乱に包まれた…。

この手札から小兎たちが導き出した最悪の帰結とは…。


§§§


小兎たちは工場を駆ける。合流した三羽は警告音声の伝えている「冷却前調整室」へと急ぐ。

初めて足を踏み入れた工場内。なんとなくのフロアマップはシャーレの先生経由で極秘に入手していたが、実際の構造はかなり入り組んでおり、最短経路での進行とはならない。

ひたすら駆け、次第に彼女たちは警告音の中人だかりができている一室へと至った。

「う、うわぁ!!なんだこれ!!!」

「どうなってんだこりゃ!?」

「お、お前さん誰だ!?!?」

室内を視界に捉えた従業員たちが皆それぞれに衝撃を隠し切れず驚嘆している。

「ど、退いてくれ!私たちはSRTの特殊部隊だ!」

「シャーレの業務の一部を代行し、本日は抜き打ちで工場内の管理調査を行っていました!道を開けてください!」

「あ、開けてくださいぃぃ…!」

人の群れへ、警報に負けないほどの声量で自分らの身分とでっちあげの潜入目的を告げながら突入する。

繰り返し叫ぶミヤコ・サキ・ミユの言葉に、初めの内は何を言っているか理解できていなかった職員たちが事態を把握し始め、該当の一室の入り口から離れ始めた。

「え、SRTだって!?!?」

「あのSRT!?!?」

「連邦生徒会長お抱えのエリート部隊って噂の!?!?」

「でも、SRTって閉鎖されたんじゃ…」

「と、とにかく道を開けよう!い、いったい何だったんだアレ…」

経路が開き、兎たちは「冷却前調整室」へと突入する。

荒ぶる呼吸を整える為に鼻から酸素を吸うと、同時に強烈なまでの甘い匂いが脳を震わせる。間違いない、この先で飴が作られており、そこにもしかすると……。



どぷっ!!どぷっ!!ぶよんっ!!ぶっくん!!

「んぶふぅ…♥️むふぅ…♥️あぅ…みづがっぢゃっだぁ…♥️あむっ…ごくんっ…♥️(ぶぐんっ!)」

飴が作られている大鍋の横に寝転ぶペールオレンジのぶよぶよとした超巨体。

鍋から繋がれた管の一端を繋がれた?それは恐らく人のようで、管を咥えながら中の飴を全て食しているように見える。これが原因でエラーが発生したのは間違いない。

だが、その超巨体は人というには些か大きい…いや、太りすぎている。

そしてそれを人だと認識した瞬間、RABBIT小隊の少女たちは見覚えのある人物だとすぐに想起した。

「も、モエ、なのか…お前…」

「RABBIT3、ですよね…」

「も、モエちゃん、どうしてそんなに…」

「ふ、太りすぎだろ!?!?!」




「ぶひひ…♥️も、もうだべられないぉ…♥️♥️で、でもぉ…まだたべたぐなっでぇ…んぐ、むぐっ♥️ぐぶっ♥️

(ぶくぶくぶくっ…どっぷん!)」

「に、肉塊ですね…」

「なんて様だいったい…はぁ…」

「ぁ…ぇっ……うぅ……」

ほとんど衣服を着れていないような状態のその肉塊は、申し訳程度に上半身に服を纏っているものの、膨らみ過ぎた両胸はどっぷりとこぼれ、今にも何か吹き出しそうなくらい膨らんだ乳房が衆目に晒されている。その横に伸びる両腕は振袖などもはや格違いで、カーテンのようにだらんと皮下脂肪が重力に負けて垂れ下がっており、片腕の二の腕肉だけでミヤコ・サキ・ミユのウエスト以上ある。

そこから視線を動かして、下半身へと向かう道中、寝転んだ身体で床に接した腹肉は無残にも床にどっぷりと垂れ広がり、もとのウエストより更に太くなっているのは間違いないが、いったい今のサイズがどれほどか分からないほど太り、肥え、そして爆発的に膨らんでいた。

その腹の下敷きになっているのは、膨らむ巨腹を抑えきれなくなったのか千切れてしまったスカートと小物入れ。もはやスカートなど履けないほどモエは太っている。

そして下半身に至っては幾重にも贅肉の段が積み重なる中、ビリビリに破れたタイツからは肉が溢れ出している上に、尻は特に膨らんでいる為、丸出し状態で彼女は寝転んでいた。

目算しても先ほどまでの300kg弱から100kgは更に太っていてもおかしくない。

全身肉まみれで、顔は満月さながらに丸くパンパンに膨らんでいて、首は埋もれ目は頬肉で細くなっている。


「げぶふぅ♥️♥️♥️もっどぉ…♥️ぶひひぃ…♥️♥️」

快楽に溺れた表情は完全にスイッチの入った状態のモエのままで、ただその身はあり得ないほど肥えている。そして笑えば声が肉で籠っている為かまるで豚のような笑い声となっていた。

そんなRABBIT3の姿に他の隊員たちを言葉を失う。

そこへ…。


「おい皆聞いてくれ!!他に異常箇所がないか管理チームで調べてたら大変な事が分かったぞ!今作ってる飴も昨日作った分も、ここしばらくうちで製造してた飴全部、規定値の100倍の熱量で作られてたみたいだ!配合する成分の入力段階でとんでもないミスがあったんだ!」

「なんだって!?おい、じゃあまさか…」

「ああ、うちが作った飴を食べたら子供たちがブクブク太るんじゃ…」

「こ、この人みたいに太っちまうのか!?」

「は、早く回収しないと…!」

RABBIT小隊に続く形で後からやってきた従業員が慌てた様子で新たな事実を告げる。規定値の100倍の熱量。すなわち飴1つで従来の100個分のカロリーを摂取していることになる。混ぜ合わせる人工甘味料や砂糖、その他諸々の材料が軒並み100倍の濃度だったとして、それに気づかずなのか、甘味の中毒性ゆえなのかひたすら食し続けたモエはやがて甘いものへのバロメーターが狂い、連鎖的にどれだけ食べても満足できない無尽蔵な食欲を有した身体になっていたと考えられる。だからといって太り過ぎだが…。

そんな従業員の発表を聞きすぐさま現場は動く。なにせ販売店や通販に出した商品の回収に走らねばならないのだから。でなければ飴を食べた人々が皆激太りする危険が既にある。目の前の彼女のように…。


「君たちがSRTの生徒さん達だね?んん…いくらシャーレ絡みだからといっても、こうも部外者が入って来られてしまうとうちも困るんだけどね……とはいえ、君たちには感謝とお詫びをしたい。うちの製品が原因でその…そこの子がこんな姿まで太っ…大きくなってしまって本当に申し訳ない。そして君たちが来なければ今日の製造工程の異常も起こらなかったしそうなると成分異常も発見できなかっただろう。君たちのおかげで被害が最小限で抑えられるだろう。本当に申し訳ない、そしてありがとう」

あっけにとられたままの小兎たちを他所に長々と礼と詫びを告げる男は、おそらくこの工場の上層部の者だろう。作業着でありながら溢れる風格はどことなく工場内での地位を勘ぐらせる。流すように告げられた彼の言葉を暫くしてRABBIT小隊の面々は理解した。

詫びの内容はともかくとして、お礼を言われる所以を理解するには時間を要した。確かに、モエが今回お忍びで飴をチューブで食することがなければ、製造工程にエラーが出る事もなかったし、それがなければ成分の点検を職員が再度することも当分なかっただろう。

結果的にRABBIT小隊の潜入調査が、そしてモエの激太りが飴工場の悲劇を最小限の形でとどめることに一役買ったとみても誤りはない。…のか…?


「ま、まあ、礼はいらない。何だって私たちはSRTだからな!」

「そうです、人々の安全に貢献できたのなら私たちも嬉しいですが、お礼はお気持ちだけで」

そう言って頭を下げたままの職員を宥めるミヤコとサキ。だが一方で事態が深刻なのに違いはない。

「…で、でもどうしよう…。こ、こんなに太ったモエちゃん、どうやって…」

「そ、そういえば…そもそも動かすこともままならん上にどう今後痩せさせるか…」

ミユの一言で2人は現実に帰る。電源が落とされ、雫程度しか流れてこなくなった飴のチューブを今も咥えたままのモエ。その身体はやはりどうみても肉塊。きっと3人で力を合わせたところで持ち上がりもしないだろうし、そも部屋から出るだけでも時間を有するだろう。見たところ激太りを遂げたモエ自身は立ち上がる事もままならない様子。

「それなら私どもからSRTの皆さんに寄付という形で一つ落とし前をつけさせてくれないだろうか…!」

「「「えっ…?」」」

「ぶ、ぶふぅ…♥️いいがら、もっどのまぜでぇ♥️♥️ごぶっ、ごぶっ、んぶふぅ…♥️♥️げぶふぅぅぅぅ!!!んはぁ♥️♥️」

名案浮かんだり!といった勢いで寄付という単語を持ち出した工場のお偉いさんに、RABBIT小隊の面々は振り向く。盛大なげっぷを響かせながら、滝のような汗を流して独特な匂いを放つモエは、その後、迎えにきたシャーレの先生と現場の人々の手によって業務用の台車に乗せられて帰っていくことになったのだが、「寄付」の正体が分かったのはそれから1週間ほど後のこと…。


ーーーーーーーーー

風倉モエ

Height:163.2cm → 163.8cm

Weight:289.3kg → 413.7kg (912lb)

B:231.9 → 260.2

W:254.1 → 325.9

H:240.4 → 349.8


§§§



ドシンッ!ズシンッ!ブルンッ!どっぷん!!

「ぶへぇ…!ぶふひぃ…!も、もうきゅうげいさぜでぇ……んぶひゅぅ…!」

どっぷん!!どっぷん!!ぶるんぶるんっ!ぶるるんっ!

時はクリスマス直前。シャーレのオフィスには今日もデスクに向かう先生の姿があるが、その目線は眼の前のPCや業務ではなく、オフィス一角に設置されたあるマシンと、その上でもがく巨肉へと注がれていた。

ベルトコンベアーを改造した幅の広さと重厚さの目立つそれは最大重量500kgまで耐えられる特殊なランニングマシン。ある日これがシャーレのオフィスへ突然届けられた時には、日直の生徒や先生自身も驚かされたが、事の詳細を知れば、これは飴工場の所長からのお詫びの品だった。

だが、なぜこれがシャーレのオフィスに?その答えは単純だ。RABBIT小隊の4人が住処としている子ウサギ公園は勿論野外、故に電力源となるものはないし仮に近くの施設でコンセントなどを見つけたとしてもその電力を勝手に使えば電気泥棒となってしまう。それを見越した工場の所長は彼女たちとゆかりのあるシャーレの先生のもとへこのランニングマシンを寄越したのである。

そして…


「ほら、モエ。もうあと10分だよ。午前中の”訓練”も頑張って~」

「ぶ、ぶひぃ…ま、まだ10分も、あるのぉ…!?も、もうげんがいぃ…ふへぇ…んはぁ…!」

どっぷん!どぷん!ドシンドシンッ!!ぶよんっ!!

ランニングマシンとは名ばかりの超低速で動くその機械の上には、常人なら歩くにも遅すぎるというのに、汗を垂れ流しながら息を切らして贅肉を揺らす巨体が一つ。

風倉モエ。身長163cm、体重403kg、バストウエストヒップは順に257・318・347。

ダブルスコアをキメる体重はピーク時から10kgだけ落ちたものの、間食が酷く本人にも痩せる意志が薄いことから、食べればすぐに戻ってしまう超肥満体型。

ランニングマシンがシャーレに置かれたことで必然的にスーパーおデブとなったモエを先生が預かる事になったのだが、未だ痩せる兆しは薄い。

「ちょ、ちょっとモエ!?まだ終わってな…」

「も、もう限界だって言ってるでしょ…!ふひぃ……くひひ…♥️そんなこと言う先生にはこうしよっか♥️」

どっぷん!!ぶるるんっ!!ぼよんっ……

超低速のランニングマシンから足を下ろしたかと思えば、汗でびちゃびちゃの身体を波打たせながらモエはズシンズシンと一歩ずつ先生に迫る。圧倒的なまでの圧迫感。

大の大人である先生も、自身より数倍大きい図体が迫れば身を引かざるを得ない。

更にその巨体が、徐にスポーツウェアに指をかけ、風呂敷サイズの特大の衣服を脱ぎ始めたとすれば戸惑うのも当然だ。

ぶるんっ!と音が鳴りそうな勢いで、脱がれたスポーツウェアから素肌の巨乳が垂れ堕ちる。といっても腹肉の上に乗っかっているのだが。しかし上半身に何も身につけていないモエが迫ると先生は胸の高まりから呼吸を乱す。

「も、モエ…ち、近いって…!」

「ぶふぅ…ふひゅぅ…く、くひひ…♥️先生、顔真っ赤じゃん♥️……本当は、こういうの好きなんだね…じゃ、一緒にアブナイ一線、超えちゃおっかぁ!!♥️♥️♥️」

ドンッ!!!ドッシィィィィィィン!!!


巨肉が一瞬宙を舞ったのかと思われたが、単に先生がモエの張り手に押されて尻もちを着いていただけだった。だが、次の瞬間、彼女の重機のようにデカく、セルライトのたっぷりと盛られた皮下脂肪満載の下半身が彼のか細い胴体の上に急降下してくる。次の瞬間には、フロア全体、いやシャーレの建物自体に響く地鳴りと共に、全ての衝撃が先生の身体を駆け巡った。

「うぼほっ!?!?!?うっ…!!!も、モエ、お、おも、い……うっ」

「あれぇ?もう限界~?先生にはもっと圧迫してあげたかったんだけどなぁ♥️♥️くひひ、じゃあそれは次の機会ってことで…今度は肉と肉の間の臭いも嗅がせないとだねぇ♥️♥️…って、先生?え?」

断末魔はあっけなく、モエが冗談めいた口調で笑いながら彼に話しかけると、そこには白目をむいて気絶中の先生の姿が。それもそのはず、400kgオーバーの超肥満体の衝撃を一身に受ければ、並大抵の人間は一発KO確定だ。

その後、モエは駆け付けた日直の生徒や連絡を受けて急行したサキ、そして先生の手当てをした他の生徒たちにこっぴどく叱られたというが、それを先生が聞いたのは半日して目を覚ました後だった。

さて、次はどんなとんでもないことが起こるのか。少なくとも、現状の超肥満体でまたアブナイ一線を超えようとしたらと思うと、先生の身に悪寒が走った。

モエの大減量訓練はまだまだ暫く続きそうだ。




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